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2014年6月17日(火)

安倍内閣の野望「残業代ゼロ」(3)

裁量労働  対象の拡大も

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(写真)仕事を終えて電車に乗り込むサラリーマン=東京都内

 事務職や研究職の労働者を対象に労働時間、深夜労働規制の適用除外制度をつくることは、長年にわたる財界の要求です。しかし、「残業代ゼロ」「過労死促進」という国民の批判をかわすことができず、実現できずにいます。このなかで労働時間をあいまいにする手口としてこれまで財界が推進してきたのが、裁量労働制です。

 裁量労働制には二つのタイプがあります。新商品研究開発、情報処理システム開発、編集者など19業種を指定している専門業務型と、企画・立案・調査・分析にたずさわる労働者を対象にした企画業務型です。

みなし制度

 仕事の進め方や配分について労働者に「裁量」があることを条件に、あらかじめ労使が協定した時間だけ働いたとみなす制度です。協定で1日8時間と決めれば、実際に働いた時間が10時間でも12時間でも8時間とみなされます。企業にとって残業代が増えることを気にすることなく仕事量を増やすことができる、実に都合のいい制度です。

 しかし、裁量労働制は、あくまでも労働時間の「みなし制度」であって、適用除外制度ではありません。残業代は払わずに済んでも、深夜割増、休日出勤割増は逃れることができません。

 「深夜は結局、体がきつい。体温が下がり、メラトニンが分泌され、人間として必要な休息をえる時間でありますので、これは管理監督者の方であっても深夜働かれたら深夜割増がかかる」。これがみなし労働時間制度にたいする厚生労働省の見解です(昨年5月の規制改革会議でのヒアリング)。

 このように裁量労働制は、企業にとって、実労働時間をあいまいにする点で便利ですが、労働時間規制の対象外になるわけではありません。企業が、深夜労働、休日出勤を含めて割増賃金の支払いをまったく気にせずに労働者を働かせるためには、労働時間規制からの完全なるエグゼンプション(適用除外)が必要だということです。

 エグゼンプションの創設は、そう簡単ではありません。このため財界は、当面、「みなし制度」ではあるが、残業代を出さなくてもいい裁量労働制の対象拡大を同時並行でねらっています。

低い導入率

 裁量労働制は、いま専門業務型の導入率が1・1%で、企画業務型は0・3%という現状です。導入率が低いのは、要件がきびしいためです。とくに企画業務型は労使同数の委員会による5分の4の議決が必要であり、労働基準監督署に6カ月ごとに実施状況を定期報告しなければなりません。

 このとき、みなし協定が8時間なのに、実労働時間が平均9時間になっていることが見つかれば、実態に合わせた9時間のみなし協定に是正が求められます。その場合、法定8時間を超えた1時間分は割増賃金を支払うことになります。

 実際には、企業はこういう法の制約を巧妙に逃れて「みなし労働制」のうまみを活用しています。いま導入されている裁量労働制の「みなし労働時間」は1日平均8時間半前後ですが、実労働時間が12時間という労働者が5割前後というひどい実態です(厚生労働省「平成25年度労働時間等総合実態調査」)。

 これでは過労死がなくならないのは当然です。財界は、導入にあたっての制約、要件を緩和し、対象業務、対象労働者を大幅に拡大しようとしています。実労働時間をあいまいにする「みなし労働制」の拡大も「新しい労働時間制度」も認めるわけにはいきません。(つづく)


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