各分野政策(2013年)

2013年参議院選挙各分野政策

16、環境

持続可能な経済・社会を実現するため、環境問題に真剣に取り組みます

20136


 2011年3月に起きた東日本大震災による福島第一原発の事故は、放射能が広範な地域に飛散するという国民の安全と環境上の深刻な事態を引き起こしました。この放射能汚染への対応は、まさに差し迫った課題です。

 原発事故への対応だけでなく、21世紀の世界を持続可能な経済・社会とするためには、温暖化ガスの大幅削減を実現する対策など地球環境の保全の見通しをたてるとともに、国内の公害被害の早急な救済や、アスベスト対策や大気・土壌汚染対策など身の回りの環境対策に真剣にとりくむことが必要です。将来にわたって良好な環境を維持していくために、環境汚染を規制し、生態系を守るとりくみを強化します。そのためにも環境汚染問題の解決には、少なくとも、(1)汚染者負担の原則、(2)予防原則、(3) 国民・住民の参加、(4)徹底した情報公開──の視点が欠かせません。その立場で次のようなとりくみを強めます。

 改憲の口実に、「環境権」(良い環境を享受する権利)を憲法に盛り込むことが、挙げられています。しかし、憲法学会の通説では、環境権が現行憲法と矛盾するものではなく、第13条の幸福追求権や第25条の生存権から、環境権は導き出すことができるとされています。むしろ必要なのは、環境基本法に、国民の権利として、環境権とその内容を明確に規定することです。これは内閣が環境基本法の改正を提案すればすむことです。平和・基本的人権・民主主義の条項を改悪しようという自民党の改憲案には、「環境保全の責務」として、「国は、…国民が良好な環境を享受することができるようにその保全に努めなければならない」と書いてあるだけです。これは、国民の権利ではなく、国の単なる努力義務にすぎません。

 

 原発の被害から国民・住民を守る

 原発問題については、今回の参院議員選挙の各分野政策(14)原発問題を参照ください。原発のない日本に――無謀な原発の再稼働と輸出をやめ、即時「原発ゼロ」の政治決断を」

 また日本共産党の二つの提言、「即時原発ゼロ」の実現を――日本共産党の提言」及び「福島原発事故による放射能汚染から、子どもと国民の健康を守る対策を」を参照ください。

  昨年6月、「原子力事故による子ども・被災者支援法」が制定されましたが、すべての被災者・被害者を対象とすべきであり、福島県の全域を対象とするのは当然ですが、上からの「線引き」を押し付けるようなことはせず、支援すべきです。被ばく推計をする場合、放射性の全核種を対象とし、内部被ばくも含めます。とくに子どもたちが生涯にわたって健康診断をうけるさい、乳幼児健診や学校診断、定期健診のなかに、これにかかわる健康診断を組み入れ、診断に必要な情報の状況など、実施のためのバックアップ体制を厚くし、さらに精密な検査、専門的な検査も可能になるようにします。具体的な支援として、民間借り上げ住宅・公営住宅の提供の期間の延長、避難・保養・検診・家族と会うための移動費補助など、被災者の実情に合った支援をします。そのため、行政だけでなく被災者・支援者の代表を含めた恒常的な協議機関を設置すべきです。

 

 地球温暖化対策の深刻な遅れを克服し、外交交渉でも積極的な役割を果たす

 昨年9月には北極の海氷面積が過去最小を記録し、同月の世界と日本の平均気温は観測史上最高を記録しました。厳しい干ばつや大洪水など、地球温暖化の影響とみられる異常気象が世界各地で頻発するようになっています。気象庁によれば、国内の大気中の二酸化炭素(CO2)の平均濃度が、今年4月にすべての観測地点で400PPMを超え、最高値を記録しました。米海洋大気局(NOAA)のハワイ観測所でも5月に入って400PPM超を記録しており、世界的な温暖化の進行が懸念されています。温暖化をもたらす「放射強制力」は1990~2011年に30%増加したといいます。地球温暖化は私たちが思っているより急速に進んでいます。

