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日本共産党

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➡2021総選挙 分野別政策一覧

40、国民のための公共事業政策

大規模開発優先から安心・安全の防災・老朽化対策に公共事業の大転換を

2021年10月

 2020年以降の新型コロナウイルス感染症の拡大は、交通・観光需要の減少をはじめ国民生活に深刻な打撃を与えています。コロナ禍で、人口密集がリスクになる中での東京一極集中の是正、“稼ぐ”都市づくりからの脱却が、喫緊の課題となっています。人の移動や集合の制約により、テレワーク等の活用で住まい方、働き方にも大きな変化が現れています。

 気候変動による豪雨や大雪等の自然災害も年々激甚化・頻発化し、いのちと暮らし、生業と財産が奪われる危機に脅かされています。18年の西日本豪雨災害や19年東日本台風、20年7月豪雨など毎年、「かつて経験したことのない」降雨量を記録し、甚大な被害を発生させ、21年7月には熱海土石流被害のような「人災」も誘発しました。災害が多発する日本列島で、国民の命と財産を守ることは政治の要であり、従来の延長線上ではない、防災・減災対策の抜本的な強化が求められています。

 新型コロナと気候変動による災害という2つの危機に直面しているもとで、国土づくりや公共事業のあり方が問われています。これまでのように大規模開発・新規事業優先ですすめていていいのかが、問われているのです。日本共産党は、安全・安心の防災・減災対策、老朽化対策を公共事業の基本にすえる抜本的な改革が必要だと考えます。 

防災・減災対策、老朽化対策に予算を重点的・優先的に配分します

大規模開発優先から防災優先へ

 公共事業は、防災対策の中で重要な柱であり、国民の命と財産を守るために、防災・減災の対策の強化が求められています。 

 ところが、自公政権は、大規模開発優先の従来型公共事業をさらに加速させ、防災対策を事実上後回しにしています。競争力・産業インフラ機能強化や国際競争力強化などを名目に、大都市環状道路、巨大ダム事業、整備新幹線延伸、国際コンテナ戦略港湾などの大規模開発事業に巨額の財政が投入されています。毎年、高速道路建設に2.5兆円、新幹線や首都圏空港、巨大港湾建設などに約5,000億円、ダム建設に約2,000億円などの事業費が注ぎ込まれています。

 凍結・見直しされた大規模開発計画も、関門海峡横断道路、ダム再生事業、新たな新幹線計画への調査費計上など、復活させようとしています。「民間がやる」としてはじめたJR東海のリニア中央新幹線工事は1・5兆円増額され、政府が貸し付けた財投資金3兆円の返済はじめ、事業継続そのものがあやしくなっています。

 大規模開発には巨額の予算が注ぎ込まれる一方で、防災・減災対策の公共事業は大きく立ち遅れています。2021年度の防災・安全交付金は、1兆2,786円(20年度補正含む)ですが、これは地方の要望額約2兆円の7割程度です。政府は、地方が必要とする防災・老朽化対策の3割を切り捨てているのです。

 18年の西日本豪雨災害では、ダムに依存し、河川改修を後回しにしている治水対策の問題点が噴出しました。ダムの緊急放流が下流域に大きな被害をもたらし、ダムの洪水調整力には限界があることを改めて示しました。倉敷市真備町では河川改修の遅れが甚大な被害をもたらしました。ところが、安倍政権の13年度から18年度までの5年間で、ダム事業の予算が512億円(28%)も増やされた一方で、河川事業は390億円(9%)削減されていました。

 さすがに、気候変動による豪雨災害をうけ、7兆円規模の「防災・減災、国土強靱化のための3カ年緊急対策(18~20年度)」、15兆円規模の「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策(21~25年度)」を取り組み始めています。

 しかし、自公政権の、「国土強靭化」は「国際競争力強化の向上に資する」「国家機能などの重要な機能の代替性の確保」などは明確にされていますが、国民一人一人の生命と財産を守ることはもっぱら「地域住民の力を向上させる」ことにまかされています(国土強靭化基本法)。「国家機能」や「国際競争力」が優先され、国民の命と財産を守る防災対策を「後回し」にする姿勢は変えていません。

―――公共事業といえば新規建設という従来型の発想を根本から見直し、大規模開発・新規建設を抑制し、防災・減災の事業、インフラや公共施設の維持・更新事業に、予算の重点的、優先的な配分を行い、人的資源も、建設資材も、優先的に投入できるように、公共事業政策を大きく転換します。

遅れている老朽施設の修繕を急ぎます

 同時に、わが国のインフラ(社会基盤)や公共施設は、老朽化という重大な局面を迎えており、防災対策という面からも、その対策は重要です。道路、橋、トンネルや、学校、公営住宅などの公共施設の多くが、1960~70年代に建設され、老朽化が全国各地で大規模かつ加速度的に進行しています。

 公立小中学校の約7割が、今後15年間に全面改修が必要になります。21年4月までに、小中学校の点検が終わり、ほとんどの市町村で、「長寿命化計画」が策定されています。2033年に建設後50年を経過する道路橋は、建設年度がわかる約50万橋のうち約63%、トンネルでは同じく約1万本のうち約42%にものぼります。18年までに一巡した道路橋やトンネルの点検は、19年度から2巡目に入り、まだ3割程度の点検状況です。

 一巡目(2014年度~2018年度)の点検で「早期に措置を講ずるべき状態」「緊急に措置を講ずるべき状態」と診断された橋梁で、実際に修繕に着工しているのは、国の直轄でも50%、都道府県・政令市では51%、市町村では35%にすぎません。トンネルでは国が76%、都道府県・政令市で69%、市町村で34%です。

 内閣府は、2054年までに維持補修・更新のためにかかる費用は、道路などの土木インフラで399兆円、学校・文教施設や公営住宅などの公共建築物で149兆円、あわせて547兆円にのぼるとする「試算」を発表しており、今後、老朽化対策に巨額の費用が必要になるとしています。ところが、公共事業費の中で防災・老朽化対策の予算は3割程度、河川事業、ダム事業でも、維持・修繕などの老朽化対策は3割程度にとどまっています。

―――ほとんどの自治体が2020年度までに、点検を行って個別の施設ごとの「長寿命化計画」を策定しています。しかし、修繕等の着工は、順調に進んでいるとは言えません。自治体が早期に修繕等に着工、完了できるように財政的、技術的・人的支援を強化します。

