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日本共産党

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赤旗

2013年参議院選挙各分野政策

15、エネルギー

ただちに「原発ゼロ」に踏み切り、再生可能エネルギーの大量導入と省エネの徹底で、低エネルギー社会の実現をめざします

20136


 エネルギーは食料とともに経済・社会の存立の基盤であるにもかかわらず、日本のエネルギー自給率はわずか5%(2010年。エネルギー白書2012)にすぎません。

 2011年3月11日の東日本大震災と、それによる福島第一原発での爆発、放射能の広い地域への飛散によって、原発推進の政府のエネルギー基本計画は、国民の支持を完全に失いました。このエネルギー基本計画は、2010年6月に菅内閣が閣議決定したもので、14基以上の原発を新増設し、2030年度には発電量の半分以上を原発で供給するというものでした。民主党前政権は、大飯原発の再稼働後、2030年代に原発稼働ゼロを目指すという方針を一応掲げたのですが、それさえも安倍内閣はご破算にして、原発の再稼働や輸出を強引に推し進めようとしています。福島の現状や広がり続ける放射能による被害に、国民の圧倒的多数が願っている日本のエネルギー政策の抜本的な転換に、逆行する動きです。

 08年には、先物取引などによる異常な投機や中東情勢の緊張、発展を続ける途上国のエネルギー需要の増加によって、原油などエネルギー価格が高騰し、日本の経済・社会に打撃を与えました。リーマン・ショック後も石油は高値基調がつづいています。シェールガスの開発でLNG価格が低下していますが、新興国のエネルギー需要の増大などで長期的には値上がりが予想され、環境への負荷も大きい化石燃料への依存を減らさなくてはなりません。日本近海に存在するメタンハイドレートは、いわば日本の資源の“貯金”として重要であり、利用にむけて開発・研究を進めます。

 再生可能エネルギーを本格的に大量に導入するとともに、むだや不要不急のエネルギー需要を削り、エネルギー効率の引き上げや省エネの徹底で、地球の環境・資源の上で持続可能な低エネルギー社会を目指します。それによってエネルギーの自給率の引き上げを図ります。

 

1、すべての原発からただちに撤退する政治決断を――「即時原発ゼロ」を実現する

各分野政策(14)原発問題を参照ください。
http://www.jcp.or.jp/web_policy/2013/06/2013-2.html

合わせて昨年9月25日発表の「「即時原発ゼロ」の実現を――日本共産党の提言」を参照ください。
http://www.jcp.or.jp/web_policy/2012/09/post-473.html

 

2、再生可能エネルギーの本格的な大量導入を図ります

 エネルギー問題は、地球の温暖化対策とも密接な関係があります。政府は不当にも京都議定書から昨年、脱退してしまいましたが、もともと気候変動枠組条約にもとづいて、先進国として温室効果ガスの排出を削減する義務があります。政府は原発の稼働率のアップと新増設を"頼み"としてきたために、再生可能エネルギーに本格的に取り組んだEU諸国とくらべ、再生可能エネルギーの導入で大幅に後れを取りました。2012年に1年でドイツが導入した太陽光発電設備の量(760万kW)は、日本がこれまで導入してきた総量の686万kW(2013年2月末)を上回っています。大規模集中型から小規模分散型のエネルギーシステムへの転換が迫られます。

 日本の自然エネルギー利用の現状は、国際的にも大きく立ち遅れ、電力供給にしめる比率でEUを下回り、太陽光発電の導入量でドイツに首位の座を奪われスペインにも抜かれました。

 日本の地域それぞれの条件にあった再生可能エネルギー(自然エネルギー)の開発・利用を計画的に拡大することに、エネルギー政策の重点をおきます。太陽光・熱、小水力、風力、地熱、波力や、あるいは畜産や林業など地域の産業とむすんだバイオマス・エネルギーなどは、まさに地域に固有のエネルギー源です。この再生可能エネルギーの活用を地元の中小企業の仕事や雇用に結びつくように追求し、地域経済に取り入れることができれば、そこから得られる電気やガスを販売することで地域に新たな収入が生まれます。事業の成果や副産物を地元に還元したり、雇用や技術、資金の流れを地元に生み出すことで、地域経済の活性化に役立ちます。ドイツでは、原発で働く人は3万人ですが、再生可能エネルギーの分野では38万人が雇用されており、再生可能エネルギーには優れた雇用効果があります。

