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日本共産党

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赤旗

➡2021総選挙 分野別政策一覧

74、核兵器

日本共産党は被爆国の政党として、「人類の死活にかかわる核戦争の防止と核兵器の廃絶」を綱領にかかげ、その実現のために力を尽くしています

2021年10月

核兵器は世界的規模の脅威です

 いまなお約1万3千発もの核兵器が存在しています(ストックホルム国際平和研究所、2021年6月)。前年から320発減ったものの、実戦使用可能な数は増えています。

ヒロシマ・ナガサキが示す「悪魔の兵器」

 そのうちの一発でも使われれば、広島と長崎へのアメリカの原爆投下のように、破滅的な非人道的結末をもたらします。核兵器は、熱線や爆風によって、都市を一瞬にして破壊し、人々を無差別、大量に殺りくします。広島と長崎に投下された原子爆弾は、今日からすれば旧式の小型のものでしたが、4か月余りのうちに21万人の命をうばいました。生き延びた人々も放射線障害などによって長年苦しみました。被爆者が語る言語に絶する体験は、この兵器が他に例をみない非人道的な、大量破壊兵器であることをはっきりと示しています。いかなる理由であれ、いかなる地においても、再び使われてはならない「悪魔の兵器」です。

人類の破滅をもとらす脅威

 核兵器の使用は、人類の破滅につながる危険もはらんでいます。

 近年の研究では、現存する核弾頭の約8%にあたる、100発の核兵器が都市で爆発すれば、大気圏に舞い上がった粉塵によって気候変動が起き、農作物の不作などで年平均11億4千万人が栄養失調におちいり、10年間で20億人が餓死するといわれています(核戦争防止国際医師会議「核の飢饉:20億人が危機に?」2013年)。それだけに、わが党は、「核戦争の防止と核兵器の廃絶」を気候変動とともに「人類の死活にかかわる」課題と位置づけています(党綱領)。

高まる核兵器使用への懸念

 アメリカが中国やロシアと対立を深める中で、核兵器使用の危険も危惧されています。

 米バイデン政権は、ロシアとの戦略核兵器制限条約(SARTII)の期限を延長するなど、トランプ政権とは異なる姿勢もみせています。しかし、核兵器の使用を前提にした「核抑止力」政策に変化はみられません。「使いやすい」より小型の核弾道ミサイルの配備など、トランプ政権以来の核兵器の近代化も継続中です。

 ロシアも核兵器の先制使用を方針にかかげ、新型核兵器の開発もすすめています。中国は核五大国のなかで唯一、核弾頭の数を増加させ、弾道ミサイルの増強もはかろうとしています。イギリスも潜水艦に搭載する核ミサイルの上限数をひきあげ、フランスも「核抑止力」は自国の安全に不可欠との立場を崩していません。さらに、朝鮮半島の非核化問題、インド・パキスタン間の緊張、パレスチナとの対立を深めるイスラエルなど、核使用の火種は各地に存在しています。

 日本共産党は、国連憲章と国際法を遵守し、国際紛争の平和的解決を求めます。武力紛争とそれにつながる一切の行動をすみやかに停止すること、とりわけ、核使用政策の強化、核兵器の増強、開発、配備をただちにやめることを求めます。

偶発的核使用の危険も

 こうした緊張状態のもとで、偶発的な核兵器が使用の危険も懸念されています。

 米ロ両国で約2,000発の核弾頭を搭載したミサイルが「高度警戒態勢」にあり、核攻撃の「警告」があれば即座に発射できる状態にあります。人為的なミスなどで、核ミサイルを打ち合う危険もあります。1962年のキューバ危機以降、誤認などによって核ミサイルの発射直前までいった事例が、少なくとも13回あると言われています(英王立国際問題研究所) 。これらが破滅的な事態にいたらなかったのは、「幸運」以外のなにものでもなく、人類の未来を「運」に委ねつづけることはできません。すみやかに核兵器を廃絶し、この危険を根絶しなければなりません。

