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2011年12月18日(日)

主張

首相の「収束」発言

一方的宣言で安心させられぬ

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 東京電力福島第1原発の重大事故について野田佳彦首相が記者会見し、原子炉は「冷温停止状態」に達し、事故そのものは「収束」に至ったと宣言したことが、被災した住民や関係者、専門家からきびしい反発を受けています。海外からも危険から目をそらすものだと批判の声があいついでいます。

 東日本大震災にともなう原発事故から9カ月、福島原発はいまだに炉心の状態さえつかめず、汚染水など放射性物質の放出もとまりません。避難した住民は故郷に帰る展望さえ示されていないのに、口先だけの「収束」宣言で安心させることはできません。

事故「収束」には程遠い

 事故を起こした東京電力福島原発の実態が、「収束」どころか、「冷温停止」などといえないのは明らかです。「冷温停止」とは本来正常に運転している原発が徐々に原子炉の温度を下げ停止することで、圧力容器底部の温度が100度以下などという勝手な条件を持ち出して「冷温停止状態」をめざすとしてきたこと自体ごまかしです。

 圧力容器の底部の温度を外側から測って100度以下でも、内部がどうなっているかはわかりません。原子炉の中では高温で燃料棒が溶け、溶けた燃料は圧力容器から外側の格納容器まで落ちているとみられます。

 事故を起こした原子炉からは、空中や地下への放射性物質の放出も続いています。文字通り、作業員や周辺住民が脅かされる状態です。政府と東京電力は事故を起こした原子炉を冷やすための循環注水システムを設置してきましたが、仮設のタンクやパイプが破損し、汚染水が漏れるなどの事故もあとをたちません。

 首相はいったい何を根拠に、何のために、「冷温停止状態」が達成したとの発表を年内に繰り上げ、事故の「収束」に至ったとまで宣言したのか。首相の態度が、重大な事故から国民の目をそらしたい、東京電力の意向に沿っているのは明らかです。もし首相に、事故の深刻さを国民の目から隠し、全国の原発の再稼働や原発輸出に弾みをつける思惑があるとすれば、それこそ「幕引き」宣言だときびしく指弾されるのは免れません。

 福島原発の重大事故を終わらせるためには、原子炉を冷やし続けて再臨界などの事態を防ぎながら、放射能で汚染された建屋やがれきを片付け、原子炉から核燃料を取り出し、原発そのものを解体していくという長い道のりがあります。その入り口に立ったとさえいえないのに、事故の「収束」を口にするのはまったく無責任です。

いつになれば帰れるのか

 被災した住民にとっては、いつになれば避難先から帰れるのかは大問題です。首相は記者会見で、原発事故で被災した人たちのために、除染と健康管理、賠償に全力をあげるといいました。

 国が責任をもって除染などを行い、東電に被害を全面賠償させるのは当然ですが、住民の声にこたえるためにも、原発はいまどうなっているのか、対策はどこまで進んでいるのか、正しい情報を伝えることが不可欠です。

 福島原発がなぜ重大な事故を起こしたのか、事故原因の調査も尽くされていません。原因の究明とともに、政府が原発からの脱却を決断することこそが急がれます。


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