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日本共産党

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赤旗

第20回党大会

日本共産党綱領一部改定についての提案

日本共産党綱領一部改定案の提案説明

<19回大会期12中総で決定>

1994年5月18日付「赤旗」


一、党綱領の基本路線の正確さは、現実と歴史が実証した

 (1) 一九六一年の第八回党大会で採択した党綱領の基本路線の正確さは、この三十三年の情勢の推移をつうじて、歴史的に証明された。

 (2) 党綱領は、今日の段階における日本の社会進歩の方向は、真の独立と政治・経済・社会の民主主義的変革を内容とする民主主義革命の実行にある、と規定した。これは、綱領の中心命題である。そして、現在の日本の情勢の動きと国民の運動の現実がこの命題の正確さを日々実証している。党綱領のこの規定は、革新三目標として統一戦線運動のなかで定式化されてきた方向と一致しているし、当面する民主的改革の内容も、基本的にはこの方向にある。

 (3) 世界論では、アメリカ帝国主義にたいする見方に核心的な命題の一つがある。

 この間、アメリカの世界政策が変転するなかで、くりかえしアメリカ帝国主義美化論があらわれた。ケネディ、ジョンソン、ニクソンの対ソ、対中「接近」政策、ゴルバチョフの「新しい思考」路線に呼応したレーガンの「米ソ協調」路線などが、それである。党は、これにたいし、アメリカ帝国主義の世界戦略の科学的分析にもとづいて、的確な批判をくわえてきたが、アメリカは、あれこれの美化論者の期待をいつも裏切って、党が指摘したとおり、世界への支配と覇権をめざす帝国主義的戦略にもとづいて行動してきた。

 「冷戦終結」論も、アメリカ帝国主義美化論の一変種といえる。

 また、党は、八五年の綱領一部改正のさいに、ソ連などの覇権主義の克服を綱領的任務にした。核兵器廃絶問題では両党の共同声明が発表され(八四年)、それが両党間で有効な意味をもっていた時期だったが、歴史の大局にかかわる基本問題として、覇権主義の問題を明確にした。ソ連共産党とソ連邦の解体・崩壊にいたる過程は、ここに世界情勢の中心問題の一つがあったことを、確証した。ソ連共産党の解体を歓迎した党の態度の根本には、この綱領的立場があった。

 これらは、いまでも、世界をみるうえで不可欠の見地である。

二、今回の党綱領一部改定にあたっての基本的な考え方

 その確認のうえにたって、つぎの方針で一部改定にあたった。

 (1) ソ連解体およびその後の世界情勢(アメリカの動向をふくめて)をどうみるかに、改定の一つの中心がある。

 これらの点では、すでに党の見解は、詳細にあきらかにされている。それを、世界情勢をとらえる綱領的な規定として、どう定式化するか。

 (2) 同時に、綱領を採択してから三十三年間の党自身の理論的・政治的な展開の到達点を全体として織り込む。

 従来、何回か一部改定をおこなってきたが(七三年、七六年、八五年)、基本の構造はかえず、一連の命題を補足したり、より正確な表現にするにとどめてきた。今回は、全体にわたって吟味し、三十三年前の事情を反映して当時は重要であっても、今日では適切ではなくなっている命題や表現はあらため、今日的な内容を反映させると同時に、文章の全体をよりわかりやすくする努力をした。 改定の文章では、「人民」および「国民」という表現を適宜使っている。この二つの表現のあいだには厳密な境界はないが、おおよそ、支配者、抑圧者をもふくめて日本国民の全体を表現する場合には「国民」の用語を、被支配者、被抑圧者を中心とした叙述の場合には「人民」の用語を使った。

 つぎに、綱領の叙述の順序で、改定案の内容を説明する。

三、戦前の部分(第一章)

