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2014年1月31日(金)

山下書記局長の代表質問

参院本会議

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 日本共産党の山下芳生書記局長が30日の参院本会議で行った代表質問は次の通りです。


議会制民主主義の根幹こわす秘密保護法は施行前に廃止を

写真

(写真)代表質問する山下芳生書記局長=30日、参院本会議

 私は日本共産党を代表して総理に質問します。

 今国会は、これまでにない状況の下で幕を開けました。秘密保護法廃止を求める人波と声で国会が包囲されたのです。昨年暮れの秘密保護法強行に反対した国民の声は、収まるどころか日がたつにつれ広がっています。

 なぜか。秘密保護法では、政府が保有する膨大な情報の中から、政府の恣意(しい)的判断によって特定秘密が指定されます。懲役10年以下の重罰とそれによる威嚇や、適性評価の名によるプライバシー侵害と権力の監視にさらされるのは、限られた公務員の特殊な漏えい行為だけではありません。国民の普通の日常とその自由が広く対象とされます。国民は何が秘密かも秘密とされる社会の中で、自分が近づいた情報の中身も分からないままに処罰されうるのです。国民の知る権利に応えて巨大な行政機関の秘密に迫ろうとする取材と報道の自由もその例外ではありません。しかも、特定秘密と指定されれば、情報の国会への提供さえ政府の裁量にゆだねられ、秘密会に提供された秘密を同僚議員に話すだけで重罰をかけるなど、政府が事実上国会を縛ることにもなってしまいます。国会の国政調査権、議員の質問権をも乱暴に侵す、まさに、国民主権と三権分立、議会制民主主義の根幹をこわすものにほかなりません。

 だからこそこの法律には、成立してからもなお、多くの国民が廃止にすべきだという声をあげ続け、その輪は広まりこそすれ、狭まることはないのです。

 日本共産党は、この希代の悪法を廃止する一点で、多くの政党・会派、国民・諸団体と力を合わせて奮闘するとともに、今国会に秘密保護法廃止法案を提出します。総理、国民の声に真摯(しんし)に耳を傾けるなら、悪法を施行する前に、自らの手で廃止すべきではありませんか。答弁を求めます。

消費税増税・社会保障改悪をやめ人間らしく働ける雇用のルールを

8兆円もの負担増を強行すれば経済も財政も共倒れになる

 総理は、景気の現状と将来について、「アベノミクスの成果」だとして、大変楽観的な見通しを示し続けてこられました。

 たしかに大企業は巨額の利益をあげていますが、国民生活はよくなったでしょうか。

 働く人の賃金は18カ月連続で減り続け、ピーク時にくらべて年間70万円も減少しています。パートや派遣、請負などいわゆる非正規雇用は、昨年7〜9月期に、全雇用者の36%、1908万人に達しました。

 異常な金融緩和によって生じた株高で、いわゆる持てる人の資産はさらに膨れ上がりました。昨年11月発表された日銀の調査によれば、金融資産を「保有している」世帯では、1年前と比べて有価証券が約4割増加するなど資産が大きく増える一方で、金融資産を「保有していない」世帯、すなわち預貯金ゼロの世帯が、1963年の調査開始以来最高の31%に達しています。

 他方、中小企業は、円安による輸入物価の上昇を価格に転嫁できずに苦しんでいます。個人消費が低迷するもとで値上げすれば売れなくなるからです。大企業のコスト削減による納入単価の引き下げも経営を圧迫しています。

 総理、いわゆる「アベノミクス」を通じて、正規と非正規、持てる者と持たざる者、大企業と中小企業の間で、格差が一層拡大し、経済の土台がむしばまれていることをどう認識されていますか。これを放置して、日本経済全体の「好循環」が実現できるとお考えですか。

 このような時に、消費税増税で8兆円もの負担増を強行したらどうなるか。なにより、国民の暮らしに大打撃を与え、経済も財政も共倒れになるのではありませんか。くわえて、所得の低い人ほど負担が重くのしかかる消費税の増税が、格差をさらに拡大し、経済の土台をますます掘り崩すことになるのではありませんか。まさに最悪の選択であり、4月からの消費税増税の中止を強く求めます。

 総理は、「消費税率引き上げによる税収は、全額、社会保障の充実・安定化にあてる」と言われました。

 事実はどうでしょうか。医療では、70歳〜74歳の窓口負担の2倍化をこの4月から段階的に実行に移す。後期高齢者の保険料の値上げを、積み上げてある「基金」を使って避けようと努力する都道府県に圧力をかける。介護では「要支援」の訪問介護・通所介護を介護保険から切り離す。さらに年金は、2・5%の支給削減に加えて、マクロ経済スライドによる毎年1%、5000億円もの連続削減が計画されている。試算できるだけでその負担増と給付減は3兆円をこえます。社会保障の充実にあてるどころか、増税のうえに社会保障まで削るというのがことの真相ではありませんか。

