2013年3月13日(水)

保育所に入りたい！

条件満たしても遠い道のり

東京・杉並区で起きていること

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　認可保育所に入りたい―。この４月からの入園を承諾されなかった東京２３区の親たちが、行政不服審査法にもとづく異議申し立てをおこなっています。他区に先駆けて２月２２日に申し立てをした杉並区の親の思いは…。　（堤由紀子)

（３月２２日の記事）→保育所に入りたい！/安心の「認可」増やして

（写真）異議申立書を書く保護者ら＝２月２２日、杉並区役所

（写真）認可保育所を増やして待機児童をなくしてほしいと安倍首相への要請書を手渡す東京や埼玉のお母さんたち＝６日、内閣府前

（写真）杉並区側（手前）に異議申立書を渡し、「認可保育所をふやしてほしい」と求める保護者ら＝２月２２日、東京都杉並区役所

　１５日。杉並区内の認可保育所入園の最終選考日です。切羽詰まった親たちが、最後の望みをかけています。

共働きも入れない

　その一人、安保（あぼ）佳代子さん（３１）はアパレルメーカーのデザイナーです。夫も土日がないほど忙しい日々を送ります。

　「杉並で認可保育所に入れるのは大変だとは聞いてました。でも、夫婦ともフルタイム勤務で正社員だから、たぶん入園できると期待してたんです」

　ところが…。

　２月１４日。安保さんの元に届いたのは、「１次選考では内定できませんでした」という通知でした。４月から認可保育所に入れないという事実を突きつけられたのです。

　「もうショックで、どうしたらいいかわからなくなって。とにかくあせって、区の資料にあった認証保育所とかグループ保育室とかに片っ端から電話であたりました」

　しかし、この時点ではどこも何十人待ちの状態。中には２００人待ちという認証保育所もあり、申し込みさえ受け付けていない園もありました。

　とりあえず今は、受け付けてくれる園に申し込み、空きが出るのを待つ状態。「つらいです」。６日には首相官邸前で「国もきちんと政策を出してほしい」と訴えました。

「満点」では届かず

　認可保育所の入園は、区の入園選考会議で判断します。保護者が出した書類などにもとづき、「家庭で保育できない状況」を点数にあてはめ指数化し入園の可否を決めます。

　例えば、安保さんの場合は夫婦とも「居宅外就労」で月２０日以上、１日あたり８時間以上の就労常態のため１人２０点、夫婦で４０点の満点です。

　しかし、この満点でも入園が難しいことが区の資料で明らかとなりました。未就学児が３人以上いる世帯や、認可保育所以外での入園実績があるなどの場合、加点されます。加点された４１点以上の申込者が１０３２人。安保さんと同じ４０点満点は１１６２人もいます。 （表）

　今春の入園可能枠は１１３５人だったため、満点でも入園は確実ではなかったのです。

「保活」キリない

　親たちが異議申し立てをした２月２２日、東京・杉並区長は緊急記者会見を開き、認可保育所の定員枠拡大や、都が打ち出した小規模保育「東京スマート保育」の活用での定員増を表明しました。５日には認可保育所を新たに３園整備するなどを盛り込んだ「待機児童対策緊急推進プラン」を発表しましたが、根本的な解決にはいたらず、親の不安は消えません。

下の子は入れたけど

　きょうだいで明暗が分かれたケースもあります。

　佐藤里奈さん(３１)は、建築関係の会社で働いています。夫は自営の造園業。夫婦とも杉並育ちです。

　上の子どもが１歳のときは、運よくグループ保育室に入園できました。４月からは満１歳児から募集している認可保育所に入園させようと思っていたので、それまでと思っていました。

　その後、２人目を妊娠。「下の子を産休明けすぐに預けるというのでなければ、入所できない」と区に言われました。それでは早すぎると思い、グループ保育室にそのまま預けて加点してもらい、翌年の４月に再度認可保育所に申し込もうと思っていました。

　ここで、予想もしなかったことが起きました。「職場復帰する人のために、上の子は退園してほしい」と園から言われたのです。

　再入園の厳しさは、身にしみていました。「でも、退園を断ったりしたら、園との関係が悪くなっちゃうんじゃないかって怖くて｣｡区からは当事者同士で解決するように言われ、昨年の６月いっぱいで退園しました。

　ここから２人分の「保活」（保育所に入れるための親の活動）が始まりました。認可保育所が希望でしたが、認証保育所にもあたりました。「入りやすい」と口コミがあった園にもあたりました。

　その結果、下の子は認可に入れましたが、上の子は入れませんでした。待機児童のための区立保育室もダメ。以前、入園していたグループ保育室にも電話してみました。他の待機児のために退園させられたのだから、今度は待機児となったわが子に同じような配慮をしてくれるかもしれない、と思ったからです。でも、今回は「空きがないから」と断られました。ベビーホテルにも連絡を入れながら、今後の対応を考えあぐねていた７日、認証保育所から「空きができそうだ」と連絡がきて、なんとか行き先を確保することができました。