 (1) 党の創立についての叙述。日本社会のなかから、進歩と革新の伝統をうけついで生まれた科学的社会主義の党であることを、より端的に叙述した。

 (2) 戦前の日本の独特の支配体制の叙述。現行の文章でのべられている「当時の支配体制の特殊性」を、内容的に明確にした。絶対主義的天皇制、半封建的地主制度、独占資本主義の三つの結合だが、並列的な結合ではなく、軍事的、警察的な専制権力をふるった天皇制がその全体の背骨をなし、農村における半封建制とともに、日本社会の進歩をおさえる前近代的な遺制をなしていた。そこから、民主主義革命の戦略が社会進歩の必然の方向となったわけで、その関係の基本がわかるような叙述にした。

 (3) 戦争から敗戦にいたる過程の総括。日本帝国主義の敗北やポツダム宣言に表現された第二次世界大戦の結末が、日本共産党の路線の基本的な正しさを証明するとともに、その不屈のたたかいが日本の民主的な前途にとって不滅の意義をもったことを、明確にした。そして、「侵略戦争を阻止しえなかったから戦争責任がある」といった俗論で日本共産党の戦前の闘争を攻撃する立場の誤りを、指摘した。

四、戦後の支配体制(第二章)

 (1) 現行の綱領では、戦後の情勢と任務を、国内・国際をあわせてすべて一つの章で叙述している(現第二章)。戦後がすでに半世紀近くになったこと、世界情勢の解明では二十世紀的な広い視野が必要になっていることなどを考えて、改定案では、敗戦からサンフランシスコ体制の成立にいたる過程とそこでの支配体制の変化の分析(第二章)、日本の現状の分析と規定(第三章)、世界情勢の基本的な見方と展望(第四章)の三つに分割した。

 (2) 第二章は、主として、敗戦と占領からサンフランシスコ体制の成立にいたる過程、そのなかでの支配体制の変化の分析にあてた。

 ここでは、天皇制の性格の変化、農村における半封建的な諸関係の解体、日本独占資本が、日本の支配勢力の中心になったことなどを、まとめて叙述するようにした。

 また、一九五一年のサンフランシスコ条約および六〇年の安保改定の意義を、条約の内容に即してより簡潔に特徴づけた。

五、現在の日本の情勢と任務(第三章)

 (1) 日本の現状にたいする党綱領の規定の中心問題は、現在の日本を基本的に支配しているものが「アメリカ帝国主義と、それに従属的に同盟している日本の独占資本」であることを明確にし、日本の現状を、「高度に発達した資本主義国」でありながらアメリカ帝国主義への「事実上の従属国」となっている、という二つの特徴をもつものとして、規定したところにあった。

 当時、この分析と規定にたいする反対者たちは、対米従属の現状そのものを否定したり、あるいはその現状は認めても、それは占領時代からの一時的な遺産であって、日本独占資本の成長発展とともに自動的に解消する運命にあるなどとして、対米従属を日本の現状の基本的な特徴の一つとみることに反対した。

 この問題には、すでに歴史が決着をつけている。日本の独占資本主義はこの三十四年のあいだに巨大な成長をとげ、アメリカ資本主義につぐ世界第二の経済力をもつにいたったが、対米従属の問題は解消されなかった。軍事的、外交的な面はいうにおよばず、経済面でもさまざまな干渉をうけていること、その根底に日米安保条約をふくむサンフランシスコ体制があることは、今日なお明白な事実である。

 ただ、対米従属の内容や経済諸関係などには、党綱領の制定当時の状況と大きくかわってきている面が少なくない。今回の一部改定案では、その点を考慮して、規定や叙述に今日的内容を反映することにつとめた。

 (2) 「事実上の従属国」の規定について、その内容を、「アメリカ帝国主義に半ば占領された事実上の従属国」という表現から、「国土や軍事などの重要部分をアメリカ帝国主義ににぎられた従属国」という、今日の実態に即した表現にあらためたのは、その見地からである。

 日本の情勢の叙述も、同じ見地から、全体としてかなり書きあらためた。

 対米関係での従属性は、経済の面では、コメの輸入自由化のおしつけにみられるように、日米軍事同盟の枠内での日本政府の政策への圧力や干渉といった形であらわれることが多い。そういう点は、農業問題などの部分で、具体的にしめしている。

