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2013年9月20日(金)

主張

国家戦略特区

解雇自由、残業代ゼロの企て

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 安倍晋三政権は、「世界で一番ビジネスのしやすい環境」をつくるためとして創設する「国家戦略特区」で、解雇の自由化や残業代支払いの適用除外など労働分野の規制を緩和する方向で検討をすすめています。それを受け、大阪府・市は、労働基準法などの適用を緩和する特区構想をまとめて政府の提案募集に応募しました。政府は、国家戦略特区ワーキング・グループなどで項目を絞り込み、秋の臨時国会に提出する「産業競争力強化法案(仮称)」に盛り込むとしています。「特区」の名で労働のルールが及ばない無法地帯をつくるのは、断じて認められません。

規制緩和の突破口に

 「国家戦略特区」は、世界の企業が日本に投資したくなるような環境をつくることを目的とし、総理大臣の主導のもと、トップダウンによる規制緩和の実験場と位置づけられています。国民の強い批判で実行できなかった規制緩和を「特区」を活用して突破しようというのがねらいです。

 労働分野で検討対象と伝えられている項目で重要なのは、労働基準法で定めている労働時間規制の適用除外と、労働契約法の解雇規制の緩和です。労働時間は、一定の要件(課長級、年収800万円)の労働者を規制の対象外にし、残業代ゼロ、深夜・休日出勤手当も出さずに働かせるものです。第1次安倍内閣が労働者の猛烈な反対運動で法案提出を断念した「ホワイトカラー・エグゼンプション」そのものです。「プロフェッショナル労働制」という装いで「先進的な技術開発」にとりくむ企業に特例で認めるという構想です。

 解雇の規制緩和は、金銭解雇の制度をつくって企業が労働者の解雇を容易にできるようにするのがねらいです。国の「再就職支援金」を活用した金銭解決も検討されているといわれます。大阪府・市の提案は、企業が解雇回避努力を行った後でしか解雇できない制度の適用除外まで主張しています。

 労働者にとって働くルールの重大な変更になる労働分野の規制を「特区」を突破口に緩和するやり方は、きわめて問題です。「特区」で労働法制の適用除外をつくること自体が、そもそも無謀です。この区域が解雇自由で、ここから規制区域などというのは成り立たず、とんでもない話です。

 「ホワイトカラー・エグゼンプション」と解雇の金銭解決問題は、財界の要求をうけて、政府がこれまで何度も導入をめざし、そのつど労働者、国民の反対で実現できなかったものです。今回の安倍政権でも産業競争力会議や規制改革会議で検討テーマになりましたが、参議院選挙を前にして国民の反発を招きかねないとして先送りになっていました。このような重大問題を「特区」で崩していこうというのは、実に卑劣なやり方というべきです。

政労使3者の協議で

 労働条件は、労働者の意見を無視して一方的に決めることは許されません。国家戦略特区ワーキング・グループには労働者代表がいません。労働者の生活と権利にかかわる規制を検討する資格が疑われます。安倍政権は、「特区」による労働の無法地帯づくりを中止し、労働法制は政労使3者で協議するという、ILO(国際労働機関)が根本原理とする世界の共通ルールに立ち返るべきです。


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