―――個別の施設ごとの点検には想定される地震や土砂災害、浸水などの危険性を踏まえた防災力をきちんと評価するようにします。

地方自治体の防災・減災・老朽化対策への国の支援を抜本的に強化します

 防災・老朽化対策は、地方自治体の姿勢と取り組みがカギとなります。学校や公共施設、上下水道はもとより、道路、トンネル、橋、河川なども国の直轄管理は一部でかなりの部分を地方自治体が管理をしています。 

 しかし、地方自治体が、この問題に取り組むには、財政とともに、体制と現場の技術力の確保が必要になっています。自治体リストラで土木・建築技術者も削減され、現場の技術力の低下が指摘されています。

 求められる仕事の量に対して“人も金も足りない”のが実情です。これまで、国は、もっぱら職員を減らすことを自治体に迫ってきましたが、自治体の技術力と職員の確保・育成を国が支援する方向に転換する必要があります。

―――インフラの総点検は繰り返し実施する必要があります。市町村に対し、計画策定と点検費用を国が全額補助するとともに、必要な建設・土木技術者が確保できない市町村には、国の責任で民間の力も借りて技術者を確保・派遣して総点検ができる体制をつくります。

―――地方の要望額の7割程度にすぎない国の防災・安全交付金を大幅に増額します。

―――市町村への国の補助率のかさ上げと、市町村の単独事業となっている維持管理費を補助対象に拡充し、財政難による必要な修繕や防災対策の「先送り」が起きないようにします。

住民参加で、災害に強いまちづくりを

防災安全対策を住民参加で検証し、防災計画の作成・見直しをすすめます

 これまで経験のない豪雨や大規模地震による甚大な被害が起きていますが、“やるべきことがやられていなかった”ことが被害を大きくしたことも明らかになっています。「ダムが洪水を防ぐ」という「安全神話」もあって浸水ハザードマップが作成されていない、河川改修計画があっても工事未着工のまま「放置」されてきた、などの中で大きな被害が起きました。土砂災害は、その9割が危険区域に指定されていた地域で起きていますが、ハザードマップもなく避難誘導や防御策も不十分のまま、多くの犠牲者が出ています。

 また、政府が推し進める中心市街地への開発を集中させる「まちづくり」のもとで、浸水想定区域の一部が集客施設や住宅を誘導区域となっている例も少なくありません。

 災害に強いまちにするためにも、住民参加で、その地域、住んでいるまちの防災安全対策を検証し、住民の意見を反映した防災計画にしていく努力が必要です。そうしてこそ、防災に関する情報を住民が共有することができ、災害時に「命を守る行動」の大前提にもなります。

 政府は、気候変動により激甚化・頻発化する豪雨災害をうけ、ダムや堤防などハード対策を中心にしたこれまでの治水対策を転換し、災害危険区域の開発規制など流域全体を対象にした「流域治水」対策をすすめるとしています。各河川水系で「流域治水プロジェクト」など計画し予算付けも行われています。ダム依存を温存している弱点はありますが、それぞれの計画の内容を吟味しつつ、治水対策を進める必要があります。

―――災害危険個所の調査、防災インフラの緊急点検を行い住民に公開するとともに、ハザードマップの作成、見直しをすすめます。

―――災害の頻発化、激甚化などの教訓をふまえ、これまでの防災安全対策を検証し、地域防災計画を見直します。とりわけ、ダムに依存した河川整備計画は根本からの見直しが必要です。

―――まちづくり計画を防災優先にし、浸水想定区域や土砂災害危険区域など災害リスクが的確に反映されるようにします。

老朽化の現状と災害時の危険度の情報を住民が共有できるように「見える化」します

 インフラや公共施設の老朽化の状況、災害時の危険度を正確に住民に知らせ、住民に「見える化」することが必要です。点検や修繕には、一定の時間がかかったとしても、必要な情報を住民に「見える化」することは、ただちにできるし、やらなければならない問題です。

 ――道路や橋、河川と堤防、学校をはじめとする公共施設、公営住宅など、個別施設ごとに、老朽化を調べる点検の状況、点検ができていないインフラ・施設の場所と要因、点検の結果とそれに基づく保守や維持・更新の事業の計画や進捗状況、災害時の危険度などの情報を住民にわかりやすく提供します。

老朽化を「口実」にした公共施設の乱暴な廃止・縮小ではなく、住民参加の維持・更新の計画づくりを

 老朽化を理由に、学校や公営住宅、公立病院をはじめ公共施設の統廃合計画を強引にすすめようとする事態が起きています。

 国は、各自治体に対して、公共施設の老朽化に対応した「公共施設等総合管理計画」を策定するように指示していますが、その中で、「厳しい財政状況や人口減少」を数十年先まで推計し、公共施設の縮減を「数値目標化」することを求めています。その結果、学校も、保育所も、文化会館や体育館も、役所の庁舎も、いっしょくたにして「公共施設の床面積を70%に削減する」などという乱暴な数値目標が絶対化され、公共施設の統廃合に拍車がかかる状況が生まれています。

 もちろん、建設時から50年以上が経過すれば、公共施設をとりまく地域の状況や住民のニーズに変化があり、機械的にすべての施設をそのまま維持するために更新や大規模な改修をすることはできません。だからこそ、「上からの押し付け」でなく、住民に正確な情報を提供し、住民参加の点検と維持・更新の計画づくりをすすめることが必要です。

―――公共施設縮減を前提にした国の自治体に対する「数値目標」の押し付けをやめさせます。

―――各種の公共施設は、“住民が生活し、地域社会が存続していくうえで重要な役割を果たすとともに、地方再生の重要な基盤”という立場で、老朽化対策、維持・更新事業の計画づくりを住民参加ですすめます。

国民の命と暮らしを守る政治に――公共事業ほんらいの役割が問われています

 そもそも公共事業は、国民の命・安全をまもり、健康で文化的な生活を支える基盤を整備するためのものです。公共性、公平性、採算性を踏まえ、自然環境、生活環境に配慮して持続可能な地域社会に役立つよう、そして、何よりも国民・住民の理解と納得、同意を得る合意形成を前提にして実施すべきです。公共事業政策で大事なのは、国民のいのち・安全、暮らしに必要な事業は何か、何を優先すべきかを見定めることです。いま最優先しなければいけないのは、新規の高速道路や大規模再開発、巨大港湾ではなく、防災・対策や老朽化対策など既存社会資本の維持管理・更新ではないでしょうか。