 (3) 新たにつけくわえたのは、小選挙区制問題と商業マスコミ論である。

 小選挙区制の導入は、政治反動のさまざまな動きのひとこまというものではなく、日本の民主主義制度の根幹にかかわる改悪であり、日本の民主主義の前に、小選挙区制の廃止という新しい重大な課題を提起したものとして、綱領に明記した。

 また、商業マスコミが、反動支配のささえとして、重大な役割をはたしていることは、今日では、明確な現実となっている。小選挙区制の反動策謀に商業マスコミが最初からくみこまれた経緯にもみられるように、日本の支配勢力は、商業マスコミを世論誘導の手段として、きわめて意図的に活用してきた。この点をふくめ、日本の進路にかかわる重要局面で商業マスコミがはたす役割を、日本の政治論、社会論として重視することは、今日とくに重要になっている。

六、世界情勢(第四章)

 (1) この章は、全体として書きあらためた。もちろん、アメリカ帝国主義やソ連覇権主義の規定、核兵器廃絶や民族自決権尊重の課題の重視など、核心をなす命題は、うけついでいる。

 (2) 全体の構成では、二十世紀の大きな流れのなかで、今日の情勢をみることを、基本において、つぎのような組み立てにした。

 (1)冒頭に、世界資本主義の独占資本主義、帝国主義への移行、ソ連での社会主義革命とレーニン時代の成果が世界におよぼした影響、第二次世界大戦後の帝国主義の世界支配の後退などを積極的に叙述した。

 (2)そういう状況のもとでの帝国主義陣営の状況、そのなかでの「侵略と反動の主柱」としてのアメリカ帝国主義の役割の分析。

 (3)ついで、社会主義をめざす国ぐにの状況――とくにソ連その他の覇権主義と官僚主義・専制主義の本質とそれがソ連・東欧の支配体制の崩壊にいたる過程、この問題での日本共産党のたたかいをふくめ、この全体をどう評価するかなどの解明。

 (4)現在の世界資本主義の矛盾と人民の運動。「資本主義万歳」論などがなりたちえないこと。世界史の大局的な発展方向をどうみるか。

 (5)核兵器をめぐる情勢と核戦争阻止・核兵器廃絶の課題。非核の統一戦線と非核政府の根拠。

 (6)世界情勢のなかでの日本の役割と責任。

 (3) アメリカ帝国主義の問題では、世界支配をめざす軍事ブロック政策がアメリカの経済的利益を至上のものとして追求する経済的覇権主義と不可分にむすびついていること、アジア・太平洋地域で覇権主義の新たな策謀がめぐらされ、日本がここでとくにアメリカの目したの同盟者として行動していることを、新たに指摘した。これは、最近の情勢をみるうえでの重要な基本点である。

 最近流行の「冷戦終結」論についていえば、アメリカの「冷戦」戦略とその体制が、第二次世界大戦後に、「新しい世界支配」をめざして開始されたことを、つかむことが重要である。アメリカが「原爆を武器とする対ソ戦争の計画」をもったことは、冷戦の重要な側面をなしたが、それがこの体制や戦略のすべてではなかった。それは、「冷戦」体制が、その発足にあたって、ギリシャその他への覇権主義的な介入を直接の目的としていたことにも、六〇年代~七〇年代に、アメリカ帝国主義が、ソ連や中国に「接近」しながら、ベトナム侵略などに力を集中した各個撃破政策を世界戦略の基本にしたことにもあらわれていた。日本共産党は、そのときどき、アメリカの術策を的確に批判してたたかってきた。この見地から、ソ連覇権主義の崩壊後のアメリカ帝国主義の「世界の憲兵」戦略をどうみるかをのべたが、このことは、今日、いよいよ重要になっている。

