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日本共産党

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赤旗

73、安保・基地・自衛隊

「軍事対軍事」「戦争する国」づくりを許しません。大軍拡から軍縮へ転換するとともに、米軍基地のない平和な日本をめざします

2022年6月

安保法制=戦争法を廃止し、「戦争する国」づくりをストップ

安保法制のもとでの「敵基地攻撃能力」保有で全面戦争の危険

 自公政権が国民の空前の反対世論や運動を無視して、安保法制=戦争法を強行成立させてから7年近くが経過しました。安保法制には、①「戦闘地域」での米軍等への兵站の拡大、②戦乱がつづいている地域での治安活動、③地球のどこでも米軍を守るための武器使用、④集団的自衛権の行使―――という、自衛隊の海外での武力行使を可能にする4つの仕組みが盛り込まれています。ひとたびアメリカが戦争をおこせば、世界中で、切れ目なく自衛隊が参戦する道を開くもので、この6年余、同法制下で日米軍事一体化、戦争協力体制づくりがこれでもかと進んでいます。

 安保法制がいかに危険であるかは、自民党が保有を迫り、政府が検討するとしている「敵基地攻撃能力」をめぐっていよいよ鮮明になっています。それは、同法制で可能となった集団的自衛権の行使にあたり、この「敵基地攻撃能力」を使用できることであり、それを政府も認めたことです。つまり、日本が攻められてもいない米国の戦争に、自衛隊が「敵基地攻撃能力」を使って参戦し、相手国の中枢まで攻撃するという事態が絵空事ではなくなっているのです。そんなことになれば、相手国にとっては日本による先制攻撃に他ならず、猛烈な反撃を行ってくることは必至で、日本の国土が全面戦争に巻き込まれることになってしまいます。

 政府・自民党からは、「台湾有事」が発生すれば、安保法制が規定する「存立危機事態」(日本による集団的自衛権の行使が可能)に該当するとの発言が出るなか、安保法制の廃止はいよいよ待ったなしの課題となっています。

ここまで来た日米軍事一体化―――共同訓練、米軍防護...

 安保法制強行後、日米共同の戦争体制づくりと軍事一体化がこれでもかと進んでいます。

 その象徴が日米共同演習の深化です。安保法制成立を受けた2018年3月、陸上自衛隊は「日本版海兵隊」と呼ばれる水陸機動団を発足させました。それ以降、同機動団と米海兵隊による共同訓練が日本内外で相次いでおこなわれているのです。

 今年3月には、静岡県の演習場で双方合わせて約1000人が参加しての訓練を実施しました。参加した第31海兵遠征部隊長は、「第31海兵遠征部隊と水陸機動団は、第一列島線(九州・沖縄から台湾・フィリピン・インドネシアの諸島群などを結ぶ線)内で最も訓練され、最も準備が整っている危機対応部隊。この訓練の主な目的は、日米の連携強化および共同対処能力の向上を図ること」と説明。さらに水陸機動団の設立時に顧問役を務めた米海兵隊の退役大佐は、「今回の訓練における真に有意義な点は、米海兵隊と水陸機動団が10年前には考えられなかったような深刻な戦闘訓練を実施しているということだ」と明言しました。この訓練では、上陸訓練に加え、市街地戦闘訓練なども実施。さらに、米海兵隊のオスプレイに加え、陸上自衛隊のオスプレイも初めて参加し、二国間の編隊飛行訓練も行いました。これに先立つ今年1月~2月には、米サンフランシスコ州でも、双方で1400人規模の共同訓練も実施。これを伝えた自衛隊の準広報紙「朝雲新聞」の記事には「オスプレイで空路潜入」「島嶼奪回、敵を掃討」の見出しが躍りました。

 これ以外にも、航空自衛隊と米空軍、海上自衛隊と米海軍などの間で共同訓練が相次いでおり、空自のF15戦闘機と、核兵器搭載可能な米軍のB52戦略爆撃機が、あるいは海自の「護衛艦」と米海軍の空母が並びながら訓練する姿が日常茶飯事となっており、日米共同の戦争体制づくりは着々と進んでいます。昨年10月には、空母化に向けた改修を行っている海自の護衛艦「いずも」で、米軍のステルス戦闘機F35Bを発着艦させるテストまで行いました。安保法制によって、「重要影響事態」などで、発進準備中の米軍戦闘機に自衛隊が給油することが可能となりましたが、今後、自衛隊保有の空母が、米軍の出撃拠点になるという事態が現実味を帯びています。

