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日本共産党

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➡2021総選挙 分野別政策一覧

31、農業・農山村

効率優先の農政を根本から転換し、家族農業を中心に持続可能な農業と農山村を再生します

2021年10月

 国民の命を支え、国土や環境を守り、伝統や文化を育んできた農業と農山村。いま、歴史的な危機に直面しています。農業の中心的な担い手(基幹的農業従事者)が2000年から2020年の20年間で240万人から136万人へ104万人(43%)減少し、その51%が70歳以上です。担い手の減少テンポが加速し、農地の減少と荒廃も広がり、存続の危ぶまれる集落も少なくありません。

 重大なのは、食料自給率が37%と先進諸国で最低に落ち込んでいることです。新型コロナ危機の中で、食料の外国頼みの危うさが改めて浮き彫りになりました。経済効率優先で農山村を荒廃させ、大都市への異常な一極集中を進めたことが、ウイルスに脆く持続不能な社会を生み出してきたことも明白になりました。

 農業と農山村の危機を打開し、再生に踏み出すことは、国民の生存基盤の根本に関わり、日本を持続可能な社会にしていく上で待ったなしの課題です。

農業つぶしを続けた歴代自民党政府の責任

 今日の事態を生み出した最大の責任は歴代自民党政権の農政です。食料は安い外国から買えばいいとして、アメリカや財界のいいなりに農産物の輸入自由化を受け入れ、国内市場を外国産に明け渡してきました。価格保障や所得補償を切り捨て、大多数の農業経営の成り立つ基盤を壊してきたことが農業の担い手不足を深刻化させました。大企業本位の経済成長のために農業・農村から大量の土地と労働力を奪ってきたことも、農山村の疲弊を広げた根本にあります。

 拍車をかけたのが安倍政権の暴走農政です。TPPや日米貿易協定など巨大な自由化を次々に強行したうえ、農業の大規模化や企業参入を優先し、大多数の中小家族経営を切り捨てる路線を突き進んできました。「企業が活躍できる国」を公言し、農協法、農地法、種子法など戦後の家族農業を支えてきた諸制度を次々に壊してきたのです。

 その「継承」を掲げた菅政権も、農山村の危機を打開しょうとする姿勢はまったく見られませんでした。農村が直面する米価暴落の危機に何の対策もとらず、農業者の「自助」による過去最大の米生産削減を押しつけたのは、その典型です。安倍・菅政権を引き継いで誕生した岸田政権にも、農政の転換を期待することはできません。

 いまこそ、農業と農山村を崩壊に導く無責任な政権を終わらせ、家族農業を中心に持続可能な農業と農山村の再生に踏み出そうではありませんか。

家族農業の支援、持続可能な社会は世界の流れ

 その方向はいまや世界の大きな流れです。

 世界はいま、地球環境の悪化や飢餓・貧困の深刻化など人類社会の存続を脅かす危機に直面し、その克服が死活的な課題になっています。国連が、地球温暖化の防止や飢餓・貧困の克服など17項目の持続可能な開発目標(SDGs)を掲げ、30年までの達成を呼びかけているのは、その表れです。その国連が、SDGsの達成など持続可能な社会の実現には家族農業・小規模農業の役割が欠かせないとして、19年から「家族農業の10年」をスタートさせ、各国に支援を呼びかけています。

 21世紀初頭までの世界は、経済効率優先で農業の大規模化や工業化、貿易自由化を推進してきましたが、先進国でも、途上国でも、小規模・家族農業を大量離農に追いやり、農村を疲弊させました。環境との調和を欠いた農業生産を広げ、食の安全や生物多様性を脅かし、環境を著しく悪化させてきました。その深刻な反省から、国際社会は農政の流れの大転換に踏み出したのです。

 新型コロナパンデミックも、食料システムや農林漁業のあり方の転換の必要性を改めて世界に突きつけました。各国はいま、農業の分野でも環境負荷を削減する大胆な目標を掲げ、家族農業を支援する農政改革に乗り出しています。