 全加盟国を対象にした新たな国際協定の交渉が、2015年までの合意をめざして開始され、その進展が焦点となりました。2011年アフリカのダーバンで開催されたCOP17は、京都議定書の第2約束期間を2013年1月1日から開始することと、すべての締約国に適用される新たな枠組みの交渉(ダーバン・プラットフォーム)を開始することに合意しました。これを受けて、今年に入ってドイツのボンで会合が開かれ、2020年以降の新しい国際枠組みと、2020年までの各国の削減目標のかさ上げが話し合われました。

  取り返しのつかない環境悪化を防ぐには、産業革命以来の気温上昇を「2度以内」に抑えるべきだということが世界的な合意です。その達成が年々困難になっています。ところが日本政府は排出削減にきわめて後ろ向きです。法的義務の引き受けは途上国の参加が条件だとし、第2約束期間に参加しないことを事実上、表明し、さらに昨年のCOP18(カタールのドーハ)では正式に離脱しました。新たな枠組みが発効する予定の20年まで法的義務を負わないとする姿勢で、大量排出している国としての責任を投げ捨てるものであり、温暖化対策をめぐる国際外交でイニシアチブを発揮できなくなっています。

 世界で第5位の温室効果ガス排出国である日本(世界の3.8%、2009年)が削減の国際責任を果たすのは当然であり、それに見合う対策を早急にとることが不可欠です。福島原発の重大事故を受けて、原発をただちにゼロにすべきことは譲れない前提であり、原発が全面停止したもとで、緊急的・一時的措置として火力発電が拡大します。しかし、これは温暖化対策からみても持続可能なエネルギー供給のあり方ではありません。火力による電力確保は緊急避難的な措置とし、再生可能エネルギーの大量普及に最大限の努力を払い、エネルギー利用率の引き上げや省エネの徹底で、低エネルギー社会への移行を急ぐことは、まったなしの課題です。

 国内で日本の排出量に大きな責任を負う財界は、削減に強く抵抗しています。経団連は、「30年代に原発稼働ゼロ」という民主党政権の方針さえ「深刻かつ甚大な悪影響を及ぼす」と非難するなど、原発にしがみつき、原発ゼロの方針の放棄を要求してきました。この財界の要求を受け入れ、安倍首相は今年2月、オバマ米大統領との会談で、2030年代の原発稼働ゼロを目指すとした民主党政権の政策について「ゼロベースで見直す」と明言して、原発ゼロの方針を投げ捨ててしまいました。産業界は日本の温室効果ガスの総排出量の8割(家庭が使う電力分を電力会社の排出とすると9割)を占め(環境省)、わずか大企業40社、150の事業所だけで日本全体の二酸化炭素排出量の50%に達しています(気候ネットワークの調査)。財界は排出削減でも、「25%削減目標をゼロベースで見直す」として、義務付けではなく企業の自主努力で、というのが一貫した主張です。また安倍首相は、「温暖化対策削減目標の見直しが必要である」との方針を打ち出しました。温室効果ガスを2020年に1990年比25%削減するとした政府の国際公約を「ゼロベースで見直す」よう産業競争力会議に指示し、投げ捨てる姿勢を示しました。これでは国民の願いである原発ゼロも、排出削減の国際責任も果たすことはできません。

 中国やインドなどの新興国も、休息の温室効果ガスの排出量を増大させています。温暖化対策は先進国だけではなく途上国もその抑制に取り組む必要があり、すべての締約国に適用される新たな枠組みの交渉開始に合意したことは大きな前進です。しかし、日本、ロシア、ニュージーランドは京都議定書の第2約束期間から事実上、離脱しました。最大の問題は、先進国や途上国の現在の削減目標や削減行動では、世界の平均気温の上昇が、人類の生存に深刻な影響を与えるとされる産業革命前から2℃をはるかに超えてしまうことです。2℃未満に抑制するために必要な排出削減との間の大きなギャップを埋める作業に道筋をつける必要があります。COP18では、2015年から2020年までの第2約束期間に90年比で18%の削減を掲げていましたが、第2約束期間を拒否している日本、ロシア、ニュージーランド、さらにアメリカやカナダなども、同じ程度の削減目標を約束すべきです。

 5~10年以内に、再生可能エネルギーの大量普及に最大限の努力を払い、エネルギー利用率の引き上げや省エネの徹底で、低エネルギー社会への急速な移行を図ることで、国際公約である2020年の削減25%を堅持し、さらに30%削減を追求します。

