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日本共産党

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赤旗

第8回中央委員会総会

綱領一部改定案についての提案報告

2019年11月4日 幹部会委員長 志位和夫

 

目次

一部改定案の基本的な考え方と、改定の主要な内容について

  • □二〇世紀の人類史の変化の分析にたって、二一世紀の世界の発展的な展望をとらえる
  • □主要な改定の三つの内容――世界情勢論の組み立ての一定の見直しも

綱領第七節「二〇世紀の世界的な変化と到達点」――二つの点を補強

  • □人権の問題を補強――人権の擁護・発展は「国際的な課題となった」
  • □植民地体制の崩壊を「世界の構造変化」と明記し、変化を立体的に把握できるように

綱領第八節――「社会主義をめざす新しい探究が開始……」の削除を提案する

  • □二〇〇四年の綱領改定における判断には合理的根拠があった
    • ・判断の基準にした立場について
    • ・中国について綱領でのべている判断をもつにいたった経過
    • ・国際的な性格をもつ問題点については、節々で直接に伝えてきた
  • □中国の国際政治における問題点――前大会での批判と、この三年間の動き
    • ・第二七回党大会で「新しい大国主義・覇権主義の誤り」を具体的に指摘
    • ・この三年間、中国は問題点をいっそう深刻にする行動をとっている
    • ・「社会主義をめざす新しい探究が開始」された国と判断する根拠は、もはやなくなった
  • □ベトナムとキューバについて
  • □ソ連論は、二〇世紀論を補足するものとして位置づける
    • ・「二つの体制が共存する時代」という特徴づけは成り立たなくなった ・二〇世紀に起こった「世界の構造変化」との関係でソ連論を位置づけた

綱領第九節――「世界の構造変化」が生きた力を発揮しはじめている

  • □二一世紀の世界の発展的な展望を、二つの角度からとらえる
  • □一握りの大国から、世界のすべての国ぐにと市民社会に、国際政治の主役が交代した
    • ・「世界の構造変化」が世界史の本流としての力を発揮しはじめた
    • ・二一世紀の新しい特徴――諸政府とともに市民社会が大きな役割
  • □核兵器禁止条約――国際政治の主役交代を象徴的に示す歴史的出来事に
    • ・その画期的意義を戦後の核兵器問題の国際交渉の歴史のなかでとらえる
    • ・核保有大国を主役とする交渉は、矛盾と破綻に直面した
    • ・核兵器交渉の「主役交代」――逆流は「追い詰められ、孤立しつつある」
  • □平和の地域協力の流れ――東南アジアとラテンアメリカ
    • ・この流れが形成された根底にも、「世界の構造変化」がある
    • ・二つの地域の平和への動きは、発展の度合いを異にしている
  • □国際的な人権保障の新たな発展、ジェンダー平等を求める国際的潮流
    • ・「世界の構造変化」と、人権保障の豊かな発展
    • ・ジェンダー平等を求める国際的潮流の発展について

綱領第一〇節――世界資本主義の諸矛盾から、二一世紀の世界をとらえる

  • □世界資本主義の諸矛盾――貧富の格差の拡大、地球的規模での気候変動について
    • ・資本主義の諸矛盾、二つの世界的な大問題を特記 ・貧富の格差――世界的規模でも、発達した資本主義国の内部でも拡大の一途
    • ・気候変動――資本主義というシステムの根本からの変革が問われる
  • □アメリカ帝国主義、いくつかの大国で強まっている大国主義・覇権主義
    • ・アメリカの帝国主義的侵略性について
    • ・「世界の構造変化」をふまえた弾力的なアメリカ論を明記
    • ・いくつかの大国で強まっている大国主義・覇権主義について

綱領第一一節――国際連帯の諸課題――どんな国であれ覇権主義を許さない

綱領第四章――第三章の改定にともなって必要最小限の改定を行う

綱領第五章――発達した資本主義国での社会変革は、社会主義・共産主義への大道

  • □三つの流れから社会主義をめざす流れが成長・発展するという特徴づけを削除する
  • □第一八節の主題――発達した資本主義国での社会変革の意義
  • □前人未到の道の探求――特別の困難性とともに、豊かで壮大な可能性をもった事業
    • ・発達した資本主義国での社会主義的変革は二一世紀の新しい世界史的課題
    • ・「特別の困難性」とそれを打破する力について
    • ・「豊かで壮大な可能性」――その要素を五つの点で明記
  • □マルクス、エンゲルスが描いた世界史の発展の法則的展望にたって
  • □日本共産党が果たすべき役割は、世界的にもきわめて大きい

写真

(写真)報告する志位和夫委員長=4日、党本部

 中央役員のみなさん、インターネット中継をご覧の全国のみなさん、おはようございます。私は、幹部会を代表して、来年一月の第二八回党大会に提案する日本共産党綱領一部改定案についての提案報告を行います。綱領一部改定案は、文書で配布しておりますので、それを見ながらお聞きください。

 二〇〇四年の第二三回党大会での綱領改定から十六年が経過しました。改定された綱領は、その後の内外情勢の進展のなかで、全体としてその生命力が鮮やかに実証されています。戦後かつてない新しい共闘の流れが始まり、いよいよ綱領が規定した民主的改革の課題を現実のものとしていく時代がやってきました。

 今回の綱領一部改定は、綱領第三章・世界情勢論を中心に行い、それとの関係で第五章・未来社会論の一部を改定するものとします。なお、第四章・民主主義革命論についても、第三章の改定にともなって、必要最小限の改定を行うことにします。

一部改定案の基本的な考え方と、改定の主要な内容について

 まず綱領一部改定案の基本的な考え方と、改定の主要な内容について報告します。

二〇世紀の人類史の変化の分析にたって、二一世紀の世界の発展的な展望をとらえる

 二〇〇四年の綱領改定で、世界情勢論は全面的な改定が行われました。

 一九六一年に決めた綱領の世界情勢論のベースになっていたのは、当時、国際的定説とされていた「二つの陣営」論という世界の見方でした。すなわち、一方の陣営は、アメリカを中心とした「帝国主義の陣営」であり、戦争と侵略の政策を展開している。他方の陣営は、「反帝国主義の陣営」であり、平和、独立、社会進歩のためにたたかっている。この「二つの陣営」の対決が世界情勢を決めていくという見方でした。

 しかし、この世界論には大きな問題点がありました。その最大の問題点は、「反帝国主義の陣営」のなかにソ連覇権主義という巨悪が含まれていたことでした。それにくわえて、こうした図式的な二分法では、世界の生きた、豊かな、複雑な動きがとらえられないという問題点がありました。

 日本共産党は、この図式から抜け出して、科学的社会主義の立場から世界をありのままにとらえる努力を一歩一歩積み重ねてきましたが、二〇〇四年に改定された綱領は、「二つの陣営」論を基本的に清算し、新しい世界情勢論を明らかにするものとなりました。その全体を貫く根本的立場は、二〇世紀に進行した人類史の巨大な変化の分析にたって、二一世紀の世界の発展的な展望をとらえるというところにあります。

 こうした綱領の世界情勢論の根本的立場は、その後の世界の激動のなかで大きな生命力を発揮しています。そこでのべられた多くの命題は今日も正確で有効であります。そうした根本的立場および諸命題は、一部改定案に引き継ぐとともに、さらに発展させることにしました。

 同時に、この十六年間の国際情勢の進展とともに、見直しが求められる問題が生まれています。また、この間の国際情勢の進展のなかで、新しく綱領に盛り込むべき重要な動きも明瞭になってきています。

 一部改定案は、今日も正確で有効な諸命題については最大限そのまま引き継ぎつつ、見直しが必要な部分について修正を行い、新しく盛り込むべき問題について補強を行うという考え方にたって作成しました。

主要な改定の三つの内容――世界情勢論の組み立ての一定の見直しも

 その主要な改定の内容は、以下の三点であります。

 第一に、綱領第七節で、二〇世紀に起こった世界の変化のなかでも、植民地体制の崩壊が「世界の構造変化」というべき最大の変化だったことを明記したうえで、新たに第九節を設け、この構造変化が「二一世紀の今日、平和と社会進歩を促進する生きた力を発揮しはじめている」ことを、核兵器廃絶にむけた新たな前進、平和の地域協力の流れの形成・発展、国際的な人権保障の新たな発展などの諸点で、具体的に明らかにしました。

 第二に、現綱領第八節の「今日、重要なことは、資本主義から離脱したいくつかの国ぐにで、政治上・経済上の未解決の問題を残しながらも、『市場経済を通じて社会主義へ』という取り組みなど、社会主義をめざす新しい探究が開始され、人口が一三億を超える大きな地域での発展として、二一世紀の世界史の重要な流れの一つになろうとしている」との規定は、二〇〇四年の綱領改定時には合理的根拠のある規定でしたが、今日の中国の実態にてらして現実にあわなくなっており、これを削除することを提案しています。

