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日本共産党

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赤旗

2014年 総選挙各分野政策

1、労働・雇用

雇用大破壊を許さず、人間らしく働けるルールを確立します

2014年11月


 労働者の平均賃金は、1997年のピーク時から年間約70万円も減っています。実質賃金は、15カ月連続で前年を下回っています。労働者の3人に1人、若者や女性の2人に1人が非正規雇用労働者です。そのほとんどが年収200万円以下の「ワーキング・プア」(働く貧困層)です。このように国民の所得が長期にわたって減り続けていることこそ、日本経済が「デフレ不況」に陥った最大の要因です。さらに、「アベノミクス」による消費税増税と輸入物価高が実質賃金低下に拍車をかけています。日本共産党は、賃上げと安定した雇用を実現して、労働者・国民の所得を増やし、暮らしと経済の再建に力をつくします。

 国際社会は、今日、ディーセント・ワーク(人間らしい労働)の実現を各国政府に呼びかけています。ところが、安倍政権は、この世界の流れに逆行し、雇用の大破壊を強行しようとしています。「生涯ハケン」を労働者におしつけ「正社員ゼロ」に道を開く派遣法の大改悪をはじめ、名ばかり正社員の「限定正社員」、「残業代ゼロ」、「解雇の金銭解決」など、労働法制の大改悪をすすめようとしています。日本共産党は、このような労働法制の規制緩和をやめさせ、人間らしく働けるルールを確立します。そのために、ILO(国際労働機関)の労働時間・休暇関係の諸条約をはじめ、111号(雇用・職業における差別禁止)、158号(解雇規制)、175号(パートタイム労働)などの諸条約を批准し、国内法を改正します。

 (なお、労働基本権回復など、公務員労働者については「公務員制度改革」の項を参照してください)。

 

(1)賃上げと安定した雇用の拡大で暮らしと経済を立て直す

 暮らしと経済を立て直すには、賃上げと安定した雇用の拡大が必要です。大企業が溜めこんでいる285兆円もの内部留保のほんの一部を使うだけで、賃上げを実現することができます。8割の大企業では、内部留保のわずか1%を使うだけで、「月1万円」の賃上げが可能です。企業内に使い道もなく滞留している資金の一部を、その企業の賃上げや非正規社員の正社員化に使うようにし、これを突破口に、働く人の所得を増やし、消費を活発にし、内需を増やし、企業活動も活性化する――このようにして健全な経済成長への好循環をつくりだすことを日本共産党は提案しています。

 また、日本共産党は、安定した雇用の拡大のために、解雇規制、非正規労働者の正社員化と均等待遇、「サービス残業」の根絶、長時間・過密労働の是正、最低賃金の大幅引き上げ、労働災害の防止と認定基準の緩和など、人間らしく働けるルールの確立を提案しています。

 

(2)安倍政権による雇用大破壊を許しません

 安倍政権は、労働法制の大改悪をすすめようとしています。職務や勤務地を限定した「限定正社員」をつくり、その職務の廃止や事業所の閉鎖があれば解雇できるようにする制度や、「金さえ払えば解雇できる」仕組み(解雇の金銭解決)の導入など、「解雇自由の国」づくりがねらわれています。また、派遣労働は「臨時的・一時的業務」に限定するという、世界であたり前の大原則を投げ捨て、低賃金で不安定雇用の派遣労働をいっそう拡大することも強行しようとしています。さらには、実際に働いた時間に関係なく、事前に定められた時間(たとえば8時間)働いたものとみなす裁量労働制の拡大や、労働時間規制がルーズになりやすいフレックスタイム制の要件緩和、さらには労働時間規制を全面的に外す「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入で、「残業代ゼロ」「ただ働きと長時間労働自由の国」づくりもねらわれています。

 安倍首相は、「企業が世界で一番活動しやすい国」をつくるといっています。しかし、こうした労働法制の規制緩和を許せば、日本社会全体が、労働者を「使い捨て」「使いつぶし」にする総ブラック企業化となり、「働く人が世界一住みにくい国」にされてしまいます。日本共産党は、こうした労働法制の規制緩和を許しません。

 

(3)労働者派遣法の大改悪を許さず、同法を抜本的に改正し、派遣労働者保護法をつくります

 2008年秋のリーマンショック時に、大量の派遣労働者が、違法に長期間働かされたあげくに、「経済危機」を口実に仕事を奪われました。職を失うと同時に住まいまで失うという深刻な事態が広がりました。300万人以上いた派遣労働者は、リーマンショック後の1年間で、約100万人も削減されました。日本は、他国に例を見ない派遣労働者「使い捨て」の国になっています。