 防災・減災対策は、公共事業だけではなく、観測体制の強化と住民への正確で的確な情報の提供、消防や自治体など地域の防災力を強化する、災害時に住民の命を守る医療や福祉の体制を日常から整える、被災者の生活と生業の再建を支援する国の制度を抜本的に強化するなど、多岐にわたった対策が求められ、“国土”だけではなく、災害に強い国、災害から命と財産を守る社会にしていく必要があります。

 日本共産党は、地震と津波、台風などの風水害、火山災害など、多くの国民のなかに災害の激甚化・頻発化への不安が高まっている今日、学者・専門家、自治体関係者、被災地のボランティアに取り組んできたみなさんや医療・福祉関係の方々をはじめ、国民の英知を結集して、従来の延長線上ではない抜本的対策を行うことが必要だと考えています。公共事業のあり方についても、公的な分野はもちろん、民間の建設業者をはじめ幅広いみなさんとともに知恵を出し合い、力をあわせていきたいと考えています。安全・安心の防災・減災対策、老朽化対策を抜本的に強化するために、ともに力を合わせることを呼びかけます。

いのちと安全を守る対策

災害からいのち財産を守る防災・減災、老朽化対策事業の重点化

 気候変動による豪雨災害は、岡山倉敷市真備町の浸水被害、愛媛県肱川のダム緊急放流被害のあった18年西日本豪雨、71河川142箇所の堤防が決壊した19年台風第19号、熊本の球磨川が氾濫した20年7月豪雨、21年7月には盛り土が崩落した熱海土石流被害、同年8月の大雨では、防災対策途中に内水氾濫による被害が発生するなど毎年、甚大な被害が発生しています。

 今ほど、激甚化、頻発化する災害に対する抜本的対策が求められています。政府は、18年には重要インフラの緊急点検を実施、3年間で7兆円の事業規模の「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」を打ち出しました。20年には、5年間で15兆円規模の「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策(21~25年度)」を進めています。

 「3ヵ年緊急対策」では、河川の洪水対策としての樹木伐採・掘削(国=約140河川、都道府県等=約2,200河川)に4,700億円、道路の冠水対策(約1,200か所)に1,700億円など具体的な内容でしたが、従来から対策が必要だった箇所で、予算付けされず先送りされてきたところです。

 「5か年加速化対策」は、「激甚化する風水害や切迫する大規模地震等への対策」に12兆3,000億円、「予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策の加速」2兆7,000億円などを内容にしています。「流域治水プロジェクト」など流域全体を視野に新たに計画される事業も含まれています。

 政府は、気候変動の影響により激甚化・頻発化する水害・土砂災害や高潮・高波への対策として、流域全体を俯瞰した流域治水を推進すると治水対策を転換しました。これまでは、河川の流水量をコントロールすることを基本に、ダムや堤防などの整備を中心にしていました。これを転換し、堤防・ダム・砂防堰堤・下水道・ため池の整備、森林整備・治山対策、ダムの事前放流・堆砂対策、線状降水帯等の予測精度向上、グリーンインフラの活用、災害リスクも勘案した土地利用規制等を含むまちづくりとの連携などを推進するとします。

 川辺川ダムの復活などダムに依存する姿勢を残したままですが、「流域治水」への転換は、党としても、かねてから求めてきたことです。確実な実施が求められます。

市民目線でのインフラ総点検など実態・現状把握をすすめ、危険個所の指定公表、ハザードマップ作成など全国ですすめます

 市民目線でのインフラや施設の点検を実施し、浸水想定区域、土砂災害危険区域など災害危険個所の指定と公表をおこない、避難経路等含めたハザードマップを作成し、地域住民に周知徹底することがなによりも重要です。

 西日本豪雨では、広島県はじめ各地で、土砂災害危険区域に指定されていない区域での土砂災害がありました。愛媛県肘川の野村ダムや鹿野川ダムの下流、県管理河川ではハザードマップが策定されておらず、ダムの緊急放流による洪水から避難できず犠牲を生みました。北海道地震の厚真町などの山崩れは、軽石、火山灰の堆積地で、地震の揺れにより、広範囲で土砂崩れが起きました。全国に火山がある国土で、同様の地質、地盤の地域は多くあります。震源地は、活断層が発見されていない地域でもありました。19年、台風19号で決壊した71河川142箇所のほとんどが完成堤防で、前年の緊急点検の対象から外れていました。また、本年7月の熱海土石流被害を受け、人為的な「盛り土」の危険性が改めて認識され、全国の「盛り土」総点検が実施されています。

気候変動による激甚化・頻発化する災害に対応した河川整備計画や防災計画の見直し、まちづくり計画に反映させます

 西日本豪雨など「経験したことのない記録的大雨」による被害が相次ぎ、河川整備計画の欠陥、不十分さが露呈しました。倉敷真備町の浸水被害は、氾濫した小田川と高梁川本流との合流地点の付け替えが10年後で、堤防補強、河道掘削など河川改修の計画が後回しにされてきたため、防げませんでした。

 土砂災害対策は、広島県の災害を機に土砂災害防止法の改正など対策強化されてきたはずなのに、県内での土砂災害が繰り返されています。

 政府は、気候変動などによる経験のない災害に対応した防災安全対策めざし、「防災・減災、国土強靭化のための3ヵ年緊急対策」などで、既存対策の総点検をはじめました。そのうえで、河川整備計画の基本高水流量の見直しなど計画を見直し、強化する方向を示しています。また、浸水や土砂災害など危険区域での土地利用規制など防災まちづくりも徐々に進められています。

異常気象等による経験したことのない大雨、洪水、水害対策の強化を

治水対策の在り方を、ダム建設に頼るやり方から、河川改修等を優先した流域治水対策への転換を確実に実行します

 18年7月西日本豪雨では、異常洪水時防災操作(緊急放流)を余儀なくされたダムが全国で8ダムありました。記録的な大規模広域豪雨で、ダムの洪水調節機能が働かず、下流の流下能力を超える急激な放流を余儀なくされました。

