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2013年9月14日(土)

要支援への保険給付廃止

財源圧縮 市町村押しつけ

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 厚生労働省は、介護保険で「要支援」と認定された高齢者に対する保険給付(予防給付)の「廃止」を打ち出しました。2015年度以降、段階的に市町村任せの「新しい地域支援事業」に移すというもの。同省は、財源が介護保険財政から出ることも「財源構成も変わらない」と弁明しています。しかし財源の「規模」はどんどん縮小するしかけです。

 要支援者への保険給付の財源構成は、公費(国と地方)が50%、介護保険料が50%です。地域支援事業に移しても、この財源構成は変えないというのが同省の説明です。

 しかし現在、地域支援事業の財源には「介護保険給付見込額の3〜4%以内」という上限があります。同省は、この上限の「見直し」を「検討する」というだけで、引き上げを明言してはいません。

市町村の判断で

 保険給付のサービスをもれなく地域支援事業に吸収するためには約6千億円が必要です(11年度現在)。財源の上限を8%程度にまで大幅に引き上げなければまかなえません。

 上限をそれ以下に設定した場合、要支援者へのサービスは一気に切り捨てられることになります。

 しかも、要介護・要支援の認定を受ける高齢者は増え続けており、なかでも「軽度の認定者数の増が大きい」(厚労省)状況です。認定に占める要支援の割合は10年の25・8%から13年の27・4%に増えています。上限を8%程度に引き上げたとしても、すぐにサービスの必要量がそれを上回り、切り捨てられていきます。

 そのうえ、保険給付を廃止して地域支援事業に移せば、仮に上限を取り払った場合でも、財源規模は縮減されていきます。

 第一に、市町村の判断でサービス水準の切り下げが可能になるからです。保険給付には全国一律の運営・人員基準がありますが、地域支援事業にはありません。研修を受けたホームヘルパーによる生活援助を、ボランティアによる支援や民間企業による宅配弁当に置き換え、費用を削減することもできます。

 第二に、サービスの種類や内容も市町村任せになるからです。現在は12種類の保険給付が法律で定められ、その中にサービスの内容(訪問介護・看護・リハビリ、通所介護・リハビリ、福祉用具貸与など)も書かれています。地域支援事業では、市町村の判断でサービスの種類を減らすことが可能です。

 第三に、利用料も市町村任せになるからです。現在の利用料は介護費用の1割で、残り9割が介護保険財政から出ます。地域支援事業では市町村が利用料を決めます。利用者負担の割合を引き上げれば、介護保険財政から出る財源は減ります。

 現在でも、独自のルール(ローカルルール)をつくってサービス利用を制限している市町村が少なくありません。国の負担割合が低く抑えられ、自治体の負担や保険料が急激に上昇しているため、費用の抑制に駆り立てられているのです。

国の責任丸投げ

 保険給付を廃止して市町村任せの事業に移すことは、要支援者に一定水準のサービスを保障する国のルールと責任を丸ごと投げ捨てて、サービス切り下げのローカルルールを全面解禁することです。

 現に厚労省は、「市町村における効率的な事業の実施により、制度全体の効率化を図る」と明言しています。サービス削減による財源の圧縮を、市町村に担わせるねらいです。(杉本恒如)

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