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2014年6月1日(日)

介護保険「卒業」を強要

国のモデル事業参加の自治体

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厚労省が方針

図:モデル事業の流れ図

グラフ:モデル事業利用者の4割は更新認定を受けず「卒業」

 厚生労働省の介護予防モデル事業に参加した自治体で、「要支援」の認定を受けた高齢者が介護保険サービスからの「卒業」を強いられ、必要な支援を打ち切られていることが31日までにわかりました。国会で審議中の医療・介護総合法案は、この手法を全国に広げる仕組みです。

 このモデル事業(市町村介護予防強化推進事業)は予防サービスで「元の生活に戻す」ことを掲げ、2012〜13年度に13市区町村が実施。田村憲久厚労相は国会で事業の「効果」を強調し、総合法案を正当化しています。

 ところがモデル事業に参加した東京都荒川区では、腰痛でかがめず掃除などが困難な80代の女性が、10年以上受けてきた「生活援助」を13年度末で打ち切られました。

 女性は要支援1と認定されているのに、地域包括支援センター(区が設置)の職員に、介護保険で受けられる「生活援助」をやめてボランティアの“家事支援”に変更するよう再三迫られたと嘆きます。「今のサービスがいいと伝えましたが、何度もいわれるので『もういいです』といってしまった」

 ボランティアの“家事支援”は介護保険サービスに比べ3倍近い利用料と2千円の年会費をとられます。「貯金を取り崩して暮らしている。消費税も上がり、先行きが不安になるばかり」と話します。

 厚労省が日本共産党の小池晃参院議員に提出したモデル事業の流れ図には、介護保険からの「卒業」を迫る仕組みが明記されていました。それによると、市町村職員が参加する「多職種の会議」が高齢者の介護計画に介入し、状態改善の目標を設定。同会議が「サービス終結の判断」まで行うとなっています。「“卒業”後は、住民運営の“居場所”に移行」と記されています。

 介護保険制度に詳しい淑徳大学の鏡諭(かがみさとし)教授は、「要介護認定を受けた本人や家族が安心して暮らすための保険制度なのに、自治体側の『専門家』が説得してサービスを使わないようにするというのは本末転倒です。本人が納得していないなら受給権侵害であり、違法です」と指摘します。

介護保険から“強制退学”

総合法案の先取り

 介護予防モデル事業に参加した東京都荒川区では、足腰の痛みのためにつえなしでは歩けず「要支援1」の認定を受けている別の女性Bさんも、「デイサービスを卒業して福祉センターの風呂に行ってください」などと迫られ続けています。自宅を訪れた区の地域包括支援センター職員から、1時間にわたって「卒業」を求められたこともあります。

写真

(写真)80代女性(左)の話に耳を傾ける斉藤区議=東京都荒川区

 Bさんが足腰の痛みを話せば、職員は「痛みのない動きで掃除する方法を区の理学療法士に指導してもらったらどうか。掃除の器具を買ってください」。歩いて足腰を鍛えていると話せば、「それだけ元気ならデイサービスでボランティアをしたらどうか」。サービス「卒業」を拒み続けると、「自分でできるようになることを目標にして、いま計画を立ててください」とBさんの介護計画の変更を迫り、変えるというまで職員は席を立たなかったといいます。

 Bさんは「なぜ生活の仕方まで他人に指図されなければいけないのでしょうか」といいます。

原則にも反する

 Bさんの介護計画をつくるケアマネ(介護支援専門員)は、「命令調で行政の思い通りのことをやらせようというのは利用者いじめです。こんな態度をとられたら介護保険の申請自体をためらってしまう。お年寄りを孤立させます」と憤ります。

 日本共産党の斉藤くに子荒川区議は本人の意思を再確認し、サービスを元に戻すよう区に求めています。荒川区福祉部は「生活現場をみて自立にむけた方法をすすめている。必ずしも本人の意思に沿わず、納得をえられたかわからないところもある」といいます。

表:「認定更新せず」が多いモデル事業参加自治体

 斉藤区議は「国いいなりで“卒業”を押し付けるのでは自治体の姿勢が問われます。『利用者の選択が基本』という介護保険の原則にも反しています」と指摘します。

 13自治体が参加した厚労省の介護予防モデル事業では、「要支援」「要介護」の認定を受けた高齢者の4割が1年後、認定を更新せず「卒業」しています。厚労省は「生活上の支障を改善し本人の同意を得てサービス終結となるので問題ない」と説明しています。

 しかし介護保険制度に詳しい大阪社会保障推進協議会の日下部雅喜氏は、「要介護認定の期間が切れて更新の認定で『自立(介護保険サービスに非該当)』と判定されたわけでもないのに、自治体側がサービス終結を決めるというのは異常なやり方です」と指摘します。

 医療・介護総合法案は「要支援」者向けの訪問介護と通所介護を全国一律の介護保険サービスから外し、内容も利用料も市町村の裁量で決められる事業に移します。介護予防モデル事業で重視された「多職種の会議」(地域ケア会議)による介護計画の「検証」も盛り込んでいます。厚労省は「市町村の適切なケアマネジメントで高齢者の状態にふさわしいサービスにつなげる」と説明しています。(杉本恒如)


崩れた国の主張

 小池晃参院議員の話 総合法案は、市町村の判断で要支援者を専門的サービスからしめだしボランティアなどの支援にゆだねる仕組みで、モデル事業のやり方そのもの。“卒業”ではなく“強制退学”です。介護保険の受給権を大本から壊し、国の責任を投げ捨てるもので許されません。モデル事業でサービス見直しの『効果』が確かめられたという厚労省の主張は崩れており、法案は撤回すべきです。


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