2013年8月18日(日)
対エジプト軍事援助
中止要求、米で強まる
【ワシントン=島田峰隆】エジプト治安部隊によるデモ隊の強制排除で死者が多数出ていることを受け、米議会やメディアでは対エジプト軍事援助の打ち切りを求める声が強まっています。一方、米国の同盟国のイスラエルやサウジアラビアなどは地域の安定を理由に継続を求めており、オバマ政権は難しい対応を迫られています。
イスラエルは継続要請
米主要紙は15日、社説で一斉に軍事援助の中止を求めました。議会では与党民主党の議員からも「民主主義が回復するまで援助は停止するべきだ」という意見が出ています。
一方、オバマ大統領は同日の声明で、共同軍事演習の中止は表明したものの、軍事援助の打ち切りには踏み込みませんでした。
この背景について米高官はメディアに対し、イスラエルなど同盟国との関係があると指摘しています。同高官は「援助中止は地域を不安定にし、特にイスラエルの安全保障を危うくする。1979年のイスラエルとエジプトの平和条約は米国からの援助が基礎になっているからだ」と強調。イスラエルからは援助継続の要請が来ているといいます。
サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などは、援助中止で米国がエジプトに対するてこを失い、イスラム主義組織・ムスリム同胞団が中東全域に影響を広げる危険があるとして継続を求めているとされます。
米国内では援助中止を求める声が目立つ一方、米国の影響力が低下しているとして、その効果に懐疑的な見方も出ています。
報道によると7月3日に軍がモルシ前大統領を追放して以来、ヘーゲル米国防長官はエジプト軍トップのシシ国防相と15回以上電話協議し、平和的なデモの権利を尊重するよう要請。バーンズ国務副長官がエジプト入りしたほか、同月下旬には国防総省がF16戦闘機の供与凍結を発表しました。しかし流血の事態は避けられませんでした。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は「エジプトに対する米国の影響力は小さくなっており、オバマ政権の選択肢を狭めている」と強調。ニューヨーク・タイムズ紙も「エジプト軍が米国の要請に留意している兆しはない」と指摘しています。