 重大なのは、訓練と一体に、共同作戦計画づくりもすすんでいることです。共同通信は昨年末、米軍と自衛隊が原案を策定したと報じ、沖縄の地元紙などが掲載しました。

 それによると、原案の内容は▽台湾有事の緊迫度が高まった初動段階で、米海兵隊が南西諸島に臨時の攻撃用軍事拠点を置く▽軍事拠点の可能性があるのは約40カ所で、陸上自衛隊がミサイル部隊を配備している鹿児島県の奄美大島、沖縄県の宮古島や配備予定の石垣島も含まれる▽軍事拠点を置くのは、中国軍と台湾軍の間で戦闘が起き、日本政府が安保法制に基づき、日本の平和と安全に重要な影響が出る「重要影響事態」と認定した場合になる▽軍事拠点に海兵隊は対艦攻撃ができる高機動ロケット砲システム「ハイマース」を置き、自衛隊は輸送や弾薬提供、燃料補給など後方支援を担い、米空母が展開できるよう中国艦艇を排除―――などとなっています。同報道は、「実行されれば南西諸島が攻撃対象となるのは必至」と指摘しました。

 安保法制で可能となった米軍の艦艇や航空機などを守る米軍防護は昨年、22回に達し、最高だった一昨年の25回につづき高い水準となりました。昨年は米軍以外にも初めて、豪軍の艦艇に1件適用しました。米軍防護をはじめて実施した2017年が2回ですから、まさに激増しているといえます。

 米軍などの「武器等防護」を規定した自衛隊法95条の2によれば、自衛隊と連携して訓練や警戒監視を行っている米軍が攻撃を受けたときは、自衛隊が武器を使用して反撃できます。状況次第で「平時」から「戦時」に移行する可能性をもつ非常に危険な活動です。しかも政府は実施時期や具体的内容をそのつど発表しておらず、国民が知らない間に戦闘が発生する事態になりかねません。

新たな自衛隊派兵の実績づくりも

 安保法制にもとづき、自公政権は、海外派兵している自衛隊への新任務の付与や、新たな派兵の実績づくりも進めています。2016年11月には、南スーダンPKO(国連平和維持活動)に派兵していた自衛隊に「駆けつけ警護」などの新任務を付与し、自衛隊員が海外で「殺し殺される」危険が現実のものとなりました。現在、南スーダンからは自衛隊部隊は撤退していますが、「国連南スーダン派遣団(UNMISS)」司令部への自衛隊員の派遣は継続しています。

 2019年4月からは、エジプト・シナイ半島でイスラエル、エジプト両軍の停戦監視活動をする「多国籍軍・監視団(MFO)」に、司令部要員として自衛隊員を派遣。安保法制にもとづく「国際連携平和安全活動」の初適用です。国連が統括しない多国籍軍への参加の突破口となるもので許されません。

―――自衛隊を海外で戦争させる安保法制=戦争法を廃止します。

―――米軍と自衛隊が海外で戦争するための共同訓練や作戦計画づくりに反対します。

自衛隊強化を許さず、大軍拡から軍縮へと転換する

「敵基地攻撃能力」保有、軍事費2倍化は亡国の道

 安保法制=戦争法のもと、大軍拡が進み、自衛隊が、「専守防衛」の建前をかなぐり捨て、海外で戦争をする部隊へと急速に姿を変えています。自民党は今年4月の「提言」で、「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」と言葉を変えて保有するとともに、攻撃対象も、敵基地に加えて「指揮統制機能等」に拡大すること、さらにそのために軍事費をGDP(国内総生産)比2%へと2倍化することを政府に求めました。これを受け、岸田首相は5月の日米首脳会談で、「敵基地攻撃能力」の保有検討と、軍事費の「相当な増額」をおこなうと約束しました。「力対力」「軍事対軍事」による大軍拡の道は、東アジアでさらなる軍拡の大競争を招き、戦争を呼び込むとともに、国民生活に大打撃を与える、まさに亡国の道です。

 今年度(2022年度)の軍事費は8年連続過去最高の約5兆4000億円となっています。民主党政権最後の2012年度の軍事費は約4兆7000億円でしたから、第二次安倍政権以降の膨張ぶりは明らかです。しかも今度はそれを2倍化するというのですからとんでもない大軍拡です。

