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2013年10月4日(金)

JR北海道の事態なぜ

大幅な人員削減 ずさん安全管理

危険見逃した国の責任も

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 「通学のため使うしかありませんが、もうJR北海道は信用していません。もっと安全面に力を入れてほしい」。札幌から約30キロの石狩当別駅(石狩郡当別町)で、列車から降りた男子大学生はこう語りました。学生は、就職活動など大事な用事で札幌市へ行くときは、列車のトラブルを恐れて前日に出て外泊するといいます。特急列車の出火、貨物列車の脱線、レール幅の異常放置など事故・トラブル続出のJR北海道。あまりにもずさんな安全管理に、鉄道事業者としての資格が問われています。(前野哲朗)


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(写真)JR北海道本社で聞き取りをする日本共産党国会議員団ら(前列左から、辰巳、紙、穀田、大門の各議員と真下道議)=9月26日、札幌市

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(写真)レール異常が28カ所放置されていた札沼線=9月27日、石狩当別駅付近

党国会議員団の調査に同行して

 日本共産党国会議員団は9月26日、JR北海道本社(札幌市)などを調査。現場で働く労働者からも実態を聞き取りました。

 労働者からの聞き取りでは、国鉄民営化後、大幅に人員を削減し続け、必要な補修さえ渋る同社の安全無視の姿勢が浮かびあがってきました。

 札幌で線路の保守を担当するベテランの職員は実情を語ります。「15年ほど前に80人いた職員は今は29人。こまめに補修ができなくなり線路が荒廃している。レールや砂利、枕木など線路補修の予算を求めても先送りは日常茶飯事。線路が悪くなれば、車両にも負担がかかる」

 別の職員は、札幌都市圏から離れた路線ではさらに予算計上が後回しにされると話しました。

いびつな世代構成

 JR北海道は1987年の国鉄分割民営化後、1万4000人いた労働者を半数の7100人にするなど大幅に人員を削減してきました。車両の大胆な更新も進まず、旧型のディーゼル車が現役で使用されています。

 車両の点検・整備を担当する部門でも、民営化前後の採用抑制により40代の職員が極端に少なく技術継承が難しくなっています。

 ある職員は調査に「JR北海道は少しずつしか新車を買わない。そのためエンジンは25もの形式があり、新人が扱いを覚えるのは大変」と語りました。国鉄時代は2年訓練を受ける養成所がありましたが、現在はわずか3カ月の教育だけで配属されます。

 コスト優先で安全を犠牲にしてきたことはJR北海道も認めています。2011年5月に石勝線で起きたディーゼル特急の脱線火災事故をきっかけに同社が策定した「安全基本計画」では、「厳しい経営環境のなか…経費の視点が優先される傾向にあった」と明記されています。

 ところが、その後も相次ぐ事故・トラブル―。同社が抜本的に問題を解決してこなかったことを示しています。

不十分さを認める

 レール異常を267カ所も放置していたJR北海道は、鉄道事業者として異常なほど無責任です。同時にその危険を見逃してきた国の責任も問われます。

 鉄道会社の安全性などを調査する国土交通省の「鉄道安全監査官」は全国でわずか32人。同省の担当者は「人数が限られているから全て歩いて見るのは不可能。抜きとり(調査)にならざるを得ない」と不十分さを認めます。

 問題の根源には、国が不採算前提の分割で、利益追求が優先される民営化を推し進めたところに突き当たります。

 分割民営化に反対し、JR不採用となった元国鉄職員で国労札幌闘争団団長の牧田智雄さんはこう指摘します。

 「人口も少なく、北海道単独で利益を追求する民営化を進めるのは成り立たない。本来、地方の人も東京の人も自由に移動する権利が認められるはずです。それを壊したものが民営化なのです」

 JR北海道は、不採算を前提に「経営安定基金」を設置し、運用益約500億円(当初)で赤字の穴埋めをする仕組みで発足。同社は民営化といいながら国の援助で成り立っている矛盾した「株式会社」です。株を100%保有しているのも国の機関です。

 いずれは株を上場して「完全民営化」させる国の方針にもとづいて、同社はコストを優先し、安全面を切り捨ててきているのです。

国が積極的関与を

 調査に入った日本共産党国会議員団はこの問題を議題に衆参で国土交通委員会の閉会中審査を開くように要求。紙智子団長(参院議員)は調査後の記者会見で、「分割民営化以来、安全が置き去りにされてきたことが明らかになりました。寒冷地で地域が広大な北海道の独自性を考慮した安全基準が必要であり、安全を最優先にした経営に切り替えるべきです。国はJRまかせにせず積極的に関与すべきです」と話しました。


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