 大型風力発電機、ヒートポンプや熱・電気併給システム(エコキュート)のコンプレッサーなどから発生した低周波音によって、不眠、頭痛、めまい、吐き気、耳鳴りなど住民の健康被害が出ています。低周波振動の健康への影響についてただちに調査・研究を行い、環境アセスを義務づけた風力発電のように他の施設についても影響調査を義務づけ、環境基準や設置・建設のさいの距離条件の設定、低周波を発生しない製品の開発など、本格的な対応が必要です。

 企業の目標達成のための補助的手段としての「国内排出量取引制度」は、原単位方式でなく、発電施設も含めた事業所の直接排出量の総量削減を定めます。二酸化炭素の排出量などに着目し「環境税」の拡充をはかります。

 

 水俣病被害者の全面的な救済に力をつくします

 国は昨年7月31日、「水俣病特別措置法」に基づき未認定患者に一時金と医療費などを支給する救済策の申請受け付け締め切りを、強行しました。環境省は締め切り期限に向け、「全ての被害者に救済申請してもらうよう周知広報を徹底する」としたものの、地域指定の範囲外にも多くの水俣病被害者が存在していて、県外に転出した水俣病被害者にとって情報不足は否めません。また水俣病に対する差別・偏見のなかで、いまだに共済申請ができず、残された被害者が残されています。

 「水俣病特別措置法」には、「国の責務」として、被害者が「あたう限りすべて救済される」ための努力義務を課しています(第4条)。一方で、この法律には、「救済措置の開始後3年以内を目途に対象者を確定する」(第7条2項)とはいうものの、あくまでも「目途」にすぎず、現状を見て「責務」を果たそうとすれば、昨年7月で申請受理を打ち切ることは許されません。国や加害企業(チッソ)の責任を放棄し、長年にわたり苦しんできた高齢の被害者を、切り捨てるものです。

さらに最高裁(第3小法廷)は、今年4月16日、これまで水俣病と認められなかった熊本県水俣市の女性の遺族が、県を相手に患者認定を求めた訴訟の上告審判決で、女性を水俣病患者と認定するように県に命じた福岡高裁判決を支持し、県側の上告を棄却しました。また、水俣市出身で大阪府の女性の遺族が認定を求めた訴訟の上告審判決で、患者認定しなかった大阪高裁判決を破棄し、審理を高裁に差し戻す判決を言い渡しました。
 そのなかで最高裁は、1977年の国の認定基準について「複数症状の組み合わせがなく、手足の感覚障害のみの水俣病が存在しないという科学的な証拠はない」とし、「症状の組み合わせが認められない場合でも、証拠を総合検討した上で、個別の判断で水俣病と認定する余地」を認めました。これは、水俣病として認定されるべき患者が、厳しい認定基準によって切り捨てられてきたことを厳しく指摘したものです。
 水俣病の真の解決のためには、不知火海沿岸に居住歴のあるすべての住民の健康調査を、国と県の責任で行うこと、認定判断条件をあらため、司法による救済をはじめ、すべての水俣病被害者を救済する恒久的枠組みをつくることが不可欠です。日本共産党は、すべての被害者の救済のために、力を尽くします。

 

 大気汚染被害者を救済し、自動車メーカーに社会的責任を果たさせます

 大気汚染による患者を先頭にした、長期にわたる運動により、道路公害における国・自治体・道路公団の責任がはっきりしました。自動車メーカーは健康被害を予見できたにもかかわらず、乗用車にまでディーゼル化をすすめたことなど、責任は明らかです。

世論と運動に押され、東京都では都・自動車メーカー・国・首都高速道路株式会社の負担で、都内に1年以上居住する気管支ぜん息患者の医療費の自己負担分が2008年8月から無料となったのですが、東京都は、無料制度を打ち切ろうとしています。本来は、国がこうした無料化を全国で実施すべきです。国が1988年に公害健康被害補償法による患者の新規認定を打ち切ったことから、全国で多くの未認定患者がぜん息などで苦しんでおり、医療費の無料化とともに新たな救済制度の確立を強く求めています。

