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66、司法・警察

裁判員制度、えん罪、可視化、警察改革、犯罪被害者の権利 国民のための司法・警察制度に改革します

2021年10月

国民のための司法・警察制度に改革します

 今日、新型コロナウイルス感染症が広がり、市民生活や経済活動への影響が深刻となるなか、人々の人権をまもる課題が重要となっています。そのなかで、裁判所が人の移動をできるだけ避け、感染防止の体制を講じながら、いかに必要な機能を維持し、人々の権利を守る役割を果たすかが問われています。裁判所の傍聴席が「1席空け」とされることで、裁判の公開の原則が後退しないかを考えた場合、裁判の証人尋問や判決言い渡しなどを、テレビで放映することも思いきって検討すべきです。

 東京地裁など一部の裁判所では2020年2月から「ウェブ会議を活用した争点整理」の運用が開始されてきました。それだけでなく、現在、法務省が「民事裁判の手続きのIT化」を急ピッチで導入しようとしています。書面のオンライン提出の義務化や、口頭弁論、証人尋問などをウェブ会議でおこなう等々が検討されています。

 たしかに、裁判に必要な書面を持参、郵送するより、インターネットを介してやりとりするほうが費用、時間、労力を減らす面はあります。しかし、IT機器やネット環境を利用できない国民には、「裁判を受ける権利」を行使することが著しく困難になります。また、口頭弁論を、当事者の意思に反して、ウェブ会議等でおこなえるようになったら、公害事件や労働事件をはじめ、当事者の代理人弁護士や本人の書面では伝えることのできない弁論が制約され、直接、口頭での弁論を基本とする裁判が、真実から離れ、「公正な裁判」を阻害することになってしまいます。

 「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する中間試案」には、今年4月28日、自由法曹団が意見を提出し、きびしく批判しています。今検討されている案は、国民の裁判を受ける権利、公正な裁判、公開の原則など、憲法にてらしてさまざまな問題をもっています。

国民のための裁判

 裁判所は、国民の権利をまもり実現するための最後の砦(とりで)です。日本国憲法は世界に誇る平和主義と先駆的な人権規定をもっています。しかし現状は、戦闘機の騒音被害、原発問題、不当解雇、労働災害、公害・薬害など、大企業を相手とする裁判や国・地方自治体を相手とする行政裁判では、一部に積極的な判決もありますが、全体として国民の期待に反し、国民の自由と権利をまもる役割を十分はたせていません。刑事裁判では、裁判員裁判の導入で変化はみられますが、えん罪事件が次つぎに明らかになり、刑事事件の3%にすぎない録音・録画や「司法取引」の施行によって新たなえん罪が生まれる危険があります。裁判官が常駐していない裁判所の支部が依然として存在し、資力のない国民への法律扶助の改善も不十分です。

 裁判員制度は2009年5月21日施行から12年が経過し、市民感覚が一定反映された刑事裁判として定着しつつあります。この間、10万6,358人の国民が裁判員(または補充裁判員)をつとめ、14,096人の被告人に判決が言い渡され、有罪が13,309人、無罪が124人でした。(最高裁ホームページ「裁判員裁判の実施状況について(制度施行~2021年5月末・速報)」。裁判員裁判施行後2020年度までの無罪率は0.92%ですが、直近5年間(2016~20年度)の無罪率が1.51%に増えていることが注目されます。

 2018~20年の最近3年間で、裁判員の経験者が、裁判員を務めて「非常によい経験と感じた」「よい経験と感じた」とこたえた人の合計が、8割台後半と大多数です。「審理内容のわかりやすさ」では、「わかりやすかった」とこたえた人は7割前後となり、評議で「十分議論ができた」とこたえた人が7割台後半に増えています(最高裁ホームページ「裁判員等経験者に対するアンケート調査結果報告書」、各年度)。しかし、裁判員候補に選定されながら、辞退する人の割合――辞退率が施行当初の53%から年々増え、2018~2021年5月には66~68%に上がっており、改善が求められます(前掲「裁判員裁判の実施状況について」(制度施行~2021年5月末・速報)。

 刑事裁判に国民が参加することは、えん罪に長期に苦しめられるなど、きわめて問題の多い現在の裁判のあり方を改善するうえで、積極的意義をもっています。しかし、裁判員経験者から、裁判所は裁判員にたいして、証拠にもとづき有罪と認定するには合理的な疑いの余地があるときは無罪と判断すべきであることを、きちんと説明していないとの指摘もあります。日本共産党は、裁判員経験者の感想、意見もふまえ、法曹界などとも連携し、刑事裁判の改善とあいまって、真に国民参加の制度として貫かれるよう、必要な運用の改善と立法改正をもとめます。その際、「守秘義務」規定を見直し、裁判員の経験者から評議の内容を検証できるようにすることが、きわめて重要です。

 法律扶助協会にかわって設置された日本司法支援センター(法テラス)は、法律扶助事業、被疑者・被告人の国選弁護、法律相談、犯罪被害者支援、少年事件支援の活動をおこなっています。これらの事業は国民の権利を保障することをめざすものであり、国民の期待にこたえられるようにいっそう充実をはからなければなりません。

