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2012年6月6日(水)

「扶養果たす仕組み」検討

厚労省 生活保護制度見直し案報告

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 厚生労働省は4日、生活保護制度の改悪案を盛り込んだ「生活支援戦略」の骨格を国家戦略会議に報告しました。「扶養義務を果たしてもらうための仕組みの検討」を盛り込み、親族からの扶養(ふよう)を生活保護受給の要件にする法改悪を狙っています。

 見直し案では、今後の検討項目として▽扶養可能者に扶養義務を果たしてもらうための仕組みの検討▽不正受給への罰則の強化▽地方自治体の調査権限や医療機関に対する指導権限の強化―などを盛り込みました。

 厚労省は「扶養義務を果たしてもらう仕組み」として▽受給者の扶養が困難という親族にはその理由の証明を義務付け▽自治体向けに家庭裁判所での調停を活用するマニュアルの作成―などを検討するとしています。扶養困難の証明を義務付けるためには法改定が必要です。

 骨子では「当面の対応」として、医療機関に対して電子レセプト(診療報酬明細書)の点検の強化で、給付費の半分を占める医療扶助の削減方針を明記。また申請者の「資産調査の強化」として、金融機関の本店で全国の支店の口座状況をみる「本店一括照会方式」の導入を打ち出しました。


解説

扶養困難証明義務化は権利侵害

 厚労省の「生活支援戦略」骨子は、芸能人の母親の生活保護受給に端を発した生活保護バッシングを追い風に、扶養を生活保護開始の条件とする法改悪を狙うなど、生活保護費の削減に突き進むものとなっています。

 現在でも生活保護を申請すると、福祉事務所が申請者の親族に扶養意思の有無を確認することから、生活保護の申請が親族に知られるのを嫌がり、申請をためらう人が少なくありません。

 親族が扶養できない理由を証明することになれば、親族まで所得・資産調査をされます。「親族に迷惑をかけたくない」と、ますます申請をあきらめる人が出てくることになります。

 親族への扶養困難な証明の義務付けは、生活保護を受ける権利を侵害するものでしかありません。

 離れて暮らす親や兄弟の扶養を求められても、求められた当人の生活も苦しいという例も少なくありません。

 一部の所得の高い芸能人の例を大きくとりあげてスケープゴート(いけにえ)にして受給を抑えるのが厚労省の狙いです。生活に困窮すれば誰でも申請でき、基準にあっていれば平等に受けられる生活保護の受給権を侵害するやり方は許されません。

 厚労省はこの間、「働ける年齢層」の生活保護受給を問題視して、「自立促進」の名でその層の受給減らしを狙ってきました。しかし、受給者のなかで最も多いのは無・低年金の高齢者です。扶養義務化は、この“本丸”に攻撃をかけて“家族による自助”押し付けで「公助」をきり縮めようとする攻撃でもあります。

 厚労省は「不正受給」がまん延しているかのようあおっていますが、2009年度で「不正」とされた額は約102億円で生活保護費の0・33%(同省調べ)です。高校生が小遣いにあてたアルバイト代を申告していない場合も「不正受給」とされています。生活保護費の99%が適正に運用されています。一部の悪質ケースを受給者全体の「不正」であるかのように印象づけるやり方は不当です。

 生活保護基準より低い国民年金の平均受給額や最低賃金の引き上げ、雇用破壊の労働者派遣法の抜本改正に取り組み、大企業や富裕層に社会保障で応分の責任を果たさせることこそ政治のやるべき仕事です。 (鎌塚由美)


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