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2012年9月7日(金)

橋下「維新八策」 どんな国めざす?

強権独裁政治を全国に

「維新」よりも「復古の会」

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 テレビや新聞は連日、民主党・自民党に代わる「第三極」などとして橋下徹大阪市長率いる「大阪維新の会」を大々的にもちあげます。8日にも「会」として国政進出を決定し、候補者擁立を本格化させようとしています。国民への背信と党略政治を続ける民主党・自民党に失望した国民の“期待”を集めますが、それに応える中身をもっているのでしょうか。8月末に最終案として発表した「維新八策」を中心に、その実態をみてみます。


雇用・福祉 過激な新自由主義で破壊

 「維新八策」の「経済政策」に並ぶのは「競争力強化」「国・自治体・都市の競争力強化」「競争力を重視する自由経済」など“競争力強化”一辺倒です。それしかないといっても過言ではありません。

 大企業向けには「競争力強化のためのインフラ整備」を掲げるとともに「徹底した規制改革」を打ち出し「産業の淘汰(とうた)を真正面から受け止める」産業構造への転換を主張。まさに弱者は去れという弱肉強食の社会づくりです。

 そのもとで、国民生活がどうなるかには、冷淡で無頓着です。大金持ちには、さらなる所得減税となる「超簡素な税制=フラットタックス化」を打ち出す一方で、労働者に対しては「解雇規制の緩和を含む労働市場の流動化」でいっそうの不安定雇用を強いる方向です。

 小泉「構造改革」のもと、製造業派遣の解禁などで貧困と格差が拡大したことから何一つ学ばず、今度は“首切り自由”(解雇規制の緩和)で国民をいっそう困窮に追いやろうというものです。まさに“過激な新自由主義”にほかなりません。

 その姿勢は社会保障にも貫かれています。

 「八策」は社会保障について「自助、共助、公助の範囲と役割を明確に」し、「真の弱者支援に徹する」と明記しています。本来、すべての国民が受ける権利をもつ社会保障を「真の弱者」だけに絞り込み、「合理化・効率化」の名で社会保障費を削減しようというのです。

 「真の弱者支援」というのは社会保障切り捨ての口実にすぎません。

 一つは、保険で受けられる医療を切り縮めようということです。「八策」では「公的医療保険給付の重症患者への重点化」を口実として「軽症患者の自己負担増」を方針化しています。橋下氏は「風邪とかばかりを扱う開業医がどんどん増えてくる」(8月30日)と地域医療を敵視し、「公的医療保険制度の範囲を見直す」としています。

 さらに、米国が求めている混合診療を「完全解禁」すると明記。混合診療は、保険のきかない医療を拡大して患者に重い負担を求めるもの。“命の沙汰も金次第”にしようとしています。

 また、生活保護について、今でも本来対象となる人の2割程度にしか利用されていない制度をさらに改悪し、保護の打ち切りにつながる「有期制」や、現在は無料で受けられる医療への「自己負担」導入などを盛り込み、給付をさらに絞り込もうとしています。

大阪方式 モノ言えぬ恐怖政治に道

 「維新八策」は、大阪府・市の職員基本条例や教育関連条例を「さらに発展、法制化」することを明記しています。いわば“大阪方式を全国に”が合言葉です。

 「大阪方式」でやられてきたのはなにか。橋下市長が就任早々に実施したのが、大阪市の職員に対する「思想調査」でした。職員の思想・信条を調べあげ、「街頭演説への参加」や、それに「誘った人」、「誘われた人」の名前まで密告さながらに答えさせるものでした。「役所に出入りする民間業者や、近所の人の氏名まで書かせるのか」などの反発や、大阪府労働委員会による事実上の中止勧告のなかで取りやめざるを得ませんでしたが、この動きは、市職員の政治活動を制限する条例へとつながりました。

 7月には、「維新の会」などが同条例を強行。デモの企画、集会などでの政治的意見の表明、政治的目的を有する文書の発行や演劇の演出、政党機関紙の配布など10項目を禁止し、違反は懲戒免職を含む懲戒処分の対象とする異常な内容です。市長や市政への批判を「懲戒処分」で封じ込め、モノいえぬ職場をつくろうというものです。