 日本共産党は、国民のための裁判の制度を改善し、国民への法的サービスを充実させるため、全力をあげます。

刑事裁判を改善します

 日本の刑事裁判は、犯罪捜査から裁判の判決にいたるまで、自白に偏重したやり方をとってきました。そのため、数多くのえん罪が生じ、大きな社会問題となっています。1980年代に4人の死刑確定者が再審裁判で無罪となったのはその典型ですが、最近でも、無罪の証拠を隠されウソの自白を強要された湖東記念病院事件の西山美香さん、不当な自白を余儀なくされた大阪・東住𠮷事件の青木惠子さん・朴龍晧(たつひろ)さん、無罪の証拠を隠されていた熊本・松橋(まつばせ)事件の宮田浩喜さん、足利事件の菅家利和さん、布川事件の桜井昌司さん、杉山卓男さん、東電OL殺人事件のゴビンダさんなどの再審無罪が確定しました。被告人12人全員無罪となった鹿児島・志布志事件、懲役刑を終えて出所後に真犯人が現われて無実が認められた富山・氷見事件、被害者の供述をうのみにした痴漢えん罪事件など、枚挙にいとまがありません。

 これらのえん罪のほとんどは、警察が逮捕した被疑者や被告人を四六時中支配できる警察留置場に拘束し、そこでウソの自白を強要して自白調書を作成し、それを受けた検察官が物証やアリバイより、自白調書を重要なよりどころとして起訴し、裁判官は公開の法廷で被告人が犯行を否認していることよりも、捜査官の面前での自白調書を偏重し、有罪としてきました。また、検察官が被告人の無罪を証明する証拠を裁判で隠し通して有罪としてきました。

 憲法では適正手続、黙秘権、弁護人の接見交通権など、第31条から40条までにわたって詳細に刑事上の人権がさだめられていますが、実際の運用では人権保障が不十分です。

 こうした刑事捜査や裁判の事態を改善するために、次の課題の実現をめざします。

裁判員裁判で無罪推定の原則をつらぬき、よりよい制度に改善します―――「疑わしきは被告人の利益に」「有罪が確定するまでは被告人は無罪が推定される」――これが近代刑事裁判の原則です。裁判員裁判では、第1回公判の審理開始前の公判廷と評議開始前において、裁判長が刑事裁判の原則を説明することを義務づけます。その際、有罪であるとする検察官の立証をふまえて考えた場合、被告人について確信をもって有罪と思えなければ、「合理的な疑い」があるとして、無罪と判断すべきであるということをきちんと説明すべきです。

 検察側と被告側の双方の証人が法廷でおこなった証言や被告人の発言、法廷に出された物的証拠など、法廷で直接に見聞きしたことにもとづいて、裁判に訴えられた犯罪事実をおこなったのが被告人かどうかを認定することが大切です。

 裁判員候補者には裁判員法や政令による辞退事由等に該当すれば、辞退が認められますが、裁判員が刑事裁判に参加しやすいよう、国の責任で事業所等に休暇などの保障措置を徹底し、裁判所周辺等の保育所や学童保育施設を利用できるようにすることを求めます。

 裁判員は殺人事件等の重罪事件の審理に参加するため、精神的ストレスを受けることは避けられない面があります。裁判所が委託したメンタルヘルスサポート窓口の利用件数は、制度施行後のべ410件をかぞえており(「最高裁、前記「総括報告書」)、この面での適切な対応が大切です。

 また、禁止行為があいまいで厳罰をさだめた「守秘義務」は、裁判員の経験者に裁判が終わった後にも心理的負担となっています。これでは、経験者の圧倒的多数が感じた「よい経験」を社会で共有できず、辞退率の改善にもつながらないでしょう。「守秘義務」については、その対象を評議にかかわる個人情報を公にしたときのみにかぎり、それ以外は処罰すべきではありません。

 死刑制度を廃止します。そのための国民的合意の形成をすすめます。

保釈の改善、証拠の全面開示、再審決定に対する検察官の不服申し立てを禁止します―――被告人が否認していると保釈を認めず、長期に勾留するという現在のやり方は、公正な裁判を害するものです。巨額の報酬を隠した疑いで逮捕された日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告をめぐる一連の勾留は国際的にも大きな批判をあびました。「罪証隠滅を疑うに足りる相当の理由」など、保釈についての刑事訴訟法の規定通りの運用をするよう、改善を求めます。勾留請求却下率が、2019年に5.2%(検察統計年報)と増加していることは、当番弁護士制度による早期の弁護活動、この間の世論の批判を反映して、運用上の変化がみられます(『弁護士白書』2020年版など)が、まだ不十分です。

 被告人に有利な証拠を集めているのに検察官が開示しなかったことが、えん罪をうむ大きな要因となっています。2016年5月の法改正で、弁護側の求めにより検察が証拠の一覧表を出すことが認められましたが、裁判員裁判の公判前整理手続きをはじめ、公判前に検察官があつめたすべての証拠を弁護人に開示することをただちに実施すべきです。

 とりわけ、刑事訴訟法の再審についての規定は、ほとんど戦前のままで、再審手続きを定めたルールがないに等しく、担当裁判官の裁量に左右される「再審格差」といわれる実態があります。再審が決定された事件では、元被告人の無罪を示す証拠が隠され、検察官のやみくもな不服申し立てが繰り返されています。

