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2012年6月1日(金)

きょうの潮流

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 「年をとったら枯れるなんていうが、とんでもない。これからも、生々しく生きる」▼5年前にこう語っていた映画監督、新藤兼人さんが亡くなりました。100歳の大往生です。中学生の時に初めてみた新藤作品、「人間」はこわい映画でした。漂流する漁船で食べ物が底をつき、おぞましいできごとが起こる▼年を重ね、新藤映画の数々をみるうちに気づきました。あの時こわかったのは物語だけではない。人間の生々しい生の根源にじっと目をこらす表現そのものがこわいのだ、と。「裸の島」では、夫婦が海から坂の上まで懸命にかつぎ上げた水を畑にやります。乾いてはやり、乾いてはやり…▼水のない砂地のひどい自然条件。そこで生きるためのたたかい。監督は、のちに振り返っています。“乾いた土はわれわれなのだ。水を注ぎ続けないと干上がってしまうような、人の人生を描こうとした”。やはり、人間の営みをつきつめてみつめました。服こそ着ている夫婦ですが、文字通り人間の「裸」の姿でした▼人間の生にこだわり続けた監督は、人の命を命とみない戦争と核兵器をずっと告発してきました。監督2作目「原爆の子」の発表は、原爆に関する報道や表現に対するアメリカ占領軍の規制が解かれた、1952年その年という素早さです。そして、遺作の「一枚のハガキ」まで、戦争の悲しみ、無意味さを伝えてきました▼新藤さん、ありがとうございました。私たちも、「年をとったら枯れる」などといっておられません。


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