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日本共産党

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赤旗

日本共産党第29回大会

中央委員会を代表してのあいさつ

2024年1月15日 幹部会委員長 志位和夫

 代議員および評議員のみなさん。来賓のみなさん。

 私は、中央委員会を代表して、大会へのあいさつを行います。

 大会決議案は、発表から2カ月間、全体としてきわめて積極的に受け止められ、討論によって深められてきました。全党討論を踏まえての全面的な解明は、田村智子副委員長の中央委員会報告にゆだねたいと思います。

 私は、この大会の中心点のいくつかについて発言しておきたいと思います。

いかにして東アジアを戦争の心配のない平和な地域にしていくか

 まずお話ししたいのは、いかにして私たちのすむ東アジアを戦争の心配のない平和な地域にしていくかについてであります。

 昨年12月19日から27日、日本共産党代表団は、インドネシア、ラオス、ベトナム――東南アジア3カ国を歴訪しました。

 この訪問は、4年前の大会で行った綱領一部改定で東南アジア諸国連合(ASEAN)が行っている平和の地域協力のとりくみを「世界の平和秩序への貢献」と位置づけたことを踏まえてのものであります。

 訪問の詳細な内容は、「しんぶん赤旗」1月1日付に掲載された「緊急報告」で明らかにしています。ここでは訪問を通じて私たちが得た認識の発展、党の外交方針の発展方向についてお話しさせていただきたいと思います。

ASEANの最新の到達点――平和をつくる多くの英知が

 第一は、ASEANの努力の最新の到達点を生きた形でつかむことができ、そこから平和をつくる多くの英知を学ぶことができたということです。

 どうやってASEANは、あの地域を平和の共同体に変えたか。インドネシアでの意見交換で、先方が強調したのは、東南アジアには良い"対話の習慣"があるということでした。私が、10年前にASEANの本部を訪問したとき、ASEANでは域内で年1000回もの会合を開いていると聞いて驚いたと話しますと、「今では1500回以上です」と、10年間で1・5倍になった、同時に、「量だけでなく質も重視しています」と聞き、さらに驚きました。ASEANで"対話の習慣"がつくられたのは、「多様性の産物」だ、東南アジアは、民族、言語、宗教、経済発展、社会体制など多様性に富んでいる、多様性があるからこそ対話せずにはいられなかった、「対話は日常生活、生き方そのものなのです」と語られたことも、たいへんに印象深いものでした。

 なぜASEANは、平和の地域協力の流れを、東アジアサミット(EAS)やASEANインド太平洋構想(AOIP)のように、域外の諸国――東アジア全体に広げようとしているのか。それに対する答えは、東南アジアの平和と安定のためには、北東アジアの平和と安定が大切だ、だから"対話の習慣"を東アジア全体に広げる努力をしているというものでした。平和と安定があってこそ繁栄があるということが強調されました。この話を聞いて、私は、「平和でこそ商売繁盛」という民商・全商連のみなさんの合言葉を思い出しました。ASEANの願いは、日本の中小業者のみなさんの願いと一緒だということを強調したいと思います。(拍手)

 米中の対抗が強まるもとで、ASEANはどう対応しようとしているのか。インドネシアのASEAN本部での意見交換で、私が「ASEAN成功の秘訣(ひけつ)は何ですか」と聞きますと、大国の関与を歓迎するが、どちらか一方の側に立つことはしない――米国の側にも立たないし、中国の側にも立たない、中立性と自主独立を貫いていく、ASEANの中心性と結束ということが強調されました。自主独立という点で、日本共産党の立場と相通じるものがあるではありませんか。

 みなさん。これらのASEANの努力には、日本外交に生かすべき、多くの宝のような教訓があるのではないでしょうか。(拍手)

日本共産党の「外交ビジョン」への評価――二つの発展方向について

 第二は、日本共産党が2022年1月に提唱した「外交ビジョン」――日本が進むべき道は、ASEANと協力して、AOIPを共通の目標にすえ、東アジアサミット(EAS)を活用・発展させて、東アジアを戦争の心配のない平和な地域にしていく、憲法9条を生かした平和外交にこそあるという方針が、どこでも高く評価され、歓迎をもって受け止められたということであります。