――再生可能エネルギーの割合を2020年までに20%とする導入目標を明確にする EUが2020年までに一次エネルギーの20%を自然エネルギーでまかなう目標を決定したのをはじめ、世界的に見ても、太陽光・熱、小水力、風力、バイオマス、地熱など再生可能エネルギーの普及が本格的な流れになっています。ところが日本の現状は、一次エネルギーのわずか2%(大規模水力発電分3%を除く)をまかなうだけにとどまっています。現在、検討中のエネルギー基本計画で再生可能エネルギーの大量導入を位置づけるとともに、2020年までにエネルギー(一次)の20%、2030年までに30%を再生可能エネルギーでまかなう「再生可能エネルギー開発・利用計画」を策定し、着実に実行していきます。再生可能エネルギーであっても、その導入にあたっては、十分に調査・検討した環境基準の設定、環境アセスメントの強化などを実施します。

――リードタイムの長さを考慮して再生可能エネルギーや高効率の電源の導入を急ぐ 住宅に設置する太陽光発電であれば、思い立ってから2~3か月で発電が可能になります。小水力発電なら2年ぐらいで、稼働します。リードタイムの短さを踏まえて、住宅や、まとまった広さの屋根をもつ公共施設などに太陽光発電設備の導入を、大急ぎで進めます。大型の発電施設は、計画から環境影響調査、建設に時間が5~10年とかかります。その時間を考慮して、早期に検討に着手する必要があります。

――再生可能エネルギーの豊富な地域に送電網を整備する 自然エネルギーによる発電が期待できるのにもかかわらず、人口が少なかったために送電網がない地域もあります。国がイニシアチブを発揮してこうした地域に、送電線の建設を進めます。そのさい、現状の9電力(沖縄電力を除く)の地域割を越えて、より広域的な送配電網とそのシステムの整備を進めます。

――電源開発促進税を、電力を固定価格で買い取る財源にあて、電力使用者の負担を減らす  再生可能エネルギー発電の普及には、長期的な採算の見通しが重要であるため、電力の固定価格買い取り制度が導入され、2012年7月から開始されたことは、重要な一歩です。現行制度では、買い取りの財源は、いわゆる「総括原価」にもとづく電気料金には含まれていないものの、賦課金として電気料金に上乗せされて、全額、電力使用者の負担とされています。経済界は、“買い取り量が増えれば、家計や事業者の負担が重くなる”と圧力をかけていますが、すでに電気料金には電源開発促進税という電源を生み出すための税金が含まれており、年間3600億円も、電力使用者は負担しています。いまはこの財源が主に、原発のために使われています。日本共産党は国会でも提案したように、この財源を買い取り費用に充てることで、ユーザーの負担を抑えるように使います。

 また、再生可能エネルギーの普及をさらに促進するために、家庭用の太陽光発電に対する国の補助を抜本的に引き上げ、公的助成を高めます。国、自治体の施設や、一定規模以上の建物については、再生可能エネルギーの利用、熱効率の改善を義務づけます。

――バイオ燃料の開発は、食料生産と競合せず、環境保全を重視したものに 日本共産党は、バイオ燃料の開発・導入を自然エネルギーの重要な柱であると考えています。その具体化にあたっては、食料需要と競合しない植物資源などに限定する、国内産・地域産の資源を優先的に活用する(「地産地消」)、生産・加工・流通・消費のすべての段階で環境を悪化させない持続可能な方法を採用するなど、新たな環境破壊をひきおこさないためのガイドラインを設けます。車両の燃料や、熱源としてバイオ燃料の普及を促進します。

 