 (4) ソ連、東欧の支配体制の崩壊の問題に関連して、これらの諸国をふくめ、社会主義を名のっていた諸国を、「社会主義をめざす国ぐに」、「社会主義をめざす道にふみだした国ぐに」と表現し、これらの国ぐにが、ソ連をふくめ、社会の実態として(社会科学の用語でいえば、経済的社会構成体として、ということ)、社会主義社会に到達しえないまま、この崩壊にいたったことを明確にした。

 社会主義社会に到達したかどうかの問題では、ソ連では、一九三〇年代に社会主義社会の建設が基本的に完了したというのが、スターリン以来の定説となっており、そのことを前提にして、現在の発展段階を、それぞれ、共産主義建設への移行(スターリン)、共産主義社会の全面的建設期(フルシチョフ)、発達した社会主義(ブレジネフ)などと規定していた。

 日本共産党は、一九七七年の第十四回党大会で、当時、社会主義を名のっていた諸国は、もっとも歴史の古いソ連をふくめて、社会主義のほんらいの値うちを発揮する段階に到達していないという「生成期」論を明確にし、ソ連の「発達した社会主義」論などを認めることを明白に拒否してきた。

 なお、「社会主義をめざす国」ということは、その国が社会主義にむかって現実に前進しつつあるといった評価をふくむものではない。その過程には、逸脱もあれば退行もあり、その逸脱が肥大化すれば、資本主義の方向への変質や崩壊が起こりうることは、われわれが現実に目撃してきたところである。これは、一つひとつの国の状況におうじて、分析すべき問題である。

 (5) 世界の前途をどうみるかの問題では、改定案では、世界資本主義が現実に多くの矛盾に直面していることを、リアルに叙述した。科学的社会主義は、資本主義の矛盾の科学的な解明を基礎にした資本主義批判から出発しており、世界の現実は、その展望の有効性を明白にしめしている。

 (6) 核兵器とその廃絶にかんする部分は、ソ連崩壊後、「世界の憲兵」戦略の重要な内容として、アメリカ帝国主義が核兵器の独占体制を強化しようとしていることが重要である。同時に、そのアメリカにおいてさえ、首都の住民投票で、核兵器廃絶の声が多数をしめた。このことは、核兵器に固執する政策と国民の意思との矛盾の、きわめて具体的なあらわれである。このことは、国際的にも、各国的にも、非核の統一戦線の必要性とその基盤の存在をしめしており、ここに非核の政府という問題提起の根拠もある。こういう点をより明確にするように、叙述を充実させた。

七、当面する革命の性格と行動綱領(第五章)

 (1) 第五章以後は、組み立てはかわっておらず、いくつかの点で表現を改定した。

 (2) 綱領路線の特質は、まず民主主義革命、ついで社会主義革命という、段階的発展の立場にたっているところにある。革命の段階的発展とは、前の段階(民主主義革命)をそれにつづくより高い段階(社会主義革命)へのたんなる準備段階とみなすものではなく、それぞれの段階が、日本の社会と国民が当面している苦難を解決するうえで、独自の意義をもっていることを重視するのは、いうまでもない。また、前の段階からつぎの段階への移行は、国民の意思をはなれて自動的に進行する過程ではけっしてなく、主権者である国民のあいだで問題が熟したときに、国民の意思によって前進がはかられるものである。このことを、「自由と民主主義の宣言」は、つぎのように、明確に規定している。「社会進歩のどのような道をすすむか、そしてその道を、いつどこまで前進するかは、主権者である国民の意思、選挙で表明される国民自身の選択によって決定される問題である」。今回の改定では、革命の段階的発展についての党のこうした立場がより適切に表現されるようにした(第五章の最初から二番目の文章および第六章の最後の文章)。

 (3) 行動綱領の改定点のうち、若干の点に説明をくわえると、

 イ、地球の環境保全については、多国籍企業などの無責任な利潤第一主義の行動の規制という政策手段を明示した。

 ロ、民主主義の項目。小選挙区制廃止の問題を重視した。また、「諸制度の民主化」の問題について、司法制度をくわえるとともに、「主権在民の精神にたったその民主的改革」と、その方向づけを明確にした。廃止すべき弾圧法令・機関について、破壊活動防止法と公安調査庁を明示した。

