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日本共産党

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赤旗

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28、金融

破たんした「異次元の金融緩和」をやめ、国民の暮らし、中小企業を支える金融政策に転換します

2021年10月

破たんが明白になった「異次元の金融緩和」路線を転換します

 日本銀行は2013年4月より、「アベノミクス第一の矢」として、民間銀行の保有する国債等を買い上げ、大量に資金を供給する「異次元の金融緩和」を進めてきました。この大量の資金供給に期待した投機的な動きが活発化したことにより、円安と株高が急速に進みました。この結果、富裕層や大企業には巨額の利益がもたらされました。

 アメリカのフォーブス誌の集計によると日本の大富豪の資産は2012年には6.1兆円でしたが、直近では24兆円と、9年間で4倍にも膨らんでいます。

  自動車などの大企業は史上最高益の水準を確保し続け、内部留保は467兆円(2020年度末)を超えました。

 政府と日銀は、「異次元金融緩和」によって大量の資金を供給すれば、インフレ期待によって物価が上昇し、経済の好循環が生み出され、デフレ打開につながるとしてきました。しかし、大企業や富裕層の利益は増えたものの、賃上げはわずかにとどまり、消費税増税によって実質賃金は逆に低下し、消費は冷え込みました。

 さらに超低金利の長期化で、家計の利子所得は大きく減少しています。2017年度は5.7兆円で、「ゼロ金利政策」直前の1998年度比で10兆円以上、91年度比で30兆円以上減り、その分、低利で多額の資金調達ができる大企業への所得移転が起きています。

 国民の消費が低迷するなかで、いくら日銀が民間銀行に大量の資金を供給しても、それが企業の貸出にはつながらず、民間銀行にたまる一方でした。銀行等が保有する日銀当座預金の残高は、安倍政権発足前の40兆円規模から、直近では534兆円(2021年8月末現在)まで増加しています。

 実体経済が改善されず、株価の下落傾向も生じる中、「異次元金融緩和」路線の行き詰まりが明らかになってきました。日銀は2016年に、「マイナス金利」という異例の措置に踏み切りました。日銀当座預金の一部にマイナス金利を適用することで、さらなる金利低下と融資の活発化を狙ったものですが、金利は低下したものの、貸し出しが活発化することはなく、むしろ、銀行がマイナス金利による損失を顧客にしわ寄せするとか、国債等の金利低下で資金運用が困難になるなど、弊害の方が強くあらわれる状況となっています。

 一方、大量の国債を買い続けてきた結果、日銀が保有する国債等残高は、2021年6月末で約540兆円(国庫短期証券を含め)に達し、国債等残高(約1,124兆円)の44%にもなっており、財政を日銀が事実上「丸抱え」する異常な状況です。これは、高インフレなど経済混乱を招く危険性があるとともに、財政の浪費をいっそう推進するものです。

 日銀は、異次元の金融政策の一環として行われていたETF(指数連動型上場投資信託受益権)の買入れを、新型コロナによる経済危機への対応で昨年3月、6兆円から12兆円に増額しました。さらに、今年3月には「買入の上限を12兆円」とする枠組みは残したまま「年間6兆円を目安に増額する」という従来の方針は廃止しました。その後は買入を株価大幅下落局面に限定し、まさに株価つり上げ策としての性格を鮮明にしました。日銀のETF保有残高は約36兆円(21年3月末、時価)に達します。日銀のETF買入れのタイミングは、おおむね株式市場で株価が下落傾向の時で、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の株式投資とあわせて、株価の買い支えの役割を果たしています。この結果、株価の暴落が起これば日銀が債務超過となるリスクが高まっています。

 破たんが明らかとなった「異次元の金融緩和」路線からの転換を図ります。

中小企業と地域経済を応援する金融行政に転換します。コスト削減本位の地方銀行再編に反対します。

 自民党政府は従来から、コスト削減・利益本位の銀行再編を進めてきました。「地方銀行の数は多すぎる」とする菅前政権以来、その圧力がいっそう強まり、金融サービス・利便性の低下が懸念されています。民間調査では、今後全体で一千もの銀行店舗削減が計画され、具体化が進む地域では住民から反対の声も上がっています。銀行の統合・再編はあくまで当事者の自主的判断で行われるべきであり、コスト削減、利益本位の再編は直ちにやめるべきです。