3、省エネを徹底し、エネルギー消費量を大幅に削減する。

 自然エネルギーの爆発的導入とともに、低エネルギー社会を実現するのに、重要な柱となるのがエネルギー効率の引き上げ、省エネの徹底です。

 たとえば、年間の電力量は約1兆kW時ですが、全国約9000の大規模工場と業務部門施設で約4分の1を、その他の全国約74万の工場とオフィスビルなどの業務部門施設で4割の電力を使っています。ピーク時の電力(東京電力)も、電力消費量の4分の3が業務と産業が占めています。この部分で、エネルギー利用の効率化を図ることによって、電力需要や化石燃料の需要を減らすことができます。

――ガス火力の割高な燃料価格を是正する 日本の火力発電のコストは高すぎます。天然ガスを高い価格で買い続けているからです。日本の電力会社は、天然ガス価格を日本向け原油平均価格にリンクする方式で契約しているため、国際的には天然ガス価格が、シェールガスの開発で低下する傾向にあるにもかかわらず、原油価格高騰のために、日本は不当に高い価格で天然ガスを買い取っているのです。

アメリカでのシェールガスの開発・輸出の動きは、LNGの国際価格を引き下げる効果を持っています。国内の大口ガス需要者や他のLNG輸入国との協調を強化して、LNGの値下がりを買い入れ価格に反映させるよう、政府の取り組みを強めます。

――火力発電における発電効率を引き上げる 日本国内では2010年度実績で、石炭の53%、天然ガスの55%が、発電用として消費されています(石油は10%弱)。ところが、電気に代わるのは、投入したエネルギーの4割そこそこで、6割近くは廃熱として捨てられます。LNG火力発電の旧型設備ではエネルギー利用率は約40%です。しかしコンバインド発電にした最新鋭の設備なら53%にエネルギー利用率は高まります。同じ電力を発電するのに、最新型なら旧型よりLNGの消費量が約25%も節約できるのです。すでに60%台をめざす開発も進んでおり、いっそう効率のよい火力発電の促進で、燃料消費と二酸化炭素排出の削減をめざします。

 さらに発電所の廃熱を工場やオフィス、家庭へ送り、廃熱の3分の2(投入エネルギーの40%に相当)を有効利用すれば、エネルギー利用率は80%になります。現にスウェーデンでは発電と熱利用でエネルギー利用率が80%を超え、デンマークで65%、ドイツでも50%に達しています。ただし、廃熱を利用するには、これまでのような巨大な火力発電所ではなく、熱の利用者が近辺にいても大丈夫なような分散型の配置になります。

 同じ燃焼カロリーをえるのに、LNGが排出するCO2の量は、石油より30%減、石炭より45%減となります。同じ電力をえるのに最新型のLNG火力なら、旧式の石炭火力に比べて、排出するCO2を6割も削減できるのです。火力発電における燃料を、石炭・石油からLNGへ切り替えていきます。

 LNG発電は電力の消費量が一日のうちでピークに達した場合に、供給を機敏におぎなうのに、当面、重要な役割を果たすと考えられており、旧型の設備を置き換えていくことが求められています。

――工場やビルの設備・機器を、最新の省エネ設備・機器に更新するよう促進する 工場のボイラーや業務ビルの集中型空調施設などに取り組めば、15~20%のエネルギー削減の実績が上がっています。大手企業や大型の工場・ビル、大型公共施設について、省エネと温暖化ガスの排出削減の目標を明らかにさせ、中小企業への支援や、排出量取引なども活用して、最新の省エネ設備・機器への更新を促します。

――トップランナー方式による省エネ製品の普及住宅など建物の断熱効果を高める トップランナー方式の省エネ基準を高めることにより、省エネ商品の開発と普及と促進します。住宅など建物の断熱効果を高めることによって、冷暖房のエネルギーの大きな削減を図ります。

――コジェネレーションやヒートポンプの導入で、廃熱利用を進める 廃熱を熱供給に利用すること(コジェネレーション=電気・熱併給システム)で、エネルギーの利用率を40%程度から70%台まで引き上げることができます。小規模・分散型利用を促進する制度を整備し、コジェネレーションやヒートポンプの導入を積極的に支援します。そのさい、低周波など周辺環境への影響に注意を払うのは当然です。

 

