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日本共産党

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赤旗

食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案に対する修正案 趣旨説明

2024年4月 日本共産党国会議員団

 ただいま議題となりました、食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、会派を代表して、その内容を御説明申し上げます。

 日本共産党としましては、政府提出の改正案の問題点を是正し、日本農業の再建と食料自給率の向上を図るため、以下のような抜本的な修正が必要不可欠であると考えます。

 第一に、食料自給率を抜本的に引き上げることとしております。農業を国の基幹的な産業に位置付けるとともに、食料自給率については、できる限り早期に五十パーセント以上に引き上げ、更に七十パーセント以上に引き上げるという指針を明記いたします。

 第二に、家族農業経営を農業に関する施策の中核として位置付けることとしております。そのために必要となる安定的な農業経営を確保するための各施策を規定することとしております。

 第三に、我が国の農業を保護するため、農産物の貿易に関し我が国の農業にとって不利益な措置が国際的に取り決められないよう国は努めるものとするとともに、国は、輸出の相手国の農産物と競合し、その生産を減少させることのないよう配慮するものとすることとしております。

 第四に、農業生産活動における環境への負荷の一層の低減を図るとともに、自然との調和のとれた農業を促進することとしております。そのための施策として、有機農業の促進を明記するとともに、農産物の輸送における温室効果ガスの排出の抑制及び輸出される農産物の食料システムの各段階における温室効果ガスの排出量に関する表示の促進を追加することとしております。

 第五に、安全で健康な食生活を確立するために、検疫体制の抜本的強化、健康で安全な食生活に必要な情報の提供と研究の強化、遺伝子組換え食品の表示や農産物の加工食品を含めた全面的な原産国表示を行う規定を明記します。

 第六に、検討条項として、農作物の遺伝資源の利用の在り方についての検討条項を設けております。

 以上が、この修正案の主な内容であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。         以上


食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案に対する修正案 概要

 

第一 基本理念の見直し

 一 食料の安定供給の確保に関する理念の見直し

  1 基本理念として、安全かつ良質で十分な量の食料が供給されなければならないことを規定すること。(第2条第1項関係)

  2 国民が必要とする食料については、世界の食料の需給及び貿易が不安定な要素を有していることに鑑み、適切な備蓄の確保に配慮しつつ、国内の農業生産の増大を通じて食料自給率を引き上げることにより、その安定的な供給が確保されなければならないことを規定すること。(第2条第2項関係)

 

 二 家族農業経営を基本とする農業の持続的な発展

   基本理念として、農業については、家族農業経営を基本とし、その安定的な経営が確保されることを通じて食料その他の農産物の供給の機能及び多面的機能の確保が図られるとともに、農業の自然循環機能が維持増進されることにより、我が国の基幹的な産業としてその持続的な発展が図られなければならないことを規定すること。(第4条関係)

 

第二 食料、農業及び農村に関する施策の策定等に係る指針の創設

  食料、農業及び農村に関する施策の策定及び実施は、基本理念にのっとり、次に掲げる事項を指針として、総合的かつ計画的に行われなければならないものとすること。

 ① 食料自給率をできる限り早期に五十パーセント以上に引き上げ、更に七十パーセント以上に引き上げること。

 ② 我が国の農業の保護を図るため必要に応じ農産物の輸入の制限等の措置をとるとともに、国内の農業生産の増大を図るため必要な農地、農業用水その他の農業資源及び農業の担い手を確保すること。

 ③ 家族農業経営を農業に関する施策の中核として位置付けること。

 ④ 経営規模の大小又は専ら農業を営むか否かを問わず、適切な農業所得及び安定的な農業経営を確保すること。(第14条の2関係)

 

第三 食料・農業・農村基本計画の見直し

  1 食料・農業・農村基本計画に定める食料自給率の目標を、当面達成すべき食料自給率の目標とし、この目標の達成状況については、少なくとも毎年一回調査し、食料・農業・農村政策審議会の意見を聴かなければならないこと。

  2 政府は、1の調査の結果について、食料・農業・農村政策審議会の意見を付して、国会に報告するとともに、インターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならないこと。(第15条関係)

 

第四 食料の安定供給の確保に関する施策の見直し

 一 食料消費に関する施策の見直し

  1 食料の安全性の確保を図る等のため、食品の安全性に関する基準の強化、輸入食品の安全性に関する検査体制の強化、食料の安全性に関する試験研究の体制の整備及び情報の提供並びに食品の原産国及び遺伝子組換えに係る食品の表示の徹底の施策を追加すること。

  2 食料消費の改善及び農業資源の有効利用に資するための施策として、公共調達における地域の農産物の利用の促進を追加すること。(第16条関係)