 そのおおもとには、自民党・公明党連立政権が労働者派遣法を再三にわたって改悪し、対象業務を原則自由化するとともに、専門業務での派遣期間の撤廃などの規制緩和をすすめ、正社員を大量に派遣労働者に置き換えてきたことがあります。2014年秋の臨時国会に提出された派遣法改悪案は、派遣労働は「臨時的・一時的業務」に限定し、常用代替を禁止するという大原則を投げ捨て、この原則を担保する措置として設けられた派遣受け入れ期間制限(原則1年、最長3年)を撤廃するという大改悪案でした。「生涯ハケン」を労働者におしつけ「正社員ゼロ」に道を開く大改悪案に対して、労働組合がナショナルセンターの違いをこえて共同してたたかい、廃案に追い込むことができました。2014年通常国会と同年臨時国会で2度廃案に追い込みました。日本共産党は、このたたかいを応援し、ともにたたかってきました。日本共産党は、派遣法大改悪をひきつづき許しません。

 日本共産党は同時に、違法な「派遣切り」、「非正規切り」とたたかう労働者・労働組合と力をあわせて、大企業の違法派遣の実態を告発し、国会でくり返し質問し、労働者派遣法の抜本改正を求めてきました。他党に先駆けて、「派遣労働者保護法案」を提案しました。同法案は、派遣労働を臨時的・一時的業務に厳格に制限しています。製造業派遣や日雇い派遣を全面的に禁止し、「使い捨て」労働をなくします。登録型派遣は真に専門的な業務にきびしく限定します。派遣受け入れ期間の上限は1年とし、違法があった場合は派遣先に期間の定めなく直接雇用されたものとみなし、正社員化をすすめます。派遣先の正社員との均等待遇、グループ内派遣の制限をおこない、常用代替を規制します。

 

(4)ブラック企業をなくします

 日本共産党は、若者をはじめ働く人を過酷な労働に追い込んで、モノのように「使い捨て」「使いつぶす」ブラック企業を国政の大問題として訴え、昨年の参議院選挙の前進で獲得した議案提案権を活用して、ブラック企業規制法案を国会に提出しました。法案提出後、厚生労働省は、5000をこえる事業所に調査に入り、82%の事業所が法令違反を犯していたことを明らかにし、是正指導・勧告をおこないました。また、厚生労働省は、「固定残業代」のような求人票の誇大・虚偽記載について実態調査をおこない、未払い賃金が10億円にのぼるとの調査結果を発表し、是正指導しました。さらに厚生労働省は、関係団体に対し、誇大・虚偽の求人広告を掲載しないよう要請しました。法案を提出しただけで、このように行政を動かしてきました。日本共産党は、ブラック企業規制法案の成立にひきつづき全力をあげます。

 ブラック企業規制法案は、①長時間労働の是正、②労働条件などの情報公開、③パワハラ防止の3本柱から構成されています。長時間労働の是正については、労働時間を正確に把握、記録し、本人らが閲覧できるようにすること、残業時間の上限を年間360時間に法定すること、次の出勤までに最低11時間の連続休息時間(勤務間インターバル)を保障すること、「サービス残業が発覚したら」残業代を2倍にすることなどを定めています。労働条件などの情報公開については、採用数と離職数を企業が公表すること(多数の離職者を生んでいることがブラック企業の特徴です)、賃金の内訳を明記させ、「固定残業代」のような誇大宣伝や虚偽記載をやめさせること、さらには、求職者からのブラック企業に該当するかどうかの問い合わせに答える制度をつくることなどを定めています。パワハラ防止にかかわっては、パワハラをおこなった企業に厚生労働省が是正指導と是正勧告をおこなうこと、勧告にしたがわない場合は企業名を公表すること、パワハラの是正を訴えた労働者への不利益とりあつかいを禁止することを定めています。

 