 この改定は、この部分の削除にとどまらず、二一世紀の世界をどう見るかの全体にかかわる重要な改定であり、綱領の世界情勢論の全体の組み立ての一定の見直しを求めるものとなりました。

 第三に、第二の点ともかかわって、綱領第五章・未来社会論の最後の節――社会主義への発展の時代的・国際的条件をのべた第一七節――一部改定案では第一八節は、見直しを行いました。発達した資本主義国での社会変革が社会主義・共産主義への大道であること、そこには特別の困難性とともに、豊かで壮大な可能性があることをまとまってのべました。

 以下、具体的に改定の内容について提案報告を行います。

綱領第七節「二〇世紀の世界的な変化と到達点」――二つの点を補強

 まず綱領第三章の表題は、「世界情勢――二〇世紀から二一世紀へ」から、「二一世紀の世界」へと変更しました。

 現綱領の第七節について報告します。この節は、「二〇世紀の世界的な変化と到達点」を主題とした節であります。二〇世紀に人類が努力と苦闘によって達成した「人類史の上でも画期をなす巨大な変化」について、植民地体制の崩壊、国民主権の民主主義の発展、平和の国際秩序の三つの角度から叙述しています。この節は、二一世紀の世界をとらえるさいの土台となるきわめて重要な節であり、一部改定案では現綱領の叙述をそのまま引き継ぎ、二つの点で補強を行いました。

人権の問題を補強―人権の擁護・発展は「国際的な課題となった」

 第一は、二〇世紀に起こった世界的な変化の内容として、次のように人権の問題を補強したことであります。

 「人権の問題では、自由権とともに、社会権の豊かな発展のもとで、国際的な人権保障の基準がつくられてきた。人権を擁護し発展させることは国際的な課題となっている」

 二〇世紀は、人類社会がかちとった人権の流れが太く豊かに発展し、一九四五年の国連憲章、一九四八年の世界人権宣言、一九六六年の国際人権規約をはじめとする「国際的な人権保障」の仕組みがつくられたという点でも、画期的な進歩をなす世紀となりました。この立場から現綱領を補強しました。

 ここで、一部改定案が「人権を擁護し発展させることは国際的な課題となっている」と規定づけていることに注目してほしいと思います。第二次世界大戦までの時期は、人権問題は、国内問題とされ、外国からの口出しは無用という問題として扱われてきました。しかし、日本でもドイツでも、ファシズムと軍国主義による人権の蹂躙(じゅうりん)が、未曽有の犠牲を生んだ第二次世界大戦への道を開いたという歴史の教訓を踏まえ、戦後、「国際的な人権保障」という考え方が登場しました。二一世紀の世界においては、人権を擁護し発展させることは、単なる国内問題でなく、「国際的な課題」となった――国際社会における各国の義務となったという規定は、実践的にも大きな意義をもつものであります。

植民地体制の崩壊を「世界の構造変化」と明記し、変化を立体的に把握できるように

 第二は、二〇世紀に起こった世界的な変化のなかでも、植民地体制の崩壊のもつ意義を特記したことであります。 

 現綱領では、二〇世紀に起こった世界的な変化を、植民地体制の崩壊、国民主権の民主主義の発展、平和の国際秩序の三つの点から特徴づけています。そのどれもが人類史的意義をもつ偉大な変化ですが、この三つは並列のものではありません。

 三つのなかでも最大の変化は、植民地体制の崩壊によって、百を超える国ぐにが新たに政治的独立をかちとって主権国家になったことにありました。それは「世界の構造変化」とも呼ぶべき変化でした。

 他の二つの変化は、それぞれの発展過程がありますが、それぞれが植民地体制の崩壊という「世界の構造変化」によって大きく促進されることになりました。そもそも植民地支配は、民主主義や人権と両立しえません。その崩壊は、民族自決権をあらゆる人権の土台として世界公認の原理におしだすとともに、世界の民主主義と人権の流れの豊かな発展をもたらしました。また、植民地体制の崩壊は、世界の力関係を大きく変え、一九八〇年代以降の時期に国連総会で大国の無法な侵略が次々と断罪されるようになるなど、国連憲章にもとづく平和の国際秩序を発展させるうえでも巨大な力を発揮しています。

 以上を踏まえ、一部改定案では、第七節の結びに、「これらの巨大な変化のなかでも、植民地体制の崩壊は最大の変化であり、それは世界の構造を大きく変え、民主主義と人権、平和の国際秩序の発展を促進した」と明記しました。植民地体制の崩壊を「世界の構造を大きく変えた」――「世界の構造変化」と明記し、この変化を軸に、三つの変化を立体的に把握できるように、叙述を補強しました。

綱領第八節――「社会主義をめざす新しい探究が開始……」の削除を提案する

二〇〇四年の綱領改定における判断には合理的根拠があった

 次に現綱領の第八節について報告します。

 現綱領の第八節は、「社会主義の流れの総括と現状」を主題にした節ですが、大きな改定が必要になりました。

 その最大の問題点は、現綱領が、中国、ベトナム、キューバについて、「社会主義をめざす新しい探究が開始」され、「人口が一三億を超える大きな地域での発展として、二一世紀の世界史の重要な流れの一つとなろうとしている」と規定していることです。

〈判断の基準にした立場について〉

 二〇〇四年の綱領改定のさい、わが党は、こうした評価を、私たち自身の自主的判断として行いました。その判断の基準としたのは次のような立場であります。二〇一四年の第二六回党大会への中央委員会報告を紹介したいと思います。

 「私たちは、中国、ベトナムなどの現状を評価する場合に、何よりも重要になるのは、それぞれの国の指導勢力が社会主義の事業に対して真剣さ、誠実さをもっているかどうかにあると考えています。

 ただし、私たちは、中国やベトナムの国のなかに住んでいるわけではありませんから、これらの国の指導勢力の真剣さや誠実さをはかる基準としては、対外的な関係――外部にあらわれた事実を評価するしかありません。つまり、私たちが対外的にこういう国ぐにの指導勢力と接して、私たち自身が判断するしかありません。あるいは、これらの国ぐにが現実にとっている対外路線を分析して判断するしかありません」

〈中国について綱領でのべている判断をもつにいたった経過〉

 こうした基準にてらし、私たちが、二〇〇四年の綱領改定当時、「社会主義をめざす新しい探究が開始」されていると判断したことには、合理的根拠がありました。

 中国についていえば、私たちが綱領でのべているような判断をもつにいたったのは、一九九八年の日中両共産党の関係正常化と、それ以降の数年間の一連の体験にもとづくものでした。とくに、九八年の関係正常化のさい、当時の中国指導部が、毛沢東時代の覇権主義的干渉の誤りを率直に認め、「真剣な総括と是正」を公式に表明したことは、「社会主義の事業に対する真剣さ、誠実さ」を強く感じさせる出来事でした。二〇〇三年のイラク戦争に反対を貫いたことも、中国に対する肯定的評価を形成する体験となりました。現綱領の規定は、そうした経験と認識にもとづくものでした。

〈国際的な性格をもつ問題点については、節々で直接に伝えてきた〉

 同時に、現綱領では、「社会主義をめざす新しい探究が開始」されたというのは、これらの国ぐにの方向性についての認識・判断であって、その国で起こっているすべてを肯定するものではないことを、「政治上・経済上の未解決の問題を残しながらも」というただし書きで明確にしています。また、わが党は、これらの国ぐにの将来について、楽観的、固定的に見ているわけではないことを、くりかえし表明してきました。わが党は、この立場から、中国に対しても、内政不干渉の原則を守りつつ、国際的な性格をもつ問題点については、節々でわが党の見解を直接に伝えてきました。

中国の国際政治における問題点――前大会での批判と、この三年間の動き

〈第二七回党大会で「新しい大国主義・覇権主義の誤り」を具体的に指摘〉

 この数年来、中国の国際政治における動向に、綱領の認識にかかわるような、見過ごすことのできない問題点があらわれてきました。

 二〇一七年一月に開催した第二七回党大会では、今日の中国に、「新しい大国主義・覇権主義の誤り」があらわれていることを、核兵器問題での深刻な変質、東シナ海と南シナ海での力による現状変更をめざす動き、国際会議の民主的運営をふみにじる覇権主義的なふるまい、日中両党で確認してきた原則に相いれない態度――の四点にわたって具体的に指摘しました。そして、こうした誤りが今後も続き、拡大するなら、「社会主義の道から決定的に踏み外す危険」が現実のものになりかねないことを警告するとともに、「誤りを真剣に是正し、国際社会の信頼をえる大道に立つことを求める」と表明しました。