 インドネシアのASEAN本部で行った意見交換では、わが党の「外交ビジョン」について、ASEANと同じ線に沿っているもので高く評価するという反応が返ってきました。2024年のASEAN議長国・ラオスと、ASEAN加盟国であり国際社会での役割を高めているベトナムで、それぞれの政権党の党首と会談し、協力してAOIPを成功させていくことが確認されたことは、重要な意義をもつものと思います。

 同時に、今回の訪問の体験を踏まえ、私は、党の「外交ビジョン」を、次の二つの点で発展させることが重要だと考えます。

 一つは、ASEANと協力してAOIPを成功させるとりくみとともに、北東アジアが抱える諸問題を解決するための独自のとりくみを強めていく――そうした「二重の努力」が必要だということであります。

 一連の意見交換を通じて、東南アジアには良い"対話の習慣"があるが、北東アジアにはそれが不足している――このような違いがあることを痛感しました。なぜかと考えてみたときに、北東アジアには東南アジアと比較して次のような困難があります。

 第一に、日米・米韓という軍事同盟と外国軍基地が存在しています。

 第二に、米中の覇権争いの最前線に立たされています。

 第三に、朝鮮半島で戦争状態が終結していません。

 第四に、日本の過去の侵略戦争と植民地支配に対する反省の欠如という歴史問題があります。

 これらの北東アジアに固有の諸問題の解決を、「ASEANまかせ」というわけにはいきません。北東アジアの問題は北東アジアの力で解決する努力が必要になります。

 この点で、今回の訪問で、日本共産党が、昨年3月に発表した提言「日中両国関係の前向きの打開のために」などの努力を行っていることを紹介しますと、共通して高い注目や評価が寄せられたことはうれしいことでした。同時に、朝鮮半島の問題、歴史問題、台湾問題を含め、北東アジアが抱える諸問題を外交的に解決していくための政策提言を、さらに豊かに発展させていきたいという決意を、ここで申し上げておきたいと思います。(拍手)

 いま一つは、東アジアの平和構築を成功させるためには、政府間のとりくみだけでなく、国民的・市民的運動が必要だということであります。この点では、核兵器禁止条約の成立が重要な教訓を示しています。この条約は、各国政府と市民社会の共同の成果でした。被爆者を先頭とした市民社会の運動なしにはこの条約はありえませんでした。同じことは、東アジアの平和構築にも言えるのではないでしょうか。各国政府・政党・市民社会が共同したとりくみを行ってこそ、それは達成されるのではないでしょうか。私が、そのように話したところ、三つの国のそれぞれで賛意が得られたことも報告しておきたいと思います。

 ベトナムでの意見交換で、私が、北東アジアと東南アジアの違いについて話しますと、先方から、とても興味深く深みがある分析だという感想とともに、同時に共通点もあるということが強調されました。それは北東アジアでも東南アジアでも、それぞれの地域の民衆は、みんな平和を望んでいるということです。私もその通りだと思います。本当の平和は民衆の草の根の運動に支えられてこそつくることができます。そこで、一つの提案をしたい。東アジアの平和構築のために、さまざまな形で国民的・市民的運動にとりくむことを、この大会として国内外に呼びかけることを提案したいと思いますが、いかがでしょうか。(拍手)

憲法9条をもつ日本こそが、北東アジアで"対話の習慣"をつくる先頭に

 第三は、東アジアに平和をつくろうとするならば、日本の政治を変えることが不可欠だということであります。

 ベトナム共産党との会談のなかで、ベトナムがこの3カ月の間にバイデン米大統領と習近平中国主席の双方をハノイに迎えて首脳会談を行ったことが話題になりました。注目すべきは、ベトナムのグエン・フー・チョン書記長が、この2人との首脳会談で、米中双方に対して、自主独立と全方位外交というベトナム外交の基本方針とともに、安全保障の「四つのノー」――軍事同盟を結ばず、第三国に対抗するために他国と結託せず、外国軍基地の設置を認めず、武力行使・威嚇をせず――の方針を表明したことです。この方針は、大国の関与を歓迎するが、どちらか一方の側に立つことはしないというASEANの大方針とも合致するものだと思います。

 ところが日本政府はどうなっているでしょうか。「四つのノー」ではなくて、「四つのイエス」になってしまっているではありませんか。軍事同盟イエス、ブロック政治イエス、外国軍基地イエス、武力の行使・威嚇イエス――「専守防衛」を投げ捨てた大軍拡をやっています。米国いいなりで軍事力増強に突き進むのでなく、現にASEANが実践しているような自主自立の外交によって平和をつくる道に転換することこそ、日本に強く求められているのではないでしょうか。(拍手)

