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2011年11月2日(水)

志位委員長の代表質問 衆院本会議

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 日本共産党の志位和夫委員長が1日、衆院本会議で行った代表質問は次の通りです。

写真

(写真)質問する志位和夫委員長=1日、衆院本会議

大震災と原発災害からの復興財源をどうするか

 私は、日本共産党を代表して、野田総理に質問いたします。

 まず東日本大震災と原発事故の復興財源についてうかがいます。

あらかじめ決めた範囲内でなく、古い枠組みを見直し大胆に財源の確保を

 大震災から8カ月近くが経過し、被災地では復興に向けて懸命の努力がつづけられていますが、生活と生業(なりわい)の再建は遅々として進んでいません。原発事故は、なお収束の見通しがたたず、放射能被害は拡大し、賠償と除染の遅れが被災者をさらに苦しめています。復興をすすめるうえで、その財源をどう確保するかは、最大の問題となっています。

 今回の大震災は、かつてない地震・津波災害に、原発災害がくわわるという、未曽有の規模の大災害です。すべての被災者の生活と生業の基盤を回復し、原発災害への全面賠償と除染をすすめ、地域社会全体の復興をすすめるという大仕事は、これまでの古い政治の枠組みのもとで財源枠をあらかじめ決め、その範囲内で施策を行うという小手先の姿勢では、到底なしとげることはできません。

 総理にうかがいます。復興を本格的に前進させようとすれば、住宅再建への支援額・支援対象の抜本的拡大、店舗・工場の復旧のための直接支援の創設をはじめ、従来の枠組みをこえた新たな対策がどうしても必要です。くわえて、原発対策には特別の財源が必要となります。あらかじめ決めた財源枠の範囲のなかでという姿勢でなく、必要なことは何でもやる、そのためにこれまでの古い枠組みを聖域なく見直し、大胆に財源を確保するという姿勢が強く求められると考えますが、いかがですか。

庶民増税はすべて法人税減税で消え、復興財源は1円も生まれない

 この点で政府・与党の姿勢はどうでしょうか。

 政府・与党は、「復興財源」として、15年間で、8・8兆円の所得税・住民税の増税など庶民増税を中心に、11・2兆円の増税を行おうとしています。

 ところがその一方で、法人税減税は、この大震災のもとでも財界にいわれるまま予定通り実施し、政府が行うとしている「課税ベースの拡大」を含めても、法人税減税による税収減は、15年間で総額12兆円にものぼります。

 総理、15年間で、庶民増税を中心に11・2兆円の増税を行っても、総額12兆円の法人税減税を行えば、差し引きでマイナス8000億円、庶民増税はすべて法人税減税で消えてしまうではありませんか。これでは、復興のための財源は1円も生まれず、借金が増えるだけではありませんか。庶民増税は、大企業減税の財源づくりが目的ではありませんか。答弁を求めます。

一般の復興財源――歴代政権が聖域にしてきた分野にメスを入れよ

 日本共産党は、財源問題を解決するうえで、地震・津波災害の復興財源――一般の復興財源と、原発災害の賠償・除染などのための財源――原発災害対策財源を、それぞれ確保する、その抜本的方策として、つぎの提案をするものです。

 第一に、一般の復興財源は、古い政治の枠組みに切り込む歳出・歳入の見直しで確保すべきです。歴代政権が聖域としてきた米軍への「思いやり予算」や米軍基地関連予算、政党助成金を廃止するだけでも、15年間に5兆円の財源が生まれます。

 歳入では、法人税減税と証券優遇税制の延長――大企業と大資産家への減税のばらまきをやめれば年間1・7兆円、15年間で25兆円を超える財源が生まれます。

 これらを実行すれば、庶民増税なしに復興財源を確保することは可能です。政府が、被災地の復興に責任を持って取り組むというのなら、歴代政権が聖域にしてきたこれらの分野にメスを入れることは避けて通れないと考えますが、いかがですか。

原発災害対策の財源――「原発埋蔵金」を活用し「基金」の創設を

 第二に、原発災害対策の財源をどう確保するか。

 賠償と除染にかかる費用は巨額のものとなることが予想されます。

 環境省の試算でさえ、今後除染が進められることになる年間追加被ばく線量1ミリシーベルト以上の地域は、1万1600平方キロ、国土の3%に及ぶとされています。ところが、政府が提出した第3次補正予算案で計上された除染予算は、わずかに2400億円、来年度予算とあわせても1・2兆円です。これではあまりに少ない、本腰を入れて除染に取り組む姿勢とはほど遠いと考えますが、いかがですか。