 肱川の野村ダムでは、ダムが洪水から守ってくれるという「安全神話」から、浸水ハザードマップも策定されていませんでした。また、ダム操作も、中小洪水対応の操作規則のまま操作し、大洪水に備えて事前放流して治水容量を増やしていたのに、そのための操作規則を策定していませんでした。ダムの洪水調節機能には限界があり、緊急放流すれば、下流に甚大な被害をもたらしかねません。肱川では鹿野川ダム改造、山鳥坂(やまとざか)ダムに対しては、18年度までの5年間に、376億円の予算を投入していました。いっぽう、堤防など河川改修等には5分の1の約70億円しかなく、堤防等の整備が遅れ、甚大な被害をもたらしました。

 洪水調節機能に限界のあるダム新設や既存ダム再開発に頼った治水対策は根本的に改め、無堤地区の早期解消、堤防強化、河道掘削、樹木伐採などの河川改修、遊水池など流域全体を対象にした治水対策に予算を集中することが必要です。「流域治水」へ転換した政府に、確実な実行を迫ります。

河川堤防の強化へ、ハイブリッド堤防など耐越水堤防の整備をすすめます

 18年西日本豪雨で、倉敷市真備町の浸水被害は、高梁川水系の小田川とその支流の堤防が破堤し、急激な浸水により被害を拡大しました。急激な浸水を避けるため、越水してもすぐに破堤しない耐越水堤防を整備し、避難する時間が確保できる対策を強める必要があります。

 19年台風19号で、71河川142カ所の堤防が決壊しました。これをうけ、千曲川流域治水プロジェクトなどでは、越水しても破堤しにくくねばり強い河川堤防(耐越水堤防)の整備を位置付けました。

 同時に、支流と本流の合流地点付け替え、排水場施設整備などバックウォーターや内水氾濫対策、浸水箇所の嵩上げ、遊水池、貯水池の設置など流域治水対策を強化します。

大雨、地震による土砂災害、山崩れと宅地等の液状化対策の強化を

土砂災害危険箇所の調査・情報公開を徹底し、危険区域からの移転を、補助制度の拡充や危険地の公有地化などの支援で促進します

 全国66万箇所と推定される土砂災害警戒区域や山崩れ想定箇所の危険区域の指定、公表が遅れ、被害を受けた地域が豪雨による土砂災害でも多く見られました。

 土砂災害、山崩れの危険箇所の調査、区域指定を全国で総点検し、危険性の高い箇所については、山の地盤変動を常時観測し、住民に知らせ、早期に避難できるように情報公開を徹底することが必要です。特に危険な箇所からの移転を促すため、移転先のあっせん、費用の支援など援助とともに、危険地の公有化など移転しやすい環境を整える必要があります。また、危険区域への新たな宅地などの開発、住宅等の建築を禁止するとともに、危険区域の管理を個人所有者まかせにせず、土地の買取りを含め、公的管理を強めます。

 避難計画などソフト対策と同時に、砂防ダム等のハード対策を、より効果的に見直し、緊急対策箇所への集中配分など必要な予算確保が必要です。

液状化対策強化へ宅地造成法等の見直し、公的支援の取り組みを強化します

 液状化ハザードマップを作成している自治体は、全国で2割程度です。内陸部での液状化は、川沼等を埋立て、盛土して宅地開発された地盤で発生しており、ハザードマップの作成とともに、地盤改良に対する公的支援の取組みを強化することが大事です。

熱海土石流被害を教訓に、盛り土規制、残土処理法(仮称)の制定を
―――リニア残土の処理計画を総点検、最終処分地未確定の場合、工事着工は認めないなど残土処理ルールを

 21年7月に発生した静岡県熱海市伊豆山の大規模土石流被害は、27人の死者不明者、負傷者3名、全壊家屋128戸という大惨事になりました。崩落した土砂のほとんどが不適切に盛り土された残土で、「人災」だと指摘されています。盛り土は、静岡県土採取等規制条例の許可基準の3倍以上の約50mの高さまで積まれ、産業廃棄物まで混入するなど違法なものでした。

 これまでも山林等に盛り土された建設残土が崩落する被害が相次いでいますが、今回のケースは、自然による土砂災害と違い、人的に違法に盛り土した土砂が崩落したものです。土砂の管理者である事業者、所有者が第一義的に責任を負うべき事案です。と同時に、安全面から事業者等を監視・監督すべき行政の責任も免れません。静岡県は概ね行政責任を認めています。

 不適切な土砂の埋め立てを規制する「残土条例」は21府県が制定していますが、地方自治体の条例では、罰金額が少ないなど違反行為を是正させる強制力に乏しく、事業者の違反行為を食い止められていません。そのため、多くの知事等から条例では限界があるとして、国に対して法制化すべきとの要望を再三行っています。国会でも何度も要請されていました。こうした要求を放置してきた国交省はじめ国の不作為責任は看過できません。

 記録的な大雨により崩落する危険のある盛り土は全国各地に存在しています。メガソーラー造成地の崩落も発生しています。熱海土石流被害を受け、国も緊急点検を実施していますが、危険な盛り土の撤去を含め緊急に対策を講じる必要があります。

―――不適切な土砂の埋め立てなど盛り土の開発を規制する「残土条例」を参考に全国で適用する盛り土規制を法制化します。

 また、建設残土の排出量は膨大で、最終処分場は不足状態が続いています。そのため、トンネル工事などで排出した建設残土の最終処分場が確保できない状態のまま、工事を始めるのが実態となっています。公共工事は、発注者が最終処分場を指定して工事契約する指定処分制度を導入していますが、仮置き場を指定先とすることを認めていたり、請負業者に最終処分を任せる事例も少なくありません。民間工事は、具体の搬出先を発注者が指定しない自由処分のままです。これでは、排出された残土がどこに運ばれるのか分からなくなります。

―――建設残土の処理は、発注者に責任があります。工事発注者が処理に最後まで責任を持つよう残土処理法(仮称)を制定します。

 リニア中央新幹線のトンネル工事では、約5680万㎥、東京ドーム約50杯分という膨大な建設残土が発生するとされていますが、最終処分先が、まだ半分以上決まっていません。南アルプストンネル工事の場合、大井川源流部に近い燕沢河川敷に長さ1㎞、高さ70m規模、総量360万㎥の残土処分が計画されています。大規模崩壊が起これば大惨事につながりかねません。相模原市に予定される車両基地は、高さ30メートル、360万立方メートルを盛り土する計画です。さらに、同市では、山中に100万立方メートルの建設発生土を運び込み盛り土をする農場計画もリニア残土ではないかと不安視されています。