(5)退職強要をやめさせ、解雇規制法をつくります

 「電機リストラ」は、24万人ともいわれる大規模な人減らしに発展しています。ルネサスでは、通勤できないような遠隔地への異動を命じ、これに応じられない労働者が退職に追い込まれています。電機大手では、労働者を「追い出し部屋」に追いやり、仕事をあたえずに執拗な退職強要をくり返しています。これに対し、労働者が勇気をもってたたかいに立ち上がり、ソニー仙台では、14人が「追い出し部屋」から職場に復帰し、「追い出し部屋」を撤廃させました。また、退職強要に応じなかったために遠隔地に異動させられていた労働者を元の事業所にもどすことができました。日本共産党は、国会質問などでこのたたかいを支援してきました。

 自民党・公明党の連立政府が、2003年に労働基準法を改悪して「解雇自由条項」を盛り込もうとしたとき、日本共産党は、労働者・労働組合と協力してこれをやめさせ、解雇を規制する条項をはじめて盛り込ませました(この条項はその後、労働契約法に移行)。さらに、「解雇規制・雇用人権法」を提案して、労働者の人権をまもり、ヨーロッパ並みの労働契約のルールの確立をめざしています。具体的内容は、最高裁の判例などで確立している「整理解雇4要件」(①人員削減の必要性、②解雇回避努力義務、③人選の合理性、④解雇手続きの妥当性)を法律に明文化するとともに、裁判などで解雇を争っているあいだは雇用を継続する、解雇無効になった場合には職場に復帰するという就労権を保障します。

 希望退職・転籍についても、本人同意・取消権、労働組合の関与などのルールを確立します。パワーハラスメント(いじめや嫌がらせ)を禁止し、人権侵害をきびしく取り締まります。労働基準監督署が、退職強要などを日常的に監視し、取り締まるようにします。会社分割などにともなう雇用と労働条件のルールをつくります。55歳一律転籍など、年齢による雇用契約の不利益変更や採用制限を禁止します。事業所の閉鎖、移転、縮小の際に自治体と協議する仕組み(リストラ・アセスメント制度)をつくります。投資ファンド(資金運用組織)による企業買収、会社資産の売却が野放しになっていることによって、労働者が安易に解雇されるなど、深刻な事態が広がっています。ファンドが被買収企業の労働条件を実質的に決定している場合、労働者・労働組合との協議・交渉を義務づけるなど、法的規制をおこないます。

 高年齢者雇用安定法は、定年を65歳にするか希望者全員を65歳まで継続雇用することを義務づけています。雇用延長措置をとる企業(300人以上)は、ほぼ100%になっています。しかし、「心身の故障」「勤務不良」などの場合、継続雇用をしなくてもよい抜け道が残されており、希望者全員が継続雇用されない状況が生まれています。また、雇用延長しても賃金が定年時の5割未満が11・7%、5~6割未満が23・3%、6~7割未満が22・6%になっています。60~64歳の労働者の48%が年収200万円未満です。アメリカやヨーロッパのように、年齢を理由にして雇用や賃金などの労働条件について差別することを禁止します。高齢者雇用延長制度については、法律の趣旨にもとづき希望者全員を採用させるとともに、年齢による賃金などの労働条件差別をやめさせます。退職金の後払いである企業年金の一方的な切り下げを許さず、受給権を守ります。

 

(6)異常な長時間労働を是正し、「サービス残業」を根絶します

 日本では、ヨーロッパと違い、労働基準法が残業の上限を定めていないため、長時間労働が野放しになっています。その労基法さえふみにじる「サービス残業」(ただ働き残業)も依然として横行しています。日本共産党は、1967年以来40数年間、300回をこえる国会質問で、「サービス残業」は企業犯罪だと追及し、2001年には、厚生労働省に、根絶のために企業が責任をもって時間管理を強化することなどを内容とする「サービス残業」根絶通達をださせました。この通達を活用して、過去8年間だけでも1547億円以上の未払い残業代を支払わせています。

 通達を活用し、職場からのとりくみを強化するとともに、「サービス残業根絶法」を制定し、悪質な企業には、企業名を公表するとともに、不払い残業代を2倍にして労働者に支払わせるようにします。中間管理職や裁量労働制で働く労働者の時間管理を厳格におこなわせます。

 「店長」、「マネージャー」といいながら、管理職としての権限、実態もない「名ばかり店長」「名ばかり管理職」にたいする残業代不払いを許しません。

 2001年に5割を切った有給休暇の取得率は、2012年には、47・1%にまで低下しています。ヨーロッパでは、有給休暇は最低でも4労働週(週5日労働の場合は20日、週6日労働の場合は24日)が保障されており、しかも完全取得が常識になっています。日本共産党は、年次有給休暇を最低20日(現行では10日)とし、一定日数の連続取得と完全消化を保障することを提案しています。傷病や家族の看護の心配によって年休を残さないよう、有給の傷病・看護休暇を創設します。