 みなさん。日本の政治を変え、憲法9条をもつ日本こそが、北東アジアで"対話の習慣"をつくっていく、平和をつくっていく先頭に立つことができるように、大いに力をつくそうではありませんか。(拍手)

日本の政治の行き詰まりを、どうやって打開していくか

 みなさん。次にお話ししたいのは、現在の日本の政治の行き詰まりを、どうやって打開していくかについてであります。

腐敗政治、経済無策、戦争国家、人権後進国――自民党政治の全体が末期的状況

 岸田政権はいよいよ末期的な状況に追い詰められています。同時に、今起きている問題は、どれをとっても自民党内で政権のたらいまわしをすれば解決するという問題ではありません。自民党政治の全体が末期的な状況におちいっています。

 腐敗政治......第一は、底なしの腐敗政治であります。「しんぶん赤旗」日曜版のスクープに端を発した自民党の政治資金パーティーをめぐる裏金疑惑は、ついに検察当局を動かし、政権党を揺るがす一大事件に発展しつつあります。巨額の裏金問題は、安倍派、二階派だけでなく、麻生派、岸田派を含めた自民党全体の組織的犯罪であることが重大であります。同時に、その中でも安倍派の裏金づくりが突出しています。長期に政権を握り、「数の力」で強権的な政治を進めてきた安倍派を支えていたのが巨額の裏金だったことは、許しがたいことではありませんか。(拍手)

 深刻なのは、これだけの大問題が起こっても、岸田政権はもとより、自民党のなかから真相解明の動きがまったく出てこないということです。誰が、どれだけの裏金をつくったのか、裏金を何に使ったのか、徹底的な真相解明が必要であります。「朝日」の川柳欄に、「赤旗に白旗あげる自民党」(笑い)という一句が掲載されました。日本共産党は、自民党に文字どおりの「白旗」をあげさせるまで、引き続き巨額の裏金システムの全容を究明する先頭に立って奮闘する決意を表明するものです。(拍手)

 この問題の根本には、日本の政界に巣くう歴史的な腐敗構造があります。1980年代末以降、金権腐敗事件が相次ぎ、「政治改革」が唱えられました。しかし「小選挙区制の導入」に問題がすり替えられ、腐敗の根源――企業・団体献金は温存されました。ニセの「政治改革」のツケが、いま巨額の裏金システムという形で噴き出しているのであります。

 問題の根本的な解決の道は、企業・団体献金を、パーティー券によるものも含めて全面禁止することにあります。日本共産党は、そのための法案を国会に提出してきました。みなさん。腐敗政治一掃、企業・団体献金禁止の一点で、国民的な運動を起こし、日本にまともな民主政治をとりもどそうではありませんか。(拍手)

 経済無策......第二は、「経済無策」であります。岸田政権の「経済無策」に対して、国民の強い批判と怒りが広がっています。その行き詰まりを象徴しているのは、これまでの政策の「失敗」を自ら認めながら、「失敗」した道を転換する立場も能力もないことであります。

 岸田首相は、昨年の国会で長期の経済停滞の要因に「コストカット型経済」をあげ、その脱却を掲げました。しかし、やっていることは、労働法制の規制緩和を続けて大企業の人件費のコストカットを応援し、法人税のコストカット、社会保険料のコストカットを進めるという、自らが破綻を認めた道の繰り返しであります。

 税の問題でも同じです。昨年12月に発表された「自民党税制改正大綱」では、40年来進めてきた法人税の引き下げ政策が、投資の拡大や賃上げにつながらず、企業の内部留保を増加させただけで、「意図した成果を上げてこなかった」と、その「失敗」を認めました。ならば、長年続けてきた「法人税減税=消費税増税」の路線の根本的転換こそ必要ではありませんか(拍手)。ところが、やっていることは、あいも変わらぬ大企業・富裕層減税であり、国民が切望している消費税減税に問答無用で背を向けることです。

 「コストカット型経済」でも、法人税減税を繰り返した「税制改革」でも、自らの「失敗」を認めながら、それを是正することができない。これを政策破綻と言わずして何というのか。なぜこうなるのか。財界・大企業から献金をもらい、その見返りに、財界・大企業の目先の利益に奉仕する政治のゆがみが根底にあります。みなさん。この政治のゆがみを大本から変える日本共産党の「経済再生プラン」を実行することこそ、暮らしを守り、経済を再生する希望ある道であることを、大いに語り広げようではありませんか。(拍手)