 食料輸入大国・日本が、持続可能なやり方で農業を再建し、食料の外国依存から抜け出すことは、世界の食料問題の解決でも、地球環境の保全という点からも、国際社会への大きな貢献であり、責任でもあります。

農業を基幹的生産部門に位置づけ、農業と農山村を再生する

 わが国には、温暖多雨な自然条件、すぐれた農業技術、世界有数の経済力、安全・安心を求める消費者のニーズなど、農業を豊かに発展させる条件は十分にあります。コロナ危機を体験する中で農業と農山村の価値が見直されています。都市の若者が農山村に移住、就農する「田園回帰」の流れが広がっていることも農山村再生への希望です。 

 必要なのは、国際的にも異常な「市場まかせ」の農政を根本から転換し、そうした条件を全面的に生かす政治です。農業者や地域住民、農村の役割に期待する多くの国民が共同し、豊かな自然や社会的な蓄積を活かしきる農政の実現です。

 日本共産党は、農業を国の基幹産業に位置づけ、農業と農山村の再生のために全力つくします。農業・食料政策の大きな目標を次の点に置き、実現に力をつくします。

 ●食料の外国依存をやめ、自給率の向上を国政の柱に据え、早期に50%台を回復し、引き続き60%台をめざす

 ●競争力・効率一辺倒ではなく、国土の多面的な利用、環境・生物多様性・食の安全に配慮した持続可能な農業をめざす

 ●大小多様な家族経営が営農を続け、暮らし続けられる農山村をめざす。新規参入者や移住者を積極的に受け入れる

 ●米・麦・野菜・果樹などと畜産が結びついた耕畜連携の農業、水田の多面的利用をめざす

 ●農林業の生産や加工・販売など地域の資源を生かした循環型の経済で農山村での雇用や所得の機会を増やす

価格保障・所得補償を再建・充実し、若者が安心して農業に励める土台を整える

 大多数の農業者が営農を続け、暮らしの成り立つ土台を整える――いまわが国の農政に何より求められることです。若者が安心して農村に住み、就農できる最低の条件でもあります。最大の柱は、価格保障を中心に各種の所得補償を組み合わせることです。

 動植物の生育や気象条件に左右され、多数の中小経営によって担われる農業生産は、市場まかせでは維持できません。なかでも生産費をつぐなう農産物の価格保障は、農業者に再生産を保障し、意欲と誇りを取り戻すうえで、決定的条件です。

 農業大国の米国でさえ、主な農産物に、販売価格が生産費を下回った場合、その差額を補填する仕組みを二重三重に整え、農業経営を下支えしています。EU諸国では農産物の価格支持制度を維持したうえ、環境の保全や条件不利地の維持などに配慮して手厚い所得補償を実施し、農業と農村を守っています。

 日本共産党は、品目ごとの価格・経営安定制度を、生産費にみあう水準に抜本的に改善・再建します。国土や環境の保全など農業・農村の多面的機能を評価して各種の直接支払い(所得補償)を充実します。その際、所得補償が大規模経営に集中するのを避けるため中小規模経営への配分を手厚くします。

米価下落の不安をなくし、米生産と水田農業の安定をはかる

 政府が米を市場まかせにした95年以降、米価の下落傾向が続き、94年産で全国平均で1俵(60㌔)2万2000円台であったのが20年産では1万4,000円前後に低下しています。一方、1俵あたりの米生産経費は平均で1万5,000円を超え(農水省調査、19年)、米農家の大多数は赤字生産を強いられています。95年と比べて19年の米の総産出額は約1兆4,000億円減少していますが、この額はこの間のわが国の農業総産出額の減少の9割を超えており、米収入の落ち込みは農村経済を衰退させる重大な要因となってきました。