 政府や自民党が保有を狙う「敵基地攻撃能力」とは、相手基地めがけてミサイルを1発撃って終わり、などという生易しいものではありません。政府はこれまで、「敵基地攻撃」の定義について、①ミサイルの発射基地のリアルタイムの把握、②敵の防空用レーダーやミサイルの無力化、③発射装置や地下施設を攻撃・破壊、④攻撃の結果を把握し、さらなる攻撃―――の4点を挙げています。これを可能にするには、早期警戒衛星や電子偵察機、相手国のレーダー網を破壊する電子戦機、敵防空制圧や破壊のための戦闘機、空母をはじめ戦闘爆撃機や空中給油機、各種の対地ミサイルなどが必要です。もちろん、米軍との「共同作戦」となるため自衛隊がすべて保有することにはならないでしょうが、日本によるとてつもない規模の軍拡が必要となることは間違いありません。だからこそ、「GDP比2%」「相当な増額」などという話が出てくるのです。

 重大なのは、すでに「敵基地攻撃能力」保有の「既成事実化」というべき事態が進んでいることです。この数年間の軍事費増で、「いずも」型護衛艦の空母化や、ステルス戦闘機F35戦闘機の取得、「敵基地攻撃能力」に転用可能なスタンドオフ・ミサイルの開発・取得などを進めてきました。この軍拡をさらに本格化させることは許されません。

 「敵基地攻撃能力」保有については、自民党のなかからさえ、「『安全保障のジレンマ』という言葉があるが、かえって衝突の危険を高めることにつながりかねない。無益であるばかりでなく、むしろ有害なことではないか」(岩屋毅・元防衛相、「東京」6月3日付)との声が上がっています。

 「安全保障のジレンマに」には実例があります。2000年代初頭以降、政府が導入を本格的に進めてきた「ミサイル防衛システム」では、今年度予算までの累計で約2・8兆円もの巨費がつぎ込まれています。当初は整備費全体を8000億円から1兆円としていたことから、約3倍にまでふくらんでしまったといえます。しかもその結果、中国や北朝鮮が極超音速ミサイルなどの開発・配備を進めたため、迎撃自体が困難となっています。「敵基地攻撃能力」の保有を求めた自民党の4月の「提言」も、その理由について、「ミサイル技術の急速な変化・深化により迎撃は困難になってきており」としているのです。3兆円近くも国民の税金をつぎ込んでおきながら、システムが時代遅れになってしまったのでより攻撃的な兵器を保有する、こんなバカな話があるでしょうか。迎撃システムをめぐってもこれだけの軍拡競争が起きたわけですから、「敵基地攻撃」に使えるような兵器の開発・配備がもたらす軍拡競争はさらに熾烈の度を増すことは明らかです。そうなれば、いつ、偶発的、あるいは不測の事態が本格的な武力行使や戦争に発展してもおかしくありません。

米国製兵器「爆買い」、「思いやり予算」をやめる

 軍事費の問題では、米国製兵器の「爆買い」も重大です。その象徴は、1機100億円以上もするF35の大量購入です。政府は2018年末、民主党政権時代に導入を決めたF35A42機に加え、新たに105機(F35A=63機、F35B=42機)も導入することを決定し、現在、購入を順次進めています。しかもこの米国製兵器の「爆買い」は、米政府の言い値で兵器を買わされる仕組みであるFMS(有償軍事援助)によるものです。軍事費を2倍化するとなれば、アメリカの圧力がさらに強まり、「爆買い」がどこまでもふくらむ危険性があります。こんなことをつづける必要が一体どこにあるでしょうか。

 同時に、自民党が軍事費2倍化をぶち上げるのと歩調を合わせるように、防衛省が「新しい国産主義」をスローガンに、国内軍需産業への発注増を推進する政策づくりをすすめていることも明らかになっています。岸田政権が6月に閣議決定した経済財政運営の基本方針「骨太の方針」では、「国内の防衛生産・技術基盤を維持・強化する観点を一層重視する」と明記しました。これでは、〝日米軍需産業栄えて民滅ぶ〟という事態になりかねません。

 さらに、日米地位協定上も日本が支払う義務のない米軍に対する「思いやり予算」(22年度からの5年間の総額1兆551億円で、16年からの5年間の協定で示された負担総額から11%も増えている)をこれからもつづけるのかが問われます。1978年から始まった同予算は、地位協定24条が、「日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費」は「日本国に負担をかけないで合衆国が負担する」と規定していることに真っ向から反します。これ以上の米軍への大盤振る舞いはきっぱりやめさせます。