4、国民の立場から電力の独占体制にメスを入れ、電力システムを抜本的に見直します

 「電力システム改革」を進めるとして電気事業法の「改正」が自公民、維新、生活、社民の賛成で衆院を通過しました。電力需要がひっ迫するさいに、経済産業大臣による供給命令や「広域的運営の推進」による「供給計画」の取りまとめ、区域を越えた調整、電力の融通の指示、託送制度の見直しや、大口使用制限の勧告制度は、当然のことです。

しかし、「電力システム改革」というなら、求められるのは、地域独占、発送電一貫体制という戦後の9電力体制を変革し、発送電分離などの改革をいかに実現するかということです。

 発電電力量の3分の1を占めるわが国最大の電力会社でありながら、福島原発事故によって実質破たんしている東京電力をどうするのか、発電ゼロでも毎年各電力会社を通じて電気料金の負担を強いている日本原電などの原発依存の電力体制をどうするのかなど、福島原発事故が突きつけている問題に、政府は一切触れようとしません。東電や国の責任をあいまいにしたまま、東電を「絶対つぶさない」として国費で支え、全国の原発の再稼働と電気代値上げで原資を賄う原子力損害賠償支援機構のスキーム(枠組み)が前提とされています。東電は、賠償・除染等について「一企業のみの努力」では限界があると言いだして国による支援を求めました(昨年11月7日)。こうした経緯で実質国有化されている東電の事実上の破綻、原発の不良債権化は明らかです。原賠機構法を見直し、東電を特別な公的管理下におき、その経営責任、株主責任、貸し手責任を問い、メガバンクの債権放棄、利害関係者に対して負担を求める東電改革こそ、電力システム改革の出発点でなければなりません。

 また、電力システム改革は、原発のような大規模集中型から再生可能エネルギーの大量普及、小規模分散・地域経済循環型システムへの転換でなければなりません。再生可能エネルギーによる電力に関する固定価格買取法にもとづいて、買い取り義務を守らせることで、再生可能エネルギーによる発電事業に、官民問わず、大中小の幅広い事業者、市民が参入できるようにするとともに、公益性が高く、地域独占になる送電事業は、公的管理の下に置く改革をすすめることが必要です。

今回の電気事業法「改正」では、持株会社グループ方式によって発送電企業の法的分離をするとしています。これによって再生可能エネルギーによる電力事業者の送配電網への接続が進んだり、小売り参入の自由化によって家庭や個人が電力を選択できるメリットも生まれる側面もあります。しかし、この法的分離が、資本関係を遮断する「所有権分離」までいっていないため、発送電一貫体制を実質的に維持したいという9電力や業界団体である電気事業連合会の要求に実際上、沿うものになる危険性があります。

さらに「改正」法の基調をなすいわゆる「電力自由化」は、2000年代初頭の米国エンロン破綻事件、北米やカリフォルニア州の大停電を招いた市場原理主義にもとづく規制緩和による失敗を、どう教訓にして、防ぐのかが定かではありません。「電力自由化」の名のもとに、すべてを規制緩和と市場原理・競争にゆだねるというやり方では、再生可能エネルギーの普及もすすみません。電力供給は公益事業であり、群を抜く9電力への民主的規制と、消費者代表などの参加による公益事業に関する機関をつくり国民的監視を強めることが必要です。

 

5、エネルギー高騰を許さないため、投機規制に取り組みます

 08年の原油高騰では、中小企業、農林漁業、運輸業などが、燃料の値上がりで深刻な打撃を受けました。リーマン・ショック後も、再び原油は高値を付けており、経営を圧迫しています。シェールガスの開発で、LNGの価格は低下していますが、投機がからんでくれば、先行きは不透明です。

 投機マネーに関しては、国連や各国政府が今検討している投機マネー規制を強化することが重要です。「投機マネーの暴走を抑える」という強い政治的意思を打ち出して、国際社会とも協力しながら、―――(1)原油や穀物など人類の生存の土台となる商品に対する投機の規制を具体化する、(2)ヘッジファンドに対して、直接の情報開示を求めるなど抜本的な規制強化にふみだす、(3)国際連帯税など、投機マネーの暴走を抑えるための適正な課税を本格的に検討する―――こうした規制策を早急に具体化すべきです。

 

 

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