 賠償と除染にかかる費用は、第一義的には事故を引き起こした加害者である東京電力が負担すべきです。同時に、東電をはじめ電力業界は、核燃料サイクル計画などのために、「使用済み核燃料再処理等引当金」をはじめ約19兆円の積み立てを計画的に行っており、すでに4・8兆円の積み立て残高があります。しかし、使用済み核燃料の再処理と核燃料サイクルは、原発以上に危険きわまりないものであり、中止すべきものです。そこで、この積立金――いわば「原発埋蔵金」を、国が一括して管理する基金に移し、「原発賠償・除染・廃炉基金」を創設し、原発災害対策の財源として活用することを提案するものです。

 電力業界だけでなく、原子炉メーカー、大手ゼネコン、鉄鋼・セメントメーカー、大銀行など、原発ビジネスを推進し、巨額の利益をあげてきた「原発利益共同体」に属する大企業にも、「基金」への応分の拠出を求めるべきです。原発を推進してきた「日本原子力産業協会」に属する主要100社の内部留保の合計は80兆円にものぼります。これらの大企業には、資金を拠出する社会的責任とともに、十分な体力もあります。

 総理は、10月7日の党首会談で、私がこの提案を行ったさい、「ご指摘の原発関係のお金については、今後、エネルギー政策全般を見直すなかで洗い出し、洗い出したお金は可能な限りそちらの方(賠償と除染)につかっていく」と答えました。私は、総理が、この言明をただちに具体化・実行し、原発災害対策のための巨額の財源をまかなう抜本的方策をとることを、強く要求します。答弁を求めます。

TPPへの暴走に反対、経済主権・食料主権を尊重した経済関係の確立を

 つぎにTPP(環太平洋連携協定)交渉参加問題について質問します。

 政府・与党が、11月中旬のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議で、TPP交渉への参加表明を行うことを念頭に、検討を進めていることに、広範な国民の不安と怒りが広がっています。

 TPP参加がもたらすものは何か。私は、四つの大問題について、総理の見解をただすものです。

大震災からの復興への最大の妨げになるのではないか

 第一は、これが大震災からの復興への最大の妨げになるという問題です。

 いま被災地では、大震災によって破壊された農地を復旧するための懸命の作業が続けられています。しかし、岩手県、宮城県、福島県の3県で、来年度までに営農が再開できると見込まれている農地の面積は、農林水産省の試算でわずか37%にとどまっています。

 「農地を復旧しても、TPPによる米価の暴落で、地域農業はつぶされてしまう」、「TPPへの参加を検討していると聞いただけで、復興への気持ちがくじかれてしまう」、総理は、被災地からのこの痛切な声にどう答えますか。被災地の主要産業である農林水産業への打撃をどう考えているのですか。

 総理は、大震災からの復興を「最優先課題」と言いました。その言葉が真実であるならば、いまなすべきはTPP参加ではありません。壊された農地の復旧に全力をあげ、生産・加工・流通一体で農林水産業のインフラ(基盤)復旧に全力をあげることではありませんか。答弁を求めます。

「自給率50%」と「関税ゼロ」がどうやって両立できるのか

 第二は、国民への食料の安定供給を土台から壊すという問題です。

 TPPとは、農産物も含めてすべての品目の関税をゼロにする協定です。「関税ゼロ」となったら、農水省の試算によると、食料自給率は40%から13%に急落し、コメ生産の90%は破壊され、農林水産物の生産は4兆5千億円も減少します。一方、政府は、昨年3月に、食料自給率を50%に引き上げる「食料・農業・農村基本計画」を閣議決定しています。「自給率50%」と「関税ゼロ」がどうやって両立できるのか。総理、国民にわかるように具体的に説明していただきたい。

 政府は、10月、現在1戸あたり平均2ヘクタールの耕地面積を、今後5年で10倍まで拡大し、20〜30ヘクタールにするという「大規模化」の方針を打ち出しました。この方針自体が、中小農家、兼業農家を切り捨てるという大問題をはらんだものですが、たとえ20〜30ヘクタールにしたところで、平均耕地面積が200ヘクタールのアメリカ、3000ヘクタールのオーストラリアとどうやって競争せよというのか。