 再審事件で、それまで公判に提出されていなかった未提出証拠の証拠開示のルールを刑事訴訟法に明記することを求めます。再審決定が出されれば、再審公判で事実を調べればよいのですから、検察官が再審開始決定に対する不服申し立てをおこなうことを禁止します。公開の法廷での事実調べや証拠の採否など、公正な再審手続きを整備することが必要です。

 誤った鑑定によるえん罪もくりかえされています。足利事件は、裁判で低い鑑定精度の「DNA型鑑定」が鵜呑みにされ、(16年、精度も技術も確立していない「DNA型鑑定」が)犯人とされる最大の根拠とされました。真の科学に依拠した鑑定、DNA証拠をはじめとする証拠を散逸させず、再鑑定を保障する資料の保管体制など、問題点の改善を求めます。

 証拠を裁判の「目的外」に使用することを禁止しているのは、裁判の公開の原則にそむくものであり、やめさせます。

誤判原因究明のための第三者委員会の設置――—わが国でくりかえされる誤判やえん罪事件について、原因を究明し根絶のための課題を明らかにするために、関係機関から独立した公的な第三者委員会を設置することを求めます。死刑確定後再審裁判で1980年代に無罪が確定した4事件について、中立的な公的機関が誤判発生の分析を行い、刑事裁判制度の具体的改革案を示したことはありません。誤判原因調査委員会は世界に広がっており、日弁連もすでに2010年3月に同委員会の設置を要求しています。

取り調べ全体をガラス張り(可視化)にし、弁護人の立会いを認めます―――自白強要の取り調べをやめさせるうえで、取り調べの全過程を録音・録画(可視化)し、取り調べに弁護人の立会いを認めることはきわめて重要です。

 ところが、政府は、取り調べの全過程の録音・録画に背を向け、録音・録画を裁判員裁判の対象事件と検察官が独自に捜査する事件にかぎって、警察及び検察官の取り調べの状況を録音・録画(ビデオ撮影)する刑事訴訟法「改正」にとどめ、2019年6月から施行されました。これは、全事件のわずか3%にすぎません。同法は、逮捕後の別件事件での「任意の取り調べ」も録音・録画の対象ではないとされました。被疑者の態度にかんする捜査官の恣意的な判断によって、録音・録画をせずに取り調べることもできます。しかも、裁判においては、犯行の自白に至る過程の録音・録画の場面ではなく、自白したときの映像だけ再生され自白があたかも任意に供述しているかのような場面が、証拠とされる危険があります。

 取り調べの全面可視化は、捜査機関の密室での取り調べでの自白強要をあらためる出発点となるものであり、公正な裁判を迅速にすすめるうえでも不可欠です。導入された一部可視化は、逆に自白強要の捜査を隠ぺいし、誤った裁判を導く危険を生むものであり、ただちに見直すべきです。

 取り調べに弁護人が立会うべきものとし、被疑者が取り調べ全過程の録音・録画や取り調べに弁護人の立会いを要求したときは、捜査当局がこれに応じるようにします。

憲法違反の盗聴法、えん罪の危険を広げる「司法取引」制度の廃止―――2016年の刑事訴訟法改悪で、取り調べにたいするわずかな録音・録画とひきかえに、盗聴手段が強化され、いわゆる「司法取引」制度が導入されました。

 従来、薬物・銃器などの組織犯罪に限られていた盗聴できる犯罪を、「捜査手段の多様化」の名目で、傷害、窃盗、詐欺など一般刑法犯罪にまで拡大しました。通信事業者の立会いは不要とし、通信事業者と警視庁・道府県警察本部を専用回線で結び、警察施設で警察組織のみの盗聴とその録音・再生が可能になりました。

 盗聴法によって、2014~2018年の5年間で、令状が発付され盗聴の対象となった56事件に209件の令状が発付され、計2,980日間、 56,505回の通話中、犯罪に関する通話は計10,030回であり、17.7%に過ぎず、残り82.3 %が犯罪と無関係の盗聴でした。改悪された盗聴法は2019年6月から施行され、2020年の1年間で20事件に50件の令状が発布され、1,042日間、20,120回にのぼる通話を盗聴、犯罪に関する通話は計3,853回、19.1%に過ぎず、残り80.9%が犯罪と無関係の盗聴でした。令状発布され盗聴したものの1回も犯罪に関する通話がなかったのが9件、2割近くもありました(法務省、警察庁の「通信傍受に関する国会報告」)。このように、令状はあっても盗聴捜査の乱用が野放しとなることは避けられず、より広範な人々の通信の秘密・プライバシーが侵害されることになります。憲法違反の盗聴法の廃止を求めます。

 導入された「司法取引」は、汚職、詐欺、横領や、銃器・薬物にかかわる犯罪を対象にして、被疑者・被告人が他人の犯罪事実を供述したり、証拠を提供する見返りに、検察官が起訴を見送ることも、求刑を軽くすることもできるものです。「司法取引」は、警察、検察に、被疑者を利益誘導して虚偽の自白を獲得する手段として利用されるおそれがあります。松川事件など、自白すれば刑事責任を軽くしてやるという利益誘導の結果、本人と「共犯」とされた人がともにえん罪の被害者とされてきました。同様の制度をもつアメリカでは、2004年当時判明した死刑えん罪事件のうち、45.9%のえん罪の原因が、情報提供者の誤った証言でした。

