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2012年6月10日(日)

主張

「黒い雨」

被爆者差別する線引きやめよ

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 1945年8月の広島原爆の投下直後に「黒い雨」が降った地域は政府が指定した「大雨地域」より6倍も広いことが指摘されているのに、厚生労働省の検討会が指定地域拡大要求を認めない報告書案を了承しました。7月上旬に検討会として最終決定する予定です。

 強い放射能を含んだ「黒い雨」降雨地域はきわめて広範囲です。にもかかわらずそのうちの一部しか被爆者援護法の「健康診断特例区域」に指定せず、未指定地域で苦しんできた多くの住民を放置したままにしている政府の責任は重大です。「特例区域」を拡大し、被爆者を救済すべきです。

住民をうそつき呼ばわり

 厚生労働省は昨年12月に検討会を設置して、広島県や広島市などが2008年に行った「原爆体験者等健康意識調査」の報告書を検証してきました。広島市などの調査は広島市とその周辺に住む約3万人を対象にした大規模なものです。政府の指定地域の6倍もの広い地域で多くが「黒い雨」をあびたと証言しました。

 検討会の結論は、広島市が報告書で詳細に明らかにした被爆の実態をいっさい認めようとせず、指定地域を拡大してほしいという被爆者などの切実な願いをふみにじった理不尽なものです。

 検討会は、政府が指定した「大雨地域」以外では、「広島原爆由来の放射性降下物は確認されていない」「内部・外部被ばくがあったとも確認できない」とのべ、「改めて更なる調査を行う意義は低い」とまでいっています。重い健康被害に苦しんでいる住民を救済する意思がまったくみえません。

 とくに重大なのは、「大雨地域」の外側の地域でも「黒い雨」をあびたと多くの住民が証言しているのに、検討会が「60年以上前の記憶」だとして、住民の記憶違いのように扱っていることです。被爆者をうそつき呼ばわりして、指定地域の拡大要求を否定するやり方に批判が相次ぐのは当然です。

 被爆を示す新たな証拠もでています。広島大や金沢大などの研究で、「大雨地域」から遠い地域でも原爆投下に由来するセシウムが発見されました。広島・長崎にある放射線影響研究所が1950年に集めた1万3千人のデータがあることも昨年明らかになりました。政府は住民の証言と新たに発見された事実を積極的に受け止めて指定地域を拡大すべきです。

 政府はこれまで「科学的、合理的根拠が必要」といって指定地域拡大要求を退けてきました。本来政府がやるべき被爆実態調査も行わずに、「科学的、合理的根拠」がないといって広島市などの報告書に難癖をつけるのは許されません。

救済拡大への道開け

 「黒い雨」の降雨地域を狭くし、被爆者を線引きするやり方はもはや通用しません。ただちに改めるべきです。鳩山由紀夫内閣当時の長妻昭厚労相は2年前、日本共産党の仁比聡平参院議員(当時)に対して、広島市などの被爆実態調査報告書がでれば「重く受け止める」と約束していました。野田佳彦内閣は厚労相の国会での約束を守るべきです。

 「黒い雨」体験者は高齢化しています。被爆者援護法の「健康診断特例区域」を「黒い雨」が降った全域に拡大し、「黒い雨」で被爆した多くの住民を救済する道を切り開くことが急務です。


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