学費値上げを止めるための緊急の予算措置を求めます
2024 年11 月27 日 日本共産党
先の総選挙で、主要政党すべてが高等教育の「無償化」や「負担軽減」を公約しながら、大学の学費値上げラッシュが起きています
先の総選挙では主要政党のすべてが高等教育について、「無償化」「負担軽減」などを公約に掲げ、石破首相も、自民党の総裁選で「国立大学・高専の無償化」を公約しました。
ところが、9月に東京大学が、学生や大学人の反対の声を押し切って学費値上げを発表しました。国立大学では、2019年以降、東京工業大学、一橋大学、千葉大学、政策研究大学院大学など7大学で学費が値上げされており、東京大学が来年度からの値上げを発表したことで、国立大学での値上げ連鎖が起きかねない状況です。私立大学でもこの間、早稲田大学、慶応大学、明治大学、立命館大学、同志社大学などで値上げが相次ぎ、物価高騰のもとで大幅値上げや学費スライド制の適用など、値上げが加速しています。
高すぎる学費が、これ以上値上げされれば、学生も家族も、その負担に耐えられないことは明らかです。今でさえ、アルバイトと奨学金や教育ローンの借金なしには大学に通えない学生が多数です。「アルバイトのし過ぎで単位を落とした」など、大学に通うためのアルバイトで大学に通えなくなるという悲劇すら起きています。
学生、国民の多くが高い学費、重い教育費負担に苦しみ、政治の場ではすべての主要政党が高等教育の「無償化」「負担軽減」を国民に公約しているのに、実際には、国立大学でも私立大学でも「学費値上げラッシュ」が起きようとしている、こんなことは異常と言わざるを得ません。政治が看過して良いのかが問われています。
大学が値上げに踏み切らざるを得ない原因は政治にあります
日本の高等教育予算はOECD(経済協力開発機構)の中でも「最低水準」という状態が長期にわたって続いています。しかも政府は、2004年の国立大学法人化後、1600億円も運営費交付金を削減しました。私立大学への私学助成は経常費の1割以下に抑制されたままになっています。その結果、大学は物価高騰を含め教育コストの増額などから"財政難"にあえいでいます。
この政治によってもたらされた大学の財政難による教育研究条件の劣悪化は、わが国の大学教育、学術にとって深刻な事態であり、学費値上げの原因になっています。しかし、これを「理由」に「大学の国際競争力強化のため」などと言って、学費値上げを学生と家族に押しつけることは許されません。何よりも問われるのは、政治の責任です。現状でも、高い学費のもとで、「バイト漬けの学生生活」が当たり前のようになり、奨学金という名の借金が、平均でも300万円、大学院に進学すると500万円とも1000万円とも言われるほど背負わされています。学費値上げを押しつければ、「大学の国際競争力強化」どころか、逆に、日本の大学教育、学術研究、科学技術の将来は暗澹たるものになってしまいます。
こうした時に、政府が「国立大学は授業料標準額の120%まで値上げできる。各大学の判断に任せる」などと静観していていいはずがありません。政治の責任で学費値上げを回避する措置をとるべきです。
≪来年度の学費値上げを食い止めるための緊急助成を――1000億円規模の予算措置≫
直面する来年度の学費値上げを回避するために緊急の予算措置を行うことは、「無償化」や「負担軽減」を公約した、すべての政党の責任です。もちろん「無償化」には、かなりの財源が必要であり、それをどうするかは意見が分かれます。しかし「無償化」「負担軽減」とは真逆の事態が目の前ですすんでいることを「無視」するようでは、国民は政党の公約の何を信じればいいのか、ということになります。
緊急の手だてには、大きな予算は必要ではありません。1000億円程度で、国公私立大学、専門学校の来年度の値上げを回避することができます。
1、国立大学の学費値上げは100億円程度の予算で中止できます
国立大学が来年度の新たな値上げ計画を中止、または回避できるよう、値上げをしていない大学、値上げ計画を撤回した国立大学に緊急助成を行います。東京大学の計画は、国立大学の授業料標準額からの上限にあたる2割増=10.7 万円です。全国立大学に、新入生一人あたり10.7 万円の緊急助成を行えば、値上げの「理由」はなくなります(9.8 万人×10.7 万円 約100 億円)。すでに標準額から値上げした大学は、値下げして標準額に戻した場合には、この助成を行うようにします。これは政府がこれまでに削減した国立大学運営費交付金1600億円のほんの少しを戻すだけです。
2、私立大学や公立大学、専門学校の値上げ中止・回避のための緊急助成を
私立大学や公立大学、専門学校にも、学費値上げを中止・回避するために、国立大学と同じ基準で、同額の緊急助成を行います。この間、値上げした分を値下げした場合にも助成を行うようにします。
かりにすべての私立大学、公立大学、専門学校に、国立大学と同程度の緊急助成を行ったとしても必要な予算は860億円程度です。
≪値上げではなく値下げに――無償化に踏み出すときです≫
学費値上げではなく、高等教育の無償化こそ求められています。日本政府は、2012 年に国際人権規約の高等教育無償化条項について留保を撤回し、高等教育を漸進的に無償化することを国民と国際社会に公約しましたが、その後、そのための具体的な取り組みは議論もされず、10年以上も「放置」されています。しかし、前述のように、主要政党が「無償化」「負担軽減」を公約しているのですから、これを妨げるものはないはずです。
そもそも憲法は、教育の機会均等を定めており、それを国民に保障するのは政治の責任です。教育の成果は、個人のためだけでなく、社会全体のものです。誰もがお金の心配なく大学で学べるようにすることは、日本の学術振興、科学技術の発展、社会の進歩に大きく寄与することになります。OECD 加盟国で高等教育への公的支出が「最低水準」、すなわち私的支出=個人負担がとても大きいという状態も放置して良いはずがありません。
政府として、値上げではなく、値下げに向けて踏み出し、高等教育の漸進的無償化をすすめることを求めます。