 大気汚染公害の患者団体は、ぜん息などを引き起こす空気中のごく微小な粒子状物質「PM2・5」(微小粒子状物質。直径が2・5マイクロメートルの粒子。1マイクロメートルは1ミリメートルの千分の1)以下の微小粒子について環境基準設定を求めてきました。環境省が行った自動車排ガスの健康影響調査(「そらプロジェクト」)の結果では、NOx(窒素酸化物)やEC(元素状炭素。PM2.5の炭素成分)が健康への影響と関連が認められ、「持続性せきたん」(慢性気管支炎の症状)とも有意な関連が見られました。

 2009年9月にPM2.5の環境基準が設定されたことを積極的に生かして、各地での測定を国・自治体に迫り、PM2.5の汚染状況をあきらかにして、対策を要求していきます。しかし、いまだにこの環境基準を達成した測定局は、一般環境大気測定局で32.4%、自動車排出ガス測定局で8.3%にとどまっています。大幅な削減効果をあげるには、大都市部への基準不適合車の流入を抑え、幹線道路における汚染状況のひどい地域での大型車の走行規制など、総量規制による汚染対策をすすめます。くるま優先で自動車道路の建設を促進して公害を悪化させる行政の姿勢の転換を求め、行政・メーカーに必要な情報公開を義務づけ、自動車排ガス規制の強化や環境・製品アセスメントを強化します。自動車の交通量を減らすために、ロード・プライシングやパーク・アンド・ライドなどの手法を導入したまちづくりで、都市環境の保全を図ります。

 大気汚染防止の取り組みにとって、重大な支障となっているのが、「地域主権改革」の名で環境相による公害防止計画の策定指示が廃止されたことです。30地域で策定されていた公害防止計画が2011年度からは21地域へと大幅に後退しました。三重県が1972年から策定してきた「四日市地域公害防止計画」も2010年までで打ち切られました。2011年8月に日本共産党以外の各党の賛成で成立した「地域主権改革」第2次一括法によって、都道府県の公害防止計画について、環境相の指示を廃止し、各知事が任意で「作成することができる」ことに変えてしまったのです。公害防止に対する国の役割の大きな後退であり、「地域主権」改革の名による公害行政の規制緩和は止めるべきです。

 

 アスベストなど、身近にある有害物質への規制を強め、化学物質政策基本法を制定します

 2010年5月、大阪地裁はアスベスト被害に国の責任を認める画期的は判決を出しました。国民の運動に押されて厚生労働大臣が控訴を断念する意向を表明したにもかかわらず、土壇場で対応を一任された仙谷国家戦略大臣は控訴を決定し、今年8月、大阪高裁は地裁の判決を取り消すという不当な判決を出しました。この判決は、いのちや健康が侵害されても、工業製品の“有用性”や産業発展が優先するというものであり、到底、容認できません。2011年12月、東京地裁の判決では国の責任を認めたものの、一人親方や零細事業主は当事者にあたらないと除外し、依然として製造企業の法的責任も免罪していることは、不当です。

 アスベスト問題では、製造企業と健康被害の因果関係を究明して明確にさせ、製造・使用を長い間放置してきた国の不作為の責任を明らかにすることが必要です。アスベスト関連企業の労働者や事業所周辺住民などの健康診断調査を継続して実施するために、費用を原因企業と国が負担するよう求めます。アスベスト対策法の施行後も、認定対象が狭く、救済数が余りにも少ないため、被害者の実態に合わせて拡充します。石綿の労災認定も抜本的に見直すとともに、被災者の見つけ出しをすすめ、建設労働者や「一人親方」も含めすべての健康被害者を救済し、周辺住民の被害認定でも、石綿肺や良性石綿胸水などを労災同様にすべきです。被害に対する救済水準を引き上げるなど、補償制度に早急に改善するよう政府に求めます。汚染者負担にもとづいて製造・使用企業の責任による基金創設を実現し、救済制度を強化します。石綿の特例使用が認められている分野を含め、早急に全面的な使用禁止を目指すとともに、アスベスト除去や解体に伴う二次被害を阻止するために、大気汚染防止法が改正されましたが、発注者の責任や立ち入り検査の徹底など改正の趣旨を実効あるものにするため、自治体の指導・監督を強め、国の補助の拡充を求めます。

