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2013年3月17日(日)

TPP交渉参加表明

安倍首相 偽りの言い分

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 安倍晋三首相は、広範な国民の反対を押し切って、環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加を表明しました。安倍首相の言い分を見てみると…。(北川俊文)


? 「守るべきものは守る」というが…

合意事項を丸のみ

 TPP交渉は、10月大筋合意、年内妥結を目指しています。新規参加国は、既に交渉している国が合意した条項を交渉し直すことはできません。そのことは、安倍首相もTPP交渉参加を表明した記者会見で認めました。

 TPP交渉は秘密交渉です。遅れて交渉に参加する日本は、すでに合意された条項を知ることができません。ただ、「丸のみ」するだけです。

 こうした新規参加国の制約の中で、重要品目の関税をはじめ、国民皆保険制度や食の安全・安心基準など、自民党が総選挙時に公約した6項目も守れる保証はありません。秘密交渉の中では、政府がどんな交渉を行っているかも、国民には分かりません。

 安倍首相の言う「交渉力」にも実績がありません。過去の自民党政権下で行われた日米経済交渉は、日本側の一方的譲歩の連続でした。農業分野では、小麦から牛肉・オレンジへ、そしてコメまでも輸入「自由化」の対象とされました。TPP交渉参加を表明する以前の事前交渉の段階でさえ、日本政府は米国の要求に屈して、BSE(牛海綿状脳症)対策の牛肉輸入規制を緩和しました。

? 「全体としてプラスの効果」というが…

農林水産に大打撃

グラフ

 TPPは、関税と非関税障壁を撤廃し、米国基準に沿って各国の制度を共通にすることを目指す協定です。多国にまたがって活動する多国籍企業が国の違いを苦にしないですむ環境をつくることが主眼です。

 「全体としてプラス」という政府の新しい試算も、こうした多国籍企業の海外展開を支援する立場から、関税撤廃だけで見て、10年後にはこうなっているだろうという予測にすぎません。

 一方、新しい試算でも、農林水産分野への大打撃は明らかです。関税率が10%以上で、国内生産額が10億円以上の農産物19品目、林水産物14品目だけで見ても、生産額約7兆1000億円のうち約3兆円が失われます。また、国土を守り、水を蓄えるなどの農業の多面的機能が、金額換算で約1兆6000億円失われます。

 安倍首相は、農林水産業を「成長産業」にすると言います。しかし、検討されている対策の基本は、経営規模の拡大や株式会社の参入などです。小規模経営や家族経営が守られません。それでは、安倍首相が守ると言う「美しい田園風景」も守れません。

? 「世界の成長取り込む」というが…

中韓とも参加せず

 安倍首相は、TPPで「世界の成長を取り込む」といいます。しかし、経済成長の著しいアジアで見ると、中国も韓国もインドもインドネシアも、TPP交渉に参加していません。それでは、アジアの「成長を取り込む」こともできません。

 日本の関税は、すでにかなり低く、市場は外に向けて開放されています。高関税で守られているのは、関税が撤廃されると国内生産や地域経済に深刻な影響を与える一部の重要品目にすぎません。

 米国主導の「自由貿易」が広がるにつれ、世界で飢餓と貧困が増加しました。多国籍企業本位のルールのもとで、農業関連の大企業の支配が広がり、多くの国で小規模農業や家族農業が衰退したからです。国連食糧農業機関(FAO)は、世界人口が91億人に達する2050年までに、世界の食料生産を70%増加させる必要があるとしています。

 飢餓と貧困を広げるルールではなく、各国の経済主権や食料主権を尊重したルールこそが必要なのです。

? 「同盟国である米国とともに新しい経済圏をつくる」というが…

多国籍企業のため

 安倍政権の「成長戦略」は、多国籍企業化した日本企業を国の内外で後押しすることを中心にしています。そのためにも、TPPを重視しています。

 TPP交渉は、多国籍企業本位の国際ルールを定め、今後、貿易や投資などの協定のひな型にすることを目指しています。特に、アジア太平洋地域を米国主導で一つの経済圏にするアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を見据えています。

 安倍首相も会見で、TPPは「FTAAPにおいてルールづくりのたたき台になる」と強調しました。

 安倍首相は、共通の経済秩序の下に相互依存関係を強めていくことは「安全保障」にも寄与すると言います。日米同盟を土台に、多国籍企業本位のルールづくりに参画することこそが、TPP交渉参加表明を強行した理由です。


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