 しかも、「八策」では、「地方公務員制度も抜本的改革」としており、政治活動制限を法制化して全国に広げる考えを示しています。すでに国会では、自民党・みんなの党などが地方公務員の政治活動を制限する地方公務員法改悪案を提出しています。

 大阪市では、条例以外にも勤務時間中に10分程度、喫茶店に立ち寄った職員が「市民の通報」で懲戒処分にされるなど、“密告社会”の雰囲気まで広がっています。

 大阪府・市の動きは、憲法が保障する思想・信条の自由を侵害するもので、世界でも異常です。

 こうした動きの大本には、橋下氏の特異な立場があります。橋下氏は、「みなさん(公務員)は国民にたいして命令する立場に立つんです」(4月2日)「組織(市役所)自体が市長の顔色をうかがわないで誰の顔色をうかがうのか」(4月13日)などと発言。公務員を「全体の奉仕者」から国民への「命令者」へ、その「命令者」を「首長の下僕にする」立場を示しています。

 その行きつく先は、「行政改革・公務員改革」の名を借りた、モノのいえない恐怖政治への道にほかなりません。

教育 口元チェックと競争強化

 「維新八策」は、「教育委員会制度の廃止(首長が権限と責任を持つ)」「公立学校長の権限の拡大・強化、校長公募など、マネジメントの確立」「学校選択の保障」を掲げています。その意味するところは、大阪府・市の実態をみれば明らかです。

 大阪府と大阪市では橋下・「維新の会」と公明党などが強行した首長の教育への権限を強化する教育関連2条例で、教育への政治介入、統制と競争が強められようとしています。

 その一つが「教育行政基本条例」です。同条例では首長が教育委員会と協議して「教育振興基本計画」案を作成するとしています。

 大阪府は8月末、同計画の「中間まとめ」を発表しました。そこでは地方教育行政法で首長の権限外とされている「教育目標」が設定され、「自立して力強く生きる人づくり」「自律して社会を支える人づくり」など、橋下・「維新」の価値観での「人材」育成が目標に掲げられています。

 「目標実現」に向けては、「公私の切磋琢磨(せっさたくま)による高校の教育力の向上」を強調。一部の超エリートを育成する一方、「3年連続定員割れ」の高校を含めた府立高校の統廃合を計画的にすすめるとしています。高校の“生き残り”をかけた激烈な競争が学校と生徒にのしかかります。

 府内のある中学校教師は「政治介入によって教育が恣意(しい)的に動員されることがあってはならないという思いで始動した戦後教育の根本理念に対する正面からの挑戦。学校現場を破壊する危険性を秘めている」と警鐘を鳴らします。

 「八策」のいう「学校長の権限拡大」「マネジメントの確立」も要注意です。橋下氏は「校長がしっかりやればいい。だから維新は校長の公募を唱えている」といいますが、その実例といえるのが、橋下氏が知事時代に民間人から任用した府立高校の校長です。「維新」が府議会で強行した「君が代」起立強制条例を受け、卒業式で「君が代」斉唱時に教師の口元までチェック。作家の赤川次郎氏は朝日新聞への投書で「なんと醜悪な光景だろう」と厳しく指摘しましたが、橋下氏は「すばらしいマネジメント」と絶賛しました。

 小中学校の学校選択制も学校統廃合の有効な手段だとしており、橋下氏は「選ぶ自由」とともに「選択は自己責任」と主張しています。

 「八策」では、府と大阪市の教育関連条例を「さらに発展、法制化」するといいます。教育委員会がなくなり、教育への政治介入と競争が露骨にすすめられ、「君が代」強制で口元チェックが全国でおこなわれる事態になりかねません。

特異な史観 安倍元首相と連携視野に

 「維新の会」と安倍晋三元首相の接近が目立っています。橋下氏は「今の段階で安倍元首相が維新に入られるという話ではない」(8月30日)としつつ、「安倍さんと共通するのは教育、憲法観」(同前)とのべるなど、将来の連携を否定しません。