労働法制の大改悪を中止しブラック企業なくす法改正を

 総理は、ことあるたびに「雇用の拡大」「所得の上昇」「賃金の上昇」と口にされています。それならば、歴代自民党政権による労働法制の規制緩和、すなわち1999年の派遣労働の原則自由化、2003年の製造業への派遣の解禁などによって、非正規雇用が急増し、いくら企業が収益をあげても、まともな雇用の拡大や、賃金の上昇につながらない構造にしてしまったことこそ、まず改めるべきではありませんか。

 ところが、安倍政権は、「世界で一番企業が活動しやすい国」と称して、派遣労働の無制限の拡大、「限定正社員」など解雇しやすい雇用ルールの導入、「サービス残業」の合法化を進めようとしています。これでどうしてまともな雇用の拡大や賃金の上昇につながるのですか。さらなる不安定雇用の増大と賃金の低下をもたらすことは明らかではありませんか。

 いまやるべきことは、デフレが継続していた間でも、ため込まれ増え続け、270兆円にも膨れ上がった大企業の内部留保を、賃金に回させることです。昨年の臨時国会では、総理もわが党議員の質問に、政労使会議で内部留保の活用を「お願いする」と約束しました。この約束は実行されたのですか。まだなら春闘がたたかわれるいまこそ実行すべきではありませんか。

 あわせて、中小企業に対する支援を強めながら、最低賃金を抜本的に引き上げること、労働法制の大改悪を中止し、誰もが人間らしく働ける雇用のルールを確立することを求めます。

 日本共産党は、臨時国会に続き、今国会にも「ブラック企業規制法案」を提出しました。若者を中心とした世論と運動とも合わさって、行政による初の「ブラック企業実態調査」の実施や、ハローワークにおける新卒者向け求人票に新入社員の離職者数を公表するなど、すでにいくつかの成果も生まれていますが、ここに甘んじるわけにはいきません。ブラック企業の手口となっている、長時間労働やパワーハラスメントを是正する有効な手だてをただちに講じるべきです。わが党は、すべての会派のみなさんに、将来ある若者を使いつぶすブラック企業をなくすための法改正にあたること、そのためにブラック企業に苦しめられている若者たちを国会に招き、その声を直接聞くことをよびかけるものです。

被災者の住宅・生業の再建へ国が必要・十分な公的支援を

「個人財産の形成になる」という政府の従来の姿勢を改めよ

 未曽有の大災害となった東日本大震災から、もうすぐ3年がたちます。今年4月に、三陸鉄道が全線で運転再開となるといううれしいニュースが発表されました。大きな困難のなかで運転再開を実現した、被災地の皆さんの努力と全国からの支援に心から敬意を表します。

 一方で、いまだに被災者の9割の方々が仮設住宅などの避難生活から抜け出せず、長期化とともに先の見通しが持てずにいるという深刻な状況の解決が急がれます。

 なぜ、住宅再建がこんなに遅れているのでしょうか。それは、「個人財産の形成になる」として、住宅の復旧に十分な支援をしないというやり方に政府がかたくなに固執しているからです。この姿勢をあらため、住宅と生業(なりわい)の再建に必要な公的支援を行うことを、復興の基本にすえることを強く求めます。これは、現に苦しんでいる被災者にとって一刻の猶予もない切実な要求であり、さらに、災害が多発する日本列島において国民の命と安全を守るうえで、将来にわたって重要な意義をもつと考えますが、いかがですか。

再稼働の条件・必要性はない 「即時原発ゼロ」の政治決断を

 同じ被災地のなかでも、福島の原発被害は深刻さを増しています。福島では14万人近い人々が避難生活を強いられ、震災関連で亡くなった方が、地震・津波の直接被害で亡くなった方を上回るなど、先の見えないつらい生活のなかで、命と健康が脅かされています。

 政府は、昨年12月に福島の「復興指針」を決定しましたが、上からの線引きに対し、被災地の自治体首長からも、「地域の分断を招く」「支援策を差別するべきではない」との懸念と批判があいついでいます。総理、原発事故前にどこに住んでいたかにかかわらず、また避難している人もしていない人も、故郷に戻りたい人も戻れない人も、すべての被害者が、その生活と生業を元のように再建できるまで、国と東京電力が責任をもって等しく支援することを大原則にすえるべきではありませんか。

 安倍政権は、原発を「基盤となる重要なベース電源」として、将来にわたって維持・推進し、「再稼働を進める」とした「エネルギー基本計画案」を発表しました。これは、いまなお原発被害に苦しむ福島の人々への重大な背信であり、「原発ゼロの日本」を願う国民多数の民意への挑戦だといわねばなりません。現在、原発はすべて停止しています。原発を再稼働させる必要性も条件もありません。日本共産党は、政府が「即時原発ゼロ」の政治決断を行うことを強く求めます。