 民間のシンクタンクの労働総研の試算では、「サービス残業」をなくすだけでも、新たに310・9万人分の雇用が生まれます。有給休暇の完全取得による雇用創出効果は138・4万人、週休2日制の完全実施による雇用創出は16・8万人です。これらによって創出される合計466・1万人の新規雇用は、家計消費支出を8兆9287億円増やし、国内総生産を13兆6178億円増やすと分析しています。財界系のシンクタンクの日本生産性本部の試算でも、有給休暇の完全取得による雇用増は188万人分、経済効果は16兆円にのぼるとされています。

 当面、「残業は年間360時間以内」という大臣告示をただちに法定化し、厚生労働省の過労死基準(月80時間以上の残業)をこえるような残業時間を可能にする三六協定の「特別条項」を廃止します。残業割増率を現行25%増から50%増に、深夜・休日は100%増に引き上げます。さらに、労働基準法を抜本的に改正して、拘束8時間労働制とし、残業時間を1日2時間、月20時間、年120時間に制限します。恒常的な長時間残業や有休をとれないことを前提にした生産・要員計画をなくします。深夜労働・交代制労働、過密労働をきびしく規制します。EU(欧州連合)のように、連続休息時間(勤務間インターバル)として最低11時間を確保します(深夜12時まで働いたら翌日の出勤は午前11時以降にする)。こうして労働時間を抜本的に短縮し、安定した雇用の拡大につなげます。「過労死防止基本法」を活用し、過労死をなくします。

 

(7)有期雇用を制限して正社員化と均等待遇をすすめるとともに、「個人請負」などの脱法的契約を許しません

 派遣労働者、契約社員やパート、期間社員などの非正規労働者は、短期・細切れの雇用契約の更新をくり返し、つねに雇用不安をかかえて働いています。派遣先企業が、直接雇用に切り替えても、数カ月の契約をくり返し、いつでも「雇い止め」自由の「期間工」とされるケースが後をたちません。労働基準法では原則として3年をこえる有期雇用契約が締結できないことになっていることから、「最長2年11カ月契約」と称して、違法・脱法をくり返しているケースもあとをたちません。現行法では、契約途中の解雇は厳しく規制されており、また、契約更新の「ある」「なし」や、更新する際の基準について明示しなければならず、反復更新を重ねていれば、「解雇権濫用法理」が類推適用されます。現行法を厳しく守らせ、労働者の泣き寝入りを許しません。

 また、2013年4月から、改定労働契約法が全面施行され、同じ使用者のもとでの雇用契約が5年をこえる場合、無期雇用契約に転換する制度が実施されています。ところが、労働条件は従前の有期契約のときと同じでよいとされ、しかも5年を前にした「雇い止め」を防止する措置がありません。そのために、雇用契約が5年になる以前に、「雇い止め」にしようとする動きが、コーヒー・チェーン店や大学などで多発しています。日本共産党は、正社員化を促進するという労働契約法改定の趣旨にもとづき、こうした「雇い止め」をやめさせるために、全力をあげます。

 ヨーロッパでは、有期雇用は、臨時的・一時的業務、合理的理由のある場合に限定し、正社員との均等待遇を保障しています。日本共産党は、正社員が当たり前の社会をめざし、有期雇用については、臨時的・一時的業務、合理的な理由がある場合に限定し、賃金や有給休暇などの労働条件について正社員と均等待遇にするよう法改正をおこないます。

 日本最大の非正規雇用をかかえる日本郵政グループは、「ワーキング・プア」を大量につくりだし、同様の事業をおこなう宅配事業者のなかに非正規化を広げる牽引車ともなってきました。日本共産党は、国会でこの問題をとりあげ、正社員化への流れをつくりだしてきました。希望者全員を正社員化するよう、ひきつづき力を注ぎます。

 本来、労働者として企業の指揮・命令を受けて仕事をしているのに「個人請負」契約として、社会保険など労働者としての権利を奪う脱法行為(「名ばかり個人事業主」)も増えています。こうした違法行為もきびしく取り締まり、ILOの「雇用関係に関する勧告」(198号)を活用し、請負や委託で働く労働者を保護します。「多様な働き方」の名で、非正規雇用の拡大をすすめる政府・財界の政策に反対します。