 「戦争国家」......第三は、「戦争国家づくり」であります。この間、自公政権は、歴代自民党政権が「平和国家」の「理念」としてきたものを、ことごとく投げ捨てる暴走を続けています。

 集団的自衛権行使容認と安保法制の強行、敵基地攻撃能力の保有、5年間で43兆円の大軍拡、殺傷武器の輸出解禁などは、どれも歴代自民党政権が、憲法9条のもとでは許されないとしてきたものであり、その一つひとつが、立憲主義と民主主義を根底から破壊する暴挙であります。

 日本が米国いいなりに「戦争する国づくり」を進めていることは、北東アジアの軍事対軍事の悪循環を加速させ、東アジアの平和と安定を危うくし、「日本を守る」どころか日本国民を深刻な危険にさらしています。

 軍拡増税に国民の強い批判が集中していますが、大軍拡は、社会保障削減をはじめあらゆる分野で暮らしの予算を圧迫し、政府の「少子化対策」の財源の迷走にしめされるように、暮らしのための財源確保を不可能にしています。

 こうして自民党政治が進めている「戦争する国づくり」は、日本国憲法、日本の平和と安全、国民の暮らしと、いよいよ両立不可能な地点にまできています。日本とアジアに災厄をもたらす無謀な道の暴走を断固として止めようではありませんか。(拍手)

 これらのすべての根底に、日米軍事同盟を「神聖不可侵」なものとして絶対視する政治があります。みなさん。こうした"亡国の政治"から抜け出し、わが党の「外交ビジョン」が示すように、憲法9条を生かした外交の力で東アジアに平和をつくる理性ある政治への転換をはかろうではありませんか。(拍手)

 人権後進国......第四は、人権後進国という問題です。ここでも自民党政治こそが最大の障害となっています。この間、ジェンダー平等にむけて、日本国民の意識も市民社会のとりくみも大きく前進しました。選択的夫婦別姓も、同性婚も、圧倒的多数の国民が支持しています。

 ところが、政治がその足を引っ張っています。戦前の家父長的家族観を押し付ける勢力が政治の中枢に居座り、男女賃金格差の解消を言うが、女性が結果として差別的待遇の下に置かれていること――「間接差別」を理解することすらできない政治の立ち遅れが、ジェンダー平等を進める最大の障害となっています。日本を人権後進国から先進国にしていくためにも、自民党政治を変えなければならないということを、私は訴えたいと思います。(拍手)

どうやって日本の前途を開くか――二つの大きなカギ

 腐敗政治、「経済無策」、「戦争国家づくり」、人権後進国――どの分野でも、岸田政権に一刻たりとも日本のかじ取りを任せられないことは明らかであり、日本共産党は岸田政権を退陣に追い込むために全力をあげて奮闘するものです(拍手)。同時に、これらの問題は、そのすべてが自民党政治が生み出したものであり、自民党政治そのものを終わらせることが、いま強く求められているのではないでしょうか。

 それではどうやってその道を開くか。日本の政治を変える道は、根本的には共闘しかありません。いま野党が結束して、自民党に代わる新しい日本の姿を指し示すことが強く求められています。この間、市民連合の尽力で、野党各党が総選挙にむけて5項目の共通政策に基本的に合意するという前進もつくられています。日本共産党は、市民と野党の共闘の再構築のために、引き続き可能な努力を続けていきます。

 同時に、率直に言って困難もあります。とくに日本共産党との協力を否定する動きがくりかえし持ち込まれているもとで、共闘の前途を楽観視することはできません。こうした障害をのりこえて、どうやって日本の前途を開くか。

 二つの大きなカギがあります。

 第一のカギは、あらゆる分野で国民運動を起こすことであります。腐敗政治一掃、暮らし最優先の経済政策への転換、大軍拡をやめ外交の力で平和をつくる、人権後進国から先進国に――あらゆる分野で国民の緊急の要求を掲げた共同を広げ、それを一つに合流させて、自民党政治を包囲する広大な国民的共同をつくりあげようではありませんか。それこそが市民と野党の共闘の再構築にとっても最大の力となるでしょう。私は、この場で、心から呼びかけたい。自民党政治を終わらせる国民的大運動を起こそうではありませんか。(拍手)