―――リニア残土の処理計画を総点検し、安全確保が不十分な場合、処分地の変更や縮小など計画を見直しさせます。

―――最終処分地が確定しないなど残土の処理方法が不確定なまま、工事着工、継続は認めないなど残土処理ルールをつくります。

海上空港の津波、高潮対策は、民間任せでなく、国が責任もって強化します

 関西空港の台風による浸水被害では、責任の所在があいまいになったことが大きな問題になりました。安全対策は民間まかせをやめ、国、自治体が責任持つようにすべきです。関空の空港島の護岸かさ上げによる高潮対策は、「想定」を超える高潮に対応できなかったといっています。重要設備も浸水を甘く見て地下に設置していました。羽田、中部、北九州など他の海上空港についても、これら甘い高潮対策を根本的に見直す必要があります。台風時に空港島近傍へのタンカー船舶の停泊を禁止する措置をとるなど連絡路の保護対策を強化し、空港内設備の非常時の電源確保等、利用客等の避難、誘導、安全対策も強化する必要があります。

ブロック塀等危険物対策、エレベーター閉じ込めなど建築物の安全、震災対策

 建築物やブロック塀の倒壊、宅地の液状化などの震災対策は、耐震基準の引き上げや耐震改修の強化など緊急対策が必要です。

 大阪北部地震、台風などでブロック塀、看板、工事現場の足場、トタン屋根などの崩壊、吹き飛ばしが相次ぎました。安全な通行路を確保する対策を強化することが必要です。地震でエレベーターが停止、閉じ込め事例も相次いだことから、地震対策として、建築物やインフラ施設の耐震化の対象に加えて、エレベーター等の対策強化が必要です。

ダム・スーパー堤防に頼らない治水対策を

 政府は、「流域治水」に転換するとしていますが、治水ダムの洪水調節機能は有効だとして、ダムに依存する考えは変えていません。新規ダムの建設、既設ダムの機能向上のための修繕などをすすめています。

 なお、利水ダムや電力ダムなど既設ダムの事前放流は、多少の洪水調節を可能にするもので当然必要です。しかし、それとて限界があることを認識して対応すべきことは言うまでもありません。

治水対策としてのダムの有効性そのものを再検証し、ダムに頼らない流域全体での治水対策に改めます

―――既存ダムの洪水調節機能の限界を考慮して、緊急放流操作ルールの見直し、堆砂浚渫など維持管理を進めます。

 近年、雨の降り方が局地化・集中化・激甚化しています。地球温暖化など気候変動による将来の豪雨時の降水量が全国平均で1.1倍、「100年に1度」の大洪水発生は最第1.4倍になるとされています。記録的な集中豪雨が頻発化するもとで、洪水調整力に限界のあるダムに頼った治水対策は根本的に改めることが必要です。

 また、既設のダムは、建設から50年以上経過したダムも多く、機能低下や老朽化がすすんでいます。ダムに土砂がたまる堆砂によって、ダムの貯水機能の低下や洪水時にダム上流が浸水するなど既設ダムによる被害が発生しています。ダム堆砂の浚渫など必要な対策をとるとともに、既設ダムの撤去を含めた検証を実施します。

脱「ダム依存」=「ダムに頼らない治水」の立場で、建設中ダムを見直します
 川辺川ダム、大戸川ダムの復活に反対します
 石木ダム建設工事を即時中止し、住民と無条件で対話するよう求めます

 2009年、民主党政権のもとで再検証を始めた83ダムのうち、もともと必要性のない25ダムを中止しましたが、国や水資源開発が行う八ッ場ダム(群馬県)、サンルダム(北海道)、山鳥坂ダム(愛媛県)、設楽ダム(愛知県)、補助ダムの石木ダム(長崎県)など54ダム建設を継続としました(残り4ダム検証中のまま)。国交省や県など管理・建設主体を事務局に据え、検証メンバーは都道府県など建設推進派だけで実施する再検証のやり方であったため、まともな検証ができたとはいえません。また、本体工事段階のダムや再開発事業のダムを再検証の対象外でした。現在、八ッ場ダムは本体工事が終わり19年度完成しました。また、ダム再生ビジョンとして、新たに10ダムの建設工事が始められています。

 20年7月豪雨で氾濫した球磨川水系で、これまで凍結されてきた川辺川ダムを流水型(穴あきダム)で復活させることを熊本県知事が表明しました。また、滋賀県でも嘉田知事時代に凍結された大戸川ダムを復活させようと動きが加速しています。

―――川辺川ダム、大戸川ダムの復活に反対します。

 長崎県の石木ダム建設計画では、長崎県が反対住民を家屋から排除する行政代執行を強行する動きを見せています。水没予定地域の住民の理解が得られないまま工事を強行することがあってはなりません。日本では、現地で住み暮らす住民を強制的に排除して、ダム建設工事を強行した例はこれまでありません。ダムの建設工事を即時中止し、水没予定地の住民と無条件で対話するよう求めます。

スーパー堤防は事業の廃止を含め根本的に見直し、耐越水堤防による治水対策へ切り替えます

 スーパー堤防は、計画規模を上回る洪水(超過洪水)による堤防の決壊を防ぐ究極の治水対策とされ、首都圏、近畿圏の5河川の下流部、大都市人口密集地域で30年前に整備計画がつくられています。多くの住民が住む地盤をかさ上げするため、土地区画整理事業などと一体にすすめる大規模開発事業となっています。そのため、その整備は遅々として進まず、治水対策としてほとんど機能していないのが実情です。

 スーパー堤防は現実性のない、虚構の事業になっています。現在までの進捗状況では、計画通りの整備では、数百年から千年を超える年数を要します。 

 さらに、国交省は、スーパー堤防に固執し、なぜか、スーパー堤防以外の耐越水堤防工法を認めようとしません。耐越水堤防工法は、現在の堤防をブロック等で包み込み、流水の浸透を防ぎ、越水した場合でも、破堤を防げる可能性の高いことが実証された工法です。宅地かさ上げの区画整理事業なども必要なく、コストもスーパー堤防ほどはかかりません。