 なかでも、橋下氏が「従軍慰安婦強制の事実に確たる証拠はない」(8月21日)と発言し、その“証拠”に安倍内閣時代の2007年の「閣議決定」を持ち出したことから、歴史問題での共鳴が注目されています。

 安倍氏も「産経」(8月28日付)掲載のインタビューで、橋下氏の発言について「大変勇気ある発言だ」「戦いにおける同志だ」とまでのべています。

 しかし、橋下氏が持ち出した閣議決定なるもの(実は質問主意書に対する答弁書)は、「従軍慰安婦」問題で旧日本軍の関与を認めた1993年の河野洋平官房長官談話を「継承する」と回答したのが趣旨。そのなかに、「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」との一文はあるものの、河野談話は政府の文書資料だけでなく、元軍人や元「慰安婦」の人からの聞き取りなどを行ったうえで「総合的」な判断で軍による強制を認めたものです。その談話の「継承」を宣言した同答弁書は、強制を否定する根拠にはなりません。

 なにより、河野談話がのべているように、「慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり」、慰安所に女性を拘束し多数の兵士の相手を強制した事実の核心はなんら変わりません。その「募集」においても、談話が「甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあった」と認めているとおりであり、資料や証言も多数あります。

 そもそも安倍氏自身が首相時代、橋下氏と同じ理屈で強制を否定した際、米国はじめ国際的な批判にさらされ、訪米の際何度も謝罪に追い込まれたことは記憶に新しいことです。

 国際社会で通用しない暴言を持ち出す橋下氏が「日本全体で一番必要なことは、子どもたちに近現代史の教育を与えることだ」(5月29日)として、近現代史教育施設づくりを提唱する資格はありません。しかも、その施設づくりでは、日本の侵略戦争を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」系メンバーに協力を求めると公言しているのですから、「維新の会」というより「復古の会」です。

選挙互助会 「構造改革」人脈受け継ぐ

 橋下「維新の会」は、安倍元首相と改憲や歴史観で共鳴しているだけでなく、小泉・安倍政権時代の人脈と太くつながっています。

 9日に予定されている国会議員らとの「公開討論会」では、「維新新党」への合流の適否を判断する審査員に、竹中平蔵元経財相や堺屋太一元経企庁長官らをあてる方向だと報道されています。竹中氏は、国民に痛みを強いた「小泉改革」を象徴する人物。中小企業つぶしの「不良債権処理」や地方自治体を疲弊させた「三位一体改革」、郵政民営化などを担当しました。堺屋氏も小泉内閣で内閣特別顧問を務めました。

 候補者養成のためといわれた「維新政治塾」の講師には、小泉政権下で首相補佐官だった岡本行夫氏や、国連次席大使をつとめた北岡伸一氏などの面々も。

 大阪府市特別顧問も務める高橋洋一氏や原英史氏らも、小泉・安倍時代に公務員改革や行政改革で登用された官僚でした。

 最近では、次の総選挙に勝ち残ることだけを基準に、自民党や民主党、みんなの党などから“維新新党”に合流する動きも目立ちます。橋下氏は「(既成政党は)金で支援、選挙で票になると思い込んでいる人の声だけに左右されている」「既得権益打破が僕の考え」(8月30日)などとのべますが、まさに「既得権益」にどっぷりつかった政治家が、選挙での「票」目当てに“合流”をめざしており、「選挙互助会」となっているのが実態です。

図

統治機構 民意排除で首相の独裁へ

 「維新八策」は、「二大政党」による公約違反と党略優先の政治への批判と国民の不信が極限に達するなか、「決定でき、責任を負う民主主義」、「決定でき、責任を負う統治機構」をおしだしています。

 「決定できる民主主義」とは何か―。橋下氏は集団的自衛権の行使やTPP参加表明を例に、「やっぱり野田首相はすごい」「確実に決める政治をされていると思う」(7月10日)などと野田首相を絶賛しました。

