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2013年5月15日(水)

年金を食い物 「偽装質屋」被害

銀行の責任問う声も

口座から引き落とし 野放し

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 質屋を仮装する新手口のヤミ金融「偽装質屋」問題では、高齢者の年金受給口座が実質的な借金の「カタ」とされ、支給された年金の大半を引き落としてしまうことが被害を深刻にしています。こうした違法行為をたやすく許している銀行の責任を問う声があがっています。(竹腰将弘)


 埼玉県内で偽装質屋から金を借りた被害者の女性(74)は、初めて利用した際に1枚の書類に署名、捺印(なついん)させられました。

収納代行を悪用

写真

(写真)偽装質屋から借金をした被害者がかかされた預金口座振り替え依頼書(画像を一部加工)

 「預金口座振替依頼書・自動払込利用申込書」。偽装質屋が契約する集金代行業者にあてた書類です。集金代行業者は、被害者の年金受給口座から年金支給日に引き落としを行い、偽装質屋の口座に入金します。こうした口座振替サービス業者は、インターネットが普及した2000年代初めから急激に増加した「収納代行サービス」の一種です。

 問題なのは、申込書をいったん提出させれば、偽装質屋側は本人の同意なしに指定した金額を、自由に引き出すことができることです。偽装質屋は通帳や印鑑まで預かる場合があり、被害者は自分の口座を、完全におさえられてしまいます。

 貸金業法は、借金の返済のために、年金の振込口座からの自動引き落としを金融機関に委託することを禁じています。

 偽装質屋問題の相談にあたっている司法書士の仲道宗弘さんは「銀行はこういう犯罪に利用される危険性があることを知った上で、少なくとも本人に確認すれば、こうした取り立てを防げるはずだ」と憤ります。

厳正化要請に…

 警察庁は昨年10月に九州地方で摘発した偽装質屋事件を受け、今年1月31日、全国銀行協会、全国信用金庫協会、全国信用組合中央協会にたいして、高齢者の口座から自動引き落とし設定の申し込みがあったさいの審査の厳正化を要請しました。引き落とし先が貸金業者や質屋でないこと、返済目的の引き落としではないことを確認することを求めたのです。

 しかし、金融機関側は「対処のしようがない」と、警察庁の要請を事実上拒んでいます。

 収納代行サービス業者が、口座名義人の署名、捺印のある正規の書類を提出している以上、それを改めて審査するようなシステムがないというのです。

 収納代行サービスは、当初は公共料金の収受など限られた分野だけで行われてきましたが、いまではあらゆる分野の代金決済を担う巨大な規模になっています。なかには、悪質商法の集金に悪用される事例もあります。

 銀行と同じく為替や資金移動にかかわる業務を行っているのに、法的規制の対象にはなっておらず、許認可や登録などの制度もありません。

制度の見直しも

 偽装質屋が使った集金代行業者は、申し込みがあった際はその相手の審査を行っているといいますが、「貸金業や質屋という業種であるということが理由で審査を通らないということはない」といいます。反社会的な業者が不正利得を得るためにこのサービスを使うことはたやすいことなのです。

 全国銀行協会は警察庁の要請後、「(偽装質屋の利用を)阻止するために何ができるか、関係当局と検討している」といいます。

 ある金融機関関係者は「偽装質屋によって金融インフラ(基盤)が悪用されている。制度そのものを見直す必要があるのかもしれない」と語っています。


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