 ハ、信教の自由にたいする党の見地を明記した。これは、十二回大会七中総(一九七五年十二月)の決定「宗教についての日本共産党の見解と態度」で解明されていることである。

 ニ、同和問題をめぐる全国的なたたかいの成果をふまえて、独立の項目とせず、半封建的な残りものをなくす全体的な要求のなかに位置づけた。 ホ、農業と農民にかかわる要求は、農地関係の項目と農業政策などにかかわる項目の順序をおきかえた。農業政策にかかわる要求は、その内容を、今日の情勢にてらして、より充実させた。

 ヘ、農地問題も、農業の現状に即して要求内容を改定した。土地問題をより広くとらえ、独占資本の所有する未利用地の問題で、住宅用地の公共的な確保の問題を重視して提起した。

 ト、この間に党が発表した「労働基準法の改正」や「納税者憲章」制定についての提案を行動綱領にとりいれた。社会保障の関係では、「総合的社会保障制度の確立」という定式を、個々の制度の改良をもふくみうる「社会保障制度の総合的な充実と確立」という定式にあらためた。

 チ、経済政策の転換の要求では、党は、党綱領制定以後、大企業の民主的規制についての理論と実践を発展させてきた。その成果は、四月に発表した「新・日本経済への提言」にも、よくあらわれている。この到達点にたって、当面する行動綱領の財政経済政策の中心に、「金融機関をふくめ独占資本にたいする民主的規制」の要求をすえた。

八、革命への道筋(第六章)

 (1) ここで改定した点の一つは、統一戦線と諸階級についての規定である。現行の綱領では、「労働者、農民の階級的同盟」が民族民主統一戦線の基礎をなすものとして、位置づけられているが、この三十数年のあいだに、日本社会の階級構成は大きく変化した。一九五五年に、労働者四四・〇%、農漁民三七・七%、勤労市民一五・五%だった階級構成は、二十年後の一九七五年には、労働者六五・七%、農漁民一二・七%、勤労市民一六・六%となって、労働者が全体の三分の二に近づくとともに、勤労市民と農漁民との比重が逆転した(労働力人口の調査による)。こうした変化を考慮にいれて、党は一九七三年の第十二回党大会で、「都市と農村の中間層との同盟」という見地をおしだした。階級構成のこの変化はその後もさらに進行し、一九九〇年の調査では、労働者七四・五%、農漁民六・二%、勤労市民一三・六%となっている。社会構成としての比重が小さくなったとはいえ、日本経済における農業の基幹的な重要性、都市と農村の関係などからいって、統一戦線における農民の役割がひきつづき重要であることは、いうまでもない。しかし、同時に、都市の勤労市民の地位と役割が全体として大きくなっているこであり、第十二回党大会以来の見地を綱領にとりいれた。

 また、これに関連して、「労働者と農民の階級的同盟」という言い方を、「労働者、農漁民、勤労市民の階級的な連携」とよりわかりやすい表現にかえた。

 なお、階層を列挙しているなかで、女性、青年などはいわゆる階級・階層の一つではなく、各階層にわたる存在だが、統一戦線に結集すべき勢力として独自の地位をしめているので、ここにあげた。

 (2) 現行の綱領では、民族民主統一戦線の政府がどういう過程で樹立され、またどういう過程をへて革命の政府あるいは革命の権力になるかなどについての叙述がくわしい。ここには、平和革命必然論や武力革命唯一論など、さまざまな誤った主張を批判して、綱領路線を確立した論戦の経過も反映している。これらの問題は、今日では解決ずみの問題であり、基本点の叙述は正確におこないながら、できるだけ簡明にすることにつとめた。