 第二のカギは、日本共産党の総選挙での躍進であります。日本がこの政治の行き詰まりからいかにして抜け出すか、進路を模索する国民に、自民党政治に代わる希望ある別の道があることを、わが党の「外交ビジョン」、「経済再生プラン」、「企業・団体献金禁止法案」などを縦横に語って指し示し、総選挙では日本共産党の躍進を最優先の課題にすえ、最大の力を集中し、必ず躍進を果たそうではありませんか。(拍手)

 2015年9月に、わが党が市民と野党の共闘という新しい挑戦を開始し、それが大きな波をつくることができたのは、安保法制反対・立憲主義回復を求める国民的大運動と、2013年~14年の日本共産党の国政選挙での連続躍進という二つの力があわさってのものでした。みなさん。国民的大運動と日本共産党の躍進によって、自民党政治を終わらせるたたかいに、新たな情勢のもとで、新たな意気込みで挑戦しようではありませんか。(拍手)

党建設の歴史的教訓と大局的展望について

 みなさん。日本の未来をひらく強く大きな党をいかにしてつくっていくかは、この大会に課せられた最大の歴史的任務であります。

 この半年余にわたってとりくまれた「党勢拡大・世代的継承の大運動」を通じて、全党の大奮闘によって、新たに4126人の新入党員を迎えました。大会として、新しい人生の一歩を踏み出した全国の新しい同志のみなさんに、心からの祝福と歓迎のメッセージを送ります。(拍手)

 「大運動」の通算で、「しんぶん赤旗」の読者を、日刊紙、日曜版、電子版あわせて3413人増やし、後退傾向から前進へと転じる一歩をしるすことができました。全国のみなさんの大奮闘のたまものであり、中央委員会を代表して心からの敬意と感謝を申し上げるものです。

 「大運動」の評価、教訓と課題、今後の党建設の目標と方針については、中央委員会報告にゆだね、私は、党建設の歴史的教訓と大局的展望について報告したいと思います。

およそ10年にわたって新入党員の「空白の期間」ともいうべき時期が

 大会決議案は、党建設の現状について、率直に次のようにのべています。

 「党は、1980年代以降、長期にわたる党勢の後退から前進に転ずることに成功していない。ここにいまあらゆる力を結集して打開すべき党の最大の弱点がある。その要因には、過去の一時期、党員拡大を事実上後景においやるという主体的要因もあったが、最大の要因は、わが党を政界から排除する『日本共産党をのぞく』の壁がつくられたこと、わけても90年を前後しての旧ソ連・東欧の旧体制の崩壊という世界的激動と、これを利用した熾烈(しれつ)な反共攻撃の影響があった」

 この部分について、全党討論で、「もっと解明をしてほしい」という声が寄せられています。「党勢の後退でなぜこんなに苦労しているのか」という気持ちは、全党のみなさんが痛切にもっておられることだと思います。私たちは、大会にむけて、中央としての党建設のとりくみの歴史的な自己検討を行いました。また昨年8月1日の党の現勢調査の結果の詳細な検討を行いました。それらを踏まえて報告を行いたいと思います。

 まず二つのデータを報告したいと思います。

 第一は、年平均の新入党者の推移であります。年平均の新入党者は、概数で、1970年代は年3万人、80年代は年1万5千人、90年代は年6千人、2000年代は年1万1千人、2010年代は年8千人となっています。90年代が特に大きく落ち込み、およそ10年間にわたって新入党者の「空白の期間」ともいうべき時期がつくられています。

 第二は、党員の「党歴構成」であります。新入党者の「空白の期間」は、党の現勢調査で明らかになった「党歴構成」にはっきりと反映しています。現在、党歴0年~9年が17・7%、10年~19年が14・0%、20年~29年が11・0%、30年~39年が8・0%、40年~49年が19・5%、50年以上が29・8%であり、党歴30年~39年に大きな落ち込みがあります。

 党の年齢構成でみても、60代以上が多数を占めており、50代以下がガクンと落ち込んでいます。わが党が、60代以上のベテランの同志を多数擁しており、ベテランの同志が頑張っておられることは、党にとっての宝であり、大きな強みであります。問題は、50代以下が落ち込んでいることにあります。

中央の党建設の指導上の重大な弱点と、今後の党建設に生かすべき最大の教訓

 なぜ新入党者の「空白の期間」が生まれたのか。

 その客観的要因としては、大会決議案がのべているように、1980年の「社公合意」を契機として「日本共産党をのぞく」の壁がつくられたこと、わけても90年を前後しての旧ソ連・東欧の旧体制の崩壊とそれを利用した熾烈な反共攻撃の影響があったことは間違いありません。