 アスベストの飛散防止や適切な処理方法を早急に確立しなければなりません。アスベスト暴露による健康被害を防ぐため安全確保の規制を強化します。じん肺・アスベスト被害者の労働災害認定基準を大幅に緩和し、診断・治療のための医療機関への情報の提供を進めます。国と建材メーカーなどが拠出する資金で、裁判によらず簡易・迅速に救済する「被害者補償基金制度」の創設をめざします。その基金につながる「トンネルじん肺基金」を創設するトンネルじん肺救済法案には600人以上の国会議員が賛同しており、早急に成立を図って、被災者に補償を求めます。

 印刷会社の元従業員らが胆管がんを相次いで発症した問題は、改めて化学物質の健康被害を再認識させました。化学物質の安全性にかかわる規制は、分野ごとに設けられ、統一性がありません。2002年に南アフリカのヨハネスブルクで開かれた環境サミットでは、2020年までに、予防的取り組みに留意しながら、科学的根拠にもとづくリスク評価を使って、化学物質が、人間の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法で、使用・生産されることをめざすという目標が合意されました。

 しかし政府の対応は、化学物質の環境リスクを2025年までに低減するという政府の第三次環境基本計画や、化学物質審査製造等規制法「改正」によるものであり、不十分です。同計画を前倒しして2020年に間に合わせることや、予防的原則を明文化し、化学物質の製造や使用量の削減、安全性のデータがない化学物質は市場での流通・使用を認めないなどの理念をもりこんだ化学物質基本法を制定します。

 化学物質審査製造等規制法で新たに禁止された物質については、本来使用すべきではありません。代替物質への転換を政府が責任をもって促すべきです。産業界の負担を軽減することを理由に、リスク評価の対象を約1000種の物質に絞った「スクリーニング型評価」ではなく、危険性評価が必要な全化学物質(約7000種)に対する網羅型評価を2020年までに終えるよう、取り組むべきです。また10億分の1メートル単位の微細粒子であるナノ物質については、健康被害を拡大したアスベストの苦い教訓を踏まえて、健康への影響について対策をとります。

 化学物質による環境汚染がひきおこすとされているアトピーや化学物質過敏症、ダイオキシンをはじめとする環境ホルモンの悪影響、シックスクールやシックハウスなどへの健康被害の調査と安全対策を強化し、地球環境サミットでも確認された予防原則にたって、遅れている化学物質の有害性にかんする研究と規制を促進します。工場跡地や不法投棄が原因とみられる地下水の汚染などの環境汚染にたいして、住民の健康被害に関する調査と情報公開、新たな被害補償制度などを求めます。

 カネミ油症事件から45年になるにもかかわらず、被害者はいまなおPCBやダイオキシン類による身体被害に苦しんでいまます。2010年のカネミ油症患者に対する健康被害実態調査によって、様々な病状に苦しんでいることが明らかになりました。「PCB(ポリ塩化ビフェニール)廃棄物処理基金関連法」を改正し、この基金を改めて認定患者の医療費を補償していく方向で、被害者の救済に取り組みます。

 電磁波による健康への影響について、WHO(世界保健機関)は、07年6月、新たな環境保健基準を公表しました。各国での医学的調査を基に、平均3〜4ミリガウス(ガウスは磁界の強さの単位)以上の磁界に日常的にさらされる子どもは、もっと弱い磁界で暮らす子どもに比べ、小児白血病にかかる確率が2倍程度に高まる可能性を認めています。新基準は電磁波のうち、1秒間に50回または60回変動する送電線の電磁波など、強さが比較的ゆっくり変動する「超低周波」が対象です。動物や細胞の実験では発がんが立証されず、電磁波と発がんに因果関係があるとまでは言えないと指摘したものの、予防的考え方に基づいて磁界の強さについての安全指針作り、予防のための磁界測定などの対策をとるよう各国に勧告しました。日本でも、この勧告にもとづいて、電磁波に関する環境基準を早急に設定すべきです。そのさい、日弁連が9月に提言したように、電力・電波を利用する側の企業を所管する総務省、経済産業省から独立した組織として「電磁波安全委員会」を設置し、中立・公平な立場から電磁波にたいする安全規制を行い、予防原則にたった暫定規制、住民協議や電磁波放出組織に関する情報公開を制度化し、取り扱うという方式は、原発事故の痛苦の教訓からも妥当です。携帯電話用の無線基地の建設など電磁波の発生源が急増しているなかで、国民の不安にこたえるためにも、電磁波の健康への影響にかんする研究・調査を積極的にすすめるよう求めます。多くの国が国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)によるガイドラインに準拠していますが、より低い電磁波による健康への影響を示唆する研究・報告も多数存在し、EU議会は2008年に電磁波に関する現在の基準が妊婦や新生児、子どもといった脆弱なグループには不十分だという決議を採択しています。高周波では、スイスが携帯電話中継基地局の規制値が日本の100分の1以下(電力束密度)であり、イタリアでは学校、病院、居住地域などに対する注意値がとくに設定されるなど、日本より厳しい規制がなされています。