 

(8)男女がともに、人間らしく生き、働ける均等な労働条件を確立します

 女性の2人に1人が、パートや有期契約、派遣などの非正規雇用のもとに置かれています。長時間・過密労働のなかで、育児休業どころか、結婚や出産しても働きつづけられる女性は3割にすぎません。

 「転勤できない」「業務がちがう」などを表向きの理由とした男女間の昇給・昇格差別の結果、男性の正社員にくらべて、女性の正社員の賃金は7割、女性の非正規では4割という格差が生まれています。派遣労働者でも、女性の時給は男性の9割です。実態は一般業務派遣であるのに専門業務派遣だと偽装されて、長期に細切れ契約で働かされ、30歳代で事実上の「定年」という実態もあります。雇用形態による差別がそのまま男女間格差に直結し、退職金や年金支給の低さなどにも大きな影響を与えています。わが国も批准しているILO条約「同一価値労働・同一報酬」(100号)にもとづき格差を是正します。

 労働時間を短縮し、男女賃金格差を是正することは、本当の意味でのワーク・ライフ・バランスを実現し、男女ともに仕事も家庭生活も両立できる社会にする上でも重要です。

 日本共産党は、労働条件の均等待遇と正社員への道の拡大をめざし、「パート・有期労働者均等待遇法」を提案しています。賃金、休暇、教育訓練、福利厚生、解雇、退職その他の労働条件について、労働者がパート・有期労働者であることを理由として、正社員と差別的取り扱いをすることを禁止します。正社員を募集するときは、パート・有期労働者に応募の機会を優先的に与えるようにします。短期の雇用契約のくり返しを、期間の定めのない雇用契約とみなした判例を法制化します。合理的理由のない「短期・反復雇用」「契約社員」は不公正な契約として規制し、正社員に移行させます。正社員が、育児・介護などの理由のために、一定期間パートタイム労働者として働き、また正社員にもどれるようにします。均等待遇に違反している企業に対して、罰則を設けることも含めきびしく取り締まります。

 1985年に男女雇用機会均等法が制定されて29年。しかし、日本の男女平等ランキングは、142カ国中104位(2014年)と世界でも最下位の部類に甘んじています。雇用機会均等法では、「間接差別の禁止」について、「募集・採用にあたって身長・体重・体力を要件にすること」「転居を伴う転勤を採用・昇進の要件にすること」「昇進にあたり転勤の経験があることを要件とすること」の3例の限定的な列挙にとどめています。条件をつけずに「間接差別」の禁止を明記すべきです。雇用形態による差別や低賃金の業務に女性の比率が高くなっていることなどについて、実効性ある是正措置をとります。

 (詳しくは「女性」の項を参照してください)

 

(9)最低賃金の大幅引き上げなど、政治の責任で賃金の大幅引き上げを実現します

 貧困と格差が広がるなかで、年収200万円以下の労働者が1000万人をこえています。働いてもはたらいても低賃金でアパートも借りられず、ネットカフェで寝泊りしながら働いている青年もいます。労働者がまともな生活をおくることができるようにするために、労働者全体の賃金の底上げとなる最低賃金の大幅引き上げが必要です。職場・地域の運動と世論の広がり、日本共産党の国会論戦が相まって、2007年に最低賃金法が39年ぶりに改定されました。改定最低賃金法では、最賃決定基準として、生計費にかかわって憲法25条の生存権規定が盛り込まれました。この改定にふさわしく最低賃金の大幅引き上げを実現します。最低賃金の決定基準は、生計費のみとし、改定最賃法にも残されている企業の「支払い能力」を削除します。中小企業への大胆な支援をはかりながら、時給1000円以上への引き上げをめざすとともに、全国一律の最低賃金制度を確立します。

 中小企業が最低賃金を支払えるように、大企業の下請けいじめや規制緩和による過当競争をきびしく規制するとともに、助成措置を抜本的に拡充します。米国では、5年間で最低賃金を時給で200円引き上げたときに、8800億円の中小企業支援(減税)をおこないました。フランスでは、3年間で2兆2800億円です(社会保険料の事業主負担の軽減)。日本は、2013年度補正予算と2014年度予算を合わせてわずか37億円にすぎません。