「聖域」守られる根拠はない TPP交渉から撤退の決断を

 TPP(環太平洋連携協定)交渉についてお尋ねします。

 総理はTPPについて、米国と共に交渉をリードし、「攻めるべきは攻め、守るべきは守る」と述べ、「国益にかなう最善の判断」をすると述べられました。そのアメリカでは1月9日、上下両院の与野党幹部によって、政府に貿易交渉権限を与える「大統領貿易促進権限(TPA)」法案が提出されました。そこでは、農業分野について「相当に高い関税、あるいは補助金体制の下に置かれている農産物の市場開放に優先順位を置く」として、相手国の関税を「アメリカの関税と同等かそれ以下の水準にまで削減する」と書かれています。

 総理、日本はいま精米輸入については1キログラムあたり402円の関税をかけていますが、アメリカのそれは1・4セント、日本円にして1円そこそこです。「アメリカの関税と同等かそれ以下の水準」となれば、事実上ゼロということになります。こうした条件がオバマ政権に課せられているもとで、どうして「聖域」が守られるのか。「守るべきは守る」というならその根拠を示していただきたい。根拠を示せないのであれば、TPP交渉から潔く撤退する決断こそするべきではありませんか。

歴代政権の「建前」をも踏み越える集団的自衛権行使の容認やめよ

 安倍内閣は、昨年の臨時国会で、外交・安全保障政策の「司令塔」となる「国家安全保障会議(日本版NSC)」創設法と秘密保護法を強行し、それに続いて、「国家安全保障戦略」、新「防衛計画の大綱」、新「中期防衛力整備計画」を、矢継ぎ早に閣議決定しました。

 新「防衛計画の大綱」では、新たに「統合機動防衛力の構築」を掲げて、陸海空自衛隊が海外に迅速かつ持続的に展開できる能力を構築することを強調しています。そして、前線との間で兵士や物資を迅速に輸送するためのオスプレイ、水陸両用戦闘車両、無人偵察機、新型空中給油機などを新たに導入するとともに、米海兵隊のような「殴り込み」作戦を行う「水陸機動団」を編成するとしています。そのために、今後5年間に24兆6700億円もの軍事費を投入する大軍拡計画を定めました。

 総理、これは、歴代自民党政権が「建前」としてきた「専守防衛」さえ踏み外すものではありませんか。「軍隊はもたない」と決めた憲法をもつ国で、それは絶対に許されないことではありませんか。

 さらに、日本を「海外で戦争する国」、とりわけ「アメリカと肩をならべて戦争できる国」にするために、安倍政権が踏み越えようとしているのが、集団的自衛権についての憲法解釈です。

 総理は、集団的自衛権について、「『安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)』の報告を踏まえ、対応を検討してまいります」と述べられました。

 そもそも集団的自衛権とは、「自衛」という言葉が入っていますが、いかなる意味でも、日本の「自衛」とは関係ない、アメリカ本土の「自衛」とも関係ないものです。戦後の歴史のなかで、国連憲章51条にもとづく集団的自衛権が発動されたのは、アメリカによるベトナム戦争、旧ソ連によるチェコスロバキアやアフガニスタンに対する侵略など、大国による侵略と介入の戦争しかありません。そのための口実とされたのが集団的自衛権なのです。

 日本の現実の政治で集団的自衛権が問題にされてきたのは、インド洋やアラビア海、イラクやアフガニスタンでのアメリカの戦争へのあけすけな自衛隊の参戦要求でした。しかし、「集団的自衛権は行使できない」という憲法解釈があったからこそ、「非戦闘地域に限る」とか「武力の行使はできない」など、自衛隊の海外での戦闘行為=戦争行動を禁止する「歯止め」が働いてきたのです。そのために日本は、戦後68年間、戦争によって一人の戦死者も出すことはなかったし、戦争によって他国の人の命を一人も奪うことがなかったという、世界に誇るべき歴史を重ねてきたのです。

 総理は、この歴史を誇りあるものと思いますか、それとも自衛隊員の血であがなう世界への関与を誇らしいとお考えなのですか。

 集団的自衛権の行使は「憲法9条に照らして許されない」というのは、内閣法制局だけの見解ではなく、歴代政権がずっと踏襲し、世界に向けて説明してきた日本の立場です。それをくつがえす権利は、あなたにも、あなたの内閣にもありません。

 総理は、「戦後68年間守り続けてきたわが国の平和国家としての歩みは、今後とも、変わることはありません」と述べられました。それが本当なら、なぜ、これまでできないとされてきたことをやろうとするのですか。「専守防衛」さえ踏み越える企ても、そして集団的自衛権の行使を容認し日本を「海外で戦争する国」に変える企ても「やらない」と言明すべきではありませんか。

 最後に、世界ではいま、互いの独立を尊重し、文明や価値観の違いを認めながら、対話と信頼醸成に努めることで紛争を平和的に解決する流れが、東南アジアなどから大きく広がっています。侵略戦争を断罪した戦後の国際秩序に挑戦し、もっぱら軍事力だけに頼るやり方は、世界から孤立する道であることを述べて、質問を終わります。


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