 虚偽供述を生む危険のある「司法取引」には被疑者・被告人の弁護人も同意するという形がとられ、刑事弁護そのものの変質にもつながりかねません。このようなえん罪を広げる危険なしくみは廃止すべきです。

 これらの制度改悪によって、正当な言論活動や団体の活動を、「違法行為」として盗聴したり、第三者の虚偽の供述を利用するなどして、「犯罪事件」をでっちあげることに使われる危険も見ておかなくてはなりません。

 「共謀罪法」の成立によって、その対象犯罪を盗聴できるようにする法改悪の動きや、「自首減免」の規定にもとづいて、「共謀」に関する他人の犯罪事実を供述することと「司法取引」が結びつけば、虚偽の自白を誘導されるおそれがあることなども、警戒が必要です。

人権侵害の取り調べの温床である「代用監獄」を廃止します―――逮捕された被疑者はすみやかに裁判官の面前に引き渡されなければならないこと、その後は身柄を警察にゆだねず、捜査と拘置を区別することは、国際的な常識です。

 ところが、わが国の警察留置場は被疑者・被告人にたいし、物証やアリバイを無視し、警察の筋書きにそったウソの自白強要、人権侵害の取り調べの温床となっています。肉体的、精神的な苦痛をあたえる取り調べは、拷問にほかなりません。国連拷問禁止委員会は07年5月、拷問禁止条約にかんする第1回日本政府報告にたいする審査で、精神的拷問をうけ、ウソの自白をさせられた実態が告発され、拷問禁止委員から「クレイジーだ」との驚きの声があがりました。取り調べで自白を強要し、警察の筋書きにそった犯行を認めないと釈放しないやり方も改めさせなければなりません。

 各国の人権状況を審査する国連自由権規約委員会は2014年7月、あらためて「代用監獄」の廃止、取り調べへの弁護人の立会い、取り調べ期間の制限などを勧告しました。

 拘置所の代わりに警察留置場をつかう「代用監獄」制度は即時廃止し、被疑者・被告人は法務省が管理する拘置所に収容するようあらためます。裁判所が拘置を延長するときも被疑者・弁護人の意見を聞くことを求めます。代用監獄の廃止以前にも、黙秘権の徹底、長期の取調べを予防するためにも取り調べ時間を記録するなど、警察に厳格な管理を求めます。

検察を改善し、検察審査会を活用します―――通常では起訴しないような行為を差別的に起訴して、ビラ配布などの民主的な言論活動をおさえようとしたり、逆に政治家や警察、大企業の犯罪などで起訴すべき事案を政治的な配慮で起訴しないなど、検察権の恣意的な運用はあってはならないことです。証拠をねつ造したり、無実の証拠を隠すなど、検察のあり方の抜本改革が求められてきましたが、検察改革のメスは入っていません。検察当局が300近い企業などがもつ膨大な顧客情報を、令状が必要ない「捜査関係事項照会」によって取得していることも判明しています。

 近年では、検察による政官財の汚職腐敗や「政治とカネ」の問題などにたいする摘発事件をほとんど聞かなくなりました。検察権の行使が求められているにもかかわらず、それを行使しないということに対しては、国民のきびしい監視が必要です。

 起訴するかしないかは検察官の判断にかかっているという制度のもとで、日本共産党は、国民のなかからくじで選ばれ構成される検察審査会が起訴相当の議決をしたときは、検察官は起訴しなければならないとするよう提案してきました。検察審査会が同一の事件について「起訴相当」を二回議決した場合は必ず起訴される制度が、2009年5月21日から実施され、検察官の起訴、不起訴の判断に民意が一定程度反映されるようになりました。民意といってもその判断は法律にもとづいたものであり、審査補助員として法律専門家(弁護士)から法律上の説明や助言をうけて審査することができ、二度目の不起訴処分の審査ではこのことが義務づけられています。政治家への起訴相当議決のかかわりで検察審査会のこの制度の見直しを主張するなど、審査会への「けん制」とみられる動きが一部にありますが、国民から選ばれた検察審査会は、必要な検討や解明をおこなって、刑事裁判への門戸を開くなど、積極的な役割をはたしています。

 起訴する権限が検察官に独占されているもとで、国民の民意を生かす検察審査会制度に背をむけるような動きにはきびしく反対します。将来は、起訴するかしないかを国民がきめる起訴陪審制度の導入を検討します。

民事・行政裁判を改善します

 国民の世論と運動を背景にねばり強い裁判批判をつうじ、国民の権利をまもる判決が言い渡されているケースもありますが、日本航空不当解雇撤回裁判をはじめとする解雇事件、公害・薬害、原発問題など、大企業を相手にした裁判や行政裁判では、一部を除き、大企業や国におもねり、国民の権利を無視した判決が依然として多いことも事実です。時間と費用をかけて裁判をやっても、思うような解決が得られないことが少なくありません。また、権利の実現を切実にもとめながら、資力がとぼしいため弁護士の援助を得られず、泣き寝入りをせざるをえない国民も少なからずいます。