―――「戦争する国」づくりのための大軍拡を転換し、軍縮をめざします。

―――米国製兵器の「爆買い」をやめ、暮らしの予算を増やします。

―――日米地位協定上も負担義務のない「思いやり予算」を撤廃させます。

南西諸島における自衛隊機能強化を許さない

 自衛隊の変容という点では、「米中対立」が激しさを増すなか、対中国を念頭にした南西諸島地域での自衛隊基地・機能がこれでもかと強化されていることも深刻です。2016年3月、台湾に近い日本最西端の沖縄・与那国島に陸上自衛隊の沿岸監視隊が配備されたのを皮切りに、18年3月には、陸上自衛隊の「水陸機動団」が発足、19年3月、艦船を攻撃する陸自の地対艦ミサイル部隊、航空機を迎撃する地対空ミサイル部隊などを鹿児島・奄美大島に配備、20年3月、沖縄・宮古島にも地対艦、地対空ミサイル部隊が配備されました。さらに、沖縄・石垣島への地対艦・地対空ミサイル両部隊の配備をすすめ、沖縄本島への地対艦ミサイル部隊の配備も狙っています。これらのミサイル基地には、射程を大幅に伸ばし、「敵基地」攻撃に転用できる12式地対艦誘導弾をはじめとした長距離ミサイルが配備される可能性が強まっています。

冒頭の「安保法制=戦争法を廃止し、『戦争する国づくり』をストップ」の項でふれた、台湾有事を想定した日米共同作戦計画は、米海兵隊が島しょに小規模な部隊を迅速に分散展開させ攻撃拠点をつくり、制海権を確保する「遠征前進基地作戦」(EABO)を具体化したものです。米軍と自衛隊はこの間、EABOにもとづく共同訓練を繰り返しています。米軍のこの作戦は、南西諸島を防衛するためではなく、ここを拠点に、自衛隊と一体となって中国を攻撃するためのものです。

 さらに、鹿児島・馬毛島を自衛隊の訓練拠点とする計画が進んでいることも大問題です。これが実現してしまえば、戦闘機の離着陸訓練、「いずも」型空母に搭載するF35Bの発着艦訓練などが行われる見込みです。また、馬毛島では、米軍の空母艦載機離着陸訓練(FCLP)の移転も行われようとしています。これらは、軍事対軍事のエスカレーションを招き、地域の緊張を高めるとともに、かりに有事になった場合、真っ先に攻撃対象となるなど危険極まりないものです。

―――戦争を招くことにつながる自衛隊の増強に反対し、問題の平和的解決をめざします。

米軍の横暴勝手をやめさせ、日米地位協定を抜本改定します

 日本には戦後77年を経たいまも、沖縄をはじめ全土に130もの米軍基地(米軍専用76、自衛隊との共同使用54)がおかれています。沖縄のような人口密集地に外国軍の大部隊が居座っている国、首都圏に外国軍の巨大基地を抱えている国は世界中で日本しかありません。しかも在日米軍基地はアメリカの世界戦略の前線基地であり、駐留する部隊は、海兵遠征軍、空母打撃群、遠征打撃群、航空宇宙遠征軍など、その名の通り、世界中の紛争地に真っ先に殴り込むことが任務です。「日本を守る」ためのものではありません。いま、この米軍基地が、安保法制=戦争法の施行と軌を一にして大増強されています。

沖縄辺野古新基地建設中止、普天間基地の無条件撤去を

日米両政府は、沖縄県民の民意を一顧だにせず、辺野古新基地建設を強行しています。「普天間基地の危険性の除去」がその口実ですが、実際には、普天間基地被害はさらに激化しています。同基地所属のCH53E大型輸送ヘリが2017年12月に宜野湾市緑ケ丘保育園の屋根に部品を、同市普天間第二小学校の校庭に窓を相次いで落下させて大問題となりましたが、その後も同様の事態は繰り返されています。昨年8月には、MV22オスプレイが飛行中に長さ1メートル超のパネルを落下させ、一歩間違えば県民の命を奪いかねない事態を発生させました。昨年11月にも同機が民家敷地内にステンレス製の水筒を落下させました。この相次ぐ米軍機事故の背景には、米軍機の離着陸回数が増加の一途をたどっていることがあります。沖縄防衛局の目視調査によると、昨年の普天間基地における離着陸回数(タッチアンドゴー、通過、旋回を含む)は、前年比3%増の1万8017回に上り、17年の調査開始以降、通年では過去最高となりました。外来機の飛来は、前年比で20.5%増の3194回に達しました。航空機騒音規制措置の時間外である午後10時を超えての夜間飛行も繰り返されています。

普天間基地の危険性は沖縄各地に拡大しており、この間、大問題となっているのが、同基地所属のオスプレイやCH53Eヘリの那覇軍港への飛来・訓練です。沖縄の施政権返還時に日米が米軍基地の使用目的を定めた「5・15メモ」では、那覇軍港の使用主目的を「港湾施設および貯油所」としており、今回の事態は許されません。「一日も早い危険性の除去」という政府の言い分の破たんは明らかです。