核兵器禁止条約を力に廃絶への展望をひらく

 2021年1月22日に核兵器禁止条約(以下、禁止条約)が発効したことで、核兵器廃絶への新たな展望が開かれました。

核兵器をはじめて違法化

 禁止条約によって、核兵器は史上初めて違法化されました。禁止条約は、「核兵器のいかなる使用も武力紛争に適用される国際法の規定、特に国際人道法の原則と規定に反している」(前文)と明確にのべています。そして、開発、実験、生産、製造、取得、保有、貯蔵、移転、受領、配備、そして、使用と使用の威嚇など、核兵器にかかわる活動を全面的に禁止しています(第1条)。被爆者や核実験被害者への援助も定めています(第6、7条)。

 核保有国はこの条約に反対し、参加を拒否しています。しかし、そのもとでも禁止条約はすでに大きな政治的、道義的な力を発揮しています。

 まず違法な兵器を所有し、使おうとすることの是非が根本から問われます。かつて潘基文国連事務総長(当時)は、核兵器について「誤った兵器を扱える、正しい手はない」(2013年4月22日)と述べました。核保有国は「違法物」をふりかざす「無法者」と言われても仕方がありません。アメリカは2020年、禁止条約を支持する国々にたいし「批准または賛同を撤回すべきだ」と要求する書簡をおくりつけていたことが明らかになりました(「核兵器禁止条約に関する米国の懸念」 AP 2020年 10月21日付)。これは核保有国が、いかに禁止条約から大きな圧力をうけているかを証明するものでもあります。

核使用と核戦略を縛る

 この圧力は、核兵器を使おうとする「手」を、いっそうきつく縛るものとなります。

 ヒロシマ・ナガサキ以降、核兵器は一度も戦争で使われなかったのは、被爆者や反核運動が核兵器の非人道性を訴えてきたからです。禁止条約は、この「核使用のタブー」を法で裏付け、いっそう強固にするものです。先に述べた核保有国の動向をみれば、「核兵器は使ってはならない」という規範が強化されることは、大変重要です。

 核保有国の実際の戦略にも制約が出てきます。

 禁止条約は、禁止されている活動を他国に、「援助」することも、また、「援助」を求めたり、受けたりすることも禁じています(第1条(e)、(f))。他国の核兵器を、自国内に配備することも禁止しています(同(g))。

 西太平洋にあるパラオ共和国は、その管轄区域内で「核(攻撃)能力を有する」船舶や航空機を「運航する権利」を認めた協定をアメリカとむすんでいます(自由連合盟約 第234条)。しかし、これは、禁止条約に抵触し、アメリカの核作戦への障害となる可能性があります。旧ソ連の一部だったカザフスタンには、ロシアが核搭載可能弾道ミサイルを試験する実験場(サリシャガン・ミサイル実験場)があります。これは条約が禁ずる「開発」への「援助」となる可能性があります。禁止条約に参加する国が、世界中に広がっていけば、他国を足場にした核保有国の戦略は、大きな制約をうけ、破綻に直面しかねません。

日本共産党と禁止条約

 日本共産党は禁止条約の成立にむけても、力を尽くしました。

 禁止条約を交渉した国連会議(2017年、国連本部)は、市民社会も正規の構成員として開かれたので、わが党も志位和夫委員長を団長に参加し、国連会議の議長や国連幹部、38の国の政府代表、機関とも、精力的に話し合いをし、要請を行いました。また、志位委員長が会議で演説しました。

 国連会議の焦点は、条約をとりまとめることが出来るか、どうかにありました。そこでわが党は、「かりに最初は核保有国の参加が得られなかったとしても、賛成する諸国の政府によって核兵器禁止条約――核兵器を禁止する法的拘束力のある協定を早期に締結すること」を要請しました。それは、国連加盟国の大多数の賛成で、禁止条約が締結されれば、核保有国は当面は参加しなくても、政治的・道義的拘束を受けることになるからです。条約が出来れば、核保有国をおいつめ、核兵器全面廃絶への重要な糸口をひらくことができます。