 同時に、「空白の期間」が生まれた要因には、そうした客観的要因だけに解消できない、重大な主体的要因がありました。それは、過去の一時期、「党員拡大を事実上後景においやる」という誤った方針がとられたことであります。

 1987年8月に開催された第17回党大会第8回中央委員会総会で、それまではほぼ一貫して「党員拡大が党建設の根幹」とされていた党建設の方針が、「党員拡大と機関紙拡大が党勢拡大の二つの根幹」という方針に変更されました。

 「二つの根幹」という方針は、機関紙拡大を強調するために出された方針でしたが、党員拡大を事実上後景においやり、自然放任に近い状態が続き、さらに党員拡大を抑制する傾向もあり、90年代に党員拡大数が極端に落ち込み、新入党者の「空白の期間」をつくる重大な一因となりました。

 この党建設上の方針の誤りは、2000年の第22回党大会で是正がはかられました。この大会での決議および中央委員会報告で、「『二つの根幹』は正確ではなかった」と反省を明確にし、「党建設・党勢拡大の根幹は、党員拡大である。根幹とは、党のあらゆる活動――国民の要求にこたえる活動、政策宣伝活動、選挙活動、議会活動、機関紙活動などを担う根本の力が、党に自覚的に結集した党員であるということである」と正確に定式化されました。それ以降は、この方針が揺るがずに堅持され、党員拡大にたいして全体として自覚的努力が払われるようになりました。それは90年代に比べて、2000年代に新入党者が増加したことにも示されています。

 しかし問題は、党員拡大に「空白の期間」が存在すること、その困難を打開するには、特別の集中した努力が必要であることを、全党の自覚とし、特別のとりくみのイニシアチブを発揮する点で、中央の指導が十分であったとはいえないことにあります。党員拡大の「空白の期間」の存在は、党建設につくられたいわば大きな傷痕であり、方針を是正すれば、自然にそうした傷痕による影響がなくなるわけではありません。傷痕がもたらす党建設上の困難を自覚し、それを打開するための特別のとりくみが必要でした。中央として、一連の努力を行ってきましたが、問題点を自覚してのとりくみのイニシアチブという点では十分であったとはいえませんでした。

 そのために「空白の期間」の影響が、次の世代へと連鎖し、後退傾向が続くという結果となりました。党員拡大の「空白の期間」の存在は、党の年齢構成が比較的若かった時期にはさほど問題になりませんでしたが、年齢構成が高まるにつれ、50代以下の「働き盛り」の世代がガクンと少なくなるという問題として表面化することになりました。党員拡大の立ち遅れというのは、すぐには影響があらわれなくても、10年、20年、30年先に影響があらわれてくるわけです。

 私は、ここに中央の党建設の指導上の重大な弱点があったことを率直に明確にしたいと思います。そして、ここから今後にどういう教訓を導くかが重要であります。いついかなる時でも党員拡大の自覚的なとりくみを継続的に発展させ、絶対に「空白の期間」をつくらないこと、かりに何らかの事情で「空白の期間」が生まれた時には、それをただちに打開する特別のとりくみを行うこと、党員拡大を10年先、20年先の党の将来を展望しての戦略的課題として位置づけることを、今後の党建設に生かすべき最大の教訓としたいと思います。(拍手)

党勢を長期の後退から前進に転じる歴史的チャンスの時期

 同時に、大会決議案が強調しているように、いま私たちは、「党勢を長期の後退から前進に転じる歴史的チャンスの時期を迎えている」ことをつかむことが大切であります。

 客観的条件としては、すでにお話ししてきたように、自民党政治の行き詰まりが内政・外交ともに極限に達しており、多くの国民が自民党に代わる新しい政治を求めており、それにこたえられるのは日本共産党であります。かつての「日本共産党をのぞく」の壁は崩壊し、「壁」を新たにつくろうという動きもありますが、簡単に逆戻りすることはないし、またそうした逆行を決して許してはなりません。

 1990年代初頭には、「社会主義崩壊」論、「資本主義万歳」論が氾濫しましたが、今では、貧富の格差の地球的規模での拡大、気候危機の深刻化などのもとで、「資本主義というシステムをこのまま続けていいのか」という問いかけが起こり、社会主義に対する新たな期待と注目が生まれています。大会決議案が指摘しているように、大局的・客観的にみるならば、日本はいま新しい政治を生みだす"夜明け前"とも言える歴史的時期を迎えているのであります。