 (3) 現行の綱領は、民主主義革命の後に樹立される国家形態を「人民共和国」と規定している。これは、ソビエト形態をとらず、「名実ともに国会を国の最高機関とする」議会制の共和国をとることを表現したものであって、内容的には、「民主共和国」と異なるところはない。改定案では、一般に理解しやすい「民主共和国」の用語を使うこととした。マルクス、エンゲルスが、社会主義段階の国家形態をふくめて、その政治的目標を民主共和国として表現したことは、よく知られているとおりである。

 (4) 「自由と民主主義の宣言」の精神は、現在の綱領にも、「日本人民がかちとってきた自由と民主主義の成果を歴史的に継承、発展させる」という文章で反映されていたが、改定案では、市民的・政治的自由、生存の自由、民族の自由の三つの分野もしめし、継承・発展させる自由と民主主義の内容を具体的にあきらかにした。これらが、社会主義の段階にもうけつがれることは、いうまでもない。

九、社会主義・共産主義をめざして(第七章)

 (1) 社会主義の問題では、まず現綱領の社会主義の三つの目標について、それぞれの内容がわかるようにした。

 また、重要な点は、ソ連や東欧諸国が、いちおう形のうえでは、三つの目標をみたすような体裁をとりながら、現実には、社会主義の精神をふみはずし、根本的にまちがった方向にすすみ、崩壊にいたったことである。党は、この問題を重視して、一九八八年の中央委員会総会で、一般的な三つの目標だけでなく、「社会主義の優位性を発揮すべき基本点」として、いくつかの基準を提起した。改定案では、その観点を、より充実した内容をもって定式化し、社会主義の綱領的な展望の不可欠の側面として明確にした。また、「社会主義」の名による経済の官僚主義、専制主義を拒否するわが党の見地は、いわゆる「統制経済」をしりぞけた文章にも表現されている。

 (2) 「社会主義建設の方向を支持するすべての党派や人びとと協力する」というのは、最初に綱領を制定したときからの党の一貫した方針だが、改定案では、「統一戦線政策」という言葉で、この方針の性格をより明確にした。この考え方そのものは、第十三回臨時党大会(一九七六年)の決定で、「社会主義的人民連合あるいは社会主義統一戦線」という定式ですでにあきらかにしてきたことである。

 (3) 社会主義社会および共産主義社会の展望については、綱領は、ごく基本的な、原理的ともいうべき特徴を指示するだけにとどめてきたが、未来の展望に属する問題をとりあつかう態度として、これは原則的で正確な態度だった。この部分の改定は、つぎの二点だけである。

 イ、社会主義・共産主義のそれぞれの段階での、労働と分配の原則をあらわした二つのスローガンの表現について。現在の文章の、「報酬をうける」および「生産物をうけとる」の表現は、一般的な原理をのべるということをこえて、なにか特定の分配形態を前提にしたような印象を残す。この面でも、共産主義的な未来の大局的な展望についてごく大づかみな特徴づけをするにとどめた。

 ロ、共産主義社会の高い段階の指標としてあげられていた「人間の知的労働と肉体労働の差別が消えさる」という一句を削除したこと。現代の生産力の発展のなかでは、知的労働と肉体労働の関係は、以前とは異なる状況になってきている。一方では、肉体労働とされてきた現場の生産労働で、高度の知的要素を必要とする場合が多くなっているし、他方、知的労働に数えられてきた事務的・技術的な職務が、ほんらいの知的性格を失っている場合も少なくない。生産力の大規模な発展によってひきおこされたこれらの変化は、知的労働と肉体労働のあいだの差別の解消という目標を、より手近な問題にする方向にはたらいている。すなわち、共産主義社会の高い段階にいたってはじめて解決できる遠い目標としてではなく、より近い将来に解決すべき課題に変化しつつある、ということである。改定案では、このことを考慮した。

 (4) 共産主義社会への到達は、人類史の最終的な目標ではもちろんない。人類の歴史の大局からいえば、それは、人間らしい社会にはじめて到達することであり、人間ほんらいの歴史はここからはじまるというのが、マルクス、エンゲルスの根本的な見地だった。科学的社会主義がしめすこの壮大な展望を、簡潔にしめす文章を補足した。


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