 「官製ワーキング・プア」を許さないためにも、国や自治体の臨時・非常勤職員の賃金を引き上げます。国や自治体と受注する事業者との間で結ばれる契約(公契約)に、生活できる賃金など人間らしく働くことのできる労働条件を定める法律や条例(公契約法・条例)を定めます。また、自治体が誘致する企業について、正社員化の度合いや均等待遇などの実施状況を重要な判断基準とさせます。

 

(10)失業者の生活と職業訓練を保障し、安定した仕事、公的仕事への道を開きます

 労働者は、失業すればとたんに収入が途絶え、貯蓄だけが頼りになります。派遣や期間工の労働者は、貯蓄もできないような劣悪な労働条件で働かされ、解雇されると同時に寮から追い出されてホームレスになっています。ILOは、日本では失業手当を受給できない失業者の割合が77%にものぼり、「先進国」中最悪の水準にあると指摘しています。失業者が安心して仕事を探せるようにするために、雇用保険制度の抜本的拡充が不可欠です。

 2009年に雇用保険法が「改正」されましたが、雇用保険から排除されている失業者1008万人のうち適用対象になるのは148万人にすぎませんでした。雇用保険の拡充は、「失業保険が切れる」から劣悪な労働条件でも就職せざるをえないという状況を改善し、「ワーキング・プア」やブラック企業をなくしていくうえでも重要です。失業給付期間を、現在の90日~330日から180日~540日程度に延長します。給付水準の引き上げ、受給資格の取得に要する加入期間の短縮、退職理由による失業給付の差別をなくし、支給開始までの3カ月の待機期間をなくすなど抜本的に拡充します。

 安定した仕事につく機会を広げるために、専門学校なども活用して職業訓練制度を抜本的に拡充します。フランスでは、職業訓練への資金提供を企業に義務づけています。ドイツには、企業が職業訓練生を一定の報酬を支払って受け入れ、終了後は正社員として採用するという制度があります。低賃金で貯えもなく、企業内での教育訓練の機会もなかった「ワーキング・プア」やフリーターの職業訓練を重視し、有給の職業訓練制度や訓練貸付制度を創設し、訓練期間中の生活援助を抜本的に強化します。全国の地域職業訓練センターの廃止を中止し、希望するすべての失業者に職業訓練の機会を提供します。

 「ネットカフェ難民」だけでなく、「ファミレス難民」や「バーガー難民」まで生まれています。公園の青テントから出勤している人もいます。「ワーキング・プア」や失業者に、公共・公営住宅の建設や借り上げ、家賃補助制度、生活資金貸与制度など、生活支援を強め、子どもの教育費や住宅ローンなどの緊急助成・つなぎ融資制度を創設します。

 政府の不十分な雇用創出制度を抜本的に拡充するとともに、国と自治体の責任で、効果のある公的就労事業を確立します。国と自治体の協力による臨時のつなぎ就労の場を確保させます。また、福祉、医療、環境、防災、教育など、国民のくらしに不可欠な分野が慢性的な人手不足状態にあります。この分野での雇用を、職業訓練と結びつけ、人間らしい賃金・労働条件を確保して拡大することは、国と自治体の重要な責任です。

 働く者が連帯してみずから受け皿をつくり、仕事をつくりだす「協同労働の協同組合」(「労働者協同組合」)について、労働者性を担保した根拠法を制定します。

 新卒者の就職難を打開します。日本共産党は、2010年4月21日、「新卒者の就職難打開へ――社会への第一歩を応援する政治に いまこそ、国、自治体、教育者、そして企業と経済界が真摯な取り組みを」という新卒者の就職難に関する政策を発表しています。くわしくはこちらをご覧ください。 

 

(11)国と地方の労働行政を強化します

 人間らしく働けるルールを確立するために、国の労働行政の強化は不可欠です。労働基準監督署の体制強化や相談窓口の拡充などをはかります。ILO理事会の決定(「先進国」の場合、1万人の労働者ごとに1人の監督官を配置する)にそって、労働基準監督官を2倍に増やします。職業訓練の充実や再就職支援、労働者の権利と雇用主の義務を知らせる広報・啓蒙活動を強化します。そのために、ハローワークの体制を抜本的に拡充します。中央と地方の労働委員会の民主化と機能の強化、パワハラやセクハラをはじめ個別労働紛争処理制度の拡充をすすめます。学校教育で労働者の権利をしっかり教えるようにします。



 

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