 高速道路の騒音、振動、低周波音によって、不眠、頭痛、めまい、吐き気、耳鳴りなど住民の健康被害が出ています。高速道路床全体の振動を抑える制振装置を設置し、低周波音の健康への影響については、調査・研究を強め、環境アセスメントでの影響調査に反映させるなど、本格的な対応が必要です。

 米軍や自衛隊の基地からは、艦載機や自衛隊機などのたえがたい爆音・騒音が、周辺の住民の生活を脅かしています。2011年4月に那覇地裁沖縄支部への第三次嘉手納基地爆音訴訟の提訴には、原告が2万2000人に達するなど、過去に例がないほどの大規模な訴訟となりました。身体的被害や精神的被害、生活破壊、航空機の墜落事故、さらには地域発展の阻害など、基地が存在することによる様々な被害を被っています。「爆音は住民の受忍限度を超え、違法状態にある」という明確な司法判断があるにもかかわらず、爆音を放置しています。基地撤去を求める沖縄の島ぐるみのたたかい、欠陥機であるオスプレイの低空飛行訓練の強行への全国の反対の声など、基地に反対する新たな国民運動の高まりが生まれています。「爆音のない平和で静かな生活環境」を一日も早く実現するために、「航空機の飛行差し止め」など爆音音源対策を、早急に講じさせます。

 

 ごみの“焼却中心主義”から脱却し、ごみを出さないシステムを製造段階から確立します

 ごみ焼却施設の建て替え時期を迎えて、ごみの発生抑制、減量・リサイクル化を踏まえた適切なごみ処理とその計画に基づいた焼却施設建設が必要です。大型焼却炉によるごみの"焼却中心主義"からの脱却をはかります。ごみの発生を設計・生産段階から削減するためには、自治体と住民に負担を押しつける現行制度を、OECDも勧告している「拡大生産者責任」の立場で抜本的に見直すことが必要です。政府がダイオキシン対策として導入を急いだ大型廃棄物処理施設の建設・運営の高コスト負担や、処理施設の爆発事故やトラブルに、自治体は頭を痛めています。国は、自ら誘導した処理施設の過大な負担の軽減策をすすめるとともに、自治体は、国の誘導策にのって大規模施設の建設に走ることをやめるべきです。事故やトラブルについてはプラントメーカーに改善と補償を要求するとともに、国の指導を求めます。家電製品のリサイクル費用については、廃棄時の不法投棄をなくし、ごみになる部分を減らすために、商品の販売時に徴収すべきです。

 有害物質が混入した安定型処分場や、土壌汚染処理施設、産業廃棄物の不法投棄とそれによる環境汚染に歯止めをかけます。違法行為の「やり得」を許さないために、都道府県が徹底した立ち入り検査を実施し、違反者への厳格な監督と行政処分をおこないます。不法投棄のルートと関与者の解明、違反者など排出者の責任による撤去を実施させます。財源確保のための制度見直しを行い、早期処理を進めます。

 容器包装リサイクル法によるペットボトルリサイクルも、自治体負担の軽減措置など制度見直しを求めます。家電リサイクルでは、大手量販店などによる不適正な引取・引渡が問題になっており、早急に小売業者が遵守すべき基準の設定などの規制強化や、回収・リサイクル料金の見直しを求めます。住民がごみになるものを買わない、使わない、出さない、分別を徹底するなど、住民の意識・取り組みの向上、自治体と住民の協力が欠かせません。