〈この三年間、中国は問題点をいっそう深刻にする行動をとっている〉

 前大会から三年間、中国は、残念ながら、これらの問題点を是正するどころか、いっそう深刻にする行動をとっていると判断せざるをえません。

 ――第一に、核兵器問題での変質がいっそう深刻になっています。

 中国は、核兵器保有五大国(P5)の一員として核兵器禁止条約への敵対の立場をとってきました。中国は、昨年七月に、「P5プロセス」の調整役を引き受け、核兵器禁止条約反対・発効阻止の立場をとり、「核兵器のない世界」をめざす動きへの妨害者としての姿をあらわにしています。他の核保有大国と競争しつつ核兵器の近代化・増強を進めていることも重大であります。

 ――第二に、東シナ海と南シナ海での覇権主義的行動も深刻化しています。

 中国公船による尖閣諸島の領海侵入、接続水域入域が激増・常態化しています。昨年(二〇一八年)、日中首脳が相互往来し、両国首脳が、日中関係について、「正常な発展の軌道に戻すことができた」と評価しました。にもかかわらずその後、領海侵犯、接続水域入域は、今年に入って大きく増えています。両国関係の「正常化」を喧伝(けんでん)しながら、領海侵犯を常態化させるというのは、きわめて不誠実な態度だといわなければなりません。中国側にどんな言い分があろうと、他国が実効支配している地域に対して、力によって現状変更を迫ることは、国連憲章および友好関係原則宣言などが定めた紛争の平和的解決の諸原則に反するものであり、強く抗議し、是正を求めるものであります。

 南シナ海について、中国は、二〇一四年以降、大規模な人工島建設、爆撃機も離着陸できる滑走路、レーダー施設や長距離地対空ミサイルの格納庫、兵舎などの建設を進めてきました。中国政府は、当初は、「軍事化を進める意図はない」とのべていましたが、今では「防衛施設を配備するのは極めて正常であり、中国の主権の範囲内」と、公然と軍事拠点化を正当化し、軍事的支配を強化しています。二〇一六年、仲裁裁判所の裁定が、南シナ海水域における中国の権利主張を退け、力による現状変更を国際法違反と断じたにもかかわらず、これを一切無視して軍事化を進める傍若無人な態度は、国連憲章と国際法の普遍的に承認された原則にてらして許されるものではありません。

 ――第三に、国際会議の民主的運営をふみにじる横暴なふるまい、日中両党で確認された原則に背く行動についても、それを是正する態度はとられませんでした。第二七回党大会決議では、二〇一六年、マレーシアのクアラルンプールで開催されたアジア政党国際会議(ICAPP)総会で、中国共産党代表団が、同会議の宣言起草委員会が全員一致で確認した内容――核兵器禁止条約の速やかな交渉開始の呼びかけ――を、最後になって一方的に覆すという覇権主義的ふるまいをとったこと、この問題をめぐるわが党代表団との協議のなかで「覇権主義」という悪罵を投げつける態度をとったことを厳しく批判しました。

 前党大会直前の二〇一七年一月十二日、私は、中国共産党中央委員会の指示で党本部を訪れた程永華中国大使(当時)の求めで会談を行いました。この会談の内容について、多少ふみ込んで明らかにしておきたいと思います。会談のなかで、大使は、わが党の決議案がのべた「新しい大国主義・覇権主義」など中国に対する批判的内容の削除を求めました。私は、それをきっぱり拒否し、なぜわが党がそうした表明をするのかを全面的かつ詳細にのべ、中国側に誤りの是正を求めるとともに、わが党の立場を中国共産党指導部に伝えるよう要請しました。

 さらに私は、会談のなかで、「中国共産党代表団がアジア政党国際会議でとったふるまいを、中国共産党中央委員会として是とするのか、非とするのか。本国に問い合わせ、回答を持ってきてほしい」と求めました。大使は「北京に報告する」と答えました。しかし、この三年間、中国共産党からは何らの回答もありませんでした。これらの経過にてらして、わが党は、クアラルンプールで中国共産党代表団がとった覇権主義的ふるまいの問題は、中国共産党中央委員会自身の問題だとみなさざるをえません。そこに、「社会主義の事業への誠実さ、真剣さ」を見いだすことはできません。

 ――第四に、これらの諸問題にくわえて、人権問題が深刻化しています。

 香港で、今年六月に、自由と民主主義を求める、全体として平和的な大規模デモが起こった当初から、中国政府は「組織的暴動」と非難し、これへの抑圧的措置をとる香港政府に全面的な支持を与えてきました。警察による実弾発砲によって負傷者が出たさいにも、それを正当化する態度をとりました。深圳に武装警察部隊を展開させ、武力による威嚇を行いました。わが党は、デモ参加者が、いかなる形態であれ暴力をきびしく自制し、平和的方法で意見を表明することが大切だと考えます。同時に、表現の自由と平和的集会の権利は、国際的な人権保障の基準でも明確に認められている権利であり、香港政府による抑圧的措置、およびそれを全面的に支持し、武力による威嚇を行った中国政府の対応に反対します。「一国二制度」のもと、事態が平和的な話し合いで解決されることを強く望むものです。

 さらに、最近、ウイグル自治区で、大規模な恣意(しい)的勾留、人権弾圧が中国当局によって行われていることを深く憂慮しています。国連の人種差別撤廃委員会は、昨年九月、中国に関する総括所見を発表し、多数のウイグル人やムスリム系住民が法的手続きなしに長期にわたって強制収容されて「再教育」が行われていることなどについて、「切実な懸念」を表明しました。ウイグルにおける人権問題も重大な国際問題となっており、わが党は中国当局に対し人権抑圧の中止を強く求めるものです。

〈「社会主義をめざす新しい探究が開始」された国と判断する根拠は、もはやなくなった〉

 以上のべた中国の行動は、どれも、社会主義の原則や理念と両立しえないものといわなければなりません。中国について、わが党が、「社会主義をめざす新しい探究が開始」された国と判断する根拠は、もはやなくなりました。

 以上を踏まえて、綱領第八節の「今日、重要なことは、資本主義から離脱したいくつかの国ぐにで、……社会主義をめざす新しい探究が開始され、人口が一三億を超える大きな地域での発展として、二一世紀の世界史の重要な流れの一つとなろうとしていることである」との規定の全体を削除することを提案するものです。

ベトナムとキューバについて

 ベトナムについては、わが党は、両党指導部間の交流を通じて、ベトナムが「経済上・政治上の未解決の問題」を抱えつつも、社会主義の事業に対して「真剣さ、誠実さ」をもってのぞんでいることを確認してきました。核兵器禁止条約など国際政治の中心課題でも協力してきました。ベトナムが取り組んでいるドイモイ(刷新)の事業の成功を願うものであります。

 キューバについては、長年にわたる米国の敵視政策のもとで自主的な国づくりの努力を続けてきたこと、核兵器廃絶で積極的役割を果たしていることを評価しています。同時に、ベネズエラ問題で、民主主義と人権を破壊し独裁を強めるマドゥロ体制を支え、ラテンアメリカに分断を持ち込む役割を果たしていることを深く憂慮しています。

 なお、「社会主義をめざす新たな探究の開始」が、「二一世紀の世界史の重要な流れの一つ」とはみなせなくなるもとで、今後は、個々の国についての体制的な判断・評価はせず、事実にそくしてありのままに見ていくことにします。

ソ連論は、二〇世紀論を補足するものとして位置づける

 こうした改定にともなって、現綱領の第八節の綱領的位置づけを見直すことが必要になってきます。

〈「二つの体制が共存する時代」という特徴づけは成り立たなくなった〉

 現綱領の第八節は、「資本主義が世界を支配する唯一の体制とされた時代」は、「過去のものとなった」として、二〇世紀を、「二つの体制が共存する時代」への移行・変化が起こった世紀としてとらえています。そして、こうした時代的な特徴は、ソ連・東欧での体制崩壊で終わったわけではなく、「二つの体制の共存」という点でも、新しい展開が見られるところに、二一世紀を迎えた世界情勢の重要な特徴があると強調しています。

 しかし、「社会主義をめざす新しい探究が開始」以下の規定を削除する立場にたつならば、当然、「二つの体制が共存する時代」という特徴づけは成り立たなくなります。そこで、綱領第八節冒頭の「資本主義が世界を支配する唯一の体制とされた時代」は「過去のものとなった」という規定は、削除することにします。

〈二〇世紀に起こった「世界の構造変化」との関係でソ連論を位置づけた〉

 そうした認識の発展のもと、綱領第八節のソ連論をどうあつかうか。

 現綱領のソ連論の叙述そのものは正確なものであり、一部改定案では、そのまま残すことにしました。旧ソ連社会に対する評価を抜きにして、二一世紀の世界の現状を的確に分析することも、社会主義・共産主義の未来の展望を語ることもできないからです。日本国民との関係でも、この問題での誤解を解き、わが党の先駆性を語ることは、引き続き重要な課題であります。

 ただしその綱領的位置づけは、見直す必要があります。現綱領では、ソ連論に二一世紀における「社会主義をめざす新しい探究」につながる位置づけをあたえていますが、こうした位置づけが成り立たなくなるもとで、一部改定案では、二〇世紀に起こった「世界の構造変化」との関係でソ連論を位置づけることにしました。