 「八策」の立場は、国民の多数が反対していても、財界や米国の宿願を強行することが「決定できる民主主義」であり、統治機構もそのためにつくり変えるというものです。

 「八策」では、「決定できる統治機構」のために、「首相公選制」、「参院廃止を視野に」「衆議院の議員数を240人(現行480人)に削減」などと明記しました。「参院の廃止」とあわせると、民意を代表する国会議員を3分の1に減らしてしまうもので、まさに「民意などいらない」という暴論です。

 一方で、首相公選制は、国民が首相を選挙で直接選ぶ制度で首相権限の強化が狙い。内閣に対する国会のコントロールを弱めるもので、首相独裁につながる危険をもっています。

 「決定できる統治機構」とは、民意を排除し、強力な権限をもつ首相による独裁体制にほかなりません。

 「八策」が地方の統治機構「改革」の「最終形」として重視するのが「道州制」です。「国の役割を絞り込む」「内政は地方・都市の自立的経営に任せる」という「小さな政府」路線と一体です。

 道州制は、日本経団連が「究極の構造改革」と位置づけるもの。社会保障や教育に対する国の役割を投げ捨て、公務員や地方議員、大学などを大リストラすることで数兆円の“財源”を生み出せると試算しています。その財源を都市開発など大型プロジェクトに投入し、海外からも含め参入する大企業に大もうけをさせようというのです。

改憲タカ派 9条敵視・日米同盟基軸

 「維新八策」は、8本目の柱に、「憲法改正〜決定できる統治機構の本格的再構築〜」を掲げ、改憲政党として“登場”することを改めて宣言しました。

 その対象は、国会の改憲発議要件(96条)の緩和に始まり、首相公選制や参院の廃止、法律を上回る地方の条例制定権などに加え、9条改定の可否を問う国民投票(の実施)にまで及んでいます。

 橋下氏の9条敵視は筋金入りです。今年3月には、がれき処理が進まないことまで「全ては9条が原因」とまで主張。「憲法9条とは、突き詰めると平和には何も労力がいらない、自ら汗はかかない、そういう趣旨だ」などと9条攻撃を展開しました。さらに、「9条がなかったときは、他人のために汗をかこう、場合によっては命の危険もあるかもしれないけど、そういう負担もせざるを得ないとやっていた」として、「お国のために血を流せ」とした戦争中の価値観を礼賛しました。

 橋下氏の主張は単なる倫理観ではすみません。橋下氏は「国際政治は力を背景とした武力行使をしない戦争だ」(8月30日)と主張。「どこが力をもっているか、しっかり連携を結ぶ冷徹な判断がいる。それを考えたら軍事同盟を結んでいるアメリカだ」とのべています。国際政治を単純な力関係でしかみないで、力を持っている国(米国)に従うのは当然とする考えです。

 「日米安保のいま」と題したNHK世論調査(10年11月)では、「これからの安全保障体制」について「日米同盟を基軸に」と答えた人はわずかに19%だったことに示されるように、国民は「日米同盟基軸」論を乗り越えつつあります。ところが、「八策」では「外交・防衛」の大きな枠組みとして「日米同盟を基軸」と明記。「国際平和活動への参加を強化」「豪、韓国との関係強化」など、海外での武力行使を可能とする集団的自衛権の行使へつながる方向を示しました。

 連携が取りざたされる自民党の安倍晋三元首相は、かつて「軍事同盟とは“血の同盟”」と著書に書き、「海外での紛争に一緒に肩を並べて武力行使する」ために憲法解釈の変更まで提唱しました。(05年10月)

 いま安倍氏は、改憲の実現にむけ、「彼ら(維新の会)の力は、大きな変革に必要」(民放番組)と“期待”をみせています。


大争点 四つの課題

 「日本が直面する当面の課題について、踏み込み不足が目立つ」(「読売」1日付)と批判される「維新八策」。次の総選挙で重大争点となる四つの課題で、橋下「維新の会」はどういう立場をとっているのでしょうか。

消費税 地方税化で住民犠牲

 次の総選挙では、民自公が強行した消費税増税法への各党の立場が鋭く問われます。橋下氏は、消費税増税法の成立時、「中身(の賛否)は別だが、最後に話をして物事を決めた。最後は決めていくということが積み重なれば、日本の政治はよくなる」(8月9日)とのべていました。