 産業からの廃棄物の投棄によって引き起こされた土壌汚染の問題も深刻です。東京の石原都政が進める築地市場(東京都中央区)の移転計画で、移転先の江東区豊洲の東京ガス工場跡地が高濃度の有害物質で汚染されていて問題になりました。全国各地で土壌や地下水の汚染が発見されています。2009年に改正された土壌汚染対策法では、3000平方メートル以上の土地を改変する場合に調査を義務づけることなどが盛り込まれましたが、依然として、法改正以前に廃止された事業所には適用されないなど不十分なものになっています。操業中の工場敷地や、工場敷地を別の工場に売却した場合にも、調査を義務づけるよう改正すべきです。

 

 大型開発による環境破壊をやめさせ、生物多様性を守ります

 湿地も森林と同様、温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)の吸収に重要な役割を果たしています。湿原では、植物の死がいが積み重なり、炭素が泥炭の形で蓄積されます。しかし温暖化がすすめば、湿地の乾燥と分解がすすみ、CO2やメタンといった温室効果ガスが排出され、いっそう温暖化が促進されるという悪循環に陥る可能性があります。

 08年に国連訓練調査研究所(UNITAR)が釧路市で開いた「生物多様性と気候変動についての研修ワークショップ」で示されたように、ラムサール条約(1971年採択)と気候変動枠組条約(1992年)、生物多様性条約(同)の3つは、不可分の関係にあります。これまで開発の対象と思われてきた湿地は、水の浄化など、自然の恵みをもたらすものだと再認識されるようになり、地球温暖化対策のうえでも、その保全が重視されてきています。登録ずみの湿地の保全にとどまらず、ラムサール条約を通して広い視野で、環境について考えることが求められています。諫早干拓計画を撤回し、水門の開放で有明海の豊かな海を回復するよう、政府はただちに実行すべきです。沖縄の泡瀬干潟や辺野古沖など貴重な干潟の保全のために力をつくします。

瀬戸内法ができて以降も埋め立ては続き、瀬戸内海の生態系に重大な影響を与えています。法律を改正して、国の責任で「埋め立ての禁止」「海砂利採取の全面禁止」「廃棄物の持ち込み禁止」をしていくことが重要です。あわせて、生態系の回復・復元を計画的に進めていきます。その際、回復・復元の過程での影響をよく検討し、住民もふくめた関係者(ステークホルダー)の英知を集め、たとえば藻場、干潟、砂堆などの形成過程や条件、それが生態系でどのような役割をもっているのかなどの基礎的な調査・研究とモニタリングを繰り返し、その結果を一段と新しい計画に適切に生かしていきます。

 人類生存の基盤である生態系を守るため、環境破壊をひきおこすような大規模開発をやめさせるとともに、改定された環境アセスメント制度に、欧米で導入されている「政策の検討段階からの環境アセスメント(戦略的アセスメント)」の完全導入を求めます。電力業界の圧力に屈して、発電所を戦略アセスメントの対象からはずすべきではありません。干潟などの保全法をつくるとともに、環境NGOが求めている「野生生物保護基本法」の制定を目指します。諫早湾や長良川などの水門をあけ、自然の維持と回復をはかるべきです。住民のたたかいで川辺川ダム建設中止は勝ち取りましたが、民主党政権が工事を再開した八ツ場ダムや、多数の必要のないダムの建設はきっぱりと中止すべきです。大型開発による環境破壊をきっぱりとやめるべきです。

国土の3分の2を森林が占める日本は、世界でも有数の「森」の国ですが、その荒廃が進んでいます。絶滅が心配されているオオワシ、イヌワシ、ツキノワグマ、サンショウウオや北海道のナキウサギ、ヒグマなどを、開発から守り保護に力をつくします。森林の荒廃や気候の変動によって、野生の熊やイノシシ、シカ、サルなどが森から里に近づいて、農作物を荒らし、人間に捕殺されるケースが急増しています。貴重な自然を保全し野生生物と共存するためには、捕殺だけの対応ではなく、野生動物の生息する頭数や状況の把握、森林の保護・管理、野生動物による被害の防止と救済に総合的にとりくみます。