 米作経営をいっそう不安定にしたのは、安倍政権が18年から強行した米の生産調整からの撤退と米直接支払交付金の廃止です。米交付金の廃止は、全国の米農家から年間総額714億円(17年産)の所得を奪い、大規模経営ほど深刻な打撃を与えています。

 そしていま、コロナ禍と政府の無策による米価の大暴落が襲っています。農協が、"出来秋"に農家に支払う概算金は前年比で軒並み2~3割下落し、1万円を切る銘柄も続出です。「このままでは米作りは続けられない」という悲鳴があがるのは当然です。

21年産の大暴落を回避する緊急対策を実施する―――コロナ禍で発生した大量の過剰在庫は農業者に責任はありません。米消費の1割に及ぶミニマムアクセス米の輸入を続けながら、農家には史上最大の生産削減を押しつけるだけの無責任な政府のもとでは、21年産にとどまらず22年産でも米価暴落が広がるのは必至です。

 21年産の大暴落の危機を打開し、米価を回復させるため、コロナ禍で生じた過剰在庫を国の責任で買い上げ、市場から切り離す緊急対策を実施します。

買い上げた米を生活困窮者等に無償で提供する―――コロナ禍の中で、米を食べたくても食べられない生活困窮者が増えています。米国では農務省予算10兆円使って余剰農産物を買い取り、貧困者を支援しています。政府が買い上げた米をコロナ禍で苦しむ生活困窮者や学生、子供食堂などに無償で提供する仕組みを作り、国民の暮らしを守りながら、米需給の安定もはかります。

米の需給や価格の安定に政府が責任はたす―――主食である米の需給と価格の安定は政府の責任です。豊作による余剰米が発生した場合、備蓄米の買い入れ量を増やし、年間を通じて計画的に集出荷・販売する業者・団体に金利・倉庫料などを助成します。

米価に「不足払い」制度を導入し、戸別所得補償を復活する―――米農家に生産費を保障するため、過去5年の生産コストの平均と販売価格との差額を補てんする「不足払い制度」を創設します。当面、野党が提案している戸別所得補償を復活します。

ミニマムアクセス米の輸入を削減・廃止する―――国内で必要のないミニマムアクセス米の輸入はきっぱり廃止します。WTO協定上は最低輸入機会の提供にすぎず全量輸入は義務ではありません。当面、「義務」輸入は中止します。

水田での主食用米以外の増産に力を入れる―――水田を主食用米以外の生産に活用することは水田の多面的利用、食料自給率の向上に欠かせません。農村景観の維持や治水の観点からも水田の維持・保全にたいする支援は重要です。飼料用稲の生産拡大とともに水田の乾田化・汎用化とあわせて、麦・大豆・飼料作物などの増産に思い切って取り組みます。主食用米との収益性の格差を是正するため、水田活用交付金を拡充します。

畜産・畑作などへの支援を強める

 肉用牛肥育経営安定交付金(牛マルキン)・肉豚経営安定交付金(豚マルキン)を国の全額負担による生産費を補填する制度に改善します。現行の野菜価格安定制度の対象品目や産地を拡大し、保証基準価格を生産費にみあう水準に引き上げる、事務を簡素化するなどの改善・充実をはかります。

 麦・大豆などは生産費と販売価格の差額を補てんする交付金制度を復活し、充実させます。国産麦を活用したパンや加工品の学校給食での普及を支援します。麦・大豆・ソバ・ナタネなどの増産を生産技術・流通・需要の面から支援を強めます。

農業の多面的機能に着目した所得補償を拡充する

 農業者は、農産物の生産のなかで農道や水路の整備、草刈りなど環境や景観を守り、災害を防ぐなどの多面的な役割も担っています。いわば国土の無償の管理人です。農業者のこうした労働を正当に評価して水田・畑地・樹園地などに応じた所得補償を実施します。