 この要請には多くの政府代表から共感と支持が表明され、実際の会議の進行も、その方向にそったものとなり、歴史的な条約ができあがったのです。

 日本政府は会議をボイコットし、日本の政界から参加したのは日本共産党だけとなりました。唯一の戦争被爆国の政党として、一つの貢献ができたと自負しています。

「核兵器のない世界」を実現するために力を尽くします

禁止条約を力に前進を切り開く

 禁止条約はすでに55カ国が批准しています(9月6日現在)。署名した国は86カ国に達し、国連加盟国の過半数の97に迫ろうとしています。

 禁止条約の署名、締約国が増えていくことによって、核兵器の違法性はいっそう確かなものとなります。核保有国なども、その影響を無視することはできません。この流れをいっそう広げて、核兵器固執勢力に迫ることが、前進をきりひらく根本的な力になると考えます。

 2022年3月に予定されている禁止条約の第一回締約国会議は、この流れをさらに発展させるうえで重要な意義があります。核兵器の非人道性を告発するメッセージの発信、核兵器廃絶へのさらなる措置などが議論されるでしょう。市民社会と諸国政府の新たな共同の場として、成功することが強く期待されています。

2022年NPT再検討会議にむけて

 2022年1月に予定されている核不拡散条約(NPT)再検討会議も重要な節目となります。

 NPTは、米英仏ロ中の5大国に核兵器の保有を認める一方、その他の国の核兵器取得を禁止する不平等な条約です。その最大のねらいは5大国による核兵器の独占にあります。それにもかかわらず、この条約に191カ国もの国が参加しているのは、第6条で核兵器廃絶を交渉する義務を全ての締約国に課しているからです。核保有国が核軍縮を行わないなら、NPT体制が破たんしかねません。

 これまでの再検討会議では、「核兵器の完全廃絶」の「明確な約束」(2000年)や、「核兵器のない世界を実現し、維持するための枠組みをつくる特別の努力」(2010年)を全会一致で合意してきました。ところがアメリカをはじめとする核五5大国は、これらを反故にしようとしています。禁止条約の発効を力に、第6条の義務とこれまでの合意を履行せよと、核兵器国に迫らなければなりません。

「核抑止力」論の打破

 核兵器廃絶へと前進するには、核兵器にしがみつく勢力の逆流と抵抗をうちやぶらなければなりません。とりわけ「核抑止力」論を克服することが重要です。

 かつて米国務長官を務めたジョージ・シュルツ氏は次のように述べました。「核抑止というのは、いざという時に(核兵器を)使えなければ抑止にならない。それでは、何十万、何百万人の市民がいるところに核兵器を落とせるか。文明国の指導者だったらそんなことはできない。落とせないのだったら抑止にならない」。「核抑止」本質を突いた指摘です。

 つまり「核抑止」とは、いざという時には広島・長崎のような非人道的惨禍を引き起こすことをためらわないという政策です。核兵器の非人道性を批判するならば、「核抑止」という議論から抜け出さなければなりません。

 また、「核抑止」は「安全保障のために必要だ」という議論もありますが、現実はその逆で核破局の危険を高めるものに他なりません。

 一方が核兵器を使用するならば、他方は、核兵器の報復でこたえるでしょう。その結果は、核による相互の大虐殺です。また、威嚇された非核保有国の核保有も「誘発」しかねません。このように「核抑止」は、誰の安全も保障しません。しかも、前述のように「高度警戒態勢」のもとで偶発的な核攻撃がおこる可能性も否定できません。実際、これまで米ロ(ソ)間で、何度も誤って核ミサイルを発射しかねない事件が起きてきました。