 スーパー堤防という存在が、本来の治水対策の推進を妨げる元凶になっているといっても過言ではりません。スーパー堤防に固執する政策はやめるべきです。

 <参考>「ダム建設ありき」を改め、住民参加を徹底し、「流域住民が主人公」の河川行政への転換を求める」(2008年10月22日 日本共産党国会議員団)

大規模開発事業、巨大高速道路

不要不急の大規模開発事業の復活ストップ、新規建設を抑制します

―――“建設さきにありき”の建設計画を根本から見直し、新規建設を抑制します。

 事業中を含む新規に建設されるダムや高速道路、整備新幹線は、多くが約30年前のアメリカの要求に基づく公共投資基本計画や全国総合開発計画をもとに計画されています。高速道路網の高規格幹線道路14,000km、地域高規格道路約7,000kmなどが、全総計画を改定した国土形成計画(08年から)にいまだに盛り込まれています。社会経済情勢の変化に関係なく、建設計画だけを推進するやり方を改めます。

新規の大規模開発事業は、中止・凍結を含めて見直します。事前調査など新たに復活に向けての検討は取りやめます

 リニア中央新幹線をはじめ、川辺川ダム、大戸川ダムなどの復活・事業中のダム、東京外環道(関越道~東名)、新名神高速などの高速道路建設、空港、港湾、整備新幹線など事業中を含む新規の大規模開発事業については、中止・凍結を含めて見直します。

 大規模開発事業の計画を新たに復活させる事前調査や検討も始まっています。関門海峡横断道路(下関北九州道路)、東京外環道(東名~湾岸)や第二東京湾岸道路など巨大道路事業、北陸新幹線(敦賀~新大阪)、四国新幹線など新幹線建設、羽田空港、成田空港や中部空港などの空港拡張計画などの大規模開発事業の調査・検討は取りやめます。

情報公開や住民参加、第3者チェックなどを徹底する「公共事業改革基本法(仮称)」の制定など、大規模開発事業のあり方を根本から見直します

―――情報公開の保障、双方向性の市民参加の保障、環境保全優先性、国と地方公共団体の役割分担、審議会改革、独立・中立の「第三者機関」によるチェック、不正行為の禁止、費用便益分析算定データの公表などを内容とし、既存の公共事業を徹底検証できるようにします。

―――大規模開発事業の新規建設・事業化は、法律制定事項として、国会に諮ります。事業化に向けた事前調査段階から、公平性、透明性を確保するルールを定め、利益誘導や“忖度”など恣意性を排除します。

巨大高速道路の建設計画を見直す

安倍・麻生“忖度道路”、関門海峡横断道路など凍結された巨大道路建設の「解除」は許されません

 安倍政権の国土強靱化政策の流れを受けて、08年度に調査を中止した6大海峡横断道路構想を復活させる動きが出ています。山口県下関市と北九州市を結ぶ関門海峡道路(下関北九州道路)や和歌山県と淡路島を海底トンネルで結ぶ紀淡海峡道路などです。

 下関北九州道路は、地方の調査を18年度で終え、19年度から国直轄の調査に格上げされました。この過程で、当時の塚田国土交通副大臣が安倍首相と麻生財務相の地元の道路であることを「忖度しました」と福岡県知事選の集会で発言。発言は取り消したものの「忖度道路」であることを正直に暴露したものです。

 そもそも、凍結した道路を復活したのは石井国土交通大臣です。安倍内閣の閣僚になる際、下関北九州道路が安倍総理の地元の案件であることは「知っていた」と述べ、そのうえで、関門橋などのバイパス機能をもつなど他の海峡横断プロジェクトとはちがう、と区別。凍結解除の一歩として、地方が行う事前調査に17年度から国の補助を出しました。08年に凍結した冬柴大臣は、財政問題等を理由に「調査は中止する」と言い、事業化をする際は「国会に諮る」「一本一本法律を出す」などと述べていました。財政状況がよくなったわけでもなく、解除する理由もないのに、復活した背景には何があったのか。まさに石井大臣自身が“忖度”していたのではないか。国会の議論では、調査事業の決定過程や決済手続き、稟議経過など野党側の要求にほとんど答えていません。この問題は、自民党政権の利益誘導政治が、恣意的に行われている象徴的な事案です。根本から実態を明らかにし、大規模開発事業の採択過程の公平性、透明性を確保する必要があります。事業の調査段階でのルールを決める必要もあります。

6大海峡横断道路計画など地域高規格道路の候補路線(110路線)を直ちに廃止します

 海峡横断道路計画は、国土形成計画(全国計画)(2015年8月)に、「湾口部、海峡部等を連絡するプロジェクトについては、長期的視点から取り組む」と記載されています。これを含む地域高規格道路の候補路線(110路線)は廃止すべきです。

大都市圏環状道路など高速道路建設への予算の重点化をやめ、高速道路網計画は、白紙を含め抜本的に見直します

 高規格幹線道路整備状況は、総延長計画14,000kmのうち11,906kmが19年3月末までに開通し、整備率は85%です。未開通区間は2,094kmで、すべて整備するとすれば、約17兆円規模(これまでの整備区間の1㎞あたり事業費平均を約83億円として計算)の事業費が今後も必要になります。大深度地下で建設中の東京外郭環状道路(関越~東名)の建設費は、当初1兆2,820億円でしたが、16年5月に1兆5,975億円に増額、20年7月には、2兆3,575億円され、当初の約2倍に膨張しています。さらに国交省は、新たに東京外郭環状道路(東名~湾岸)の検討だけでなく、2000年初めに凍結された第2東京湾岸道路まで、復活させようとしています。

 首都高速などの地域高規格道路は、「計画路線」186路線、約6,950kmのうち約2,200km(16年3月時点)が開通しています。濃飛横断自動車道中津川工区などリニア中央新幹線へのアクセスを名目にした高速道路にも新たな予算をつけています。また、阪神高速の淀川左岸線延伸部や大阪湾岸道路西伸などは、17年度から事業化しています。

―――高規格幹線道路計画は、白紙を含め抜本的に見直します。事業中区間を含め、情報公開、住民参加の徹底を前提にして、計画の不必要なもの、急がないものなど検証します。

―――地域高規格道路でもある首都高速や阪神高速など都市高速道路は、新規・新設を抑制し、大規模修繕・更新など老朽化対策を優先させます。その際、大深度地下化など新規事業と変わらない更新は、道路路線の存廃を含め検証します。