 中山間地域等直接支払い制度は、農業の条件不利の補正にとどまらず過疎地での集落の維持にも大きな役割を果たしてきました。しかし、5年間の耕作継続を要件とするため高齢化が進む中で申請を断念する集落も現れ、荒廃が一気に進む事態も生まれています。これを回避するためにも、条件不利の補正にとどまらず中山間地域に居住すること自体を支援する性格(居住地手当的なもの)も加え、抜本的に改善します。

価格暴落や災害に見舞われた経営を下支えし、再建を全面的に支援する

 現行の収入保険制度は、対象を青色申告者に限ったうえ、価格下落が続けば、基準収入も下がり、加入者の安心を保障するものとは言えません。対象の限定をやめ、農業者の保険料負担を軽減し、基準となる収入も生産コストと関連させるなどの改善をはかります。

 農業共済事業は品目の実態に即して引き続き役割が維持されるよう加入者の促進、事務費の援助などを行います。加入率の低い果樹、施設共済などを利用しやすく改善します。

 異常気象による災害が多発し、農地や農業機械、農業施設が失われるなど甚大な被害が毎年のように発生しています。「災害による離農者を一人も出さない」ことを基本に、被災農業者に発生地域や規模に関わりなく復興・再建を支援する制度を日頃から整えます。

種苗の公共性を重視し、農業者の権利をまもる

 種子は農業にとって基本的な資材です。主要農作物種子法を復活し、主要な種子の開発・普及に公的機関が責任を持ち、優良で安価な種子の供給を保障します。種苗の開発者の権利に配慮しつつも、自家増殖は農民の権利と定めた国連「農民の権利宣言」を踏まえて、伝統的な農業や地域品種など多様な種苗を掘り起し、広げることを援助します。

消費税を5%に引き下げる

 消費税は、農業者にとって、生産費の上昇分を農産物価格に転嫁できず、赤字でも身銭を切って払わなければならない営農破壊税です。一昨年からの10%への増税でその性格はますます強まっています。コロナ禍で国民の暮らしを守るため世界各国で消費税減税を実施しています。わが国でも、当面、消費税を5%に引き下げます。

 23年から導入される消費税のインボイス(適格請求書等保存方式)制度によって、約9割が免税業者であった農業者の多くが取引から排除されるか、課税業者への転換を強いられます。農業者に大きな負担を強いるインボイス制度の導入を中止します。

家族農業を中心に多様な担い手の確保・育成に総力をあげる

 わが国の農業を長く支えてきた世代の引退が加速し、後継者のいない農家や集落が広がっています。次代の農業をだれが担い、食料生産や農村地域をだれが担うのかは、日本社会が真剣に向き合うべきまったなしの課題です。

 歴代政府は全国の農地の8割を大規模経営に集積する目標を掲げ、農業の大規模化・法人化に力を入れてきました。条件の恵まれた地域の一部では大規模化が進みましたが、最近では、大規模経営も主たる働き手が高齢化し、後継者不在で営農断念に追い込まれる例が増えています。政府の支援で増えてきた集落営農も解散が広がっています。

大小多様な家族経営の育成・支援を基本にする―――減少してきたとはいえ、わが国の農業経営の98.5%は専業や兼業など違いはあっても大小多様な家族経営です。今後の農業の担い手政策も、この現実から出発する以外にありません。農業生産や地域の環境、景観の保全、伝統・文化の維持などは数多くの中小農家が存在してこそ守られます。

 農業の担い手政策の基本を、効率化・大規模化一辺倒から大小多様な家族経営が数多く存続できる方向に転換します。政府の各種補助金や「経営安定対策」は大規模化や法人化を条件にせず、地域の「続けたい、やりたい人(法人を含む)」すべてを対象にします。中小農家や新規参入者への小規模な機械・施設のリースなど自治体や農業団体が行う事業を抜本的に拡充します。各種の農業補助金について中小農家に優先枠を設けます。