 党の主体的条件としては、日本共産党は、先人たちの苦闘、全党の奮闘によって、世界的にもまれな理論的・路線的発展をかちとってきました。わが党は、マルクス、エンゲルスの本来の理論を探求・発掘・復活させ、綱領路線の発展にとりくんできましたが、その内容は世界でも他に例のない先駆的で誇るべきものであります。そのうえに立って、大会決議案では、「人間の自由」という角度から未来社会論――社会主義・共産主義論をさらに発展させました。

 党建設という点でも、10年前の2014年に開催した第26回党大会は、「世代的継承」を「緊急かつ切実な大問題」「戦略的大事業」として位置づけ、全党あげてここに力を注ぐことを呼びかけ、新たなとりくみが始まりました。4年前の第28回党大会の「第二決議(党建設)」では、「130%の党づくり」を目標とするとともに、青年・学生と労働者、30代~50代などの世代で党勢を倍加するという目標を打ち出しました。これらの方針が、党員拡大の「空白の期間」による困難を克服するという観点に照らして考えるならば、いかに重要な意義をもつ方針であるかは明瞭であります。

 そして、これらの方針のもとに、全党のみなさんの努力によって、党員拡大を日常不断に追求する気風が全党に広がり、民青同盟が2年連続で拡大目標を超過達成したことなど青年・学生分野で新たな前進がはじまり、職場支部や真ん中世代でも前進の萌芽が全国で生まれていることは、強く大きな党づくりにとっての大きな希望であります。

 全国のみなさん。これらの客観的条件、主体的条件を全面的に生かし、全党の力を一つに集め、この大会を、党建設の歴史的後退にピリオドをうち、前進・飛躍へと転じる歴史的大会にしていこうではありませんか。(拍手)

 中央委員会として、歴史的な指導上の弱点の反省に立って、現状を前向きに打開し、強く大きな党をつくり、日本の未来、党の未来を開くために、全党のみなさんと心を一つに、全力をあげて奮闘する決意を表明するものであります。(拍手)

大会決議案が明らかにした社会主義・共産主義論の意義について

 みなさん。私は、最後に、大会決議案第4章が解明した社会主義・共産主義論について話したいと思います。

 決議案のこの章に対して、「ワクワクして読んだ」「目の前が明るく開かれた」など、多数の積極的な歓迎の声が寄せられています。決議案は、「『人間の自由』こそ社会主義・共産主義の目的であり、最大の特質である」とのべたうえで、「三つの角度」から「人間の自由」が花開く未来社会の魅力を明らかにしています。それは"21世紀の日本共産党の「自由宣言」"とも呼ぶべき文書となっています。

 その理論的内容については、中央委員会報告が解明します。私も、「しんぶん赤旗」日曜版・新年合併号で若干踏み込んでお話ししました。参考にしていただければと思います。ここでは大会決議案が明らかにした社会主義・共産主義論の意義について、若干の点をのべておきたいと思います。

「人間の自由」こそ、マルクス、エンゲルスが一貫して求め続けたもの

 第一は、大会決議案の解明が、科学的社会主義の本来の立場にたったものであるということであります。

 よく社会主義というと「自由がない」というイメージで語られます。しかし、それとは正反対に、「人間の自由」こそ、マルクス、エンゲルスが一貫して求め続けたものでした。彼らは、資本主義を乗り越える未来社会を語るときに、「自由」という言葉を、初期の時代から晩年にいたるまで、いくどとなく繰り返しています。

 2人が若い時期に書いた『共産党宣言』は、共産主義社会の特徴を、「各人の自由な発展が、万人の自由な発展の条件であるような一つの結合社会」と特徴づけました。1848年の著作です。

 また、マルクスが『資本論』で到達した未来社会論の最大の特徴は、労働時間の抜本的短縮によって、すべての人間に十分な自由時間――「真の自由の国」が保障され、その時間を存分につかって自分自身の力を自由に発展させることのできる社会というところにありました。マルクスがこの草稿を執筆したのは1865年です。

 さらに、マルクスは、晩年にフランス労働党の綱領草案作りを依頼されたさいに、「生産者は生産手段を所有する場合にはじめて自由でありうる」と、生産手段の社会化を「自由」というキーワードと一体に論じました。1880年のことです。