 安倍政権は「異次元金融緩和」をすすめる一方で、中小企業の資金繰りを支える制度は相次いで打ち切ってきました。緊急保証制度は2012年10月末、金融円滑化法は2013年3月末で打ち切られました。中小企業にとっては「金融緩和」どころか「金融引き締め」が実態です。

 もともと、中小企業向け貸出は減少傾向にありました。民間金融機関による中小企業向け貸出残高は、2001年3月の約293兆円から、2017年12月には255兆円へと38兆円も減少していました(中小企業白書)。その後、「異次元の金融緩和」で日銀が民間銀行に巨額の資金を供給したにもかかわらず、貸出の増加はわずかばかりです。景気回復が広がらない中小企業などの資金需要は弱く、唯一貸出しが増えたのが不動産投資向けの貸出でした。

 不動産向け貸出は、2018年6月末時点でかつてのバブル期を上回る過去最高の水準となりました。その先頭を走っていたのがスルガ銀行です。シェアハウス投資を含む不動産投資への融資に傾注、不動産会社と結託し不正行為により投資勧誘を拡大しました。一時は金融庁から「優等生」との評価を受けたものの、事業計画の破たんから多くの債務者が返済不履行となり、債務超過に陥りました。

 民間金融機関は、短期的な利益を最優先して、「直近決算期の売上高」など、限られた数値だけをモノサシにして機械的に融資の可否を決定するようになっています。さらに、多くの金融機関では、IT技術を取り入れたAIによる貸出への移行を進めており、ますます、金融機関が本来発揮すべき「目利き」能力、審査能力の喪失が懸念されます。

 金融円滑化法の期限到来後も、中小企業の貸し付け条件の変更の申し込みに対する実行率は、9割を超えています(2017年度)。金融機関の中小企業に対するコンサルティング機能の強化を推進します。

 いま必要なことは、民間金融、公的金融ともに、その本来の役割を発揮できるように金融行政をおおもとから転換することです。日本共産党は、企業の99%、雇用の7割を支える中小企業を支え、地域経済に円滑に資金が供給されるよう金融行政を転換します。

「地域金融活性化法」を制定し、資金繰りを円滑化します――短期のもうけを最優先する規制緩和や地域金融の切り捨て路線を見直し、中小企業をはじめ実体経済に貢献する金融へ転換します。「地域金融活性化法」を制定し、地域金融の再生をはかり、資金供給を円滑化するルールをつくります。

政策金融と信用保証を見直し、中小企業の資金繰りを下支えするという、本来の役割を果たさせます――「30、 中小企業」の項目を参照

個人保証の原則廃止を実現します――2017年の民法改正が踏み込まなかった第三者保証の全面禁止を実現します。また経営者個人保証や担保に依存しない金融システムを推進します。

中小保険代理店の営業と権利を守ります――中小規模の損害保険会社の代理店は、地域に密着し、事故や災害の際に大きな役割を果たしています。ところが大手損保会社の不当な圧力により、一方的な販売手数料の減額や「乗り合い拒否」など苦境に追い込まれています。現場の運動と日本共産党の国会論戦で一定改善は進んでいますが、引き続き法改正も視野に入れ、中小代理店の権利を守り、大手と対等な取引関係を確立するため尽力します。

銀行カードローンへの総量規制の導入など多重債務問題の解決をはかるとともに、個人向けセーフティーネット貸出を拡充します

 2016年の自己破産件数が13年ぶりに前年を上回り、その後2018年まで3年連続で増加しています。その背景にあるのが、銀行カードローンによる過剰貸付です。銀行カードローンは消費者金融(サラ金)なみの高金利でありながら、年収の3分の1を超える貸付けを禁じる「総量規制」がなく、「第2のサラ金化」しています。政府は「多重債務問題は解決した」と主張してきましたが、銀行カードローン利用者を含めた多重債務者の正確な状況を把握していません。業界の調査(2018年)では、日常的な生活費の不足から借り入れをする人も多く、利用目的に「生活費不足」を上げる人が、銀行カードローン利用者で約3割、貸金業利用者で4割以上となっています。クレジットカードの「リボ払い」利用から借金を重ね、多重債務化する問題も生まれており、見過ごせません。