地域農業を支えている大規模経営・集落営農を支援する―――大規模経営や集落営農が離農者の農地を預かって耕作し、地域農業を支えているのも現実です。その大事な役割が継続できるよう農業機械・施設の導入・更新などへの助成、リース制度の拡充、土地改良負担を軽減します。地域の自主性を尊重しながら、複雑な資金管理や実務が負担にならないよう、行政や農協による支援を強めます。集落営農などへの支援は、農業経営としての効率化や低コスト化だけではなく、集落の持続性が維持されることも重視します。

「新規就農者総合支援法」を制定し、新規就農者の確保・育成に総力をあげる―――農山村に移住し、集落の農業や地域づくりに参加する都会の若者や退職者が増えています。人間らしい暮らし方や働き方を農業・農村の多面的価値に求める動きも広がっています。農家や集落内での世代継承が困難になる地域が増えている中、都会の側でのこうした変化をも踏まえて、Uターン者やIターン者など新規参入者の確保・育成に社会のあらゆる力を結集して取り組みます。そのために「新規就農者総合支援法」(仮称)を制定します。

 新規参入者への独自の支援策を強め(農業次世代人材投資資金の拡充など)、営農定着までの生活費の支援、研修・教育機関の整備、農地や住宅、資金、販路の確保などに国・自治体・農業団体などが一体となった総合的な支援体制を確立します。

 専業的就農者だけでなく半農半X、市民農園や体験農園、学校・福祉農園など多様な形態で「農」に関わるグループ・個人も多様な担い手として位置付け、支援します。

 農業法人に雇用される形で就農する人も増えています。農の雇用促進事業を拡充し、就農希望者を雇用する大規模経営や団体を支援し、雇用の面からも就農を広げます。

 定年帰農者などに小規模な農機具、施設のリース制度などを創設します。中山間地への移住者にたいし、営農と暮らしの両面から特別な支援を行います。

農業公社などへの支援を強める―――地域内での担い手がいない中山間地などで農協や市町村などの出資する農業公社が耕作を引き受け、中小農家の維持や農地の保全、新規参入者の支援に努める場合、その経費を国が援助します。

総合農協の役割を重視する―――中小農家の経営が成り立つためには、農産物の共同販売や資材の共同購入などが欠かせません。担い手の育成、集落営農への支援、資金の確保、生活物資の供給など農村社会のインフラとしての総合農協の役割も重要です。

 政府の規制改革推進会議などが執拗に持ち出す、単位農協からの信用・共済事業の分離、准組合員制度の見直しなどは、総合農協を解体に導き、農業・農村市場への農外企業の進出の道を広げるためのものです。このような財界主導の農協「改革」のおしつけに反対し、農協の自主性・独立性を尊重、組合員・役職員が力をあわせて協同組合としての原点に立った役割を果たせるよう、国や自治体も協力し、支援します。

農外企業による農地取得・利用を監視する―――農地リースで農業に進出する農外企業が増えていますが、もうけ第一ではなく農地や環境の保全、地域農業の振興などに役割を果たすよう求めます。国家戦略特区で例外的に認められてきた一般企業の農地所有を全国に広げることは耕作者の権利を最優先する農地法の理念を解体するもので、反対します。

食料主権・経済主権を保障する貿易ルールを

 米国の農業経営の平均規模はわが国の62倍、オーストラリアは1000倍以上です。途上国の賃金・所得水準は数分の1以下です。隔絶した国土・社会経済条件を背景とする安い外国産との競争を野放しにしてわが国の農業は成り立つはずがありません。「国内対策」で自由化の打撃を防げないことは、これまでの歴史が雄弁に物語ります。

 農業と農山村の本格的な再生、食料自給率の回復・向上には、際限のない自由化路線をきっぱり転換することが不可欠です。各国が、輸出のためでなく自国民のための食料生産を最優先し、実効ある輸入規制や価格保障などの食料・農業政策を自主的に決定する権利=食料主権が保障される貿易ルールを確立することです。