 大会決議案の解明は、日本共産党が、マルクス、エンゲルスの未来社会論の本来の輝きを探求、発掘し、綱領路線を発展させてきた到達点に立ったものであるということを、私は、まず強調したいと思います。

国民の疑問や関心から出発して、未来社会論を語るうえで、最も合理的な組み立て

 第二は、大会決議案は、未来社会論と「人間の自由」について、「三つの角度」から整理していますが、これは国民の疑問や関心から出発し、それにかみ合って、党綱領の未来社会論を分かりやすく語るうえで、最も合理的な組み立てになっていると思います。

 国民のみなさんと資本主義、社会主義の体制にかかわる対話をするときに、出発点になるのは、格差拡大、気候危機など、資本主義のもとで現に深刻になっている矛盾だと思います。そういう矛盾がどこから生まれてくるのか。資本主義に固有の「利潤第一主義」から生まれてきます。生産手段の社会化によって、「利潤第一主義」から自由になることで、人間は、搾取や抑圧、貧困や格差、環境破壊などから自由になり、「人間の自由」は飛躍的に豊かなものになります。この角度を「第一の角度」にすえることで、国民の関心にかみ合う形で、私たちが追求する未来社会像とつながるチャンネルができると思います。

 そのうえで、未来社会における真の自由の輝きは、実はその先にある。すなわち「人間の自由で全面的な発展」のなかにこそあることを、決議案では「第二の角度」にすえています。この解明は、いま多くの国民、とくに若い世代が、長時間労働を強いられ、自由な時間が持てず、自分のやりたいことが思う存分できず、自分の持っている可能性が実現できない状態に置かれているもとで、切実に響いて受け止められる解明だと思います。

 それでも、「旧ソ連や中国のような自由のない社会にならないか」という不安も残るでしょう。それに対しては「第三の角度」の解明――発達した資本主義国を土台にして社会変革にとりくむ日本の場合には、そういう心配は絶対に起こり得ない、「人間の自由」という点でもはるかに豊かな可能性が開花するという解明が力を発揮すると思います。

 大会決議案の解明を受けて、「未来社会論がうんと語りやすくなった」という感想が寄せられていますが、そういう力を発揮することは間違いないと、私は、確信をもっていいたいと思います。(拍手)

党建設を後退から前進に転じるうえで、決定的な力を発揮する

 そして第三は、党建設を後退から前進に転じるうえで、大会決議案の解明が大きな威力を発揮するだろうということです。

 さきほど、党建設の歴史的教訓についてのべました。党勢が後退した主体的要因について詳しくのべましたが、客観的要因の最大のものとしては社会主義・共産主義の問題があると思います。

 1960年代~70年代の前半ぐらいまでは、「社会主義」について多くの国民が抱いていたイメージは、「いろいろと問題はあるが、それでも地球上の4分の1の地域で現に存在している体制」というものだったと思います。それが90年を前後しての旧ソ連・東欧の旧体制の崩壊を境に、「失敗が証明された体制」というように変化しました。わが党は、崩壊したのは社会主義とは無縁の覇権主義と専制主義の体制であり、社会主義の本当の値打ちが輝くのはこれからだと胸を張って訴えました。しかし、この世界的激変が、党建設、とくに若い世代のなかでの党づくりの大きな障害になったことは疑いありません。

 ところが、それから30年余をへて、格差拡大や環境破壊など世界資本主義の矛盾が噴き出すもとで、「人類はこの体制でやっていけるのか」という疑問の声が広がり、社会主義への新しい注目や期待が広がる状況が、世界でも日本でも生まれています。

 その時に、私たちが、大会決議案が明らかにした社会主義・共産主義論――「人間の自由」こそ私たちのめざす未来社会の最大の特徴だということを、大いに語り広げるならば、強く大きな党をつくるうえでの決定的な力になることは、間違いないのではないでしょうか。(拍手)

 すでにその威力は、大会決議案のこの解明に共感して、少なくない方々が、党への魅力を実感し、新たに党に入っているという事実が証明しています。

 みなさん。大会決議案が明らかにした未来社会論を縦横に語り、強く大きな党をつくる力にしていこうではありませんか。そのことを訴え、この大会がわが党の行く手を照らす大会として大成功をおさめることを強く願って、私のあいさつを終わります。(拍手)

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