 ところが、「八策」は消費税増税の是非について一言もありません。言及しているのは「消費税の地方税化」。「地方交付税制度の廃止」とセットです。

 現行の消費税は1%分が「地方消費税」です。残り4%を「地方税化」すれば10・42兆円地方の税収が増えます。ところが、「廃止」としている地方交付税は約17兆円。これが不足した場合の穴埋め措置として認められる「臨時財政対策債」が約6兆円ですから、実質的には合わせて23兆円超。

 つまり、消費税を「地方税化」しても、地方交付税を廃止すれば、13兆円の大穴が開いてしまうのです。ちょうど、消費税5%引き上げ分の13・5兆円とほぼ一致します。

 橋下氏は、消費税を地方税化しても、地方交付税を廃止すれば「地方は損をする」と認めつつ、その場合「地方は…消費税を上げるか、サービスを削るしかない」(4月6日ツイッター)と二者択一を迫っています。13兆円といえば、地方財政のうち一般歳出総額の2割。医療、福祉、保育などのサービスを一律2割削減しなければならないほどの額です。増税かサービス切り捨てか、犠牲を強いられるのは住民です。

原発 姿勢コロコロ変節

 原発問題も、次期総選挙の最重要争点です。「八策」では「先進国をリードする脱原発依存体制の構築」を掲げますが、「脱原発依存」は福井・大飯原発再稼働を強行した野田・民主党も掲げる政策スローガンです。

 しかも、橋下氏は大飯原発再稼働問題で「民主党政権を倒す」とまでいっていたのに、わずか1カ月半で「建前論ばかり言ってもしょうがない。事実上の容認ですよ」と変節。「橋下市長が理解を示したことで、一気に再稼働容認への流れができた」(「読売」5月31日付)と指摘されています。しかも、再稼働容認は関西電力の森詳介会長らとの密談の場で、自ら提案していたことも明らかにしています。

 言い訳も見苦しい。電力不足を盛んに強調しましたが、橋下氏自身、かつては「『電力が足りないから原発が必要』というのは『サインしなければ命がどうなるか分からない』という霊感商法と同じ」(11年6月29日)と発言していました。

 原発再稼働やめよの官邸前行動についても、橋下氏は「反対の声が10万あっても、やらなければならないときはやる。それが政治」(7月2日)と突き放していました。

 ここにきて再び「大飯原発止めよ」と言い出していますが、いまさら「原発止めよ」といってもだれが信用するでしょうか。しかも、「関西電力管内だけで考えればやっぱり電気は足りなかった」(8月29日)と再稼働容認には無反省で、公務員批判とは打って変わった弱腰ぶりです。

TPP 推進役をアピール

 日本農業や地域経済に壊滅的打撃を与える「例外なき関税撤廃」だけでなく、食品安全の規制緩和や、国民皆保険制度を破壊する混合診療の解禁など、経済と社会のあり方を米国流に「大改造」してしまう環太平洋連携協定(TPP)。JA全中(全国農業協同組合中央会)だけでなく日本医師会も絶対反対を表明しています。

 ところが、「八策」は、「TPP参加」を明記。橋下氏は、「自民党も民主党もTPPで割れている。維新の会はまとまっている。これひとつとっても維新の会が既成政党より勝っている」(3月12日)と語り、TPP推進役の“適格者”をアピールしています。

 「維新の会」幹部は、国会議員を「合流」させて政党をめざす場合も、このTPP参加を踏み絵にする考えを示しています。

オスプレイ 配備を認める姿勢

 一時は、米軍普天間基地の「移設」先に手をあげた橋下氏。ところが「八策」では、米海兵隊の欠陥機オスプレイの普天間配備問題では沈黙しています。

 全国知事会が反対決議をあげるなど、沖縄にとどまらず全国で反対の声が噴出しているにもかかわらず、橋下氏は「(沖縄の人に)納得してもらえるには、どういうルールにすべきか考えなければならない」(7月6日)とオスプレイ配備を容認する姿勢を示しています。


“激辛”はメディア対策 !?

