「しんぶん赤旗」
日本共産党
メール

申し込み記者募集・見学会主張とコラム電話相談キーワードPRグッズ
日本共産党しんぶん赤旗前頁に戻る

2014年6月1日(日)

大企業優遇税制 恩恵たっぷり

トヨタ法人税ゼロ円 08〜12年度

株主配当は1兆円超■内部留保も積み増し

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 mixiチェック

 トヨタ自動車(豊田章男社長)は、2008年度から12年度の5年間という長きにわたり法人税(国税分)を1円も払わない一方、株主には1兆円を超える配当をしたうえ、内部留保も増やしています。


グラフ:トヨタの配当額と利益剰余金の推移

 トヨタ自動車が法人税を5年間払っていなかったことは、豊田社長の5月8日の記者会見で明らかになりました。

 トヨタ自動車が「法人税ゼロ」となったきっかけは、08年のリーマン・ショックによる業績の落ち込みでした。企業の利益にかかる法人税は赤字企業には課せられません。

 しかし、その後業績は回復し、この5年間に連結で2・1兆円、単体でも0・9兆円の税引き前利益をあげています。

 それにもかかわらず、法人税ゼロとなったのは、生産の海外移転にともなう収益構造の変化によって、大企業優遇税制の恩恵をふんだんに使える体質をつくり出したからです。

 同社は、海外生産を08年度の285万台から12年度には442万台に増やし、428万台の国内生産を上回る状況になっています。この結果、「国内で生産し、輸出で稼ぐ」という従来の姿ではなく、「海外で生産し、稼いだもうけを国内に配当する」という収益構造に変化してきました。

 そのうえ、09年度からは、海外子会社からの配当を非課税にする制度がつくられ、同社はこの制度の恩恵を受けたものと思われます。さらに、同社は研究開発減税などの特例措置を受けています。

 一方、同社は株主には5年間で総額1兆542億円もの配当を行い、内部留保の主要部分である利益剰余金(連結)も、2807億円上積みしています。

 法人税が5年間ゼロとなった理由について、同社広報部は、「詳細については公開を控えさせていただきます」とコメントしています。


さらに減税するのか

表:トヨタ(単体)の経常利益と納税額

 トヨタ自動車の決算書の「法人税、住民税及び事業税」の欄をみると、09年度をのぞけば100億円以上の納税をしており、08〜12年度の5年間では合計1212億円の納税をしていることになっています。

 トヨタ広報部は、「社長の豊田が(税金を納めていなかったと)申し上げたのは、国税の法人税のことです」としています。トヨタが納めていたのは住民税や事業税だけで、国税の法人税が5年間ゼロだったのは間違いないようです。

 トヨタが法人税ゼロだった理由を公開していないため、同社の決算データから推計します。

 08年秋のリーマン・ショックの影響でトヨタは販売台数が急減。このため、09、10年度は単体ベースの税引き前利益が赤字となりました。

恩恵たくさん

 08年度は税引き前利益が黒字で、課税基準となる法人所得もおそらく黒字だったと思われます。このため、住民税や事業税は納めていますが、国税の法人税には、海外子会社が外国に払った税金をトヨタ自身が払ったものとみなして法人税額から差し引く「外国税額控除」や研究費の1割程度を法人税から差し引く「試験研究費税額控除」(研究開発減税)などが適用されるため、納税額がゼロとなったものと推測できます。

 09年度からは「外国子会社配当益金不算入制度」が導入されました。これは、海外の子会社から受けた配当について税法上の益金には算入せず、その分だけ法人所得を少なく計算することで税を軽減するものです。海外子会社からの配当が多いトヨタは、この恩恵をふんだんに受けました。

 たとえば、11年度は税引き前利益が230億円の黒字でしたが、この年にトヨタが他の会社から受け取った配当は4752億円もありました。この大半が海外子会社からの配当とみられます。これらには税金が事実上かからないため、法人税がゼロとなったと思われます。

 12年度は税引き前利益が8562億円となり、配当益金不算入を考慮しても法人所得は黒字だったと思われますが、過去の法人所得の赤字分を差し引くことができる「欠損金の繰越控除制度」や研究開発減税などによって、法人税がゼロになったものとみられます。

仕組み見直す

 トヨタは13年度こそ、消費税増税前の駆け込み需要で国内販売が増加し、法人税の納税が復活しましたが、海外生産で稼ぐという構造は変わっていません。消費税増税の影響で国内販売が減れば、今後ふたたび法人税がゼロになる可能性もあります。

 消費税率の引き上げ強行が国民生活を苦しめています。しかし、トヨタは消費税をすべて価格転嫁でき、転嫁できない輸出分については「輸出戻し税」で消費税を返してもらえるため、企業自身として消費税を負担することはありません。さらに法人税までゼロで済んでいます。

 一方、政府は法人税率のいっそうの引き下げを進めようとしています。国民には大増税をおしつけながら、大企業にはさらに減税しようというのです。

 トヨタは、4月23日に「日本経済新聞」に掲載した広告で、「(消費税が上がって)家計のやりくりは大変だが、これを機会に生活を見直せば、ムダはいくらでも見つかるはず」「節約は実は生活を豊かにするのだと気づけば、増税もまた楽しからずやだ」などと言っています。自分は消費税の痛みを受けず、法人税もまともに払わないで、こんな主張をするのはいかがなものでしょうか。「見直す」というなら、大企業優遇の税の仕組みこそ見直すべきです。(清水渡)


見本紙 購読 ページの上にもどる
日本共産党 (c)日本共産党中央委員会 ご利用にあたって