 日本共産党の指摘で金融庁がメガバンクに指導し、「貸出制限」など自主ルールを決めさせる改善は進みましたが、高金利の引下げなど抜本改正に取り組みます。本当に資金を必要とする人が、安心してお金を借りることのできるセーフティーネット貸出制度を緊急に拡充・強化することが必要です。

――銀行カードローンに総量規制を導入し、貸金業法と同等の規制を設けます。

――だれでも利用できる身近な金融相談窓口を整備します。低利の生活福祉資金貸付制度や緊急小口資金貸付制度を抜本的に拡充するなど、個人向け、離職者向け、個人事業者向けのセーフティーネット貸出制度を拡充・強化します。その際、生活再建のためのカウンセリングと組み合わせるなど、制度の運用改善をすすめます。

――貸金業法の改悪を狙う動きを許しません。利息制限法の上限金利(20%)の更なる引き下げを求めます。

――貸金業法の円滑な施行をすすめるとともに、形を変えて暗躍しているヤミ金、偽装質屋などに対する取締りを抜本的に強化します。警察、金融庁、金融機関などによる総合的なとりくみをすすめます

金融自由化路線の根本的見直し、投機マネーの規制、金融被害の根絶、金融機関に社会的責任を果たさせるルールをつくります

 世界経済を混乱と不況に陥れたアメリカ発金融危機から10年余り。投機マネーの規制、バブルの防止、金融危機への対応策をめぐって、欧米各国においても、「先進国」の枠を超えたG20、IMF(国際通貨基金)などで国際的な議論が進められてきました。

 EUでは、投機的取引の規制と金融機関への社会的責任を求め、株、債券、デリバティブ(為替取引を含む)取引など幅広く金融取引に課税する金融取引税の議論が進んでいます。既にフランス、イタリアでは一部を先行導入し、ユーロ圏11か国での共通の金融取引税の導入に向けて取り組んでいます。

 しかし、全体として、アメリカでヘッジファンドや銀行の投機的取引に抜本的な規制を加えるボルカー・ルールが骨抜きにされるなど、「金融自由化路線」の抜本改革にはほど遠い状況です。足元では、世界的な長期にわたる金融緩和を一因として、株価の乱高下とともに、資源、不動産、食料価格の急上昇が起こっており、投機マネーへの規制は喫緊の課題です。

 日本でも、1990年代の「日本版金融ビッグバン」以降、金融自由化・規制緩和が進められてきました。安倍政権も、銀行・証券業界の後押しを受け、金融自由化、「貯蓄から投資へ」と庶民の零細な金融資産を含め、投機的な金融市場に誘導する政策をいっそう強化し、金融規制の緩和を進めています。深刻な金融被害が広がる一方、政府の対策は後手に回っています。

――2013年の預金保険法等の改正では、銀行のみならず、証券会社、保険会社、ファンドなども含めた金融機関に公的資金の導入を可能とする仕組みが導入されました。1990年代から「住専問題」、長期信用銀行の破綻処理、大手銀行への公的資金投入が、「金融システム不安」を口実に相次いで実施され、10兆円に上る税金負担を招きました。日本共産党は、銀行の破たん、金融危機への対応策として、国民負担につながる公的資金投入に反対し、投機活動に走った金融機関・金融業界への自己責任と自己負担を求めます。

――国連やG20で進められている国際的なルールづくりにおいて、積極的なイニシアチブを発揮します。巨大金融機関の投機活動を規制して、公的責任を果たさせるルールづくり、ヘッジファンドなどの投機筋やデリバティブなどの投機的取引の規制、バブルの防止と金融危機への対応策の強化を進めます。国際連帯税(通貨取引税など)など、投機を規制するしくみを検討します。IMFの意思決定のあり方を含め、「先進国」とくにアメリカ主導のしくみを改めます。