 日本の裁判所は、裁判官が国側の立場で行政裁判をすすめる「訟務検事」となり、検事が裁判官となる「判・検人事交流」によって、裁判の独立や公正がおびやかされています。裁判官は、国民を勝たせる判決を書くことで自分の将来の人事や昇進を考えざるを得ない官僚的統制のもとに置かれています。また、少数の裁判官が多数の事件を受けもっており、しかも迅速な処理を要請されるため、十分な準備をして公正な判断をするうえで、たいへんきびしい状態におかれていることも解決しなければなりません。

 日本共産党は、大企業を相手とする裁判や行政裁判でも真に国民の権利がまもられ、国民ひとりひとりの裁判を受ける権利が保障されるために、裁判の独立が真につらぬかれるよう、改善を求めます。

民事・行政裁判にも国民参加の制度を導入します―――解雇・配転・賃金不払いなどの労働事件を、裁判官と労働団体・使用者団体のそれぞれから推薦された審判員で構成される労働審判制度が導入され、一定の役割をはたしています。大企業を相手とする裁判や行政裁判が国民のいのちと人権をまもるものとなるよう、民事裁判や行政裁判に国民の常識を反映させるために、国民が民事裁判に参加する制度を導入することは、積極的意義があります。少なくない裁判員経験者が、国民参加を民事裁判や行政訴訟にも導入することをのぞんでいます。

 大企業、国、地方自治体を相手とする裁判で、国民の常識にそった公正な裁判を実現するために、民事・行政裁判にも国民が参加する制度を導入します。

法律扶助予算を増額し、「裁判を受ける権利」を実質的に保障します―――憲法は必要なすべての人に「裁判を受ける権利」を認めています(第32条)。日本共産党は貧困と格差がひろがるもとで、おカネがないために権利を実現するのにあきらめなければならない現状を解決するため、資力に関係なく弁護士に依頼して権利を実現する法律扶助制度の充実をもとめてきました。現在の法律扶助は、勝訴の見込みがないと弁護士費用が補助されず、費用も立て替えが原則となっています。その最大の障害は、法律扶助事業にたいする国の予算が少ないことです。

 現在、法律扶助事業をおこなっている日本司法支援センター(法テラス)の法律扶助事業の経費は、国の運営費交付金の収入と償還金収入などを原資として210億6,200万円が支出され(日本司法支援センター2019事業年度決算報告書)、発足前の国の法律扶助事業費補助金の44億9,260万円(2005年度)と比べると約4.7倍にふえ、弁護士の援助件数も伸びています。しかし、国の日本司法支援センターにたいする運営費交付金は2021年度予算で151億5,973万円であり、法律扶助事業を拡充するため、ひきつづき予算の抜本的増額を求めます。

裁判官を大幅に増員します―――裁判官は多数の事件をかかえ、たえず迅速処理をおこなわねばならない状態に置かれています。しかし、裁判官はわずかな増員にとどめられています。この間、弁護士の人員は増えてきましたが、裁判官の人員は10年前の2011年2,850人に対し、2020年は2,798人と減少しています(簡裁判事を除く)。地方裁判所の支部も、常駐裁判官がいない支部が少なくないなど、体制もたいへん手うすであり、国民の裁判にたいする要求にこたえられていません。現在、裁判所の予算は国家予算の約0.31%という少額にすぎません。憲法が保障する国民の権利をまもるという本来の重要な任務をはたすうえで、裁判所予算の増額と裁判官の増員は待ったなしです。あわせて裁判所職員についても適切な増員をはかることを求めます。

 また、地方裁判所の支部の担当地域のなかに弁護士の「過疎」地域が多数あり、日本弁護士連合会(日弁連)はこの解決に努力し、前進しています。裁判官・検察官・弁護士になる資格をもつ人を大幅に増加させている現在、裁判官の大幅な増員と裁判所支部の裁判官の常駐化をはかり、裁判官不足を解消することは可能です。

最高裁の女性判事を増やし、事務総局の官僚的統制をあらためます

 今日、最高裁判所は、国民の世論と運動などを反映した判決を出すこともありますが、今年6月23日、夫婦別姓を認めない民法の規定は合憲とした夫婦別姓訴訟の判決にみられるように、違憲立法審査や基本的人権のまもり手としての役割を十分はたしていません。

 最高裁のジェンダー平等の遅れに対する社会的な批判が強まっています。その大きな要因に最高裁裁判官の女性の割合が著しく低いことがあります。現在、15人の最高裁裁判官のうち、女性はわずか2人です。元最高裁女性判事や市民団体から、その低さが日本のジェンダー平等がすすまない要因の一つとなっており、「男女半々、少なくとも30%」にすべきとの指摘がされています。

 また、憲法は裁判官の独立を保障していますが(第76条3項)、最高裁判所の事務総局が裁判官の事件処理数ににらみをきかせ、給与や人事の権限など、司法行政をつうじて裁判官を統制してきました。欧米諸国とくらべ、裁判官の市民的政治的自由は大きく立ち遅れています。裁判官のおかれているこのような状態が、裁判を国民の常識から遠ざける大きな背景になっています。

弁護士の一定年数経験者の裁判官任官をすすめます―――現在、弁護士からの裁判官任官がおこなわれています。また、弁護士の業務に従事しながら週1回以上、民事と家事調停事件を担当する非常勤裁判官の制度も実施されています。しかし、最高裁判所の裁判官への官僚的統制のもとで、国民の権利をまもる裁判所とは程遠いのが現状です。将来的に、高裁・地裁の裁判官は、かならず弁護士として一定年数の人権擁護活動の経験をつんだ人のなかから、任官をおこなうことを制度として確立します。

