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日本共産党

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赤旗

16、交通安全対策

子ども・高齢者等を事故から守る、自動車優先から歩行者優先へ

2022年6月

歩行者を交通事故から守ります

 千葉県八街市で小学生の列にトラックが突っ込み児童5人死傷した事故(2021年6月)、滋賀県大津市で保育園児らが車同士の衝突に巻き込まれて16人死傷した事故(2019年5月)など、重大な自動車交通事故が相次ぎ、交通安全対策の強化が急がれています。

 交通死亡事故の現状を見ると、歩行者は35.7%、自転車乗用中が13.7%で死者数の半数を占めています(2021年)。主要国で見ると、アメリカでは19.9%、フランス19.9%、ドイツ27.6%、イギリス31.1%にとどまっており、日本は、歩行者・自転車乗用車の割合が突出して高くなっています(2018年)。

 また、生活道路(車道幅員5.5メートル未満の道路)における交通死傷事故は、他の道路に比べ減り方が鈍化しており、年間8万件にのぼっています(2020年)。この生活道路における交通事故の多くは、小学生・高齢者が犠牲になっています。

生活道路の安全確保のため、自動車優先から歩行者優先の道路交通政策に切り替えます

 市街地中心部や住宅地など住民の生活空間の道路整備は、歩行者が安心して歩行できることを優先してすすめなければなりません。

 生活道路での交通事故をなくすには、生活エリア内への通行車両の抑制、速度抑制、歩行空間の確保を図るために、交通規制と物理的手段の拡充をすることが必須であり、そのための予算措置が必要です。

 衝突時に時速30kmを超えると歩行者が致命傷を負う確率が急激に高まります。

 政府は、生活空間内での交通量と速度を抑制し歩行空間を確保するため「ゾーン30」や「生活道路対策エリア」を設置してきました。これらの区域では、区域内の速度制限や侵入抑制とともに、歩道側の整備や、車の走行路にはデコボコをつけて自動車の速度を落とさせる「ハンプ」、車道幅を狭める「狭さく」、「スラローム」の設置などが行われています。

 区域内の速度規制などを行う「ゾーン30」は、2020年度末までに全国で4031箇所が整備されています(2018年度末の3649箇所から増加)。整備前年度と整備翌年度を比べると、交通事故発生件数も対歩行者・自転車事故件数はいずれも2割程度減少しています。ハンプ・狭さく・スラロームなどの設置を行う「生活道路対策エリア」は、2019年末で452市区町村1065エリアとなっています。

 わが党は、相互補完する関係にある「ゾーン30」と「生活道路対策エリア」が一致していない場所も200箇所近くあると指摘してきました。担当省庁が警察庁と国土交通省に分かれており、速度制限や標識などの交通規制は警察が実施し、ハンプ・狭さく・スラロームなどの物理的対策は道路管理者(自治体など)が行うなど、担当が異なっていることで生じる問題です。「ゾーン30」と「生活道路対策エリア」は重なっていることが交通安全対策として有効であり、警察と道路管理者の緊密な連携が必要だと求めてきました。

 わが党の国会質疑を受け、2021年8月、警察庁と国土交通省は、生活道路における人優先の安全・安心な通行空間の整備に取り組むとして、検討段階から緊密に連携しながら設定する「ゾーン30プラス」を開始し、歩行者の通行が最優先、生活道との安全を確保するとしています。

―――「ゾーン30」や「生活道路対策エリア」、「ゾーン30プラス」の区域を拡充します。

―――道路法や道路交通法に、生活道路や通学路、園児等の移動経路を位置付け、通過車両を排除・抑制する等の改正を行います。

―――「ゾーン30」「ゾーン30プラス」区域内の時速30㎞以上の速度違反には、一般道路の2倍の反則金を科すなど徹底した安全対策を講じます。

子どもらが安心して通行できるよう、交通安全対策を緊急に講じます

 通学路や園児等の移動経路など、子どもたちを交通事故から守る対策は喫緊の課題です。

 2012年、京都府亀岡市で集団登校中の児童の列に車が突っ込み小学生ら10人死傷した事故をきっかけに、政府は全国の通学路を対象に緊急点検を実施し7万4000箇所を超える危険箇所を確認しました。危険箇所としては、「交通量が多い」「ガードレールがない」「交差点に横断歩道がない」「見通しが悪いのに交差点に信号機がない」「交通量が多いにもかかわらず歩道が狭い上に片側にしかない」「踏切の見通しが悪い」などが挙げられています。