諸国政府と市民社会の共同

 「核兵器のない世界」へと前進する根本的な力は、世界の世論と運動です。

 核兵器禁止条約は、「核兵器使用の被害者(Hibakusha)および核実験の被害者の容認しがたい苦難と損害」に留意し、核兵器廃絶を訴え続けた「被爆者(Hibakusha)の取り組み」を評価しました(前文)。禁止条約の成立と発効に、被爆者を先頭とする反核運動が大きな役割をはたしました。

 とくに、核兵器廃絶をめざす諸国政府と市民社会(反核平和運動をはじめとする市民の運動、非政府組織、学者、国会議員など)の共同を発展させることが重要です。日本共産党も、市民社会の一翼をになって、世論と運動の発展に尽力していきます。

核兵器禁止条約に参加する政権をつくります

 唯一の戦争被爆国でありながら、核兵器禁止条約への署名、その批准を拒んでいる日本の政治を変えなければなりません。

国民多数の声に背く自公政治

 自公政権の姿勢は、被爆者をはじめ圧倒的多数の国民の願いに背をむけるものです。

 全国の593自治体(7月20日現在)が、政府に禁止条約への参加を求める意見書を採択しています。また米ハーバード大学が日本で行った世論では、条約参加を支持する人は75%、反対は18%にすぎません (2021年3月22日、中国新聞)。支持政党による差は、ほとんどありませんでした。思想、信条、党派を超えて広がる国民的な世論に逆行してきたのが自公政権です。

 日本政府は、国際的には禁止条約に賛成する国々と、これに反対する核保有国などの「橋渡し」をするとしています。しかし、実際には、アメリカをはじめ核保有国の意向にそった言動をくりかえしています。例えば、日本政府が2020年の国連総会に提出した決議案は、核兵器禁止条約を全く無視し、核兵器廃絶を「究極」の課題として、未来永劫に先送りする内容のものでした。この核保有国よりの姿勢には、非核保有国からも批判があがり、2016年には109カ国あった決議への共同提案国は2020年には26カ国に激減しました。日本政府の態度は、世界の流れに逆行し、これを妨害するものであり、被爆国としての国際的な信用を失うものです。この姿勢をあらため、被爆国にふさわしい役割をはたすならば、アジアと世界の情勢に前向きの変化をもたらすことになるでしょう。

「核の傘」からの脱却を

 日本政府が核兵器禁止条約に反対する最大の理由は、日本がアメリカの「核抑止力」=「核の傘」に依存しているからです。日本の「防衛」のためには、アメリカが核兵器を使用したり、威嚇したりすることが欠かせないという立場です(*1)。これにこたえてアメリカ側も、核兵器の使用もふくめた「日本の防衛」への誓約を表明しています(*2)。

(*1)「核兵器の脅威に対しては、核抑止力を中心とする米国の拡大抑止が不可欠であり、わが国は米国と緊密に協力していくとともに、わが国自身による対処のための取組を強化する」(令和3年版防衛白書、2021年8月)

(*2)「日本は同盟及び地域の安全保障を一層強化するために自らの防衛力を強化することを決意した。米国は、核を含むあらゆる種類の米国の能力を用いた日米安全保障条約の下での日本の防衛に対する揺るぎない支持(原文はcommitment=誓約)を改めて表明した」(日米首脳会談、2021年4月16日)

 「核抑止」政策は、他国にヒロシマ・ナガサキを再現してもよいというものです。なによりも核使用の非人道的な結末を体験した国の政府として、断じて認められない立場です。それは、被爆国としての外交の基盤を崩し、北東アジアの緊張を激化させ、偶発的な衝突を含め、核破局の危険を高めるものです。

 日本共産党は、「核の傘」から脱却して核兵器禁止条約に参加する政権の樹立をめざします。

連合政権下での禁止条約への参加

 新しい政権—野党連合政権は、安保法制と閣議決定以前の法制度にもとづいて国政をすすめることになるので、日米安保条約も存続します。そのもとでも日本が核兵器禁止条約の締約国となることは可能です。

