2012年2月17日(金)
米大統領 新たな銀行課税提案
大企業に「責任の分担」求める
【ワシントン=小林俊哉】オバマ米政権は、金融危機の際の金融機関救済の費用をまかなうため、銀行への新しい税の導入を提案しています。13日に発表された予算教書では、「金融危機責任税」を新設し、10年間で610億ドル(4兆8000億円)の税収を見込みました。
2008〜09年にブッシュ前政権、オバマ政権で行われた税金による銀行救済は、幅広い国民の批判を浴びました。税金投入によって難局を乗り切った大手金融機関は、相変わらず高額の役員報酬を続ける一方、多くの国民は経済状況の悪化で失業や、ローンの支払い遅滞で住宅を失うなどの状況が続いています。
昨年、全米に広がった米金融界の中心・ウォール街への抗議行動は、こうした状況が背景となりました。
11月の大統領選をにらみ、“経済の公正さの回復”を強調するオバマ大統領ですが、今回の銀行課税も、富裕層や大企業に「責任の分担」を求める政策の一環。「ウォール街に対する(国民の)怒りを利用した政治戦略」(ワシントン・ポスト紙)とも指摘されます。
オバマ氏は14日も、今回の予算教書について、「万人のための万人による公正さと責任分担」を目指すものだと強調しています。
一方、金融業界は強く反発しています。米国銀行協会は「(銀行を狙い撃ちした)恣意(しい)的な課税だ」とする声明を発表。課税によって「何百万の小企業向けローンが危険にさらされるかもしれない」と“脅し”をかける一方、「このような方策は政治的には聞こえが良いかもしれない」とも認めています。