 

 二 食料の円滑な入手の確保

   国は、関係行政機関相互間の連携の強化を図るとともに、地方公共団体、食品産業の事業者その他の関係者と連携し、経済的な状況その他の要因にかかわらず食料の円滑な入手が可能となるよう必要な施策を講ずるものとすること。(第16条の2関係)

 

 三 農産物等の輸出入に関する措置の見直し

  1 農産物の輸出入に関する規定のうち、「国内生産では需要を満たすことができないものの安定的な輸入を確保するため必要な施策を講ずる」こととする規定を削ること。

  2 国は、我が国の農業を保護するため、農産物の貿易に関し我が国の農業にとって不利益な措置が国際的に取り決められないよう努めるものとすること。

  3 国は、2の施策を講ずるに当たっては、輸出の相手国の農産物と競合し、その生産を減少させることのないよう配慮するものとすること。(第18条関係)

 

第五 農業の持続的な発展に関する施策の見直し

 一 農業経営の法人化の推進等の施策に関する規定の削除等

   農業の持続的な発展に関する施策のうち、効率的かつ安定的な農業経営の育成、農業経営の法人化の推進、農地の利用の集積等の施策に関する規定を削り、家族農業経営の発展に係る規定を設けること。(第21条、第22条及び第23条関係)

 

 二 農業生産の基盤の整備及び保全

   国は、農業の生産性の向上を促進するとともに、気候の変動その他の要因による災害の防止又は軽減を図ることにより農業生産活動が継続的に行われるようにするため、農業生産の基盤の整備及び保全に必要な施策を講ずるものとすること。(第24条関係)

 

 三 農産物の付加価値の向上等

   国は、知的財産の保護及び活用の推進の施策を講ずるに当たっては、農作物の遺伝資源に係る農業者の利益の保護に特に留意するものとすること。(第24条の22項関係)

 

 四 環境への負荷の低減の促進

   国は、農業生産活動における環境への負荷の低減を図るための施策として、有機農業の促進を明記するとともに、農産物の輸送における温室効果ガスの排出の抑制及び輸出される農産物の食料システムの各段階における温室効果ガスの排出量に関する表示の促進を追加すること。(第24条の31項関係)

 

 五 人材の育成及び確保

   安定的な農業経営を担うべき人材の育成及び確保を図るための施策として、農業の研修又は農業経営の開始のための資金の交付及び新規就農を促進するための研修を行う農業を営む法人への支援を追加すること。(第25条関係)

 

 六 技術の開発及び普及

   技術の開発及び普及のための施策として、環境に調和した農業生産技術及び地域において蓄積された農業に関する技術の普及事業の推進並びに安価で実用性の高い農業用機械の開発及び普及を追加すること。(第29条第1項関係)

 

 七 農産物の価格の安定等

   国は、農産物について、農業の生産条件、交易条件等に関する不利を補正し、農業者と他産業従事者との間の所得の格差を是正するため、生産事情、需給事情、物価その他の経済事情を考慮して、その価格の安定が図られるよう必要な施策を講ずるものとすること。(第30条第1項関係)

 

 八 農業災害による損失の補塡

   農業災害による損失の補塡については、災害の規模にかかわらず行われるべき旨を明記すること。(第31条関係)

 

 九 伝染性疾病等の発生予防等

   家畜の伝染性疾病等の発生の予防及びまん延の防止のための施策として動植物に係る検疫体制の強化を追加すること。(第32条関係)

 

 十 農業資材の生産及び流通の確保と経営の安定

  1 農業経営における農業機械の購入に要する費用その他の農業資材費の低減に資するための施策として、農業機械その他の農業資材の安価な供給の促進を追加すること。

  2 国は、地方公共団体が主要な農産物の種子を生産し、供給する体制を整備するために必要な施策を講ずるものとすること。(第33条第2項及び第4項関係)

 

 

第六 農村の振興に関する施策の見直し

  1 中山間地域等の振興の施策として、地域社会の維持に資する生活の利便性の確保を追加すること。

  2 国は、中山間地域等においては、適切な農業生産活動が継続的に行われることが多面的機能を確保する上で重要な役割を果たしていることに鑑み、農業者の生活の安定を図るため、所得補償その他必要な施策を講ずるものとすること。(第35条関係)

 

第七 検討

  1 政府は、地域住民がその地域の食料及び農業の在り方について協議し、当該地域の政策の形成に資する制度の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な施策を講ずるものとすること。(附則第2条第1項関係)

  2 政府は、農作物の遺伝資源の利用の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。(附則第2条第2項関係)

 

第八 その他

  その他所要の規定を整備すること。

 

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