現場Note

党勢拡大は政治闘争の焦点、その現場から

仁田桃(党活動部記者)

仁田 桃(党活動部記者)

 「2023年は、日本の前途にとっても、日本共産党にとっても、その命運がかかった文字通りの正念場の年になります」─。1月の日本共産党第7回中央委員会総会で出された「『130%の党』をつくるための全党の支部・グループへの手紙」の一節です。

 来年1月の党大会をめざして党勢拡大の「大運動」を党は行っています。「命運のかかった大事業」も折り返し地点を過ぎました。

焦り

 今年初めに聞いた時、「命運...。党のつまり存亡がかかっているっていうことなのか」と焦りを覚えました。いま私は30代。もし共産党がなくなったら。「赤旗」が発行できなくなったら...。悪い方向へ頭が働きました。

 この焦りには実感がありました。

 2021年の東京都議選は党活動部に配属されて初めての選挙でした。猛暑の8月。都内のある地域支部を訪ね、取材しました。支部は高齢化し、思うように支持拡大が広げられないと支部長は打ち明けました。

 「4年後どころか2年後のいっせい地方選もたたかえるかわからない」と、複数の支部から同じような感想を聞きました。「東京でもこんなに困難なんだ」と肌で感じました。

 いまにも潰れてしまいそうな支部をどうしたらいいのか。「党員を増やすことで困難は解決される」とよく言いますが、ではどうしたら党員は増えるのか...。

 そんなとき、「『130%の党』をつくるための全党の支部・グループへの手紙」が出されることになりました。「手紙」を支部で話し合い、返事を中央委員会へ出します。来年の党大会までに党員・「赤旗」読者で前党大会時比130%を実現し、とりわけ青年・学生と労働者、真ん中世代の党員で倍加をめざす大きな挑戦です。

変化

 私は、返事を出すと変化が生まれるのだろうか。スローガン的な目標づくりで終わらないかと少し疑っていました。

 しかし、返事を寄せた支部には大きな変化(当事者は変化だと気が付いていないことも多いのですが)やエネルギーが生まれていることが取材を通して分かりました。

 6月に取材したある地域支部は、支部をけん引していた党員が亡くなって「活動を維持することで精いっぱい」(支部長)でした。70~80代が中心です。

 4月の市議選勝利をめざして、活動に参加できていなかった党員一人ひとりに「手紙」を手渡して、「入党の原点を思い出して返事を書いてほしい」と話をしていきました。ビラ配布や「赤旗」配達を新たに担う人たちが生まれ、選挙で勝利することができました。

 当選した市議会議員がこの経過を県委員会総会で報告したことを聞き、さっそく取材を依頼しました。

 支部の人たちは「ただそれだけの話ですよ」と言っていましたが、私の目には大きな変化に映りました。

 取材中に、支部のベテラン党員が党員拡大について「この支部に展望はありません」ときっぱり言いました。過疎化がすすみ、なじみのお店や住人がいなくなっていく町で、どう新しい党員を迎えるのか。私も何も言えませんでした。

 記事には、50年以上続く支部の歴史を書き込み、支部の存在そのものがかけがえのない役割を果たしているんだとメッセージを込めました。

 取材から2カ月後。市議から私のスマホにメッセージが入りました。2人が入党したというのです。入党対象者の範囲を広げて声をかけたといいます。その後も、9月の党創立101周年記念講演の視聴会で入党を呼びかけるなど、行動が続いています。市議から「取材を受けた支部長さんがすごく元気になった」と、うれしい報告もありました。

大きな力

 私は高校を卒業して私鉄の子会社に就職し、契約社員の駅員をしていました。正社員と同じ業務なのに給料に大きな差がありました。80時間の時間外労働をしても手取りは17万円でがっかりしたことがあります。

 会社は、毎年たくさん採用しますが長時間労働や低賃金を理由に半数近くが1年で退職します。盆も正月もなく働き、休みが月3日だったとき限界を感じて退職しました。

 党員としてできることはあったんじゃないか。でもつながりがなかった。そんな思いがずっとありました。職場で党を大きくしようと頑張っている全国の職場支部の参考になってほしいと、ある職場支部を取材しました。

 この支部は「職場の党の灯を消したらあかん!」を合言葉に、正規・非正規職員、管理職、退職者を問わない職場革新懇をつくり、党と労働者のつながりをつくる努力を返事に書きました。職場革新懇の運動で、非正規職員の処遇が改善されました。連続学習会にもとりくみ、会員は結成時の6倍に増えました。

 多くの困難がありながらも、どのような返事を出すのか支部会議で議論するなかで、支部の存在意義を再確認し、どのような支部にしていきたいか、なぜ活動するのか自分たちの力で書いた返事には、支部が行動に踏み出す大きな力があるんだと確信しました。

可能性

「命運」について悲観的だった私ですが、返事の取り組みを広げれば「130%の党」づくりも不可能ではないと、いまは思います。

 「日本社会がよくなるなんて青年は思っていない。外国に行くか、投資をして稼がないと普通に生きていたら貧困になるぞと追い立てられている」─。

 8月に開いた「全国都道府県・地区委員会青年・学生担当者会議」での青年党員の発言です。

 東北の10代の看護学生は、本当は学びたいことがあったけれど学費を理由にあきらめたと言います。「弟が大学進学を希望しているけど応援できるか分からない」とも。

 ネットを開けば株や副業の話が次々と出てきます。努力していない自分のせいで貧困なのだと思わされる。衰退する日本経済の中で育ち、社会がよくなったという実感も持てません。もし私が党員じゃなかったら投げ出したくなっていました。

 東北のある学生支部。学費や生活費のためにアルバイトをしなければならない学生党員たちは「支部会議が週1回あるからこそ楽しい」と口々に話します。

 支部長は「私たちも研究やバイトで忙しいけど、会議は必ず開きます。みんなの声で社会を変えたいから」と話しました。

 「青年は本音では〝何とかしたい〟と思っている」と、青年との対話の最先端に立つ青年党員は言いました。

 〝一見、展望が見えづらいけど「大企業優遇」「アメリカいいなり」の自民党政治を変えれば、いい社会にできる〟──この言葉に青年が目を輝かせます。この日本の政治の「二つのゆがみ」にメスを入れる綱領を持つ日本共産党に光を感じ、「社会をおおもとから変えていこう」という呼びかけに青年たちは共感し、民青同盟にすごい勢いで加盟し、入党しています。

 「おおもとから変える」のですから、党を押し込めようとする勢力からの攻撃も激しさを増しています。大手紙が「党勢は細るばかり」など書き立てました。こういうときこそ「党勢拡大で回答しよう」と私も身近な人に「赤旗」をすすめるようになりました。

 力持ちが一人でやるより、100人が小さな力でも立ち上がることが持続可能な活動になると思うのです。

 党活動部の記者として間近に、ときには支部と伴走するような気持ちで取材しています。

 支部の変化をダイナミックにそしてドラマチックに感じられる党活動部です。あなたもぜひ一緒に仕事をしませんか。

(にた・もも)

『前衛』2023年12月号から