 日米両政府が普天間基地の全面返還に合意したのは、1996年の橋本・モンデール会談で、それからすでに26年が経過しています。四半世紀以上も過ぎているのに返還されないのは、行き詰まりが明らかな辺野古への「移設」が条件となっているからです。これ以上、沖縄県民の命が危険に晒されつづけている状況が許されていいはずがありません。

 問題を解決するには、辺野古新基地建設中止、普天間基地の無条件撤去しか道はありません。2004年に普天間基地所属ヘリによる墜落被害をうけた沖縄国際大学(宜野湾市)の前津榮健学長は昨年8月の声明で、「現状はなんら変わらず、むしろ悪化していると言っても過言ではない。事故から17年目の今日、危険この上ない普天間基地を即時閉鎖し、撤去することをここに改めて日米両政府に強く要求する」と訴えました。

米軍基地大増強―――全国の「沖縄化」が止まらない

 米軍基地と戦争体制づくりの強化は沖縄だけの話ではありません。

 首都東京に陣取る横田基地では、2018年に米空軍のCV22オスプレイ5機が配備され、昨年7月には6機になり、24年には10機体制となる予定です。沖縄・普天間基地に24機配備されている米海兵隊のMV22オスプレイが主に部隊等を輸送するのに対し、CV22は、特殊作戦部隊を敵地に潜入させたり敵地から脱出させたりすることを任務としており、日本の首都が、米特殊部隊の出撃拠点化するという異常事態となっています。横田配備のオスプレイは、機関銃の銃口を下に向けたままで市街地飛行を繰り返していることが大きなニュースになっています。基地周辺の住民の間では、「オスプレイのホバリング(空中停止)訓練は民家の間近で行われ、振動がすさまじい」「離着陸が増え訓練はひどくなっている。政府は抗議しようともしない」などの怒りの声が渦巻いています。

 横田基地のCV22オスプレイは首都圏はもちろん、全国で低空飛行訓練を行っています。青森県の小川原湖では2020年来、訓練を繰り返し、何度も旋回したり、湖面すれすれまで高度を下げ、激しく水しぶきを上げながら飛行するなど、一歩間違えば大惨事を起こしかねない事態となっています。日米合同委員会は今年5月、一時的ではあるが、小川原湖で米軍が訓練できる水域をそれまでの150倍に拡大することで合意するなど、その危険性はますます高まっています。

 横田所属のCV22は、甚大な基地被害に苦しむ沖縄にも繰り返し飛行し、特殊作戦群が配備されている嘉手納基地などで訓練を行っています。地元紙によれば、嘉手納基地近隣の住民からは、「今日はずっとうるさくて頭が変になりそう」「今までにないことで、振動がかなりあって心臓に来る」などの悲鳴があがっています。嘉手納町議会は昨年6月にCV22の飛来中止などを求める意見書と抗議決議を全会一致で可決。そこでは、「このような度重なる飛来はもはや嘉手納基地における恒常的運用にほかならず、強い憤りを禁じ得ない」と厳しく批判しました。

 さらに、全国を飛行するCV22は、飛行中に起こったトラブルによる「緊急着陸」の事態も繰り返しています。2021年は6月に山形空港に、9月には仙台空港に相次いで「緊急着陸」しました。もともとオスプレイは数々の欠陥が指摘されており、「しんぶん赤旗」の集計では、これまでに世界各地で50人以上の乗組員が死亡しています。ほとんどが訓練や開発中の事故です。今年だけでも、3月にノルウェーで訓練中に墜落し4人死亡、6月には米カリフォルニア州で同じく訓練中に墜落し5人が死亡しています。

 現在、日本には自衛隊保有のものを含めて40機近いオスプレイが配備済みで、数年後には50機を超えます。2016年12月に沖縄県名護市安部の海岸に米軍オスプレイが墜落しましたが、今度は日本の市街地にいつ墜落してもおかしくありません。

 米軍機能の大増強は、山口県・岩国基地でも同様です。

 昨年10月に空母化のために改修中の海自・護衛艦いずもに、米軍のF35Bを発着艦させるテストが四国沖で行われましたが、同機は岩国基地所属でした。いずものほうも、テスト前には岩国基地に寄港するなど、日米の軍事一体化を示しました。