 最高裁裁判官は任命諮問委員会の答申をふまえて任命する制度を確立します……内閣の最高裁裁判官の任命人事が公正な人事となるよう、裁判官、弁護士、学識経験者の三者からなる構成につとめるとされてきた慣習が、安倍前政権のもとで日弁連推薦者がまったく無視されるなど、内閣の恣意的な人事がおこなわれています。裁判官の構成に女性を5割にするためにもっと女性裁判官を任命すべきです。

 戦後の最初の最高裁裁判官の任命は、党派にかたよった人選をさけるため、法律専門家の互選による委員を中心とした任命諮問委員会の答申にもとづいておこなわれました。最高裁裁判官任命諮問委員会を国民各層の代表者をもって構成し、より国民の意見が反映される形で復活させます。また、内閣が最高裁裁判官を任命するさい、国会に聴聞委員会を置いて国会の審査をつうじて任命候補者の適格性を審査することを提案します。

 高等裁判所・地方裁判所の裁判官は10年ごとに再任期を迎えますが、その指名過程を透明化し、国民の声を反映させるため、2003年に裁判官指名諮問委員会が裁判所ごとにおかれました。これは、最高裁事務総局の密室でおこなわれていた裁判官人事を国民の目の届くものにするうえで重要な役割をもっており、その適切な運用を重視します。

裁判官会議を確立し、裁判官の市民的自由を保障します―――各級裁判所の人事など司法行政事務は、それぞれの裁判所の裁判官会議をつうじておこなわれることになっていますが、最高裁事務総局の強力な司法行政上の指導によって、裁判官会議はまったく形骸化しているといわれています。このような現状をあらため、裁判官会議の確立をはかるとともに、裁判官の市民的自由を保障します。

法曹養成制度を改善し、法科大学院生などへの経済的援助を求めます

 現在、法科大学院で2年間又は3年間学び、司法試験に合格して司法研修所で1年間の修習をへて法曹となる養成制度が実施されていますが、解決を求められている諸問題がうまれています。関係省庁や日弁連をはじめ、関係者から、法科大学院の配置、入学定員と司法試験合格人数、教育内容などをめぐって、さまざまな改善意見があげられてきました。現在、法科大学院にかんする拙速な法改正が審議されています。法律専門家には、一般的に体系的な法的知識だけでなく、憲法や基本的人権にたいする豊かな感覚をつちかうことが不可欠です。日本共産党は、法曹養成制度が憲法と人権をまもり国民に信頼される法曹を育てるものとなるよう、その改善と充実をはかります。

 法科大学院と司法研修所をつうじて法曹となるために要する経済的負担は、法科大学院学費の公的援助の未整備、修習生に対する給費制の廃止、貸与制などで、法曹志望者と家族に重くのしかかってきました。これでは、とくに国民の権利擁護に尽力すべき弁護士の活動が、借金返済のためにゆがめられたり、資力にめぐまれた人しか法曹の道にすすめなくなります。

 日本共産党は、法科大学院生への授業料減免の拡充・給付制奨学金の創設とともに、司法修習生への給費制復活のため、政府に法改正と予算措置を求めてきました。ビギナーズネットなど、給費制復活を求める切実な運動もあり、2017年4月、法改正が実現し、17年の司法試験合格者から一律月額13万5,000円を給付(住居費がかかる場合には、3万5,000円を上限に加算)することになりました。しかし、これまでの給費額(月額約20万円)と比べて低いものにとどまり、無給の時期の司法修習生への救済策も依然としてとられていません。これらの改善を求めます。

警察の改革

 警察は、国民の生命、身体、財産の安全、犯罪の捜査、基本的人権の保障にとって重要な責務をもっています。しかし、そのような警察本来の活動は不十分であり、ストーカー事件での捜査や対応のまずさなど、しばしば取り返しのつかない結果を生じています。

 現職警察官の犯罪や不祥事が依然として後を絶たず、国民の警察への不信がひろがっています。まじめに働いている警察官がいる一方、自白の強要、違法なおとり捜査、裏金を温存するなど、職務上の不正行為をはじめ、窃盗、詐欺、横領、盗撮、セクハラ、強制わいせつ、殺人、強姦、住居侵入など、依然として警察官犯罪がひんぱんにおきています。警察官の懲戒処分は過去最多の2012年から減ってはいるものの、2020年も229人を数え、国民の公僕としてのあり方がきびしく問われています。

 とりわけこの間、警察庁刑事局が都道府県警に、ひそかにおこなっているGPS(自動車などに取り付けて位置情報を把握する移動式追跡装置)の存在を捜査書類に記載しないよう指示していたことが判明しました。警察の捜査過程の検証ができず、国民への監視の手段となるもので、きわめて不当です。最高裁大法廷は2017年3月、GPSはプライバシーを侵害し、令状がない限りおこなうことはできないと判断しました。令状なしの秘密裏の設置は憲法違反であり、法的規制が必要です。