 こうした観点から、一部改定案では、ロシア革命の世界史的意義として、「とりわけ民族自決権の完全な承認を対外政策の根本にすえたことは、世界の植民地体制の崩壊を促すものとなった」という補強を行いました。さらに、ソ連の崩壊がもたらした新たな可能性について、「世界の平和と社会進歩の流れを発展させる新たな契機となった」という補強を行いました。

 こうして一部改定案においては、綱領第八節――ロシア十月革命から始まる資本主義から離脱した国ぐにの動きは、第七節でのべられている「二〇世紀の世界的な変化と到達点」を補足する節として、すなわち二〇世紀論の一部として位置づけることにしたいと思います。

 以上が綱領第八節に関する改定の提案であります。

綱領第九節――「世界の構造変化」が生きた力を発揮しはじめている

二一世紀の世界の発展的な展望を、二つの角度からとらえる

 それでは二一世紀の世界をどうとらえるか。一部改定案では、「二〇世紀に起こった世界の構造変化」という土台のうえに、二一世紀の世界の発展的な展望を、次の二つの角度からありのままにとらえるという整理を行いました。

 第一は、「世界の構造変化」が、平和と社会進歩を促進する生きた力を発揮しはじめているという角度であります。その叙述のために新しく第九節をもうけました。

 第二は、世界資本主義の諸矛盾から、世界をとらえるという角度であります。現綱領の第九節の内容をもとに、一部改定案では第一〇節でこの角度からの分析を行いました。

一握りの大国から、世界のすべての国ぐにと市民社会に、国際政治の主役が交代した

 まず綱領の第九節について報告します。この節は、「世界の構造変化と二一世紀の世界の新しい特徴」を主題に、新たにもうけたものです。

〈「世界の構造変化」が世界史の本流としての力を発揮しはじめた〉

 この節の冒頭では、次のようにのべています。

 「植民地体制の崩壊と百を超える主権国家の誕生という、二〇世紀に起こった世界の構造変化は、二一世紀の今日、平和と社会進歩を促進する生きた力を発揮しはじめている」

 この特徴づけは、二一世紀の今日の特徴づけとして、二〇一四年一月に開催した第二六回党大会決定でのべ、その後の党の決定でもくりかえし確認してきたものです。

 「世界の構造変化」そのものは二〇世紀に起こったものであり、二〇世紀の進行それ自体に大きな影響を及ぼしましたが、二一世紀の今日になって、いよいよ世界史の本流としての力を発揮しはじめた――そういう意味合いをこめた特徴づけですが、それを綱領に明記することにしたいと思います。

〈二一世紀の新しい特徴――諸政府とともに市民社会が大きな役割〉

 続くパラグラフでは、次のようにのべています。

 「一握りの大国が世界政治を思いのまま動かしていた時代は終わり、世界のすべての国ぐにが、対等・平等の資格で、世界政治の主人公になる新しい時代が開かれつつある。諸政府とともに市民社会が、国際政治の構成員として大きな役割を果たしていることは、新しい特徴である」

 このパラグラフは、「二一世紀とはどんな時代か」について、総論をのべています。

 「世界のすべての国ぐにが、対等・平等の資格で、世界政治の主人公になる新しい時代」という特徴づけは、国際情勢の分析にとどまらず、日本共産党が野党外交で世界に働きかけてきた強い実感に裏付けられたものであります。わが党は、日本の平和団体とともに、二〇一〇年のNPT(核不拡散条約)再検討会議、二〇一七年の核兵器禁止条約の国連会議などに代表団を派遣し、会議の成功のために活動しましたが、それらの国際会議で会議運営の要の職につき、生き生きと主役を演じていたのは、途上国や新興国、非同盟諸国の代表だったことが、実に印象的でした。

 一部改定案が、「諸政府とともに市民社会が、国際政治の構成員として大きな役割を果たしている」ことを、二一世紀の新しい特徴とのべていることに、注目してほしいと思います。もともと国連は、その憲章のなかで非政府組織の役割を認めていますが、国際会議への市民の参加が飛躍的に拡大していったのは一九九〇年代以降であります。環境、人権、開発、女性問題などをテーマとした国連主催の世界会議に市民社会代表が参加し、大きな役割を発揮するようになりました。核兵器問題など、安全保障、平和と軍縮の分野でも被爆者を先頭に市民社会代表が重要な役割を発揮するようになりました。その背景には、とくにソ連崩壊後、国際政治で積極的役割を発揮するようになった非同盟運動を構成する途上国のイニシアチブがありました。「世界の構造変化」は、非同盟運動の台頭をもたらすとともに、市民社会が国際政治の構成員として、大きな役割を発揮する状況を生みだしたのであります。

 一握りの大国から、世界のすべての国ぐにと市民社会に、国際政治の主役が交代した――ここに二一世紀の世界の希望ある新しい特徴があることを強調したいと思います。

核兵器禁止条約――国際政治の主役交代を象徴的に示す歴史的出来事に

 一部改定案では、続いて、「二〇世紀の世界の構造変化」のもとで二一世紀に起こった前向きの変化について、核兵器問題、平和の地域協力の流れ、国際的な人権保障の三つの具体的問題について、明らかにしています。

〈その画期的意義を戦後の核兵器問題の国際交渉の歴史のなかでとらえる〉

 核兵器問題について、一部改定案では次のようにのべています。

 「『ノー・モア・ヒロシマ、ナガサキ(広島・長崎をくりかえすな)』という被爆者の声、核兵器廃絶を求める世界と日本の声は、国際政治を大きく動かし、人類史上初めて核兵器を違法化する核兵器禁止条約が成立した。核兵器を軍事戦略の柱にすえて独占体制を強化し続ける核兵器固執勢力のたくらみは根づよいが、この逆流は、『核兵器のない世界』をめざす諸政府、市民社会によって、追い詰められ、孤立しつつある」

 二〇一七年七月に国連で圧倒的多数の賛成で採択された核兵器禁止条約は、「世界の構造変化」のもとで、一握りの大国から、世界の多数の国ぐにと市民社会に、国際政治の主役が交代したことを、最も象徴的に示す歴史的出来事となりました。その画期的意義を、戦後の核兵器問題の国際交渉の歴史のなかでとらえることが重要であります。

〈核保有大国を主役とする交渉は、矛盾と破綻に直面した〉

 戦後、核兵器問題の交渉の主役の座は、長い間、米ソを中心とする核保有大国が独占し、その内容は核兵器廃絶ではなく、核軍備競争のルールをつくることでした。その最悪の例は、一九六三年の部分的核実験停止条約――地下核実験を合法化する条約であり、この条約のもとで核軍拡競争が加速していきました。

 一九六八年に締結されたNPTも、五大国だけに核兵器保有の権利を認めるという前例のない差別的で不平等な条約でした。それでも国際社会がこの条約を受け入れたのは、NPT第六条で、核保有国が核軍備撤廃の義務を負うことを約束したからでした。

 しかし、核保有国はこの約束を裏切り続け、核軍拡競争は一九八〇年代中頃にはピークを迎え、一時は六万発をこえる核兵器が世界に蓄積されるところまで危機が深刻になりました。他方、新たな核保有国が次々と生まれ、核不拡散=核独占体制そのものが矛盾と破綻に直面しました。

〈核兵器交渉の「主役交代」――逆流は「追い詰められ、孤立しつつある」〉

 こうしたもと一九九〇年代後半から、NPT第六条を生かして「核兵器のない世界」に進もうという国際的機運が大きく広がります。そこで核兵器交渉の主役に躍り出てきたのが、アジア・アフリカ・ラテンアメリカの途上国を中心とする非同盟諸国でした。途上国・新興国・先進国からなる「新アジェンダ連合」も積極的役割を果たしました。そして、この時期に、核兵器交渉のもう一つの主役として、被爆者を先頭とする市民社会の存在と役割が飛躍的に拡大し、諸国政府との共同が発展しました。一握りの核保有大国から、世界の多数の国ぐにと市民社会へと、「主役交代」が起こったのであります。

 その最初の大きな成果が、二〇〇〇年のNPT再検討会議で、核保有国に「自国核兵器の完全廃絶」を約束させた最終文書を採択したことでした。さらに二〇一〇年のNPT再検討会議では、「核兵器のない世界」を達成し維持するための「必要な枠組み」を確立するための「特別な取り組み」を行うことを最終文書にもりこみ、核兵器禁止条約への道を開く大きな成果を得ました。二〇一七年の核兵器禁止条約の成立は、こうした世界史的流れが生みだした画期的成果にほかなりません。

