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日本共産党

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赤旗

大学ファンド法案可決 衆院

2021年1月27日


 国主導で大学の研究資金確保のためのファンドを創設する科学技術振興機構法改定案が、26日の文部科学委員会で審議され、日本共産党以外の賛成多数で可決。その後の衆院本会議で可決しました。本会議では国民民主党も反対しました。日本共産党は、安定した運営が求められる大学の研究資金の確保を、大学自身が大きな損失リスクを負う方法で行うべきではないとして反対しました。

解説 大学ファンド法案可決 大学支援名目に株価対策か

 菅義偉内閣が提出した「官学ファンド」を創設する法案にはさまざまな問題が指摘されています。

 法案は、科学技術振興機構にファンドを創設し、政府支出や長期借り入れで調達した資金をもとにした運用益で、研究大学の研究環境の整備充実、優秀な若手研究者を支援する助成を行うとしています。

 財政投融資の4兆円、政府出資金の5千億円からスタートし、研究大学、民間からの資金拠出をつのり、早期に10兆円規模の運用元本をつくるとしています。自民党政務調査会は「年3~4%程度のリターンの場合、年間約数千億円の運用益となる」としています。

 これに対し「低金利の時代、公的資金を投じ、運用益を確保するにはリスクも伴う。疑問が拭えない政策手段だ」(「日経」16日付社説)など、懸念の声が相次いでいます。

 モデルにしている年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も2019年度は8兆2831億円の運用損を出しています。農林水産省の廃止予定の官民ファンド「農林漁業成長産業化支援機構」も最終欠損は120億円の見通しです。

 文科省も「リスク運用の停止」がありうるとしており、安定した支援策になる見通しはありません。なけなしの余裕金からの拠出が元本割れとなることもありえます。

 安倍政権以来、政府は、GPIFや日本銀行などの「公的マネー」による株価対策をエスカレートさせています。大学支援の名目で株価対策に使われる疑念をぬぐえません。

 政府は、ファンド創設の理由として「研究力低下」をあげていますが、その原因の分析や反省はなく、方便と言わざるを得ません。

 「研究力低下」の原因については、国立大学運営費交付金など基盤的経費を削減して競争的研究資金に移す「選択と集中」策にあると、学術界もマスメディアも厳しく批判しています。競争的研究資金に依存した任期付雇用が若手研究者のあいだで広がり、長期的視野をもった研究に取り組むことができなくなっています。

 法案は、助成対象を「国際的に卓越した科学技術に関する研究」や「優秀な若年の研究者」に限定しています。参画するには「自律した経営、責任あるガバナンス、外部資金の獲得増等の大学改革」が求められます。政府のイノベーション政策への誘導策であり、若手研究者の安定雇用は増えず、「研究力低下」の歯止めにはなりません。

 第3次補正予算案では、運用益が出るまでのつなぎとして、博士課程院生への支援策が盛り込まれました。博士課程に進学する学生の減少に歯止めをかけるためとしていますが、それならば不確実な運用益をあてにするべきではありません。

 コロナ禍のもとで、収入が減り食費にも事欠く学生が多数います。補正予算には授業料半額補助、アルバイト学生への収入補助を計上することこそ求められています。

(土井誠 党学術・文化委員会事務局長)

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