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2012年5月17日(木)

主張

高速バス事故の教訓

乗客の命守る対策を真剣に

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 連休前半、全国に衝撃を与えた関越自動車道のバス事故から半月余り。7人が死亡し39人が重軽傷を負った事故は、バス会社や旅行会社の法令違反の営業実態や運転手の異常な働き方などを浮き彫りにしました。「規制緩和」を背景にした“安全置き去り”の状況は早くから指摘されていながら、なぜ改善が進まなかったのか―。事故を繰り返さない真剣な検証と抜本対策づくりが急務です。

5年前の事故にも学ばず

 事故を起こし、自動車運転過失致死傷容疑で逮捕された運転手は「疲れて居眠りした」と供述しています。深夜に金沢―東京ディズニーランドを結ぶ長距離を1人で運転すること自体過酷ですが、驚かされたのは、その後次々と明らかになる無謀ともいえる働き方です。バス会社とは、運転手の健康状態などが管理できないため道路運送法で禁じられている「日雇い」契約でした。しかも運転手は個人でバス4台を所有し、無許可で個人営業もするなど安全運転とはほど遠い状態でした。

 違法な働き方をさせていたバス会社も国交省の事故後の監査で36件もの法令違反を指摘されています。ずさんすぎます。事故原因の徹底究明が不可欠です。

 問題なのは高速ツアーバスの運転手などから「いつか大事故が起きるのでは」と心配する声が上がっていたにもかかわらず、政府が真剣に向き合わず、対策を取ろうとしなかったことです。

 貸し切りバス事業の一つであるツアーバスが急速に拡大したのは、自民・公明政権の「規制緩和」路線にもとづく2000年の道路運送法改定がきっかけでした。免許制から許可制へと参入要件を大幅に緩め、貸し切りバス事業者数は2336社(1999年度)から4492社(10年度)へと急増しました。受注競争の激化や、「格安」をうたう旅行業者からの値引き要求などから経営は厳しく、運転手の人件費などへしわ寄せされ安全運行が二の次にされたのです。

 07年2月に大阪府吹田市で添乗員1人が死亡し乗客26人が重軽傷を負ったスキーツアーバス事故のあと、国交省は監査を行い、ツアーバス事業者の約8割で過労防止義務などの法令違反が判明し、違法状態が常態化していたことをつかんでいました。にもかかわらず、まともな改善策を取ってこなかった国交省の責任は重大です。

 国交省が上限とした貸し切りバス運転手1人の1日当たりの乗務距離(670キロ)は長すぎます。10年に総務省も「運転者の健康面や生理学的な面での検討を行った上で算出したものでなく」と見直しの勧告を出していました。警告は何度も繰り返されたにもかかわらず、事実上放置してきた政府の対応が厳しく問われます。

「規制緩和」の見直しを

 日本共産党は「規制緩和」に反対し、危険性について警鐘を鳴らしてきました。今回も穀田恵二衆院議員がツアーバスなどの安全運行のため、深夜は運転手2人体制にすることや低運賃や無理な運行を求める旅行業者への監督・指導を強化することを国交省に緊急要求しました。国交省は検討会を立ち上げました。国会審議も行われます。事故を繰り返さない根本的な対策が急がれます。国民の安全を脅かす「規制緩和」の検証・見直しが求められます。


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