 すでに1戸あたり平均耕地面積が22ヘクタールになっている北海道でも、TPPに参加したら、農業と関連産業、地域経済が2・1兆円もの損失をこうむることが、道の試算で明らかにされています。どんなに「大規模化」をしたところで、アメリカやオーストラリアとの競争が不可能であることは、火を見るよりも明瞭ではありませんか。

 どの国でも、自国の主要な農産物を関税で守ることは、当たり前に行われています。すでに日本の輸入農産物の平均関税率は12%まで下がり、EUの20%、メキシコの43%、韓国の62%、インドの124%と比較しても、日本は世界で最も「農業が開かれた国」になってしまっています。

 地球的規模での食糧危機と飢餓の広がりのなかで、自給できる力を持ちながら、自国の農業を破壊し、外国からの食料に頼る道を選ぶことは、世界にも顔向けできない行為だと考えますが、答弁を求めます。

暮らしのあらゆる分野で米国の対日要求が強要されるのではないか

 第三は、TPPでは農業と食料だけでなく、暮らしと経済のあらゆる分野が交渉対象とされ、米国の対日要求が強要されるという問題です。

 TPPとは、関税撤廃だけでなく、関税以外の貿易障壁――「非関税障壁」の撤廃を大原則とした協定です。そして、これまで米国の通商代表部の報告書などでは、つぎのような対日要求が列挙されてきました。

 「食の安全」にかかわっては、牛肉のBSE(牛海綿状脳症)対策で日本が行っている月齢制限などの規制の緩和、残留農薬や食品添加物の規制の緩和、遺伝子組み換え食品の表示義務の撤廃など、日本国民の食の安全を脅かす要求が列挙されています。

 「医療」にかかわっては、混合診療の全面解禁、株式会社の病院経営への参入、血液製剤の輸入規制の緩和などの要求が並んでいます。保険のきかない医療が拡大し、お金持ちしかよい医療を受けられなくなる、医療に利益第一が持ち込まれることで不採算部門の切り捨てや地域からの医療機関の撤退などが進むことなどが、強く危惧されています。

 「政府調達」にかかわっては、米国は、政府や地方自治体の官公需――物品購入や公共事業に、アメリカ企業を参入させることを要求しています。それぞれの地方自治体が行っている中小企業、地元企業への優先発注などが、「非関税障壁」として排除されれば、地域経済は深刻な打撃を受けることになります。

 農業以外のこれらの懸念にたいし、政府は「TPPの交渉対象になっていない」などと弁明しています。「TPPおばけ」などと中傷する議論もあります。たしかにこれらの対日要求のなかには、TPPのこれまでの交渉では議論されていないものもあります。しかし、日本が参加すれば交渉対象となる可能性が大いにあります。

 総理に2点うかがいたい。

 第一。いま例示したアメリカによる対日要求の諸項目が、TPPの交渉対象にならないという合意あるいは保証がありますか。

 第二。これらの諸項目がTPPの交渉対象になったとき、一つでも「ノー」といえるものがありますか。あるならば具体的に明示していただきたい。答弁を求めます。

アメリカに日本をまるごと売り渡す亡国の政治に断固として反対をつらぬく

 第四に、総理は、TPPに参加すれば「世界経済の成長を取り込む」ことができるとのべていますが、そんな保証がどこにあるかという問題です。

 仮に日本が交渉に参加して、TPPが10カ国の枠組みになったとすると、日米だけで10カ国のGDP(国内総生産)の91%を占めることになります。つまり、日本にとってのTPP参加とは、事実上の日米FTA(自由貿易協定)締結となる、より正確にいえば「例外なしの関税撤廃を原則とする日米FTA」の締結と同じことではありませんか。

 それではTPP参加によってアメリカへの輸出が増えるでしょうか。アメリカへの輸出の最大の障害となっているのは、関税ではありません。円高とドル安です。TPP参加による関税撤廃と円高・ドル安によってもたらされるのは、アメリカからの一方的な輸入拡大ではないですか。そしてそれがもたらすのは350万人もの失業者だということは、農水省の試算でも示されている通りです。失業者が街にあふれれば、労働者の賃下げ、家計と内需の縮小がいっそう深刻になるでしょう。

