2012年6月20日(水)
エジプト「軍権力強化に反対」
同胞団や「革命」勢力表明
軍最高評議会 “30日までに民政移管”
【カイロ=小泉大介】エジプトで実権を握る軍最高評議会が17日に公布した新たな「憲法宣言」に対し、大統領選決選投票(16、17日)で勝利を宣言したイスラム主義組織・ムスリム同胞団や「革命」勢力の間から激しい反発の声が上がり、同評議会が対応に追われています。
新「憲法宣言」は、「革命」後の昨年3月に軍最高評議会が国民投票を受けて公布した「宣言」の改訂版で、暫定憲法の性格を持っています。
新「宣言」で、軍最高評議会は「宣戦布告」の決定権をはじめ軍の活動に関するすべての権限を保持。人民議会が再度選出されるまでの「限定」付きながら、同評議会が立法権や予算決定権、新憲法起草委員会の任命権を握ることも可能になっています。
これに対しムスリム同胞団を母体とする「自由公正党」は18日の声明で、「エジプト国民は軍最高評議会による権力の独占、民主主義への攻撃を許さず、主権を守るために革命をつづけるだろう」と表明。大衆行動を組織して「宣言」に断固反対する態度を明らかにしました。
昨年の「革命」を主導した青年組織などもいっせいに、「『宣言』は革命とその正当性にたいする挑戦だ」「選挙で選ばれた大統領の権限と国家機構の役割を弱め、軍に従属させるものだ」と激しく反発。地元メディアも「法によるクーデター」などの見出しで報じています。
こうした反発を受け軍最高評議会は18日、近日中に公式発表される大統領選の勝者に対し、今月30日までに「民政移管」する意向を改めて表明しました。
軍最高評議会のメンバーであるシャヒーン大将は会見で「宣言」について、一人の人間が立法権と行政権を独占しないことを目的にしたものだと説明。大統領には首相と国防相を含む閣僚の任命・罷免の権利があること、大統領の承認なしには法律は制定できないこと、「宣戦布告」も大統領の合意が必要であることなどを挙げ、「新大統領はすべての大統領権限を完全に行使することになる」と表明しました。