 「維新八策」は、2月、3月、7月、8月と、少しずつ手をいれただけでほぼ同じものが4度も“発表”されました。そのたびに、メディアが“激辛公約”と称するものを持ち出してマスメディアへの露出を狙っています。

 しかも、最初は次期総選挙での公約となるという触れ込みでしたが、ここにきて選挙公約は別に出すと言い出すいいかげんさ。体系だった説明はなく、政策集というよりスローガンの羅列です。

 一方で、目玉は首相公選制、消費税の地方税化、衆院定数半減など、ころころ変わります。そのたびに「国会議員が去るような案を出さないと、日本は変わらない」などとうそぶき、「既成政党」(実態は二大政党)との差別化を図ろうとしています。

肩すかし政党助成金改革

 「維新八策」は、政党助成金(交付金)を「3割削減」としました。「7割維持」ということです。7月に発表した「改訂版」では「抜本改革」としていましたが、拍子抜けもはなはだしい。

 毎年約320億円ものばく大な税金を自由勝手に使う政党助成金制度は、「政治的既得権益」の最たるもの。日本共産党以外のすべての政党が山分けし、民意を無視した政党・政治家による離合集散の財政的基礎ともなってきました。財政改革や特権廃止を言うなら、真っ先に廃止するべきです。

 「八策」は、衆院議員の定数を半減させ、参院の廃止も視野というのですから、国会議員の数は3分の1になるはず。それなのに交付金は3割減だとすれば、議員1人当たりの助成額は2倍以上に増大し“特権拡大”ともいえます。


「改革者」のポーズで府・市民サービスを敵視 ―――― 大阪府・市の文化・くらしを破壊してきた橋下「維新」

大阪府知事の時代

○「大阪維新プログラム」―「大阪府は破産会社」とウソを持ち出して府民施策を攻撃

 ・人件費の345億円削減

 ・私学助成の大幅削減

 ・高齢者・乳幼児・障害者・ひとり親の4医療費助成の削減方針〔府民世論で食い止め中〕

 ・市町村補助金のカット

 ・障害者8団体の団体補助をゼロに

○「府財政構造改革プラン」

 ・救命救急補助金カット

 ・府営住宅の当面1万戸削減方針

 ・「中小企業にお金をばらまいても意味がない」と、中小企業振興費を5億円から2億円に

 ・商業振興費は17億1000万円から3億7000万円に

○文化団体への補助削減

 ・大阪センチュリー交響楽団の補助金廃止(現日本センチュリー交響楽団)

 ○大規模な無駄遣い―大阪府咲洲庁舎(旧WTCビル)への庁舎移転の構想が破たんし、85億円で購入したものがいまや無駄の象徴に。大阪府の試算では、現庁舎との併用で今後30年間に1200億円が必要に

大阪市長になってから

 ○「市民はいたるところでぜいたくな住民サービスを受けている」と、市政改革プランで市民向けサービスを今後3年間で395億円の大幅削減(当初案は104事業548億円の削減)

 ・敬老パスの有料化

 ・上下水道料金福祉措置の廃止

 ・新婚世帯向け家賃補助新規受け付けの停止

 ・保育料の引き上げ

 ・老人憩いの家運営費助成の削減

 ・コミュニティーバス運営費補助削減

 ・男女共同参画センター(クレオ)5館を1館に

 ・市民交流センター廃止

 ・屋内プール24カ所を9カ所に削減

○大阪の文化、伝統も切り捨ての対象に

 ・大阪市音楽団廃止、大阪フィルハーモニー交響楽団、文楽協会への補助金削減

○大阪市の財産を切り売り

 ・市水道局保有の柴島浄水場の売却(売却のための整備費に巨額の公費を投入)〔半分売却〕

 ・住吉市民病院を廃止し、府立病院に統合

 ・黒字の大阪市営地下鉄の民営化へ

 ・市バス139路線のうち、81路線をいったん廃止、58路線は民営化

市民の声を敵視

 「市政改革プラン」にたいする市民からの意見(パブリックコメント)は2万8399件におよび、そのうち94%は反対でした。橋下市長は「パブリックコメントに政策が左右されたら大変」(6月22日)と語り、市民の声を無視する態度をとりました。


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