 日本政府は現時点でも、「法的な理由で(禁止条約に)入れないということではありません」「(不参加は)我が国の方針です」(茂木敏充外務大臣、衆院外務委員会、2020年3月6日)と述べています。つまり、条約への参加不参加は、政治判断だというのが政府見解です。

 実際、日米安保条約は核兵器禁止条約に参加することを法的に禁止しているわけではありません。安保条約には「核兵器」も「核抑止力」についても言及はありません。

 核兵器の使用や威嚇を「援助、奨励、勧誘」しないなどの核兵器禁止条約の義務を履行しさえすれば、安保条約のもとでも禁止条約に参加することは可能です。「核抑止力」論から抜け出しさえすれば、すぐにでも決断できることです。

 日本共産党は、政権交代によって、そうした政治決断ができる連合政権をめざします。

日米核密約破棄

 アメリカの「核の傘」から脱却するうえで、「日米核密約」を破棄し、非核三原則を厳守・法制化することが重要です。

 日本政府がアメリカとの間には、日本に寄港・飛来する米艦船・航空機の核兵器搭載については、「条約上の権利」として認めた秘密の取り決めがあります。日本共産党の不破哲三委員長(当時)は2000年の国会審議で、1960年の日米安保改定時に結ばれた「討論記録」という証拠を示して、この存在を暴露しました。

 また、返還したあとの沖縄にも、「重大な緊急事態」には核兵器の再持ち込みの権利をアメリカに認めた密約も存在します(「日米共同声明に関する合意議事録」1969年)。 2015年に明らかになった米国防総省の文書は「危機の際に核兵器を(沖縄に)再持ち込みする権利」がいまも有効であることを示しています。この密約が、核兵器を再び持ち込む基地として、嘉手納、那覇などとともに、辺野古をあげ、「いつでも使用できる状態に維持」するとしていることも重大です。

 日本政府は、この「密約」は有効なものではないなどとして、破棄していません(外務省「有識者委員会」報告書2010年)。アメリカが必要と判断すれば、核兵器が持ち込まれ、核戦争の足場とされる危険があります。

 日本は「核兵器をつくらず、持たず、持ち込ませず」の「非核三原則」を国是としてきました。日本共産党は、「核抑止力」=「核の傘」の鎖を断ち切ること、「日米核密約」を廃棄して、「非核三原則」を厳守・法制化するなど、名実ともに「非核の日本」に進む実効ある措置をとることを強く求めます。

原爆被害への国家補償と被爆者施策の抜本的改善をすすめます

 広島と長崎の被爆者は、原爆投下の直接の被害だけでなく、放射線の影響をはじめとする様々な病や健康の不安、さらには社会的な差別や経済的な困難などをかかえてきました。

原爆被害への国家補償を

 日本政府が、被爆者にたいして国家補償をおこなうべきです(*)。禁止条約も、「核兵器の使用または実験によって影響を受けた」犠牲者にたいして「医療、リハビリテーションおよび心理的な支援を含め、年齢および性別に配慮した支援を差別なく十分に提供し、かつ、彼らの社会的かつ経済的包摂を提供する」と定めています。

(*)米軍の原爆投下は、国際法に違反する不法行為です。しかし、日本政府はその賠償請求権を、サンフランシスコ講和条約によって放棄しており、米政府に請求することはできません。原爆被害者が米国政府に対して直接損害賠償請求権があるかどうかについても議論があります。したがって、まずは日本政府が原爆被害者に国として補償すべきです。

 しかし、歴代政府は、戦争の犠牲はすべての国民が等しく耐え忍ばねばならないという「戦争被害受忍論」にたって、国家補償を認めてきませんでした。被爆者をはじめとする粘り強い運動によって、被爆者にたいする援護施策を改善させてきていますが、いまだに原爆症認定を却下された被爆者が訴訟をおこさなければならないような状況がつづいています。

 日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)は、原爆被害への国家補償をもとめて、たたかっています。約12万8千人いる被爆者(被爆者健康手帳保持者(*))の平均年齢は84歳に達しつつあります(2021年3月末現在、厚生労働省発表)。政府は一刻も早くこの願いにこたえて、原爆被害への国家補償と被爆者施策の抜本的改善に踏み切るべきです。