 核兵器禁止条約は、核保有大国の圧力や妨害にもかかわらず、発効に必要な五〇カ国の半分を超える三三カ国が批准し、発効は時間の問題となっています。一部改定案がのべているように、核兵器固執勢力のたくらみは根づよいが、世界史の大局でみるならば、この逆流は、「追い詰められ、孤立しつつある」。ここに確信をもち、国内外の連帯を強め、「核兵器のない世界」を実現するために力をつくそうではありませんか。

平和の地域協力の流れ――東南アジアとラテンアメリカ

〈この流れが形成された根底にも、「世界の構造変化」がある〉

 一部改定案では、続いて、平和の地域協力の流れについて次のようにのべています。

 「東南アジアやラテンアメリカで、平和の地域協力の流れが形成され、困難や曲折をへながらも発展している。これらの地域が、紛争の平和的解決をはかり、大国の支配に反対して自主性を貫き、非核地帯条約を結び核兵器廃絶の世界的な源泉となっていることは、注目される。とくに、東南アジア諸国連合(ASEAN)が、紛争の平和的解決を掲げた条約を土台に、平和の地域共同体をつくりあげ、この流れをアジア・太平洋地域に広げていることは、世界の平和秩序への貢献となっている」

 こうした流れが形成された根底にも、「世界の構造変化」があります。

 東南アジアは、第二次世界大戦までは、そのほとんどが植民地支配のもとに置かれましたが、戦後、次々と独立をかちとり、植民地体制の世界的崩壊の先陣を切りました。しかし、戦後も、この地域には大国による「分断と敵対」がもちこまれました。「分断と敵対」に覆われていたこの地域を、「平和と協力」の地域へと変貌させる一大契機となったのが、一九六七年に設立された東南アジア諸国連合(ASEAN)でした。

 ラテンアメリカの国ぐには、二〇世紀の初頭は、多くの国ぐにが形式的には独立しつつも、実質的には従属国の地位に置かれていました。第二次世界大戦後も、「米国の裏庭」と呼ばれたように、米国の強い従属下に置かれ、無法な介入・侵略がくりかえされました。しかし、二〇世紀の終わりから二一世紀にかけて、多くの国ぐにで軍事独裁政権が倒されて民主主義の覚醒がもたらされるとともに、「米国の裏庭」とされてきた地域は、米国から自立した地域へと変わりました。対米自立と平和の流れが広がるもと、二〇一一年、中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)が設立されました。

 一部改定案がのべているように、この二つの地域が、紛争の平和的解決、大国支配に対する自主性、核兵器廃絶などを共通の特徴とする、平和の地域協力の流れをつくりだしていることは、注目されます。

〈二つの地域の平和への動きは、発展の度合いを異にしている〉

 同時に、この二つの地域の平和への動きは、発展の度合いを異にしていることも、指摘しておかなければなりません。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)は、結成から半世紀を超え、紛争の平和的解決を掲げた東南アジア友好協力条約(TAC)を土台として、重層的な平和と安全保障の仕組みをつくりあげ、それを域外に広げつつ、その強化・発展をはかってきています。大国の介入によって加盟国に分断をもたらす動きもありますが、忍耐力と柔軟性を発揮して、団結と自主性を守ってきています。とくに、二〇一九年七月のASEAN首脳会議で、「ASEANインド太平洋構想」が採択されたことは注目されます。同構想は、TACをインド太平洋での友好協力においても外交指針とし、広大なインド太平洋を「対抗でなく対話と協力の地域」にしようという壮大な提唱であります。こうしたASEANの努力は、一部改定案がのべているように「世界の平和秩序への貢献」であり、わが党はこれを強く支持し、連帯を表明するものであります。

 ラテンアメリカでは、この数年間に顕在化したベネズエラ危機が、この地域全体に分断をもたらし、CELACは事実上の機能停止に陥っています。その前途には大きな困難と曲折が予想されますが、「米国の裏庭」から自主的な国づくりへの転換という歴史的発展を逆行させることは誰にもできません。また、この大陸で生まれた世界で最初の非核地帯条約であるトラテロルコ条約を履行するための機構――中南米カリブ海核兵器禁止機構(OPANAL)は、核兵器禁止条約の国連会議の直前に条約採択に向けた特別会合を開催するなど、核兵器廃絶のうえで重要な国際的役割を果たしています。わが党は、この大陸で生まれた平和の地域協力の流れが、ベネズエラ危機をのりこえて発展することを、心から願うものであります。

 平和の地域協力の枠組みを構築することは、日本の平和と安定にとっても緊急の課題となっています。わが党は、東南アジア諸国連合(ASEAN)がつくりだした平和の地域協力の枠組みを、北東アジアにも広げるために力をつくすものです。

国際的な人権保障の新たな発展、ジェンダー平等を求める国際的潮流

 一部改定案では、続いて、国際的な人権保障について次のようにのべています。

 「二〇世紀中頃につくられた国際的な人権保障の基準を土台に、女性、子ども、障害者、少数者、移住労働者、その他の弱い立場にある人びとへの差別をなくし、その尊厳を保障する国際規範が発展している。ジェンダー平等を求める国際的潮流が大きく発展し、経済的・社会的差別をなくすこととともに、女性にたいするあらゆる形態の暴力を撤廃することが、国際社会の課題となっている」

〈「世界の構造変化」と、人権保障の豊かな発展〉

 ここで一部改定案がのべている「弱い立場にある人びとへの差別をなくし、その尊厳を保障する国際規範」とは、一九七九年の女性差別撤廃条約、八九年の子どもの権利条約、九〇年の移住労働者権利条約、九二年の「少数者の権利宣言」、二〇〇六年の障害者権利条約、〇七年の「先住民の権利宣言」など、二〇世紀末から二一世紀にかけて実現した一連の国際条約・宣言のことであります。

 これらの人権保障の豊かな発展をかちとった力は、全世界の草の根からの運動にありますが、植民地支配の崩壊という「世界の構造変化」は、国際的な人権保障の発展にも大きな積極的影響をおよぼしました。途上国が国際社会の不可欠の構成員としての地位を占めるようになるもとで、途上国の人権問題――貧困、差別、暴力などの問題に光があたるようになり、そのことが先進国も含めた世界全体の新しい人権保障の発展を促す――こうしたダイナミックな過程が進んでいます。

〈ジェンダー平等を求める国際的潮流の発展について〉

 ジェンダー平等を求める国際的潮流の発展も、こうした「世界の構造変化」のなかに位置づけることができます。

 国連の発足当初における女性問題の取り組みは、先進国の要求を反映して、政治、教育、職業、家族関係などにおける女性差別の廃止――「平等」を目標にしていました。植民地体制が崩壊して途上国が国連の構成員になるもとで、「貧困からの解放=開発なくして女性の地位向上はない」――「開発」という主張が広がりました。先進国と途上国のこれらの要求は統合され、豊かなものとなっていきました。

 こうしたもと、一九七九年に女性差別撤廃条約が成立します。「世界の女性の憲法」と呼ばれるこの画期的条約の具体化と実践は、世界の草の根のたたかいを背景に発展していきます。差別には「直接差別」だけでなく、一見中立のように見えるが女性に不利に働く「間接差別」や、より弱い立場の女性などに対する「複合差別」があることが共通の認識になり、その是正の措置をとることが求められるようになっていきました。女性に対する暴力が、実質的な男女の平等を阻んでいる大きな原因であるとの認識が広がり、一九九三年の国連総会で「女性に対する暴力撤廃宣言」が全会一致で採択されました。

 ジェンダー(社会的・文化的性差)平等という概念は、こうした人権の豊かで多面的な発展のなかから生まれたものであります。国連では、一九九五年、北京で開かれた第四回世界女性会議の行動綱領で、「ジェンダー平等」「ジェンダーの視点」などを掲げたことが大きな契機となり、二〇〇〇年に開催された国連ミレニアム総会で確認された「ミレニアム開発目標」の一つにジェンダー平等と女性の地位向上の促進が掲げられました。二〇一五年、「ミレニアム開発目標」の後継として採択された「持続可能な開発目標」でも、ジェンダー平等は目標の一つに掲げられ、すべての目標に「ジェンダーの視点」がすえられました。

 世界でも日本でも、「#MeToo(ミー・トゥー)」、「#WithYou(ウィズ・ユー)」などを合言葉に、性暴力をなくし、性の多様性を認め合い、性的指向と性自認を理由とする差別をなくし、誰もが尊厳を持って生きることができる社会を求める運動が広がっていることは、人類の歴史的進歩を象徴する希望ある出来事であります。

 こうして二一世紀は、国際的人権保障という点でも、豊かな発展が開花する時代となっています。すべての個人が尊厳を持って生きることのできる日本と世界をつくるために、力をつくそうではありませんか。

綱領第一〇節――世界資本主義の諸矛盾から、二一世紀の世界をとらえる

 次に綱領の第一〇節について報告します。

 この節は、世界資本主義の諸矛盾から、二一世紀をとらえることを主題としています。一部改定案の第一〇節は、現綱領の第九節の内容を基本的に生かし、必要な修正・補強を行いました。

