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2012年7月3日(火)

震災がれき 処理早く (上)

岩手県山田町

101年分 右も左も“山”

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 東日本大震災で津波の甚大な被害を受けた市町村では、平常時の一般廃棄物の数十年、数百年分にあたるがれきが生じました。がれきの存在は、住民の日常生活や観光の振興に暗い影を落とし、その一日も早い処理が復興の前提となっています。岩手県山田町、宮古市の現状を見ました。 (細川豊史)


写真

(写真)漁具などのがれきの山。近くには住宅地があります=6月12日、岩手県山田町

 カキの養殖が盛んな山田町の山田湾。国道45号沿いの「道の駅やまだ」の東、海に臨む浦の浜地区に、カキ食べ放題の「カキ小屋」があります。

 風光明媚(めいび)な浜の風景。しかし、国道からカキ小屋の方面に入ると、震災の現実を突きつけられます。

火災が発生

 道の左手には、赤茶色にさびた鉄のかたまりと化した廃棄自動車の山。右手には、大量のがれきの山です。町の中心産業の漁業を支えてきた漁船や漁具をはじめ、タイヤ、コンクリートがら、大量の土砂が山積みになっています。

 同町のがれきはすべてここに集積、分別され、処理施設へ搬出されます。震災前、この場所は公園で、住民の憩いの場でした。池があり、チューリップの花が咲き、祭りも開かれていました。

 昨年10月には、がれきから火災が発生。国道45号は真っ白な煙で前が見えなくなりました。近くに住宅地が、さらに目の前には、津波で家を失った被災者が住む浦の浜仮設住宅があります。

 仮設住宅に住む40代の女性は、「出かけて帰ってきてがれきの山を見ると、現実を感じて気がめいります。蚊やハエが今年はどのくらい出るのかも気になります」と話します。

 震災で生じた岩手県内のがれきは、県の平年の一般廃棄物11年分の約525万トン、山田町では101年分の約54万トンに上ります。

 民間企業の太平洋セメント(大船渡市)、宮古市の仮設焼却炉、釜石市の仮設溶融炉のほか、内陸部の処理施設の余力もフル活用して処理していますが、県内だけでの処理は難しく、県外での処理(広域処理)が必要です。

見るたび涙

 日本共産党の木村洋子町議は、「しばらくは、がれきの山を見るたびに涙が出ました。放射能への不安が聞かれますが、毎日のように他県の地方議員さんが視察に来て、納得し、『協力しなければ』という気持ちになってくださっていてありがたいです」と語ります。

 震災前からホヤの研究のため山田町に通っている岩手大学教育学部の梶原昌五准教授は、「岩手県は普段は首都圏などと比較にならないほどゴミの量が少なく、既存の処理施設は小さい。今回のがれきはその許容量をはるかに超えています。新たな施設を造ればいいという意見が聞かれますが、がれき処理が終われば、市町村は施設も雇用も維持できません」と指摘します。

 「カキ小屋へ行く観光客にとって、がれきの山があっては100%楽しんでいただける景観とは言えません。一日も早くなくしたい」。こう訴えるのは、自身も津波で料理店を流され、今春仮店舗で営業を再開した、山田町観光協会会長の大杉繁雄さん(65)です。

 「第1次産業や生活そのものを観光と結びつけ、次の世代に誇れる町をつくりたい。山田町が困っています。全国のみなさんに、手を差し伸べていただきたいと思います」 (つづく)


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