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2014年4月19日(土)

安倍政権の「教育委員会改悪法」に反対する国民的共同をよびかけます

侵略戦争美化の「愛国心」教育、異常な競争主義の教育を許さない

2014年4月18日 日本共産党

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 日本共産党の志位和夫委員長が18日、発表した「安倍政権の『教育委員会改悪法』に反対する国民的共同をよびかけます―侵略戦争美化の『愛国心』教育、異常な競争主義の教育を許さない」は次の通りです。


 いま、教育委員会の制度が大きく変えられようとしています。教育委員会は、すべての都道府県と市町村におかれ、公立学校の管理、教職員の人事、教育への指導、図書館、公民館、スポーツ施設の管理などを行っている、教育行政の組織です。

 政府は、教育委員会制度を変えるための「法案」(地方教育行政法改正案)を国会に提出しました。その内容は一言でいえば、今の教育委員会に問題があるからと、政治権力が教育を支配しようというものです。全国の教育関係者は立場を超えて、心配や反対を表明しています。世論調査でも75%の人が「政治家が教育内容をゆがめない歯止めが必要」と答えています。

 政治が教育に果たすべき責任は、条件整備などによって教育の営みを支えることです。政治が教育内容に介入し、ゆがめるようなことは絶対行ってはならないことです。しかも、安倍政権は「愛国心」などを盛り込んだ改悪教育基本法の全面的な具体化を狙っている政権です。日本共産党は、これらの問題について国民のみなさんと話し合い、教育への政治支配を許さず、子どもと教育を守るために以下の「よびかけ」を発表します。

一、政府の「法案」―教育委員会を国と首長の支配下におく

 教育委員会(注)は、国や首長(都道府県知事や市町村長)から独立した行政組織である点に最大の特徴があります。政府の「法案」は、その独立性をなくし、国と首長の支配下におこうというものです。

 (注)教育委員会は、住民代表の数人の教育委員からなる組織で、教育行政の意思決定を行います。教育委員は、議会の同意を得て首長が任命します。教育委員会のもとには事務局がおかれ、自治体職員が配属され日常業務を行います。なお、教育委員のうち1名は、自治体の幹部であり、事務局を指揮する教育長を兼任します。

首長が国の方針をもとに「教育大綱」を決定し、教育委員会を従属させる

 「法案」は、その自治体の教育政策の大本となる「大綱」を決定する権限を、首長に与えます。いまの制度では基本的に、教育委員会の権限に属すべきものです。首長は、その自治体の教育についての「大綱」に「学校統廃合をすすめる」「愛国心教育を推進する」など、どんな内容でも盛り込むことができます。教育委員も教育長も、「大綱に即して…教育行政の運営が行われるよう意を用いなければならない」などとされています。

 しかもこの「大綱」は、政府の「教育振興基本計画」の「基本的な方針」を「参酌」してつくることが求められています。要するに、国の方針をもとに首長が「大綱」を決め、その「大綱」を教育委員会に具体化させようというものです。

教育委員長をなくし、首長任命の教育長が教育委員会のトップになる

 さらに「法案」は、教育委員会を代表する教育委員長をなくし、自治体幹部である教育長に教育委員長の役割も与え、文字通り、教育委員会のトップに据えようとしています。教育長は、いまは教育委員会が任命し罷免もできますが、首長が議会の同意を得て任命するように変えられます。また教育委員会は、教育長にたいする指揮監督の権限も奪われます。これらは、教育委員会と教育長との関係を逆転させ、教育委員会を首長任命の自治体幹部である教育長の支配下におくものです。

 こうして、「法案」が具体化されれば、教育委員会の独立性は大きくそこなわれ、首長と教育長につよく支配されることになります。

憲法に保障された教育の自由と自主性を侵害する

 教育は、子どもの成長・発達のための文化的な営みです。教育は、教員と子どもとの人間的な触れ合いを通じて行われるもので、自由や自主性が欠かせません。何をどう教えるかは、関係する学問や教育学に基づく必要があります。だからこそ、憲法のもとでは、政治権力による教育内容への介入・支配は厳しく戒められているのです。