世界資本主義の諸矛盾――貧富の格差の拡大、地球的規模での気候変動について

〈資本主義の諸矛盾、二つの世界的な大問題を特記〉

 この節の冒頭は、「巨大に発達した生産力を制御できないという資本主義の矛盾」の七つのあらわれについてのべています。

 「広範な人民諸階層の状態の悪化、貧富の格差の拡大、くりかえす不況と大量失業、国境を越えた金融投機の横行、環境条件の地球的規模での破壊、植民地支配の負の遺産の重大さ、アジア・中東・アフリカ・ラテンアメリカの国ぐにでの貧困」の七つであります。この七つは、その一つひとつが利潤第一主義の体制が生みだしている深刻な矛盾であり、人類がこの体制をのりこえて社会主義にすすむ必然性を示すものとなっています。

 一部改定案のこの叙述は、現綱領の規定を引き継いだものとなっています。一カ所だけ、世界の貧困の記述については、絶対的貧困については、サハラ以南のアフリカなど一部地域を除いて削減されているという事実を踏まえて、修正を行いました。

 そのうえで、一部改定案は、これらの諸矛盾のなかでも世界的に大問題となっている二つの問題を次のように特記しました。

 「貧富の格差の世界的規模での空前の拡大、地球的規模でさまざまな災厄をもたらしつつある気候変動は、資本主義体制が二一世紀に生き残る資格を問う問題となっており、その是正・抑制を求める諸国民のたたかいは、人類の未来にとって死活的意義をもつ」

〈貧富の格差――世界的規模でも、発達した資本主義国の内部でも拡大の一途〉

 貧富の格差が、世界的規模でも、発達した資本主義国の内部でも、拡大の一途をたどっています。

 グローバルな金融取引が拡大する中で、一部の大資産家に空前の富が集中しています。アメリカの『フォーブス』誌は、一九八七年以来、毎年、「世界のビリオネア」――一〇億ドル以上の資産保有者リストを発表していますが、八七年には「ビリオネア」は世界全体で一四〇人、資産総額は二九五〇億ドルだったのが、二〇一九年には「ビリオネア」は世界全体で二一五三人、資産総額は八・七兆ドルと、三十二年間で実に二十九倍にも膨れ上がっています。八・七兆ドルという額は、アフリカのGDPの実に四年分に匹敵します。世界的規模での格差拡大が目のくらむような規模で進んでいるのです。

 発達した資本主義国の内部でも格差は拡大し続けています。OECD(経済協力開発機構)が二〇一四年十二月に発表したリポートは、「大半のOECD諸国では、過去三十年間で富裕層と貧困層の格差が最大になった」とのべました。OECD諸国には、わが党がめざす「ルールある経済社会」に近い到達点をもつ国ぐにもありますが、そういう国ぐにも含めて、ほぼ例外なく格差が拡大し、現代の資本主義社会は、貧富の格差が史上最悪となっているのであります。

 マルクスは、『資本論』で、資本の蓄積が進むと、一方に「富の蓄積」、他方に「貧困の蓄積」が進むことを指摘し、「資本主義的蓄積の一般的法則」と呼びましたが、世界の資本主義の現実は、この法則が働いていることを証明しています。

〈気候変動――資本主義というシステムの根本からの変革が問われる〉

 地球的規模での気候変動もきわめて深刻であります。

 今年九月の「国連気候行動サミット」で、十六歳のスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんが「人びとは苦しみ、死にかけ、生態系全体が崩壊しかけている」と世界に訴えたことは、大きな反響を呼びました。

 二〇一五年に採択された「パリ協定」は、世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して二度より十分低く抑え、一・五度に抑制する努力目標を設定し、そのために二一世紀後半までに人間活動による温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにする方向性を打ち出しました。一・五度の上昇であっても、深刻な熱波、嵐、水不足、山林火災、食料生産の不安定化などが生じるとされていますが、現在提出されている各国の目標の合計では、二一世紀末には約三度の気温上昇が起こると予測され、そうなった場合の破壊的影響ははかりしれないものがあります。

 地球的規模の気候変動に対しては、資本主義の枠内でもその抑制のための緊急で最大の取り組みが強く求められていますが、かりに抑制ができないとなれば、資本主義というシステムそのものを根本から変革することが求められるでしょう。資本主義という制度は、新しい制度へとその席を譲らなければならなくなるでしょう。

 こうした意味で、一部改定案では、貧富の格差、気候変動という二大問題について、「資本主義体制が二一世紀に生き残る資格を問う問題」と位置づけました。そして世界各国でこの人類的問題を打開しようという運動が起こっていることを踏まえて、そうした運動への連帯の気持ちを込めて、「その是正・抑制を求める諸国民のたたかいは、人類の未来にとって死活的意義をもつ」と強調しました。

アメリカ帝国主義、いくつかの大国で強まっている大国主義・覇権主義

 続いて一部改定案では、資本主義世界の政治的諸矛盾についてのべています。

 現綱領では、この問題の冒頭に核兵器問題をあげていますが、この問題は第九節に移し、前向きの変化に重点をおいた記述としました。緊張を激化させ、平和を脅かす諸要因として、この間、世界における重大な逆流となっている「国際テロリズムの横行、排外主義の台頭」を補足しました。

〈アメリカの帝国主義的侵略性について〉

 一部改定案では、帝国主義と覇権主義について、現綱領の到達点を踏まえつつ、必要な補強を行いました。

 二〇〇四年の綱領改定では、帝国主義について重要な理論的発展を行いました。植民地体制が崩壊し、植民地支配を許さない国際秩序がつくられた今日においては、「ある国を帝国主義と呼ぶときには、その国が独占資本主義の国だということを根拠にするのではなく、その国が現実にとっている政策と行動の内容を根拠にすべきであり、とくに、その国の政策と行動に侵略性が体系的に現れているときに、その国を帝国主義と呼ぶ」という立場を表明し、「現在アメリカがとっている世界政策は、まぎれもなく帝国主義」(第二二回党大会第七回中央委員会総会)だということを明らかにしました。

 こうしたアメリカ帝国主義の規定づけは、現在も的確であります。同時に、現綱領の記述には、「新しい植民地主義」、「『世界の警察官』と自認」、「世界の唯一の超大国」など、現状にあわなくなっている要素もあります。

 一部改定案では、それらの要素を削除し、アメリカの帝国主義的侵略性を、(1)「国連をも無視して他国にたいする先制攻撃戦略をもち、それを実行するなど、軍事的覇権主義に固執している」こと、(2)「地球的規模で軍事基地をはりめぐらし、世界のどこにたいしても介入、攻撃する態勢を取り続けている」ことの二つの点で特徴づけました。二つ目の点についていえば、アメリカは、国防総省の公表資料でも――実際にはもっと多いと言われておりますが――、世界の四五の国に、五一四カ所もの外国軍事基地をもち、常時介入・攻撃体制をとっていますが、このような国は世界にアメリカ一国しか存在しません。

 「いま、アメリカ帝国主義は、世界の平和と安全、諸国民の主権と独立にとって最大の脅威となっている」

 この綱領の命題は、今日においても強調されなければなりません。

〈「世界の構造変化」をふまえた弾力的なアメリカ論を明記〉

 そのうえで、一部改定案では、次のように補足しました。

 「軍事的覇権主義を本質としつつも、世界の構造変化のもとで、アメリカの行動に、国際問題を外交交渉によって解決するという側面が現われていることは、注目すべきである」

 わが党は、この間の大会決定で、「世界の構造変化」のもと、アメリカの動向を「いつでもどこでも覇権主義・帝国主義の政策と行動をとる」という捉え方でなく、時と場所によっては、外交交渉による解決を模索する側面もあらわれうるという、複眼の捉え方の重要性を強調してきました。この立場から、ブッシュ(息子)政権二期目の対朝鮮半島政策、オバマ政権初期の核兵器政策、トランプ政権の対朝鮮半島政策など、米国に前向きの動きがあらわれた時には評価し、それを促す対応をしてきました。こうした弾力的なアメリカ論は大きな生命力を発揮してきており、この立場を一部改定案に明記しました。

 そのさい、一部改定案が、「軍事的覇権主義を本質としつつも」と強調していることに注目してほしいと思います。あくまでも本質は軍事的覇権主義にあるが、国際世論の圧力をうけて外交交渉による解決もあらわれうるという捉え方が大切であります。

〈いくつかの大国で強まっている大国主義・覇権主義について〉

 さらに、一部改定案では、次のように補足しました。

 「いくつかの大国で強まっている大国主義・覇権主義は、世界の平和と進歩への逆流となっている。アメリカと他の台頭する大国との覇権争いが激化し、世界と地域に新たな緊張をつくりだしていることは、重大である」