 日本は外来種生物の大量輸入国であり、それが自然界に出て日本の固有種の生息を脅かしています。動植物の輸出入検疫を強化するとともに、内外の知見にもとづくリストを作成し輸入を規制すべきです。輸入業者の立入り検査の強化も必要です。米軍の岩国基地で繁殖した毒グモが基地外にまで広がったように、港湾や空港、基地などでは意図せず付着などで入り込む外来種があり、こうした施設の周辺の監視を強めるとともに、固有種を脅かす外来種の駆除をいっそう積極的におこなうべきです。

 

 ペットの不妊手術や譲渡促進で殺処分を減らし、動物実験に替わる方法の普及を図る

 犬や猫などのペットは、こんにちでは単なる愛玩動物としてだけでなく、コンパニオン・アニマル=「伴侶動物」と考えて飼育する人も少なくありません。ところが、最近では、さまざまな事情からペットの飼育を途中で放棄する人も少なくなく、心ない人たちによる動物虐待もしばしば報道されます。一部の無責任な飼い主のために、近隣の住民が迷惑に感じ、ペットとなっている動物を快く思わなくなってしまう人たちもおり、人間社会で暮らす動物たちを取り巻く状況はきびしくなっています。保健所への持ち込みや捕獲による犬や猫の殺処分数は年間22万件にもなるといわれています。

 殺処分を減らすためには、なによりも飼い主の責任として、ペットが死ぬまで飼いつづけることが基本です。同時に、引き取り手の見つからないまま子猫・子犬が処分されることがないよう、里親を探すなど譲渡する数をふやすことが重要です。場合によっては犬猫の不妊手術をすることも求められます。子犬は引き取り手が見つかりやすいのに比べ、成犬はみつけにくく処分されることが多いといわれています。人をかむなど矯正できない問題がある場合をのぞき、譲渡の可能性を広げるためには、性格を知り、必要な矯正をし、一定期間の健康管理をするなど手間と時間が必要です。行政だけでこうした措置をカバーすることは困難ですが、愛護団体やNPO、地域の住民の協力なども得られる仕組みをつくります。政府は、市町村による動物との共生の地域ビジョンの作成を支援し、不妊手術への助成制度の創設や、譲渡促進のとりくみへの支援などに乗り出すべきです。

昨年9月、動物愛護管理法が改正されましたが、順調な成育を妨げないために、出生後56日を経過しない子犬や子猫の親からの引き離しを禁じている一方、付則で施行後3年間は出生後45日としており、業者の利益優先ではなく動物の命と健康、予防原則の立場から、一日も早く本則の実現を図ることが大切です。

 今回の法改正で、犬猫のインターネット販売時の現物確認や、書面による対面説明が義務化されましたが、業界や自治体に徹底を図ることが必要です。

 東日本大震災の教訓からも災害対策での避難計画にペットの避難を位置づけることが必要になっています。災害対策基本法の地域防災計画などとの連携を図るとともに、同計画にペットの同行避難を加えることを検討すべきです。

 先進各国では、動物実験に替わって、動物を使用しない試験方法(代替法)の開発がすすめられています。OECDなどにおいても、試験ガイドラインのなかに代替法を採用することで動物実験を削減しようという動きもあります。代替法の採用を進め、動物実験を可能な限り回避するよう努めます。

こうした内容を、動物愛護法の改正に反映させます。

 

 日本にも影響が及んでいる東アジアの環境保全のために協力します

 日本海や東シナ海を越えてくる黄砂や窒素酸化物が、日本国内の自動車排ガス対策の遅れと相まって、日本の国民ののどや鼻に影響をあたえ、酸性雨や光化学スモッグの原因になっています。モンゴルや華北地域の砂漠化がすすんでいることや、急速な経済発展をすすめる中国での大気汚染の悪化が、国境を越えて日本にも影響を与えているといわれています。

 東アジア全体の環境を保全するために、政府は、公害防止の経験や技術・研究の成果を生かし、緑化事業や東アジア諸国の人びとの健康を守るとりくみを提起し、実効性のある支援を強めるべきです。東アジア諸国に進出して活動している日本企業も、その国の環境にかかわる規制を遵守するだけでなく、適正な環境基準の設定に積極的に応じることで、社会的に貢献すべきです。

 

 (c)日本共産党中央委員会