 岩国基地にF35Bが配備されたのは2017年ですが、米海兵隊は20年8月、F35Bを新たに16機追加配備し、合計32機体制にすると発表し、今年5月に配備が完了しました。海兵隊が「遠征能力」を自慢する最新鋭ステルス戦闘機の大増強です。

 岩国基地では18年3月までに、米軍厚木基地の空母艦載機約60機の移駐が完了。これにより所属機は約130機となり、東アジア最大の航空基地へと変貌しました。そのうえ岩国基地には、現在は日本に配備されていない米海軍のCMV22オスプレイが2機配備される予定です。このオスプレイをめぐっても、同基地にはすでに、普天間基地所属のMV22、横田基地所属のCV22が訓練のため相次いで飛来してきています。岩国基地周辺の昨年度の航空機騒音状況は、岩国市や大竹市、廿日市市など29測定地点のうち20地点で、うるささ指数が、同基地への空母艦載機の移転が完了した18年度以降で最大値となりました。

 さらに、地元で大きな問題となっているのが、現在15機配備されているKC130空中給油機が、2023年3月までに、17機に増強される計画が明るみになったことです。今年3月には、山梨県甲府市の陸地上空で空中給油を繰り返したことが判明しています。防衛省はこれまで、「(米側との間で)空中給油訓練は離れた海域の上空でしか実施せず、陸地上空では実施しないことを確認した」としていましたが、米軍の側はおかまいなしの状況となっています。岩国基地所属のKC130をめぐっては、18年12月に、高知県沖で訓練中、FA18ホーネット戦闘攻撃機と接触し墜落する事故を起こしています。

 神奈川県・横須賀基地では、安保法制=戦争法強行直後の2015年10月に新しい原子力空母ロナルド・レーガンが配備され、新型イージス艦も相次いで配備されています。同基地を母港とする米艦船は、15年まで20数年にわたり11隻体制がとられてきましたが、それ以降現在まで、13隻体制がつづいています。

 横須賀基地を母港とする空母レーガンが出港した今年5月20日の翌日には、米原子力空母エイブラハム・リンカーン(母港は米サンディエゴ)が寄港しました。昨年8月に同じ米原子力空母カール・ビンソンの寄港につづくもので、レーガン以外の原子力空母の2年連続寄港は初めてです。「東京」5月26日付記事は、「米海軍横須賀基地に今後の予定や空母二隻体制の可能性を質問したが、『軍の運用上の理由で答えられない』との回答だった」としました。横須賀基地には、今年5月から6月にかけ、空母リンカーンと同じく米サンディエゴを母港とする強襲揚陸艦トリポリもF35Bを搭載して寄港するなど、基地機能の強化、戦争体制づくりが急速に進んでいます。

 また、同基地に寄港する艦船の多国籍化も顕著となっています。昨年9月、対中国包囲網を狙った米国、英国、オーストラリア3カ国の軍事協力枠組み「AUKUS(オーカス)」が結成されましたが、横須賀基地には同月に英空母クイーン・エリザベスが、11月にはオーストラリアのイージス駆逐艦が寄港するなどしています。

 長崎県・佐世保基地では、岩国基地にF35Bが配備されたことをうけ、2019年末に、それまでの強襲揚陸艦ワスプに代えて、同揚陸艦アメリカが配備されました。アメリカは「海兵隊のF35B統合打撃戦闘機の能力を最大限に活用することを目的」(米海軍報道資料)につくられたもので、ワスプに比べて船体の幅が広く、格納庫や航空燃料庫が充実しています。このアメリカは、沖縄・普天間基地所属のMV22オスプレイも運用することから、佐世保・岩国・沖縄一体となった基地機能の強化、部隊増強の一環です。

 横須賀を母港とする空母打撃群や、佐世保を拠点とする遠征打撃群は、イラク戦争など米国の無法な戦争で重要な役割を果たしてきました。在日米軍基地が、世界への「殴り込み」の一大拠点として強化されていることは極めて重大です。

―――沖縄と本土の連帯の力で基地強化のたくらみを許さないために全力をあげます。

―――危険なオスプレイは、沖縄からも本土からも撤去させます。米軍機の低空飛行を中止させます。

米軍のやりたい放題の根底にある日米地位協定

 米軍基地は、日本国民の生命と暮らしにも重大な被害と苦痛を与え続けています。戦闘機・ヘリの墜落や米兵による殺人・強姦・放火・ひき逃げなど、米兵の犯罪、事件・事故は、日本の主権を踏みにじる大問題です。1952~2020年度の米軍による日本国内の事件・事故の件数は、政府が明らかにしているだけでも、21万2542件(72年の施政権返還前の沖縄は含まれていない)、日本人死者数は1097人に達しています。

