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2014年5月17日(土)

きょうの潮流

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 「四谷怪談」で知られる四代目鶴屋南北は時代の旗手といわれました。江戸文化の開花とともに歌舞伎作者として活躍。人間の本性や本能をえぐり出し、演劇界に独自の境地を開きました▼朝夕に三味線や太鼓の音が聞こえる日本橋の一角で生まれ育った南北。市井に生きる庶民の生活に密着し、奔放奇抜な趣向や千変万化の舞台技巧で見物を楽しませました。なによりも、役者本位の作品を書くことに徹していました▼当時、人気役者だった五代目岩井半四郎は「眼千両」と呼ばれた若女形の名優でした。その半四郎と南北が組んだ作品が「お染久松(そめひさまつ)色読販(うきなのよみうり)」(「お染の七役」)。劇中30回以上にもおよぶ一人七役の早替わりは大変な評判をよびました▼いま国立劇場で、前進座の当代・河原崎國太郎が16年ぶりにこの役に挑んでいます。質屋油屋の娘と丁稚(でっち)の道ならぬ恋に、お家騒動が絡む筋書き。性格も風采もちがう多彩な役柄を、素早く巧みに演じ分ける國太郎の芸が光ります▼お染久松の物語は実際に大阪で起きた心中事件が題材です。しかし南北の作品では、2人は死なず、恋に生きる自由を手に入れます。歌舞伎研究家の鵜飼伴子(うかいともこ)さんも「脇役を含むすべての登場人物が、自分らしく生きることを謳歌(おうか)している」と評しています▼権力の横暴によって、人の命がふたたび軽々しく論じられ、危険にさらされようとしている昨今。生きることへのこだわり、みずからの生をまっとうしたいと願う人びとの思いが、ひとつの作品から湧き出てきます。


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