 総理、TPP参加によって「世界経済の成長を取り込む」どころか、アメリカの対日輸出戦略に日本が取り込まれる。これが、真実の姿ではありませんか。それは日本経済を成長させるどころか、内需縮小と衰退への道ではありませんか。

 日本共産党は、アメリカに日本をまるごと売り渡す、このような亡国の政治には、断固として反対をつらぬきます。

 従属の論理ではなく、お互いの経済主権・食料主権を尊重した平等・互恵の経済関係の確立にこそ、日本の未来があるということが私たちの確信であります。

普天間基地――「県内移設反対」の県民の総意への認識を問う

県民の頭越しに事をすすめる「強権国家」――この批判にどう答えるか

 つぎに沖縄の米軍基地問題について質問します。

 この間、日米防衛相会談が行われ、日本側は、「辺野古移設」の日米合意の強行にむけた第一歩として、年内に「環境影響評価書」を沖縄県に提出することを確約しました。米側は、これを「歓迎」し、「環境影響評価」が終了したら、ただちに沖縄県に対して埋め立て申請を行うよう要求しました。

 私は、「県内移設反対」「普天間基地の閉鎖・撤去」という沖縄県民の総意を無視し、県民の頭越しに事を進めようという政府の強権的姿勢に強く抗議します。

 沖縄タイムスは社説で「民主主義が泣いている」と書きました。琉球新報は社説で「多くの県民の目には『日米同盟』のためなら手段を選ばぬ『強権国家』としか映らないだろう」と書きました。総理は、「民主主義が泣いている」、「強権国家」という沖縄の批判にどう答えますか。

沖縄県民の総意の根源には、戦後66年にわたる重い歴史の累積がある

 稲嶺名護市長が、「オール沖縄で県内移設を受け入れる状況にない」と断言しているように、「県内移設反対」はもはや揺らぐことのない沖縄県民の総意です。

 私が、総理に問いたいのは、沖縄で形作られたこの総意、噴き出している怒りの根源に、何があると認識しているのかという根本問題です。

 私は、沖縄県民の総意の根源には、戦後66年にわたる異常な基地の重圧が、忍耐の限界を超えているという、重い歴史の累積があると考えます。

 なぜ沖縄本島の18%も占める基地が存在するのか。もともと沖縄の米軍基地は、太平洋戦争末期、凄惨(せいさん)な地上戦をへて米軍が占領したさいに、住民を12の収容所に強制的に囲い込み、広大な民有地を強奪して建設されたものでした。普天間基地がつくられた場所には、民家も、役所も、郵便局も、墓地も、サトウキビ畑もあったのです。さらに1951年以降、米軍は銃剣とブルドーザーで、民家と農地を押しつぶして基地を拡張しました。ハーグ陸戦法規は、占領下の略奪や私有財産の没収を禁じています。沖縄の基地は、生まれながらにして国際法違反の基地なのです。総理には、そういう認識がありますか。答弁を願いたい。

 こうしてつくられた米軍基地によって、戦後66年間、沖縄県民は耐え難い苦しみを背負わされてきました。沖縄県民の心に共通して刻まれている痛ましい事件・事故があります。6歳の少女が強姦(ごうかん)され、殺されて、海岸に打ち捨てられた由美子ちゃん事件。小学校に米軍機が墜落してたくさんの児童が亡くなった宮森小学校の惨事。米軍機から落下傘で降下されたトレーラーに、少女が自宅の庭で押しつぶされて亡くなった隆子ちゃん事件。島ぐるみの怒りが噴き上がった1995年の少女暴行事件。沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落したあわや大惨事というあの事故。これらは、沖縄県民ならば誰もが知る、忘れようにも忘れることができない、心に深く刻み込まれた悲劇です。

 「県内移設反対」――21世紀の今になって新しい海兵隊の基地をつくることは絶対に許さないという県民の総意は、こうした歴史の痛みと苦しみの累積の上につくられたものなのです。総理には、そういう認識がありますか。

 そういう認識が少しでもあるならば、アメリカに命じられるまま、「使い走り」のように、県民の頭越しに力ずくで新基地建設を押し付けるなどという愚かな行動はとれないはずです。

 沖縄問題を解決する道は一つしかありません。それは、「辺野古移設」の日米合意を白紙に戻し、普天間基地の無条件撤去を求めて、米国政府と本腰の交渉を行うことです。そのことを総理に強く求めて、私の質問を終わります。


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