(*)被爆時に一定の範囲の地域にいた者、原爆投下2週間以内に入市した者、被爆者救護をおこなった者、またそれらの胎児。手帳交付により、医療費が無料となり健康診断などがうけられる。しかし、実際に原爆の被害を被った人々は、これよりも広範囲に存在する。

原爆症認定制度の抜本的改善を

 被爆者の長年にわたる運動や原爆症認定集団訴訟(2003~9年)などのたたかいによって、2009年8月、麻生太郎総理大臣(当時)は「今後訴訟の場で争うことのないよう、定期協議会の場を通じて解決を図る」との「確認書」を取り交わしました。

 現在、被爆者が疾病にかかった場合には、健康管理手当(毎月34,970円)が支給されます。それが原子爆弾の放射線に起因する原爆症と認定されれば、医療特別手当(毎月142,170円)が支給されます。しかし、政府厚労省は、原爆被害を過小評価し、原爆症に認定する被爆者を少数に限定してきました。認定された被爆者は2021年3月末現在、6,978人にとどまっています(厚生労働省発表)。被爆者全体のわずか5%にすぎません。これは政府が、内部被ばくの影響を軽視するなど、認定の幅を意図的に狭くしているからです。日本被団協は、狭い「認定基準」による「足きり」をやめ、被爆の実態にふさわしく、全ての被爆者に一定の手当てを支給したうえで、障害の度合いに応じて加算する、という抜本的で、合理的な提言を出しています。

 政府の姿勢を改めるために訴訟がたたかわれ、被爆者たちの勝訴がつづいています。しかし、被爆者は高齢化しています。また、訴訟に踏み切るには大きなエネルギーが必要です。政府厚労省は司法の判断に従って、認定制度を直ちに抜本的に改善すべきです。

 日本共産党は、被爆者の要求を支持し、原爆症認定制度を、現行法の改正を含め、被爆者の実情・要求にそったものとするために尽力します。

 広島への原爆投下直後に降った放射性物質を含む「黒い雨」による健康被害をめぐる訴訟で、国側敗訴の広島高裁判決が確定しました。被害を矮小化する国の姿勢を断罪し、被爆者を幅広く救済することを求めた判決は画期的です。政府には、一刻も早く全ての被爆者の救済を進めることを要求します。

 被爆二世対策、また海外に住む被爆者が日本に住む被爆者と同等の援護措置を受けられること、被爆実態に見合った被爆者手帳交付条件の見直し(被爆地域の拡大)を進めます。

ビキニ水爆実験被災者への支援と賠償を

 1954年にアメリカがマーシャル諸島ビキニ環礁でおこなった水爆実験で、一千隻にものぼる日本のマグロ漁船の船員が被爆しました。第五福竜丸の船員が急死したことは大きな社会問題となり、水爆禁止を求める署名が当時の有権者の半数近く3,500万に達しました。これを背景に、翌1955年には第一回原水爆禁止世界大会が開催されました。

 反核世論の広がりを恐れた日米政府は、被爆の全容を明らかにしない「政治決着」をはかりました。米国の「好意」によるわずかな見舞金で、損害賠償責任を免除し、被爆調査を打ち切ったのです。被災者はなんら救済もなく放置されました。

 2014年に米公文書館で、漁民らの被災資料が発見されたため、市民団体が厚労省に迫り、それまでないとしてきた被災調査の資料を開示させました。2015年2月21日には、紙智子参議院議員の追及で、水産庁がビキニ被災文書類を初めて公表しました。

 被災から67年がたちますが、被災漁民の苦難、人権侵害、さらにその実態を隠蔽、放置してきた政府の責任は重大です。日本共産党は、政府が被災の全容を明らかにするとともに、高齢化がすすむ被災者に救済措置をとることを要求します。

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