 他方、国民の言論活動であるビラ配布にたいし、警察が道路交通法を口実に干渉し、警告したり、公選法を口実に後援会ニュースの配布活動などを執拗に「捜査」するなど、言論表現の自由を侵害する取り締まりがしばしば起きています。明治乳業争議団の街頭でのビラ配布に、警察署が「(道路交通法上の)警察の許可をとっていないならビラまきをただちにやめよ」と警告し、妨害したことに、争議団が抗議すると、警視庁は2015年8月、誤りであると認め謝罪しました。

 国家公務員が休日、職務とまったく無関係に居住地で「しんぶん赤旗」号外等を配布した行為について、2012年12月、最高裁で無罪が確定した国家公務員法弾圧堀越事件では、警視庁公安部と月島署の公安警察官が、「犯罪の捜査」にかこつけて、警察法の「不偏不党、公平中正」の原則を踏みにじり「警備情報収集活動」をおこなっていました。堀越氏を29日間にわたり、のべ171人が、国家公務員個人の立ちより先や交友関係を尾行、スパイし、「しんぶん赤旗」号外等を配布する行為にたいしても、多いときで11名、ビデオカメラ6台、自動車4台で「捜査」していました。

 岐阜県警大垣署が風力発電建設の問題点について学ぶ勉強会に参加する市民を情報収集し、民間業者に情報を提供、「もの言う」市民を監視していたことが明らかになりました。市民の抗議に県警は、「通常の警察業務の一環」と居直り、警察庁も同様の答弁をおこなっています(2015年6月4日、参議院内閣委員会)。

 2016年参議院選挙の公示前、別府警察署員が野党統一の候補を支援していた労働福祉会館の2カ所の木立にビデオカメラで隠し撮りをしていた事件が明らかになりました。これは県議会や国会で追及され、不適正な捜査であることを認めましたが、令状なしの隠し撮りが違法であることは認めませんでした。警察庁は事件後の通達で、管理者の承諾を得れば任意捜査として許されると居直っています。

 以上のような事態は、この間の警察改革がきわめて不十分で的を射ていないことをしめしています。国民の基本的人権を侵害する警察活動の一方、警察犯罪や不祥事が続発する現状は、文字どおり、警察組織の再生が求められるものであり、日本共産党は、つぎのような警察改革を実行することを求めます。

警察から独立した公安委員会に

 国家公安委員会は、警察の独善化を防止し、警察庁を民主的に管理することに本来の役割があります。しかし、国家公安委員会は、警察いいなり・おまかせの対応をつづけ、その機能をはたしていません。いまの国家公安委員は、人選にあたっても警察庁がリストを作成し、内閣総理大臣が追認して任命する、事務は警察庁が担当するなど、警察庁主導でとりしきられています。

 日本共産党は、2000年3月、警察の犯罪や不祥事をただすべき国家公安委員会と監察機構を警察から独立して、その役割をはたすよう改革案を提案し、その実現のために奮闘してきました。その実現はいよいよ急務です。

 国家公安委員の警察庁による推薦をやめ、国会で「指名聴聞会」を開催し、適否を判断できるようにします。警察庁から独立した独自の事務局をもうけ、警察行政にかかわる諸問題、予算配分などについて必要な調査・検討をおこなうようにします。

 国家公安委員は建前のうえでは常勤になっていますが、週1回の会議に参加するなど形だけです。これをあらため、5人の委員すべてを常勤にし、職務に専念させるべきです。

 国家公安委員会が警察の独善防止や民主的管理のために、どういう活動をおこなってきたかなど、必要な事項について、毎年、国会にたいする報告を義務づけるようにします。

 共謀罪法が施行され、独立した国家公安委員会ができていないなかで、共謀罪容疑などで捜索や取り調べなどを受けた人が人権救済を求めることができる第三者機関の設置が提案されています。政府から独立し、公金で運営する機関で、弁護士や大学教授ら人権に関わる有識者が委員を務め、警察の情報収集や捜査活動について報告を求め、手続きに問題があれば指摘するなどして、法の乱用に歯止めをかける、とされています。

 警察から独立して警察を監督する機関をわが国に設置することはまさに急務です。

監察機構を警察から分離し、国家公安委員会のもとにつくります

 警察の一連の不祥事件のおおもとには、警察にはびこる独善性や秘密主義、不正・腐敗をおおいかくす隠ぺい体質があります。警察庁や都道府県警察の内部監察ではこの体質にメスを入れることができないのは当然です。監察制度を警察庁から分離・独立させ、国家公安委員会の直属機関として監察委員会(仮称)をもうけ、警察庁と警視庁、道府県警察本部、および警視正以上の幹部警察官、重要案件についての監察をおこなうようにします。

 監察委員長をふくむすべての監察委員は、警察官以外から起用します。監察委員の過半は法曹資格を有するものとし、監察委員および委員を補佐する職員についても、警察庁との人事交流を禁止します。

キャリア制度を見直し、特権的な人事政策をただします

 キャリア制度の弊害は、現場性のつよい警察で「キャリア官僚」が警察行政をとりしきることによる問題点が、銃器摘発問題などで明らかになってきました。キャリア制度を見直し、特権的なあつかいをあらためるなど、公正な人事政策を確立し、警察官の労働条件を向上させます。

警備公安警察のスパイ活動を中止させ、秘密警察の廃止を

 警察は、不偏不党の立場で警察の責務をはたし、いやしくも国民の基本的人権を侵害することがあってはならないと、警察法できびしくさだめられています。ところが警察は、本来の責務に反して、各階層・分野の国民的運動や日本共産党にたいするスパイ活動を秘密裏に組織的継続的におこなっています。