 これら危険箇所は、2017年度末までに約99%で対策が講じられましたが、通学路以外の幼稚園や保育園の散歩ルートなどは対象になっていませんでした。

 2019年には、滋賀県大津市で保育園児らが車同士の衝突に巻き込まれて16人死傷した事故が起きてしまいます。政府は、保育所・幼稚園等から要請のあった園児等子供が日常的に集団で移動する経路についての合同点検を行い、道路管理者(自治体など)により全国約2万8000箇所において対策を実施することを決定し、2020年度末時点で約8割(約2万3000箇所)について対策を完了したとしています。

 また、2021年6月には、千葉県八街市で小学生の列にトラックが突っ込み児童5人死傷した事故が起きてしまいました。この現場は、見通しがよいため、2012年点検の際、危険個所に指定されていませんでした。政府は、車の速度が上がりやすい箇所や大型車の進入が多い箇所も含め通学路の合同点検を行い、対策案の検討をおこないました。その結果、全国7万2000箇所で対策が必要な箇所が抽出されており(2021年10月末時点)、政府は2023年度末までにおおむね対策が完了できるよう取り組むとしています。

―――通学路に加え、学童保育や園児等の移動経路など、子どもらの通行路を総点検し、危険箇所の安全対策を緊急に講じます。

―――危険箇所について、信号機・道路標識・ガードレールなど安全施設の設置、危険箇所を回避する通行路の見直し、子どもの見守り活動や交通安全指導など効果的な改善をすすめます。

―――学校や保育園等、公園の半径500m以内の道路は、「ゾーン30」「ゾーン30プラス」区域の指定をすすめます。

歩行者優先の道路整備に切り替え、そのための予算を確保します

 これまで自民党政権のもとで進められてきた自動車優先・道路偏重の交通施策では、子どもや高齢者、障害者など、交通弱者と呼ばれる方たちの交通安全が後回しにされてきたといわざるを得ません。

 生活道路の安全対策を早急にすすめ、歩行者優先の道路整備、安全設備の設置をすすめるためには、予算の確保が必須です。しかし、この間、信号機や道路標識の設置・改修などの費用である交通安全施設整備事業費が大幅に減少しています。国の補助事業費用は10年間で約93億円の減額、地方自治体の単独事業費用は25年余で半額以下です。警察庁は、この数年間は増額になっているといいますが、老朽化した信号の更新のためのものです。更新補助は当然のことですが、信号機の新設などに必要な予算が減っているのです。東京都においては、近年、交通安全施設整備費の予算の執行率が7~8割で、新設された信号機数は予算の6~7割しか設置されていません。生活道路の交通安全対策の予算を抜本的に拡充し、計上された予算を執行し、しっかりと信号機の新設などに使うべきです。

 また、実態に合わない交通事故統計に基づいて、政府が交通安全政策を作っているのではないかという問題もあります。交通事故に関する統計は、警察庁による交通事故統計と、損害保険料率算出機構による自賠責保険の統計の二つあり、死亡者数は継続してほぼ一致していますが、負傷者数は2006年以降乖離が大きくなり、19年には自賠責保険約106万に対し警察統計は約46万と半分以下になっています。警察庁も、実態を反映しているのは、自賠責の統計だと事実上認めています。

 さらに、警察庁が策定した「信号機設置指針」と「信号機合理化等計画(2019~23年度)」に基づき、都道府県警察が「撤去が妥当」と判断した信号機は、2883機(19年末時点)にも上っています。この指針と計画が、信号機の撤去を進めるとともに、新設を抑制する障害となっているのです。撤去対象には、小学校の通学路の信号機も含まれている箇所もあります。広島県広島市や滋賀県高島市では、住民運動によって通学路の信号機撤去を見直させました。しかも、この撤去計画そのものが住民には知らされていないことも問題で、警察庁は、周知不足は反省しなければならないと答弁しました。