 ここでいう「いくつかの大国」で、主として念頭に置いているのは、中国、ロシアであります。中国、ロシアに現れた大国主義・覇権主義、米中、米ロの覇権争いとその有害な影響という角度も、綱領の世界論の視野に入れておく必要があります。

 米中の対立は、かつての米ソ対決と異なり、資本主義的世界市場のなかで、経済的には相互依存を深めるもとでの、覇権争いと捉えられるべき性格の問題であります。同時に、この対立が、軍事的対立にも及び、軍事衝突の危険もはらむ事態も生まれていることへの警戒が必要となっています。

綱領第一一節――国際連帯の諸課題――どんな国であれ覇権主義を許さない

 綱領第一一節は、国際連帯の諸課題を主題としています。

 現綱領の記述にくわえて、「民主主義と人権を擁護し発展させる闘争」、「気候変動を抑制し地球環境を守る闘争」を、新たな課題として綱領上も位置づけました。

 変更をくわえた点は、「二つの国際秩序の選択」についての叙述であります。

 現綱領には、「国連憲章にもとづく平和の国際秩序か、アメリカが横暴をほしいままにする干渉と侵略、戦争と抑圧の国際秩序かの選択が、いま問われていることは、重大である」という特徴づけがあります。

 これは二〇〇〇年に開かれた第二二回党大会で、当時、アメリカがアジアでもヨーロッパでも軍事同盟を侵略的に強化し、国連憲章にそむく戦争体制の準備を具体化するもとで、提起した課題でした。その後の二〇〇三年のイラク戦争をめぐる事態の流れのなかで、この課題は、文字通り国際政治の中心課題として浮き彫りになり、それを綱領改定のさいに明記しました。

 しかし、この特徴づけは見直す必要があります。今日の世界で、アメリカの軍事的覇権主義が突出した危険をもっていることは疑いありませんが、中国、ロシアによる覇権主義も台頭し、それぞれが自らの「覇権主義的な国際秩序」の押しつけをはかっているからであります。

 そこで、一部改定案では、この特徴づけを、「国連憲章にもとづく平和の国際秩序か、独立と主権を侵害する覇権主義的な国際秩序かの選択が、問われている」という、より包括的な規定にあらためました。

 そして、「どんな国であれ、覇権主義的な干渉、戦争、抑圧、支配を許さず、平和の国際秩序を築く」という命題を強く押し出しました。

 日本共産党は、相手がアメリカであれ、旧ソ連であれ、中国であれ、あらゆる覇権主義と正面からたたかい続けてきた自主独立の党であります。一部改定案のこの命題は、そうした党の綱領ならではの重みがある命題であることを、強調したいと思います。

綱領第四章――第三章の改定にともなって必要最小限の改定を行う

 次に綱領第四章「民主主義革命と民主連合政府」について報告します。

 一部改定案では、第三章の改定にともなって、次の諸点について、最小限の改定を行うことを提案しています。どれも現綱領の第一二節――一部改定案の第一三節「現在、日本社会が必要とする民主的改革の主要な内容」にかかわる改定であります。

 ――「国の独立・安全保障・外交の分野で」の第四項の最初のパラグラフ、アジア諸国との友好・交流の項に、「紛争の平和的解決を原則とした平和の地域協力の枠組みを北東アジアに築く」を補足します。二〇一四年の第二六回党大会で提唱した「北東アジア平和協力構想」を踏まえた叙述です。

 ――「憲法と民主主義の分野で」の第三項「一八歳選挙権を実現する」は、すでに現実のものとなりましたので削除します。

 ――第六項に、「ジェンダー平等社会をつくる」「性的指向と性自認を理由とする差別をなくす」を補強します。

 ――「経済的民主主義の分野で」の第三項は、現綱領では、農林水産政策とエネルギー政策の転換が一体的にのべられていますが、一部改定案では、それを二つの項に分けて次のように記述します。

 「3 食料自給率の向上、安全・安心な食料の確保、国土の保全など多面的機能を重視し、農林水産政策の根本的な転換をはかる。国の産業政策のなかで、農業を基幹的な生産部門として位置づける。

 4 原子力発電所は廃炉にし、核燃料サイクルから撤退し、『原発ゼロの日本』をつくる。気候変動から人類の未来を守るため早期に『温室効果ガス排出ゼロ』を実現する。環境と自給率の引き上げを重視し、再生可能エネルギーへの抜本的転換をはかる」

 それぞれが第三章の改定にともなう改定であります。

綱領第五章――発達した資本主義国での社会変革は、社会主義・共産主義への大道

 次に、綱領第五章「社会主義・共産主義の社会をめざして」の改定について報告します。

 この章は二〇〇四年の綱領改定で、全面的に書き改められた章です。綱領改定によって、「生産手段の社会化」を社会主義的変革の中心にすえるとともに、労働時間の抜本的短縮による「社会のすべての構成員の人間的発達」を保障する社会という、マルクス本来の未来社会論が生きいきとよみがえりました。二〇〇四年の綱領改定のこれらの核心的内容は、一部改定案でも全面的に引き継いでいます。

 一部改定案で、見直しを加えたのは、綱領第五章の最後の節――現綱領第一七節、社会主義への発展の時代的・国際的条件をのべた部分であります。

三つの流れから社会主義をめざす流れが成長・発展するという特徴づけを削除する

 現綱領では、第一七節の第一パラグラフ、第二パラグラフで、二一世紀における社会主義への発展の時代的・国際的条件として、発達した資本主義諸国での人民の運動、資本主義を離脱して社会主義への道を探究する国ぐに、政治的独立をかちとり経済的発展の道を探究しているアジア・中東・アフリカ・ラテンアメリカの国ぐにの人民の運動――こうした三つの流れから「資本主義を乗り越えて新しい社会をめざす流れが成長し発展することを、大きな時代的特徴としている」とのべています。

 この特徴づけは、見直しが必要であります。すでにのべたように、一部改定案では、「社会主義をめざす新たな探究の開始」が、「二一世紀の世界史の重要な流れの一つ」とはみなせなくなったとして、綱領から削除することを提案しているからです。この立場に立てば、三つの流れから社会主義をめざす流れが成長し発展するという特徴づけは成り立たなくなります。そこで、現綱領第一七節の第一・第二パラグラフを削除することを提案したいと思います。

第一八節の主題――発達した資本主義国での社会変革の意義

 この規定を削除することは、途上国・新興国など、資本主義の発展が遅れた国ぐににおける社会主義的変革の可能性を否定するものでは、もちろんありません。資本主義の矛盾があるかぎり、どのような発展段階にある国であっても、社会主義的変革が起こる可能性は存在します。

 同時に、ロシア革命以後、資本主義からの離脱の道に踏み出した国ぐにの歴史的経験を概括するならば、資本主義の発展が遅れた国ぐににおける社会主義的変革には、きわめて大きな困難がともなうものであることは、すでに歴史が証明しています。ソ連の崩壊は、その直接の原因は、スターリン以後の指導部が誤った道を進んだ結果でしたが、その背景には、資本主義の発展が遅れた国からの出発という歴史的制約がありました。中国についても、いま起こっているさまざまな政治的・経済的諸問題の根底には、遅れた国からの出発という歴史的制約が横たわっていることを、指摘しなければなりません。

 一部改定案では、これらの歴史的経験もふまえて、「発達した資本主義国での社会変革は、社会主義・共産主義への大道である」という命題を太く打ち出しました。そして、綱領第一七節――一部改定案の第一八節の主題を、発達した資本主義国での社会主義的変革の意義を正面から論じるものへと変更しました。

前人未到の道の探求――特別の困難性とともに、豊かで壮大な可能性をもった事業

〈発達した資本主義国での社会主義的変革は二一世紀の新しい世界史的課題〉

 一部改定案の第一八節の最初のパラグラフは、現綱領の第一五節から移したもので、発達した資本主義国での社会主義・共産主義への前進をめざす取り組みは、二一世紀の新しい世界史的な課題であることをのべています。これまで誰も歩んだことのない前人未到の道の探求をしようということであります。

 一部改定案には、それに続けて、次のような記述を書き込みました。

 「発達した資本主義国での社会主義的変革は、特別の困難性をもつとともに、豊かで壮大な可能性をもった事業である。この変革は、生産手段の社会化を土台に、資本主義のもとでつくりだされた高度な生産力、経済を社会的に規制・管理するしくみ、国民の生活と権利を守るルール、自由と民主主義の諸制度と国民のたたかいの歴史的経験、人間の豊かな個性などの成果を、継承・発展することによって、実現される。発達した資本主義国での社会変革は、社会主義・共産主義への大道である。日本共産党が果たすべき役割は、世界的にもきわめて大きい」