 今回の「法案」は、国や首長が露骨に教育内容に介入する仕組みをつくるものであり、憲法に保障された教育の自由と自主性を侵害するものに他なりません。

二、現在の教育委員会制度と法改悪にかける安倍政権の狙い

(1)教育委員会制度の現状と「首長からの独立性」を取り上げる法改悪

 もともと教育委員会は戦後の1948年、選挙で選ばれた教育委員たちが、その自治体の教育のあり方を決めるという、民主的な制度として発足しました。「お国のために血を流せ」と子どもたちに教えた戦前の中央集権型の教育行政を改め、教育の自主性を守るため、教育行政を首長から独立させたものです。

 しかしその後、公選制は廃止され、教育委員会の形骸化が進みました。その背景には、歴代の自民党政権が「君が代・日の丸」など国の方針を学校現場に押し付けるため、教育委員会事務局にその役割をおわせ、教育委員会の自主性を奪ってきたという問題があります。その結果、教育行政のなかに、閉鎖的で官僚的な対応もひろがりました。事務局が「隠ぺい」を行い、教育委員会が蚊帳の外におかれた、滋賀県大津市のいじめ自殺事件での隠ぺい問題は、その典型的な例です。

 それでもなお、教育委員会には「首長からの独立性」が残されています。そのため例えば、橋下徹大阪市長が違法な「思想調査」を行おうとした時、市教育委員会が否決し、教育現場を守りました。島根県松江市では、教育長が漫画『はだしのゲン』を学校図書館から撤去させた時、教育委員会がその決定を取り消しています。これらは、教育委員会が独立した行政機関だからこそできることです。安倍政権は、この教育委員会の“最後の砦(とりで)”ともいうべき「首長からの独立性」を取り上げようというのです。

(2)安倍政権が教育委員会の「独立性」を奪う狙いは何か

 では安倍政権は、教育委員会の「独立性」を奪うことで、何を狙っているのでしょうか。私たちはそこには、二つの重大な問題があると考えています。

第一の狙い――侵略戦争美化の安倍流「愛国心」教育の押し付け

 安倍首相は、靖国神社参拝を行うなど、過去の侵略戦争を肯定・美化する立場を、その行動によって示しています。重大なことは、安倍首相はその特殊な立場から、戦後教育を敵視し、日本の教育を、侵略戦争美化の安倍流「愛国心」で塗り替えようとしていることです。第1次安倍政権が、教育基本法に「愛国心」をもりこむ改悪を強行したのも、その道をひらくためでした。下村博文文部科学大臣が最近、戦前の軍国主義教育の中心に置かれていた「教育勅語」を「至極まっとう」と評価したことは偶然ではありません。

 とくに安倍氏らは歴史教科書を安倍流「愛国心」にそって改めさせる圧力を加え続けてきました。その上で、太平洋戦争を「アジア解放のための戦争」と教える、歴史逆行の特異な教科書を「教育基本法にもっともふさわしい」と賛美し、全国の学校で使わせようとしています。

 安倍政権はこの春、「愛国心」など教育基本法の教育目標にてらして「重大な欠陥」があると国が判断すれば、教科書を検定不合格できる仕組みをつくりました。そして下村文科大臣は「教科書の記述を見ると、改正した教育基本法にのっとった記述にはなっていない」と教科書への攻撃を公然と始めています。

 しかし教育委員会の多くは、安倍氏らが賛美する教科書を採択していません。そのため、教育委員会を弱体化させ、国と首長の政治的圧力で、歴史逆行の特異な教科書を採択させ、安倍流「愛国心」教育を全国に押し付けようというのです。