 そのうえ、共謀罪法の施行によって、国民や国民運動にたいし共謀罪の疑いをもった日常的な監視が広がる危険があります。共謀罪法自体が違憲立法であり、その執行は許されません。

 また、近年、公安警察が取得した情報が内閣官房(内閣情報調査室)に提供され、政権の支配機能の強化に肩入れすることがつよまっています。公安警察が犯罪の捜査を口実に、情報収集をおこない、国民の人権を侵害する違法な行為を規制します。

 日本共産党は、公安警察の違憲・違法のスパイ=警備情報活動の中止と、秘密警察の廃止を要求します。警察には、国民の基本的人権と生命・身体の安全が保障されるよう、治安を確保する活動に責任をもたせます。

国際自由権規約による是正措置と個人通報制度の確立

 わが国の人権状況は、長時間・超過密労働のもとで過労死・過労自殺があとをたたず、働く女性の賃金・昇進差別が続けられ、被疑者・被告人には弁護士の接見交通権が侵害され、「代用監獄」で自白強要の取り調べが一貫して続けられているなど、国際的にも大きく立ち遅れています。

 国連の自由権規約委員会が2014年7月に公表した日本政府にたいする総括所見は、個人通報制度をさだめた第一選択議定書の批准をはじめ、広範囲の秘密を対象にし、市民とメディアの知る権利を侵害する特定秘密保護法の見直し、朝鮮・韓国人、中国人など、マイノリティー集団にたいするヘイトスピーチ(憎悪表現)の規制、働く女性の差別、「慰安婦」への十分な補償措置とこの問題を否定するあらゆる試みへの糾弾、「代用監獄」の廃止、ジェンダー平等など、いっそうきびしい勧告をおこないました。国民にこの勧告が歓迎され、政府に実施をもとめる声がよせられています。

 日本政府は、自由権規約委員会のこの最終所見を正面からうけとめ、立法の強化などをおこなうべきです。

 2018年5月には、国連人権理事会の特別報告者から、2018年10月からの生活保護費引き下げ措置について、日本が批准する社会権規約上の義務に違反するとの声明が発表されています。旧優生保護法下において本人の同意なしに施された優生手術による人権侵害は、自由権規約委員会や女性差別撤廃委員会から、被害者に対する措置を講ずるよう勧告されています。

 同時に、日本は自由権規約の第一選択議定書を批准していないため、自由権規約で保障された権利が侵害された国民が、自由権規約委員会に直接救済の申立てができる制度を活用できません。本条約に付帯する選択議定書に個人通報制度が定められているのは、自由権規約のほか、社会権規約、女性差別撤廃条約、子ども権利条約、障害者権利条約があり、人種差別撤廃条約、拷問等禁止条約、強制失踪条約は本条約の中に個人通報制度を定める条項がありますが、日本はいずれも批准あるいは受諾宣言をしていません。

 日弁連や労働組合・民主団体は政府にくりかえし第一選択議定書など、上記の諸条約の個人通報を定めた選択議定書の批准や、条約本体に定める個人通報条項の受諾宣言をもとめてきましたが、政府は、最高裁のうえにもう一つ裁判所をおくなどとして、批准に背をむけつづけています。しかし、この制度は、わが国の人権を国際水準に引き上げるうえで当然のことです。

 日本共産党は政府がすみやかに自由権規約の第一選択議定書の批准をはじめ、各種の人権条約にもとづく個人通報制度を確立することを求めます。

犯罪被害者の権利を保障します

 日本共産党は、1975年7月、「犯罪被害者補償法案大綱」を発表し、犯罪者に賠償能力がないとか、犯罪者不明などから、被害者やその家族に損害賠償がされず、精神的に深刻な苦痛をうけたうえに生活上も悲惨な状態においこまれている現状にたいし、国の救済措置として、国家補償の制度を提案しました。また、犯罪被害者基本法を早急に制定し、国の施策として、被害者は尊厳をもってあつかわれるべきであり、すみやかな被害回復の権利を有することを宣言し、被害者に刑事事件の加害者や事件の内容、刑事手続きや判決内容などの情報について可能なかぎり提供をうけることをはじめ、各種の権利の保障を明確にすることを求めてきました。

 2004年に全会一致で犯罪被害者等基本法が制定され、政府が犯罪被害者等のための施策の総合的かつ計画的な推進をはかるという段階にすすんでいますが、犯罪被害者や遺族への経済的支援が不十分です。日弁連のアンケートによると、犯罪被害者等への損害賠償命令が確定しても実行されている割合は低く、殺人事件で3.2%に過ぎません。被害者や遺族が立ち直り、平穏な生活を取り戻すまでの経済支援を目的として「犯罪被害給付制度」による遺族給付金の実績は平均613万円、障害給付金が平均319万円です(2019年度)。犯罪被害者の団体も、迅速で確実に損害賠償を受けられるよう実効性のある措置、国による損害賠償の立て替え払い制度などを求めており、法務大臣も「不断の見直しは必要」と述べています。

 日本共産党は、犯罪被害者の個人の尊厳、幸福追求の権利を保障するため、犯罪被害者にたいする国家補償や精神的なケアの充実などのために奮闘します。

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