 異常な低空飛行訓練や相次ぐ犯罪など、米軍の横暴勝手の根底には、屈辱的な日米地位協定があります。米軍に対し、全国どこでも部隊を自由に配備し、国内法も無視して自由に訓練するなどの特権を与えている国は、世界でも日本だけです。沖縄県はこれまでに、米軍が駐留する欧州諸国を調査し、日本と比較した結果を発表しています。米軍に国内法が適用されない、米軍基地などへの立ち入り権がない、訓練・演習の規制ができない、航空機事故のさいの捜査権を行使しないなどの日本の実態は、どれも欧州諸国には見られないものであることが明らかとなっています。横田空域のような米軍が管理する広大な空域も、欧州諸国には存在しません。在日米軍のなかでも新型コロナウイルス感染が広がりましたが、政府が世界最多の感染者数を出している米国からの入国を原則拒否する措置をとっていた下でも、米軍関係者は自由に出入国し、検疫も米軍任せとなってきました。このような植民地的特権を保障した日米地位協定が、1960年の締結以来、一度も改定されていないことは、まともな主権国家ではありえない異常極まることです。

 2018年7月には、全国知事会が「日米地位協定抜本見直し」を求める「提言」を全会一致で採択しています。「提言」は、「日米地位協定を抜本的に見直し、航空法や環境法令などの国内法を原則として米軍にも適用させることや、事件・事故時の自治体職員の迅速かつ円滑な立ち入りの保障などを明記すること」を求めています。独立国として当然の要求であり、屈辱的な現状をただすために、地位協定の抜本改定がまったなしとなっています。

―――日米地位協定を抜本的に改定し、世界に例のない米軍の特権をなくします。

―――在日米軍基地の全面撤去、基地のない平和な日本をめざします。

武器輸出、軍学共同―「戦争する国」を支える体制づくりを許さない

 「武器輸出三原則」は、歴代日本政府自らが、「憲法の平和主義の精神にのっとったもの」として繰り返し国会で答弁し、国是とされてきたものでした。ところが2014年4月、当時の安倍政権は「武器輸出三原則」を撤廃し、武器や関連技術の輸出を包括的に解禁する「防衛装備移転三原則」へと大転換させる閣議決定を行いました。「紛争当事国や国連決議に違反する場合は輸出を認めない」とはしていますが、従来の原則では禁輸対象となってきた国際紛争の「恐れのある国」が対象から外され、F35戦闘機の国際共同生産で問題となったイスラエルへの制限もなくなりました。「武器輸出三原則」撤廃に加え、「防衛生産・技術基盤戦略」の策定(14年6月)、防衛装備庁の設置(15年10月)も実施されました。軍事協力の強化と一体に、ミサイル防衛、地対空ミサイル潜水艦など大型兵器の共同の開発がすすみ、国策としての武器輸出がすすめられています。日本が「死の商人」の道を歩むことを断じて許すわけにはいきません。

 武器輸出をめぐっては、ロシアによるウクライナ侵略をうけ、日本政府によるウクライナへの武器支援が実施されたことは問題です。今年3月、政府も防衛装備品と認める防弾チョッキを提供したのに続き、4月には、さらにカメラ搭載のドローンと、化学兵器対応用の防護マスクや防護衣を提供する方針を決めました。メディアからも、「(政府は)ドローンを対ロシア攻撃の兵器に転用することは想定しておらず、目的外使用されないことを確認していると説明する。だが、使用方法は事実上、ウクライナ側に委ねられており、用途の検証は極めて困難なのは否めない」「危惧するのは、日本からの防衛装備の提供先や種類が際限なく拡大し、国際紛争の助長を招く恐れがあることだ」「ウクライナ支援は大量の避難民対応や医療、食料、インフラ確保など非軍事で必要な分野はたくさんある。日本が培ってきた人道。民生支援を重点強化すべきだ」(「京都」4月21日付社説)などの指摘が出ています。

 武器輸出とともに、防衛省による産・官・学の軍事研究の動きが顕著になっていることも重大です。そのための「安全保障技術研究推進制度」(2015年開始)について、17年度に前年の18倍となる110億円に一気に増額されて以降、22年度まで100億円前後の予算計上を継続しています。同制度をめぐっては、日本学術会議が17年の「軍事的安全保障研究に関する声明」で「政府による研究への介入が著しく、問題が多い」と批判しました。現在、政府は日本学術会議に対し、研究成果が民生にも軍事にも使われる「デュアル・ユース」(軍民両用)について検討を求めています。これは、学術会議を変質させ、科学者を軍事研究に動員する体制づくりをめざすものに他なりません。