「戦争する国」づくりの一環

 この問題は、日本の針路の根幹にかかわる問題です。

 安倍政権は、憲法9条の破壊を志向し、日本を「海外で戦争する国」にするための集団的自衛権の容認、解釈改憲などをすすめています。そして、「戦争する国」に国民を動員する仕組みとして、国民の目・耳・口をふさぐ秘密保護法を強行するとともに、歴史を偽り、偏狭な「愛国心」を子どもたちに教育しようというのです。

 今日の国際社会は、日本、ドイツ、イタリアが行った戦争は、いかなる大義もない侵略戦争、不正不義の犯罪的な戦争だったという共通の認識の上になりたっています。それを教育で覆し、「戦争する国」に向かおうという安倍首相らのたくらみは、絶対に許すわけにはいきません。

第二の狙い――異常な競争主義の持ち込み

 もう一つの問題は、異常な競争主義を教育に持ち込むことです。

 第1次安倍政権が始めた「全国学力テスト」は、「点数がすべて」という風潮を全国に広げ、点数を上げるために管理職がわざとカンニングさせるなど、各地で教育をゆがめました。しかしまだ、全国的に各学校の平均点を公表させ、競争させるところまでは至っていません。

 安倍政権は全国学力テストを「しっかい調査」(全員調査)に戻すとともに、「序列化や過度の競争」を理由に学校ごとの平均点公表を禁じた国の方針をくつがえし、自治体の判断で公表可能にしました。そのもとで、一部の首長は、平均点での学校ランキング、平均点下位校の校長名の公表など「もっと競争せよ」とあおりはじめています。しかし、多くの教育委員会は「点数が独り歩きすると学校での教育がゆがむ」と、平均点公表、競争のエスカレートには慎重です。

 こうした教育委員会の権限を弱め、国と首長の政治的圧力によって、「全国学力テスト」にもとづく競争の体制を本格的につくろうというのが、安倍政権の狙いです。 

三、“安倍教育改革”を押し付ける「教育委員会改悪法」を許さないための国民的共同を

すべての自治体、学校、地域から声を上げましょう

 すべての国民のみなさん、教育関係者のみなさん。

 「侵略戦争美化の『愛国心』教育」と「異常な競争主義の押し付け」という、“安倍教育改革”を強行するため、教育委員会を国と首長の支配下におく――これが、安倍政権の「教育委員会改悪法」の正体です。子どもの未来にとっても、日本社会の未来にとっても、このようなたくらみを許すことはできません。

 すべてのみなさんに、政治的立場の違いをこえて、安倍政権のたくらみを打ち砕くための、国民的共同を広げることを心から訴えます。すべての自治体、学校、地域から、「教育への政治支配を許さない」「教育委員会制度の改悪反対」の声を上げようではありませんか。

教育委員会改革について

 教育への政治支配を許さないためにも、教育委員会が教育の自由、自主性を守る本来の役割を果たすことが重要です。全国には、保護者や学校現場の意見をよく聞き、教育施策に生かすなどの活動に取り組んでいる教育委員会や事務局もあります。そうした本来の役割の発揮を、多くの国民が期待しています。

 私たちは、教育委員会改革の基本方向について、(1)教育委員たちが保護者、子ども、教職員、住民の不満や要求をつかみ、自治体の教育施策をチェックし、改善する、(2)会議の公開、教育委員の待遇改善や支援、教育への見識や専門性をもつ人物の確保など、教育委員会の役割が実際に果たせる体制をつくる、(3)政治的介入から教育の自由と自主性を守る、(4)憲法と子どもの権利条約の立場にたって行政を行う、(5)教育委員の公選制などの抜本的な改革を国民的合意の下ですすめるなどが、大切だと考えています。

  

 日本共産党は、「教育委員会改悪法」を許さず、安倍政権のたくらみを打ち砕き、教育と教育行政の自主性を守るため、みなさんとともに、全力をあげて奮闘するものです。


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