 食料主権の重要性はコロナ危機でいっそう鮮明になりました。主要な食料輸出国が相次いで輸出規制に踏み切ったのは緊急時に自国民の食料確保を優先した行動です。そうである以上、輸入国が国民の命を守るために日ごろから食料増産に必要な措置=輸入制限、農業保護政策をとることも正当な権利として認められるべきです。

WTO農業協定を廃止し、食料主権を保障する貿易ルールめざす―――農産物の貿易自由化・拡大を理念とするWTO農業協定は、輸出大国や多国籍企業に利益をもたらす一方、日本のような輸入国や途上国の農業に大きな打撃を与えました。加えて、輸出国でも地下水の浪費、農薬・化学肥料の多投によるモノカルチャー生産、遺伝子組み換え農作物の増大、抗生物質に依存した畜産、森林伐採など持続不能な生産を広げてきました。

 国連食料の権利特別報告者は昨年7月、WTO農業協定は、すべての人が文化・栄養・環境的に適切な食料を入手する権利の実現の障害になっていると批判、段階的に廃止し、尊厳・自給・連帯に基づく新しい食料協定の締結交渉を求める報告書を提出しています。

 WTO農業協定を廃止し、食料主権を保障する貿易ルールをめざします。

TPP協定などの自由化協定をストップする―――TPP、日欧EPA、日米貿易協定などは、自由化の水準をWTO農業協定から格段に広げ、わが国の農業の存立基盤をいっそう掘り崩すものです。遺伝子組み換え食品の「貿易促進」、食品検疫の簡素化、食の安全基準の統一なども盛り込まれています。わが国農業と国民の利益を根本から脅かすこのような貿易協定は離脱、廃棄し、二国間・多国間の貿易・経済連携は、各国の多様な農業の共存、食料主権・経済主権の尊重を基本に進めます。

 21年国会で批准されたRCEP(地域的包括的経済連携)協定は、自由化水準がTPPなどと比べ低いとされますが、野菜・果実の多くで関税撤廃を約束しており、農産物自由化への新たな一歩であることは否定できません。RCEPの批准の撤回を求めます。

輸出拡大でなく国内供給に重点を―――自公政権は、農林水産物の輸出拡大を成長戦略の柱に位置づけますが、輸入自由化で足下の国内市場を外国産に奪われることから目をそらした議論です。個々の産地や農業者などの輸出拡大の努力を政府が支援することはあっても、食料輸入大国の日本が力を入れるべきは国内需要を満たす農業生産の拡大です。

農林業に基盤をおいた地域循環型の農村振興をめざす

 農業者が安心して営農を続けるためには、農業振興策とともに生活基盤の整備など総合的な農村振興策が欠かせません。歴代政府の農村政策は、農林業の衰退を放置し、企業誘致や公共事業、大型開発などへの依存を続けてきましたが、企業の海外進出、公共事業の減少などですでに破たんしています。大企業優先の産業・国土政策を転換し、農林業に基盤を置きながら、農外の兼業所得や雇用の維持にも取り組みます。

地域の資源を生かした循環型の地域づくり―――農山村には、新鮮で安全な農林産物、地域の食文化、田園景観、伝統的な祭りや芸能、生活技術など都会にない豊かな資源、営み、文化が蓄積されています。農山村の振興は、地域資源を生かし、農林業を中心に農産加工や販売、観光、ソーラシェアリングなど再生エネルギーの活用で循環型経済をめざします。子育てや福祉・介護への支援を強めて、地域での雇用や働く場を確保します。

都市住民との共同・交流・移住を進める―――近年、農山村の価値に共感し、訪問・交流、移住する都市住民が増えています。NPO法人「ふるさと回帰支援センター」に寄せられた移住相談件数は10年間で13倍に増えています。都会の若者が過疎地に移住し、地域づくりを支援する「地域おこし協力隊」も09年の89人から18年には5300人に増え、「若者が来て元気になった」という過疎集落も生まれています。