東京外環道(関越~東名)など大深度地下法によるトンネル工事は、安全性が確保できないため中止・凍結します。大深度地下法を廃止します

 20年10月、東京外環道トンネル工事中に起きた調布市住宅地の陥没・空洞化等事故は、「地上への影響は生じない」とする大深度地下トンネル工事の「安全神話」が崩壊したことを示しました。

 事故は、大深度トンネル工事がすすむ中、20年10月に地上部等が陥没し、つづいて3カ所の空洞が発覚しました。陥没前から騒音・振動・低周波音等の被害が発生していました。東日本高速道路(NEXCO東日本)は、21年3月、事故原因について、陥没箇所の下を直径 16 メートルのシールドマシンで掘削する際に、特殊な地盤条件で、特別な作業によりシールド機が砂利等を取り込みすぎたことが原因だと発表し、家屋等の補修費など被害補償、2 年程度をかけ住宅を仮移転して地盤補修する方針を明らかにしています。

 事故原因とされた「特殊な地盤条件」を把握するには、事前のボーリング調査を十分実施する必要があります。しかし、住宅地の地下をボーリング調査するのは困難なため、大深度地下工事は、事前の地盤調査を十分に実施できない不適切な工事にならざるを得ません。

 陥没・空洞事故のみならず、騒音、振動など家屋への影響等を含めて事故原因を徹底究明し、被害者への補償は集団交渉も認めるなど誠実に対応すべきです。

―――騒音、振動など家屋への影響等を含めて事故原因を徹底究明し、被害者への補償は集団交渉も認める誠実な対応に改めます。

 リニア中央新幹線もシールド工法による大深度地下トンネル工事を約50kmにわたってすすめようとしています。JR東海は、外環道の陥没・空洞事故を受け、これまで実施しないとしていた事前の家屋調査を実施することにしました。しかし、事前の地盤調査は不十分なままで、シールド工法は変えず、騒音等に対応するため止めていた夜中も稼働させるなど安全が確保できるとは到底言えないものです。

 大深度地下トンネル工事の安全が確保されないままのリニア工事の着工は認められません。いったん中止すべきです。

―――外環道調布陥没空洞事故を教訓に 安全確保ないままの再開、着工は認められない リニア工事はいったん中止します。

 大深度地下トンネル工事は、大深度地下法に基づく使用認可をうけ実施されます。国土交通省は、大深度地下トンネル工事をシールド工法で実施することで、騒音等の「地上への影響を及ぼすことはない」と説明してきました。2015年当時、国土交通大臣(太田昭宏氏)が「シールド自体が壊れるということがなければ、これは地上への影響というのは生じない」とまで国会で答弁していました。ところが、事故が発生した途端に、「不適切」な工事だったから地上に影響が出たなどとごまかしています。

 もともと、大深度地下利用の指針等では、「施工時に、大量の土砂を掘削した場合、周辺基盤の変位等が生じ、地上に影響を及ぼす可能性がある」と予測していました。シールド工法が「地上への影響を及ぼすことはない」という政府の説明は、まったくのでたらめです。地権者・住民をだましてきたのです。

 大深度地下工事の「安全神話」をふりまく一方で、大深度地下法には工事等の安全確保や乱開発規制などの規定はありません。

 住宅地の地下トンネル工事について、安全確保と地下開発行為の規制、地権者への補償などに関する法令を検討すべきです。

―――大深度地下工事の安全神話は崩れました。住宅地の地下トンネル工事の安全確保、開発規制、補償に関する法令を整えます。

 ほんらい、大深度地下であっても、土地所有者の権利が及びます。開発者等が、トンネル工事等で地下部分を使用するには、地権者の同意や補償が必要となりますが、大深度地下法は、この地権者の同意や補償を不要にし、財産権を侵害する法律です。

 1990年代、大都市部の地価高騰などで土地買収による開発が難しくなったことから、地権者の同意を得る手間や土地収用手続きを省き、土地取得費用もほとんどかからない大深度地下に目をつけ、「通常使用しない空間」「地上に影響を及ぼす可能性は低い」「補償する必要性は生じない」などと喧伝して、これを根拠につくられました。外環道調布陥没事故により、大深度地下法のこの前提も崩れました。

 大深度地下法による工事は、今後、北陸新幹線大阪延伸部(京都区間等)や淀川左岸線延伸部(大阪市内等)でも採用の動きがあります。

 コロナ禍で、東京一極集中の是正や“稼ぐ”都市づくりからの脱却が求められています。大深度地下開発そのものを見直す必要があります。

 地権者の同意や補償を不要にし、権利を侵害する大深度地下法は、きっぱり廃止すべきです。

―――大前提の崩れた大深度地下法はきっぱり廃止します。

 また、これだけ問題のある大深度地下使用を安易に認めた国土交通省の責任も重大です。使用認可を取り消すべきです。

―――大深度地下の使用認可を取り消します。  

高速道路の大規模修繕・更新費用は、新規路線の建設を削減・縮小することで賄います

 05年の道路公団民営化の際、高速道路建設の借金は、2050年までに返済し、その後は無料化する計画でした。ところが、笹子トンネル事故を受け、高速道路各社が試算した老朽化対策に必要な大規模修繕・更新の工事費用は総額約4兆円にのぼり、これが民営化時の債務返済計画に織り込まれていませんでした。そのため借金返済計画を見直して、無料化を先送りしました。

 もともと、大規模修繕・更新費用を想定していなかった民営化のずさんさを物語るものですが、新規路線の建設を削減・縮小すれば大規模修繕・更新費用は賄えます。

建設産業―――建設産業の健全化、建設現場の労働災害なくし、建設労働者の賃上げ、労働条件改善をはかります

工事偽装防止へ、国に監督責任を果たさせます

 建物用の免震・制振用オイルダンパーをめぐり、KYBなどメーカーが性能のデータを改ざんする、レオパレス21、大和ハウス工業などによる賃貸住宅で法違反の不正建築など、相次ぎ不正が発覚しています。建設工事データ偽装など以前から不祥事が相次ぐ建設業界の体質改善に向け、重層的下請け構造の是正、公正な取引環境の整備などと合わせ、国の監査・監督を抜本的に強化します。

 KYBの免震装置偽装や大和ハウスの違反事例は、型式適合認定制度のもとで、完成検査を製造会社にまかせにしていたことが不正の要因でした。レオパレス21の不正は、設計通りの施工を監理・チェックする機能が喪失し、建築確認検査でも不正を見抜けない状態でした。