――個人の金融資産をねらった被害が多数にのぼっています。銀行、保険会社、郵便局が投資信託、保険などの金融商品を、リスクの説明が不十分なまま販売するなどの事例が後を絶ちません。それにも関わらず政府は昨年、一般事業者などの金融仲介業への参入要件を緩和する法改正を行いました。金融業界、IT業界の要望を受け、「スマホ投資」「スマホ金融」を奨励し、金融ビジネスの拡大を進めるためです。

 上場株や投資信託、債券について、国民生活センターに寄せられた相談件数は2019年度3,163件、証券業協会への「苦情相談あっせん件数」は、2019年度で4,450件、2020年度3,663件など高水準が続き、高齢者被害が多いのも特徴です。

 銀行、証券、保険などすべての金融商品について、「不招請勧誘」(望まない人への勧誘)の禁止と「適合性原則」(消費者の財産、知識や目的などに合わない取引の禁止)の徹底など、国民が不当な金融被害を受けないような仕組みをつくります。

――金融被害の温床となっている金融商品販売担当者に対する過大なノルマのおしつけをやめさせます。

――無登録金融業者による未公開株詐欺など金融犯罪を取り締まるため、証券取引等監視委員会の人員、権限を抜本的に強化します。

――裁判外の苦情・紛争解決支援制度(金融ADR)の更なる充実や、被害回復給付金支給法の改善など、金融被害を受けた方への救済制度を拡充します。

――高齢者などをねらった「振り込め詐欺」などの「特殊詐欺」とされる件数が、1万件を超え最悪水準となっています。こうした被害は、警察、自治体、関係団体と連携し、ただちに根絶します。

災害被害者の「二重ローン」問題の解決を急ぎます

 東日本大震災や熊本地震で被災した住民や事業者の「二重ローン」の解消は、地域再生のためにも重要になっています。

 現在、中小企業庁の産業復興機構と復興庁の事業者再生支援機構が、事業ローンの買い取りをすすめていますが、再建の意欲のあるすべての中小事業者を救済するために、さらに買い取り基準を改善し、金融機関への指導を強化するように求めます。

 個人事業者・個人の銀行からの負債を軽減し再生を目指す「私的整理ガイドライン」は、日本共産党や地元弁護士の要望を受け、一定の基準の見直しがすすんできましたが、被災者の生活再建のために、いっそうの制度の運用と内容の改善をすすめます。

大資産家優遇の証券税制を改めます

 不公平税制の最たるものである証券優遇税制は、税制民主化の運動と日本共産党の追及もあり、所得税・住民税あわせた税率は2014年から20%に引き上げられました。一方、欧米の富裕層の株式配当への最高税率は、アメリカ(ニューヨークの場合)32.7%、イギリス38.1%、ドイツ26.375%、フランス30%です。株式譲渡所得への最高税率も、アメリカやドイツ、フランスは配当と同じ(いずれも2021年1月現在)であり、日本は依然として低い状況が続いています。アメリカのバイデン政権は、さらに5%の引き上げを提案しています。これによる減税額は、財務省の見込額(所得税のみ)で、安倍政権下の2016年度には1兆円を超えています。

――世界に例を見ない大資産家優遇の配当や株式譲渡所得の税率軽減措置を改めます。株式配当は少額の配当や低所得者の場合を除き、勤労所得などとあわせた総合課税を義務づけ、富裕層の高額の配当には所得税・住民税の最高税率が適用されるようにします。譲渡所得についても将来的には総合課税とすることを検討しますが、分離課税が続いている間も、欧米諸国の水準にあわせて高額所得者には30%以上の税率が適用されるようにします。

――証券優遇税制の廃止にともない、2014年に「少額投資非課税制度(NISA)」が創設され、現在年間120万円、最高600万円までの株式投資から得られる配当や譲渡所得を非課税となっています。2018年1月からは積立NISAが新設されました(最高800万円)。小規模な投資を行う「庶民投資家」への課税を富裕層より軽減するのは必要なことですが、モデルとされたイギリスの個人貯蓄制度(ISA)が預金利子も非課税の対象となっているのと違って、日本の制度は株式投資だけに限定された歪んだものです。対象を狭めない小口投資の非課税枠をつくり、投資先は投資家の判断にゆだねるようにすべきです。

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