 「田園回帰」の動きへの支援を強め、都市との共同・共生のなかで農山漁村の再生をめざします。「地域おこし協力隊」を5年後には当面1万人をめざします。

過疎集落への支援を思い切って強化する―――高齢化が進んでいる過疎集落に対しては「山の駅」(仮称)など地域にあった生活拠点をつくり、コミュニティバスの運行、「集落支援員」の配置などで地域住民の生活に不可欠な最低条件の整備に努めます。

有害野生生物対策を抜本的に強める―――増え続ける鳥獣被害は、農業者の生産意欲を失わせ、集落の衰退に拍車をかけています。当面、鳥獣の生態や繁殖条件の調査を国の責任で行い、増えすぎた鳥獣を適正な密度に減らす地域の取り組みを支援します。鳥獣が里山に下りずに生息できる森林環境を整備するとともに国の鳥獣被害対策交付金を大幅に増やし、防護柵・わなの設置、捕獲物の利用などの取り組みへ援を強めます。

都市農業を振興し、農地税制を抜本的に改める―――都市内の農地は積極的に「保全すべき」ことを明確に打ち出した都市農業基本法の理念を定着させるため、固定資産税、相続税における課税評価を、現に農業が営まれている農地は農地評価を基本にします。農地に準じた課税を、農作業場や屋敷林、市民農園などにも拡大します。

 全国の生産緑地の8割の期限が切れる22年以降、新たに制定された特定生産緑地制度の趣旨を農業者に徹底し、申請・適用を進めます。都市内の農地の基盤整備、直売所の設置、地産地消、学童農園、体験農園などの取り組みを支援します。

農政における自治体の裁量を強める―――自治体の大型合併などで農林担当の職員が減少したうえ、国の農業施策が縦割りで複雑な手続きを求めることも、実態に合った農業・農村施策の推進を困難にしています。国の農政の裁量を大幅に自治体に委ねるとともに、自治体の予算や体制面での支援も強め、きめ細かな支援策が可能になるようにします。

環境や食の安全に配慮した持続可能な農業を広げる

 地球環境の保全でも、コロナ危機の経験からも、自然との調和を欠いた大規模な農業や畜産、食料供給のあり方が問われ、その転換が国際的な課題になっています。

 化学農薬や化学肥料に依存する工業的農業から、農業の営みを生態系の物質循環の中に位置づけ、生物多様性と地域コミュニティを重視するアグロエコロジーへ転換する動きも世界で広がっています。

 自公政権は今年5月、2050年にはCO2排出実質ゼロ、農薬の50%削減、有機農業を耕地面積の25%にするなどを盛り込んだ「みどりの食料システム戦略」を打ち出しました。中心的な手法として強調されているのは、ロボット化、IT化、生物農薬など“次世代”先端技術の開発・活用です。農業者の長年の実践で蓄積された有機農業などの技術や考え方を土台に据える姿勢はみられません。環境悪化を生み出した大規模化、効率優先の農政の基本は維持したままです。

 日本共産党は、環境や生態系、食の安全に配慮した持続可能な生産や流通、消費の拡大を農政の重要な柱にすえて取り組みます。

環境にやさしい食料の生産・流通を広げる―――化学肥料や農薬を減らし、作物残さなどを再利用し、生態系と調和した地域循環型の農業を推進します。単一作物や同一品種の連作ではなく、多様な作物や種子の栽培を通じて生物多様性を保全します。