 これまでも、東洋ゴム工業の免震ゴム性能偽装、三井住友建設と旭化成建材のくい打ち工事偽装、東亜建設工業の地盤改良工事偽装などが相次ぎ、建築・建設業界とその技術力に対する信用・信頼を失墜させています。同時に、国等の検査・監査制度の不十分さも明らかになっています。

 いのちと安全にかかわる製品や工事の性能・品質を、儲けのために改ざん・偽装して販売や施工する企業体質は放置できません。くい打ち工事偽装では、元請会社の杜撰な監理や第1次下請けの「丸投げ」など重層下請け構造が問題になりました。

 地盤改良工事偽装では、発注者の国土交通省が、東亜建設工業の施工不良を現場に立ち会っていながら見抜けませんでした。免震材料の大臣認定制度、くい打ち工法の大臣認定など、‟大臣認定”があれば、再度の検査も必要がない仕組みの弊害も露呈しました。市場競争優先・規制緩和政策が強められる下で、国が‟性善説”に立脚し、検査データ作成や施工管理を企業任せにしてきたことに起因しています。国土交通省の大臣認定制度の見直しや監査・検査の抜本的強化が必要です。

建設現場の労働災害なくし、安心・安全に働く職場環境を整えます

 建設職人、従事者の工事現場での安全を確保するために、設計段階から適正な工期を確保するなどの対策を徹底します。

 新名神高速道路の建設工事現場で16年度~17年度で、以降7件6人の死亡事故が発生するなど、労働災害事故が相次いでいます。工期に間に合わせるため無理を重ねるなどが要因となっています。16年に制定された建設工事従事者安全健康確保推進法(職人基本法)により、一人親方等も労働安全衛生法の適用対象として労災事故対策の強化をはかります。19年の改正建設業法の「著しく短い工期の禁止」など踏まえ、設計段階から適正な工期を確保するなど、建設職人、従事者の工事現場での安全安心を確保する対策を徹底します。

―――労災保険等の法定福利費は、元請け企業に、別枠で支払うよう徹底し、制度化します。

―――じん肺・アスベスト被害者の救済について、労働災害認定基準の大幅緩和、裁判によらず簡易・迅速に救済する「被害者補償基金制度」の創設をめざします。(「2021衆議院選挙/各分野の政策 37、環境(アスベスト等)」参照)

官民ともに、技術の伝承と後継者の育成に力を入れます

―――自治体の技術力確保を--市町村では、自治体リストラで土木・建築技術者が削減され、現場の技術力が低下しています。とくに地方での防災・減災対策、老朽化対策で大きな障害になっている。インフラ維持管理できる技術者がいない市町村が、技術系職員の採用や育成できるよう国が支援します。

―――地域での建設産業の後継者の育成、職業訓練への公的支援--地域建設事業者の担い手不足は深刻、高齢化等による後継者不足がすすむ。後継者の育成は、建設業界の大問題であり、地域での建設職人の育成、職業訓練などへの公的支援強めます。

建設従事者・労働者の長時間労働を是正します

 東京五輪のメイン会場となる新国立競技場の工事現場で働く新入社員が過労自殺するなど建設業界での長時間労働が問題になりました。重層下請け構造の建設業界では、以然として長時間労働が蔓延しています。元請企業に、工期を迫られた下請事業者やその労働者が、長時間労働で対応せざるを得ないのが実態だからです。政府は、18年の国会で強行した「働き方改革」法で、残業時間を月100時間までとする過労死水準を「合法化」しましたが、この上限規制でさえ、人手不足を理由に建設、運送業への上限規制を5年間先送り(2024年4月1日施行)しました。人手不足の建設業界でこそ、長時間労働の是正に本格的に踏み出す必要があります。また、工事現場に多くの事業者に雇用される労働者が混在しているために、長時間労働の実態がわかりにくい状態にあります。現場での労働時間管理を徹底するために、発注者・元請け事業者の責任を明確にする必要があります。

―――週休2日制の導入、民間も含めた適切な工期設定による休日の拡大などの取り組みを推進し、建設工事従事者の長時間労働を是正します。その際、建設工事従事者の収入が減らない方策をとることを含め、発注者・元請け事業者の責任を明確にして取り組みます。

公契約法、条例の制定を促進し、建設労働者の確実な賃上げ、労働条件改善をはかります

 建設産業では、若者の入職が減り、技術継承が危ぶまれています。この危機を打開するため、国交省が、公共工事設計労務単価を2012年度比で、53.5%(平均値)引き上げ、建設業団体にも賃上げ要請を行ってきました。しかし、現場労働者の賃金水準は、改善の傾向にあるものの、末端の労働者まで反映していない実態があります。業界団体に要請しただけでは、確実な賃上げを保証する仕組みがないからです。重層的下請け構造による「中抜き」の常態化の是正、ダンピング受注の排除などが必要です。そのため、末端の一人親方・労働者の適正賃金額や労働条件を決めて元請け業者に支払い等を義務づける「公契約法」や公契約条例の制定を促進します。民間工事についても、適正賃金が支払われる仕組みをつくります。

―――政労使の協議会を設置するなど、建設産業労働者の適正な賃金等に関する話合いの場を設けます。

談合・ダンピングを排除し、重層的下請け構造を改善する公正民主的な発注を

 地域建設業者、中小事業者への直接発注をすすめ、中小業者の受注機会を確保します。大手ゼネコンが地域の公共工事を受注する傾向が強まっています。大手が元請けとなり、実質的な工事施工する地域の中小建設業者が二、三次下請となる構造です。こういう発注を改め、地域の公共工事を地域の中小業者に直接発注すれば、受注業者だけでなく、地域の循環型経済効果を生み出すことになります。

―――発注方式を改善し、中小業者の受注機会を確保します。

    建設業の健全な発展を阻害し、社会的損失をもたらす談合やダンピング競争を防止するには、公共工事の透明性を確保し、国民的な監視ができるよう情報開示を徹底する必要があります。リニア中央新幹線の談合事件を踏まえ、発注者が民間であっても公的支援される事業は、公共工事入札適正化法や情報公開法の対象にします。

―――談合やダンピング競争を防止するため、入札制度の透明性、情報開示を徹底します。

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