 大津市の園児死傷事故では、交差点で信号待ちしていた保育園児らが、車道で衝突した自動車に巻き込まれ死傷したことから、防護柵が設置されていれば防げたのではないかと指摘されています。しかし、現在、交差点の防護柵設置等について設置基準には、衝突で歩道に飛ばされた車から歩行者を守る対策は明示されていません。

 また、近年、視覚障害者が犠牲となる交通事故も起きています。視覚障害者が安全に道路を横断するための命に係る情報である音響式信号機(いわゆるピヨピヨカッコー)は全国で信号全体の1割、横断歩道上に点字ブロックがある「エスコートゾーン」はたった1%しか整備されていません。

 しかも、音を出す時間は日中のみなどに制限している音響式信号機が8割あることも報じられています。稼働停止中に視覚障害者が死亡する事故も発生しており、歩行時の安全が根底からおびやかされています。道路交通法7条は、歩行者は信号に従う義務を課し、罰則も科しています。信号を認識できなければ、その指示に従うこともできません。9割の信号で視覚障害者が認識できない状況を放置するわけにはいきません。視覚障害者のための音は、騒音ではなく命に係る情報であり、早朝夜間も信号機の音を切るのではなく音量調整など工夫して24時間対応にすべきです。

―――自動車優先から歩行者・自転車優先にした道路交通政策に転換します。

―――警察庁の「信号機設置指針」「信号機合理化等計画」を見直し、交通安全対策や歩行者優先の道路整備のための予算を抜本的に拡充します。

―――道路構造や「防護柵の設置基準」に、交差点など危険箇所を明示し、防護柵の設置を義務付けるなど、歩行者を守るための施策を緊急に実施します。

―――障害者が安全に安心して通行できるよう道路や設備などを整備します。

 「22、障害者・障害児」もご覧ください。

高齢者が自ら運転しなくてもいい環境の整備

 2019年4月の池袋暴走事故など高齢ドライバーによる痛ましい事故が相次ぎ、大きなニュースとなりました。

 人口の高齢化に伴い、運転免許を保有する75歳以上の高齢者は今後も増加しつづけます。一方で、自動車優先のインフラ整備が行われ、鉄道やバス、タクシーなど地域の公共交通は路線廃止や縮小がつづき衰退させられ、とりわけ人口減少が進む地方で顕著に表れています。こうした地域では、高齢者が自ら運転しなければ日常生活が成り立たない状況にあります。

 高齢運転者の事故防止対策として、第一に必要なのは、高齢者が自ら運転しなくても、自由かつ安全に安心して移動できる社会環境を整えることです。

 1998年から導入された「運転免許証の自主返納制度」の利用が増加しています。2019年には「運転経歴証明書」交付要件の緩和も行われました。また、多くの自治体で、「自主返納」者への支援として、バスや電車などの公共交通機関やタクシーの運賃割引が受けられるなどの施策を設けています。運転に不安を感じるようになった高齢ドライバーの「自主返納」しやすい環境づくりも必要です。

 さらに、近年の先進技術によって「衝突被害軽減ブレーキ」やアクセルとブレーキのペダル踏み間違い防止対策などが開発されており、このような機能をつけた「安全運転サポートカー」や後付け装置の設置などの普及の促進により、交通事故の減少も期待できます。

―――高齢者が支障なく日常生活を送れるよう、地域鉄道、地域循環バス、オンデマンド交通、乗合タクシー、福祉タクシーなど地域公共交通網の整備を最優先してすすめ、高齢者の移動手段を切れ目なく確保します。

―――地域住民の支え合いよる高齢者の移動手段確保の取り組みを支援します。

―――高齢ドライバーが自主的に運転免許証を返納しやすい環境を、国が責任を持って整備します。

―――自治体による運転免許証の自主返納を支援する取り組みを、国として積極的に後押しします。

―――「衝突被害軽減ブレーキ」やペダル踏み間違い防止対策など安全運転支援システムの購入支援に取り組みます。

 「41、交通・運輸」もご覧ください。

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