〈「特別の困難性」とそれを打破する力について〉

 最初の文章は、発達した資本主義国での社会主義的変革が「特別の困難性」をもつとともに、「豊かで壮大な可能性をもった事業」であるとのべています。

 そこには「特別の困難性」があります。日本での社会変革の事業を考えてもわかるように、発達した資本主義国では、支配勢力が、巨大な経済力と結びついた支配の緻密な網の目を、都市でも農村でも張り巡らしています。なかでも支配勢力が、巨大メディアの大部分をその統括下に置き、国民の精神生活に多大な影響力を及ぼしていることは、私たちの事業を前進させるうえで特別に困難な条件の一つとなっています。

 こうした国で社会変革の事業を成功させるためには、国民の間に深く根を下ろし、国民の利益の実現のために献身する強大な党と、その党が一翼を占める統一戦線の発展が必要であることを強調したいと思います。

〈「豊かで壮大な可能性」――その要素を五つの点で明記〉

 同時に、発達した資本主義国での社会主義的変革には、これまで人類がまったく経験したことのない「豊かで壮大な可能性」が横たわっています。

 ここでいう「豊かで壮大な可能性」とは、資本主義の高度な発展そのものが、その胎内に、未来社会に進むさまざまな客観的条件、および主体的条件をつくりだすということです。一部改定案では、続く文章で、その要素を五つの点で列挙しています。

 ――第一は、「資本主義のもとでつくりだされた高度な生産力」です。

 これまで資本主義から離脱して社会主義をめざす探究を行った国ぐには、革命ののち、まずは社会主義の土台である発達した経済そのものを建設することに迫られ、そのことに起因する多くの困難、試行錯誤、失敗に直面しました。

 しかし、発達した資本主義国における社会主義的変革には、そのような困難は生じないでしょう。資本主義のもとでつくりだされた高度な生産力をそっくり引き継ぐとともに、生産手段の社会化によって、資本主義経済につきもののさまざまな浪費が一掃され、社会と経済の飛躍的な発展への道が開かれるでしょう。

 ――第二は、「経済を社会的に管理・規制するしくみ」です。

 マルクスは、資本主義から社会主義へと引き継ぐべき要素として、発達した生産力だけでなく、資本主義がつくりだす経済を社会的に管理・規制するさまざまなしくみを重視して論じました。資本主義の発展とともに、資本主義の胎内に、そうした管理・規制のしくみが準備されてくること、そのことのうちに、社会主義にすすむ内在的必然性があるということを、『資本論』などのなかで明らかにしています。

 たとえば、マルクスは、信用制度や銀行制度の発展など、資本主義のなかで発展してくる経済を社会的に管理・規制するしくみが、社会主義的変革をすすめるさいに「有力な梃子(てこ)として役立つ」ことは間違いないと強調しています。こうした点でも、発達した資本主義は、未来社会に引き継がれる要素をさまざまな形でつくりだすのであります。

 ――第三は、「国民の生活と権利を守るルール」です。

 二〇一〇年に開いた第二五回党大会への中央委員会報告では、わが党の綱領でのべている「ルールある経済社会」とは、資本主義の枠内で実現すべき目標ですが、それを「ルールある資本主義」と表現しない理由について、「この改革の成果の多くは、未来社会にも引き継がれていくことでしょう」として、次のように説明しています。

 「綱領でのべている『ルールある経済社会』とは、資本主義の枠内で実現すべき目標ですが、それを綱領で『ルールある資本主義』と表現していないのは、『ルールある経済社会』への改革によって達成された成果の多く――たとえば労働時間の抜本的短縮、男女の平等と同権、人間らしい暮らしを支える社会保障などが、未来社会にも引き継がれていくという展望をもっているからです」

 マルクスは、『資本論』で、労働時間を規制する工場立法が産業界全体に広がることの意義を、次のようにのべました。「工場立法の一般化は、……新しい社会の形成要素と古い社会の変革契機とを成熟させる」

 資本主義の発展のなかで、人民のたたかいによってつくりだされた労働時間短縮のルールが社会全体に広がることは、未来社会にすすむうえで、その客観的および主体的条件をつくりだす――これが、マルクスがここでのべた展望にほかなりません。この点でも、高度に発達した資本主義は、未来社会のための豊かな諸条件をつくりだすのであります。

 ――第四は、「自由と民主主義の諸制度と国民のたたかいの歴史的経験」です。

 旧ソ連でも、中国、ベトナム、キューバでも、政治体制の面で、事実上の一党制をとり、それぞれの国の憲法で「共産党の指導性」が明記されました。これは議会も民主主義の経験も存在しないという条件で、革命戦争という議会的でない道を通って政権を獲得したことと関連があります。

 多くの発達した資本主義国――そして日本では、このようなことは決して起こり得ません。日本共産党は、綱領で、民主主義と自由の成果をはじめ、資本主義時代の価値ある成果のすべてを、受けつぎ、発展させることを約束していますが、それは単なる綱領上の約束にとどまるものではありません。日本では、戦後、日本国憲法のもとで、すでに七十年余にわたって、国民主権、基本的人権、議会制民主主義が、国民のたたかいによって、さまざまな逆流とたたかいながら、発展させられてきました。こうした社会を土台にするならば、未来社会において、それらが全面的に継承され、豊かに花開くことは、歴史の必然であります。

 この点にかかわって、一部改定案が、「自由と民主主義の諸制度」とともに「国民のたたかいの歴史的経験」とのべていることに注目してほしいと思います。制度上、「自由と民主主義」が保障されても、そのもとで独裁国家に暗転した例は、第一次世界大戦後、ワイマール憲法のもとでのナチスドイツなどの経験があります。しかし、日本においては、戦後、七十年余にわたって、自由と民主主義の諸制度を守り、発展させてきた国民のたたかいの歴史的蓄積があります。ここにこそ、未来社会に自由と民主主義をより豊かな形で引き継ぎ、花開かせる最大の保障があることを、強調したいと思います。

 ――第五は、「人間の豊かな個性」です。

 マルクスは、『資本論』の最初の草稿――『五七年~五八年草稿』のなかで、人類の歴史を、個人の歴史的発展という角度から大きなスケールで描き出し、人格的な独立性をもった個人――豊かな個性が、搾取制度という限界をもちつつも、資本主義社会のもとで形成され、未来社会を形成する重要な条件をつくりだすことを意義づけました。

 この点でも、資本主義の発展が遅れた条件のもとで出発した革命とは、決定的な違いがあります。これらの国ぐにでは、生産力の水準の立ち遅れなどとともに、人間の個性、基本的人権、主権者としての意識などが、十分に形成されていなかったことが、その前途に重大な客観的困難をつくりだしました。

 発達した資本主義国における社会主義的変革は、「人間の豊かな個性」という点でも、資本主義のもとで達成した到達点を継承して未来社会を建設することができます。ここにもはかりしれない「豊かで壮大な可能性」が存在するのであります。

 一部改定案では、発達した資本主義が準備する五つの要素をあげていますが、それらのすべてが、生産手段の社会化を土台に、未来社会において継承・発展され、豊かに花開く。その全体を踏まえて、一部改定案では、「発達した資本主義国での社会変革は、社会主義・共産主義への大道である」と明記しました。

マルクス、エンゲルスが描いた世界史の発展の法則的展望にたって

 マルクス、エンゲルスは、資本主義をのりこえる社会主義革命を展望したときに、この革命は、当時の世界で、資本主義が最も進んだ国――イギリス、ドイツ、フランスから始まるだろうと予想し、どこから始まるにせよ当時の世界資本主義で支配的地位を占めていたイギリスでの革命が決定的な意義をもつことを繰り返し強調しました。これらの国ぐにが社会主義に踏み出すことが、巨大な模範となり実例となって、世界のより遅れた国ぐにをいくつかの諸段階をへて社会主義の道にひきこむことになるだろう――これが、彼らが描いた世界史の発展の展望でした。

 二一世紀の世界における社会主義的変革の展望も、マルクス、エンゲルスが描いた世界史の発展の法則的展望のなかに見いだすことが重要であります。

日本共産党が果たすべき役割は、世界的にもきわめて大きい

 一部改定案は、このパラグラフの結びに、「日本共産党が果たすべき役割は、世界的にもきわめて大きい」と強調しています。

 資本主義の発展は、未来社会への客観的条件をつくりだしますが、いくら客観的条件が成熟しても、変革の主体的条件がつくられなくては、社会変革は現実のものにはなりません。この点で、日本共産党が置かれている立場は、世界的にも重要であります。

 日本共産党は、自主独立の科学的社会主義の党として、ソ連覇権主義をはじめあらゆる覇権主義と正面からたたかいぬき、そのたたかいを通じて自らを鍛え、綱領路線の発展をかちとり、国民と深く結びつき、日本における社会変革の主体的条件をつくりあげるために不屈の努力を続け、日本社会において確かな政治的地歩を築いてきた党であります。

 わが党は、こうした先駆的歴史をもつ党として、二一世紀の世界で、新しい社会への道を切り開く事業において、特別に大きな任務を担っています。全国の同志のみなさん。そのことをお互いに深く自覚して、奮闘しようではありませんか。

 以上で、報告を終わります。


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