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2013年9月5日(木)

安倍政権動き急

秘密保全法案の闇

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 安倍政権が、「海外で戦争をする国づくり」へ向けて、憲法を機能停止させる動きを急速に進めています。その一つが「秘密保全法案」です。自民党インテリジェンス・秘密保全等検討プロジェクトチーム(座長・町村信孝元官房長官)が3日、同法案の概要を了承し、政府は17日を期限にパブリックコメント(意見公募)の募集を開始しました。秋の臨時国会に提出が予定される法案「概要」の危険性を見ました。(松田繁郎)


写真

(写真)「特定秘密の保護に関する法律案の概要」(部分)。赤枠内は罰則規定

原発や警察不正も秘密の闇

 安倍政権が臨時国会に提出を予定する「特定秘密保護法案」(仮称)の全体像は闇に包まれています。内閣情報調査室が3日、総務省ホームページのパブリックコメントに公開したのは法案の概要にすぎません。

 概要で明らかなのは、「特定秘密」の定義や範囲のあいまいさです。政府は「特定秘密」の対象として(1)防衛(2)外交(3)外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止(4)テロ活動防止―を挙げています。しかし、「特定秘密」を指定するのは「行政機関の長」です。時の権力者の都合や勝手な判断で政府や自衛隊、警察の情報が国民の目から隠されてしまいます。戦争準備の軍事情報、原発や警察の不正も隠される危険性があります。

 故意または過失により「特定秘密」を漏らした国家公務員(閣僚、政務三役含む)や都道府県の警察職員、自衛隊と契約する民間業者らに懲役10年の厳罰が科せられます。また、「特定秘密」を公開したり、政府の秘密情報を取得する行為の未遂、共謀、教唆(そそのかし)、扇動も処罰するとの項目があります。ジャーナリストの取材活動や市民運動の調査活動まで対象となるのではと危惧されています。「報道の自由に配慮」(自民・町村氏)するといいますが、概要にも入っておらず、空文句にすぎません。

 とくに概要「1(2)エ」には「各議院若(も)しくは各議院の委員会若しくは参議院の調査会が行う審査若しくは調査」も「特定秘密」の対象になる文言があります。国権の最高機関で国の唯一の立法機関である国会(憲法第41条)と「知る権利」を揺るがす恐るべき内容が含まれています。

広範な国民が監視対象の闇

 もし秘密保全法案が成立したら、どうなるのでしょうか。

 概要によると、「行政機関の長」や警察本部長が、「特定秘密」を扱う国家公務員、自衛隊員、警察官、民間業者に対し「適性評価」という名目で調査を行うとしています。

 対象者は、思想信条をはじめ犯罪歴や情報の取り扱いに失敗した経験、薬物乱用、精神疾患、飲酒、経済的な状況などを調査・管理されます。

 「行政機関の長」や警察本部長による調査の範囲が職員や会社員の家族、友人、市民にも及び、本人の同意もないままマイナンバーなどを活用して個人情報が収集され、調査されます。

 概要では明らかにされていませんが、「適性評価」で「特定秘密」を取り扱うに足る人物と認定された後も、警察や自衛隊情報保全隊、公安調査庁に監視される恐れもあります。政府がどんな法律を作っても情報が漏えいする可能性はゼロにならないからです。

 「特定秘密」を取り扱う人物が国家機密を公開し、国外に逃亡した場合はどうなるでしょうか。米国では、NSA(国家安全保障局)が極秘に個人の通信情報を収集していたことを暴露した元CIA(中央情報局)職員が米検察当局から訴追を受け、有罪の場合、最高で10年の禁錮刑になると報道されています。

戦争する国造りと一体の闇

 安倍政権が秘密保全法案の成立を急ぐ背景には何があるのでしょうか。実は、秘密保全法案は第1次安倍政権で2007年に日本版NSC(国家安全保障会議)とあわせて検討されていました。

 すでに閣議決定され、秋の臨時国会提出を狙う日本版NSC設置関連法案は、米国のNSCと同じように日本にも外交や安全保障政策の「司令塔」をつくるというものです。

 日本版NSC創設に関する有識者会議に提出された資料(5月28日)では【秘密保護の体制整備】として「『国家安全保障会議』が的確に機能するためには、秘密保護の体制を整えなければならない」と書かれており、秘密保全法案は米国と一体で「戦争をする国づくり」の国内法整備といえるものです。

 公表された秘密保全法案の概要の「趣旨」には、秘密保護の「体制を確立した上で収集し、整理し、及び活用することこそが重要である」と書かれています。秘密保全法案の究極の目的は、安全保障会議のための軍事情報の収集・整理・活用であることが透けて見えます。

 日米間では、すでに軍事情報包括保護協定(GSOMIA)、自衛隊法改定などによって軍事情報の共有体制がつくられていますが、日本の国内法の整備が遅れていました。安倍首相が今年4月の衆院予算委員会で秘密保全法案について「極めて重要な課題だ。速やかに取りまとめ、早期に国会に提出できるよう努力したい」と答弁したのもこのためです。

■自民党インテリジェンス・秘密保全等検討プロジェクトチームの主なメンバー

 座長・町村 信孝

    中谷 元(特命副幹事長)

    塩崎 恭久(政調会長代理)

    棚橋 泰文(政調会長代理)

    山谷えり子(内閣部会長)

    中山 泰秀(国防部会長)

    土屋 正忠(総務部会長)

    奥野 信亮(法務部会長)

    岸 信夫(外交部会長)

    宮下 一郎(経済産業部会長)

    岩屋 毅

    後藤田正純

    熊谷 大

    宇都 隆史


成立阻止へ広い共闘を

新聞労連声明

 日本新聞労働組合連合(新聞労連)は4日、「民主主義を破壊する『特定秘密保護法』に断固反対する 戦争は秘密から始まる」とする緊急声明を発表しました。

 安倍内閣の秘密保護法案について、「国民の知る権利や取材、報道の自由は侵害され、民主主義社会の基盤も失われる」として、法案成立阻止に向けた幅広い共闘を呼びかけています。

 「市民に伝えるべき情報はこれまで以上に公開が制限され、公務員への取材も厳しく規制されることになる。規制を突破してでも取材を試みるジャーナリストは『教唆犯』『共謀犯』として官憲の取り締まり対象になるだろう」と指摘。

 東日本大震災と福島第1原発事故では、情報公開の遅れによって多くの人が本来避けることのできた放射能汚染にさらされたとして、「いま必要なのは情報公開を制限する法律ではなく、情報公開制度のさらなる充実だ」と訴えています。


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