 そのための技術研究・開発を、現場の技術のほり起こし、普及を支援します。環境保全型農業の取り組みに対する所得補償(直接支払い)を抜本的に拡充します。

有機農業を飛躍的に拡大する―――有機農業は、化学肥料や農薬の使用禁止だけでなく外部資材の投入を極力抑え、作物の生命力や生態系に依存した循環型、低投入型でエネルギー効率のいい農業として推進します。有機農法の習得・転換に必要な研修、収益の不安定期への手厚い所得補償、農業高校・大学・研究機関での有機農業の理念や技術についての研究・教育などを支援します。有機農業の振興に地域として取り組む自治体を国が支援します。有機農産物の販路、消費を広げるため学校・保育園・幼稚園等の給食の食材に無償で提供します。

農業技術の開発・普及は農家所得の向上を基本にする―――ロボット化、IT化、バイオ技術の活用など自公政権が推進するスマート農業は、農業者の労働を軽減する面はありますが、農業所得の多くが外部のIT企業や機械メーカーに吸い取られ、農作業が関連企業の支配下に置かれ、田畑から人がいなくなり、農村の荒廃に拍車をかけることになりかねません。農業技術の開発・普及は「先端技術」に偏るのではなく、農業者の蓄積された技術と科学を結び付け、持続可能な農業や地域の振興に重点をおきます。先端技術の開発・普及も、中小農家の経営に役立ち、農業者の所得が増大し、多くの農家が集落に残れることを基本に進めます。

大規模化・工場型の畜産を見直す―――大規模化に偏重した畜産政策は、輸入飼料に依存する畜産を広げ、地域の環境を悪化させ、農家に過重な労働や過大な投資を強いてきました。抗生物質の多投による薬剤耐性菌の増加、成長ホルモン剤の使用による人の健康の不安も広げました。畜産政策の基本を日本の大地に根ざした中小家族経営を重視する方向に転換し、施設や機械に対する補助金も見直し、巨大な投資を抑えます。

 放牧主体の酪農や畜産経営は地域の環境や景観を守り、教育や観光などにも重要な役割をはたしており、特別の支援を強めます。飼料作物の増産を支援するため、水田・畑・採草地への直接支払いを拡充し、飼料用米の保管・流通施設など飼料の広域流通体制を整備します。

残留農薬等の基準を厳しくする―――米国産小麦を原料とする学校給食パンから、米国の裁判で発がん性ありとされた除草剤(グリホサート)が検出され、大きな問題になっています。日本政府は、米国の要求にこたえ、その残留基準値を大幅に緩和(小麦6倍など)しました。環境への影響が大きい「ネオニコチノイド系」農薬の残留基準値も、国際的な流れに逆行して大幅に緩和しています。健康や環境へのリスクが懸念されるこうした農薬等について「予防原則」に基づいて厳しく規制します。輸入食品の残留農薬検査を強化します。

遺伝子組み換え食品、ゲノム編集食品への規制を強める―――遺伝子組み換え食品の承認検査を厳密にし、遺伝・慢性毒性、環境への影響に関する厳格な調査・検証・表示を義務づけます。ゲノム編集技術についても、食物アレルギーなど食の安全や生態系の影響などの懸念も指摘されており、実用化にあたっては、「予防原則」の立場に立って遺伝子組み換え食品と同等の規制を求め、表示も義務付けます。有機農産物の認証にあたっては、遺伝子組み換えと同様、ゲノム編集技術も禁止します。

牛成長ホルモン投与の米国産牛肉の輸入を規制する―――EUが、乳がん発生リスクがあるとして輸入を禁止している成長ホルモン投与の米国産牛肉を、わが国は、国内では使用を認めていないのに無検査で大量に輸入しています。国内で認めていない成長ホルモンなどを使った外国産牛肉は、EUなみに輸入を禁止します。

豚熱の蔓延、鳥インフルエンザの発生防止に万全を期す―――豚熱、鳥インフルエンザなど家畜感染症の発生の影響を最小限にとどめるよう、国の責任で監視体制を強めます。被害農家には、経営再開に向けて万全の補償を行います。豚熱のワクチン接種や飼養衛生管理の施設整備費を支援し、農家の負担を軽減します。

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