―――武器輸出、軍学共同など「戦争する国」を支える体制づくりをやめさせます。

戦前の治安立法を彷彿させる土地利用規制法を廃止に

 自公政権は昨年6月、土地利用規制法を強行成立させました。同法は、米軍や自衛隊の基地周辺などに暮らす住民を調査・監視し、必要があれば土地・建物の利用を制限するもの。国民が軍事施設周辺でスケッチや写真撮影しただけでスパイ扱いされ罰せられた戦前・戦中の治安立法を彷彿させるものです。

 土地利用規制法では、内閣総理大臣が安全保障上重要とみなす「重要施設」の周囲約1キロと国境にある離島を「注視区域」に指定します。「重要施設」とは、米軍・自衛隊基地、海上保安庁施設、「生活関連施設」(重要インフラ)とされます。政府は「生活関連施設」として自衛隊との共用空港、原発を挙げていますが、法律上限定がありません。しかも、誰が、誰を対象に、どんな情報を、いつ、どこで、どういう方法で調査するのか、土地・建物の利用規制の勧告・命令の対象となる「機能阻害行為」とはいったいどんな行為なのかなど、核心部分をすべて政府の判断に任せています。首相が必要と認める場合には、公安調査庁や自衛隊情報保全隊、内閣情報調査室などから情報提供を受けることも、条約上排除されていません。既に、自衛隊のイラク派兵に反対する市民の活動が情報保全隊により監視され、公にしていない個人情報が収集されていた「前科」があります。

 「戦争する国づくり」を推し進める自公政府が、軍事的安全保障の観点から市民の基本的人権を制限し、「平時」の「有事」化を推し進めることは許されません。

―――戦前の教訓をいかし、土地利用規制法は廃止します。

日米安保条約を廃棄し、対等・平等・友好の日米関係を築く

 異常なアメリカいいなり政治の根底には日米安保条約=日米軍事同盟があります。

 日米軍事同盟には、他の米国との軍事同盟にない特別の異常さがあります。世界では海外駐留の米軍が大きく減少しているのに、在日米軍だけ増加しています(1990年~2019年 世界=60万9千人⇒17万人。日本=4万6千人⇒5万7千人)。在日米軍は、海兵遠征軍、空母打撃群、遠征打撃群、航空宇宙遠征軍など、「日本防衛」とは関係のない、海外で戦争する「殴り込み部隊」ばかりです。世界に類のない「治外法権」が在日米軍に認められ、米軍の起こした事件・事故に日本政府の警察権は及ばず、日本の航空法を無視した危険な低空飛行訓練が全国で繰り返されています。

 ―――国民多数の合意で、日米安保条約を、条約第10条の手続き(アメリカ政府への通告)によって廃棄し、アメリカ軍とその軍事基地を撤退させ、本当の独立国といえる日本をつくります。対等・平等の立場にもとづく日米友好条約を結び、日米友好の新時代を開きます。

 ―――自衛隊については、憲法9条と自衛隊との矛盾を、憲法9条の完全実施(自衛隊の解消)に向かって、国民多数の合意で段階的に解決していきます。わが党が参加した民主的政権ができた場合にも、自衛隊をすぐになくすことはありません。民主的政権が、憲法9条を生かした平和外交によって、世界とアジアのあらゆる国ぐにと友好関係をつくり、日本をとりまく安全保障環境が平和的に成熟し、国民の圧倒的多数のなかで「もう自衛隊なしでも安心だ」という合意が生まれ、熟したときに、憲法9条の完全実施にむかっての本格的な措置にとりくみます。そこに至る過程(自衛隊と民主的政権が共存する時期)で、万が一、急迫不正の侵害を受けた時には、国民の命と人権、国の主権と独立を守るために、自衛隊を含めあらゆる手段を活用します。憲法9条を将来にわたって守り生かすことと、どんな場合でも国民の命を守り抜く―――その両方に対して政治の責任を果たすということが、日本共産党の立場です。

 ―――日本共産党としてはいっかんして「自衛隊=違憲」論の立場をつらぬきますが、党が参加する民主的政権の対応としては、自衛隊と共存する時期は、理の必然として、「自衛隊=合憲」の立場をとります。「憲法違反の自衛隊を活用するというのは矛盾している」という議論がありますが、民主的政権としての憲法判断が「自衛隊=合憲」である以上、その政権が自衛隊を活用することに、憲法上、何の矛盾もありません。

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