52 文化
国民がもっと文化を楽しむことのできる日本へ
2019年6月
芸術・文化は、人々に生きる力を与え、心豊かなくらしに欠かすことができないものです。芸術・文化を創造・享受することは、憲法に保障された国民の権利です。日本共産党は、すべての国民がもっと自由に芸術・文化をつくり楽しむことができる社会をめざします。
税金の使い方をかえ、文化予算の抜本増を
国民が多様な文化を楽しむためにも、芸術家や芸術団体、文化施設などの活動が豊かになることが必要です。こうした活動を支えているのが文化予算です。日本の文化予算は、2019年で1167億円。国家予算の0.11%にすぎず、国民一人当たりにするとわずか900円ほどです。フランスでは国家予算の0.88%、韓国は1.05%で、諸外国と比べてもあまりにも少なすぎます。政治の中身を切り替えれば、芸術家や芸術団体、文化施設への支援を増やし、もっと国民が芸術・文化を楽しめる社会を実現できます。
――日本共産党は、税金の使い方をかえ、文化予算の抜本的な増額を求めます。
芸術家、芸術団体の活動を支えます
芸術団体に対する助成は、小泉自公政権の2003年以来、毎年のように削減され、芸術団体助成の中心である重点支援は最高時の半分以下にまで落ち込んでいます。
――「アームズ・レングスの法則」(お金は出しても口は出さない)にもとづいて、芸術団体が専門性を発揮し、持続的に発展していけるよう基盤整備を含めた助成制度の発展をはかります。
――幅広い団体が気軽に活用できる助成制度の確立や、助成への応募が年に複数回できるようにするなど制度の改善をはかります。寄付税制の充実など、税制面での支援もすすめます。
――多様な日本映画やアニメ作品など映画の製作システムをささえる財政支援を増額し、制度の拡充をはかります。
――映画フィルムの保存を急ぐとともに、文化遺産であるフィルム作品の劣化や散逸、急速に進むデジタル化に対応した映画作品の保存をすすめます。 また、フィルムアーキビストなどの専門家の養成をすすめます。
――日本の価値ある伝統文化を継承・発展させるため、伝統芸能や伝統工芸をはじめとした実演家、技術者の育成をすすめます。希少素材を使っている伝統楽器の材料についての調査・研究を支援します。
――次世代を担う芸術家、映画や実演芸術に携わるスタッフの育成をすすめます。
子どもたちが文化活動を体験できる条件整備を進めます
「子どもたちの7人に1人が貧困」という調査結果もあるほど、子どもの貧困が進んでいます。子どもたちの心豊かな成長のために、どの子にも芸術・文化を創造、鑑賞できる条件を整えることが大切です。すべての子どもが年1回以上芸術鑑賞できるよう、様々な芸術鑑賞教室を視野に入れた国による事業の拡充をはかり、あわせて学校と芸術団体の自主的な努力を応援します。
――情報提供や申請実務の簡素化など条件整備をすすめます。義務教育の期間だけでなく、就学前の子どもや高校生に対する芸術鑑賞などの支援を強めます。
――障害者の芸術鑑賞・創造・作品発表などの機会を増やし、支援します。
地域の文化活動を応援します
地域では、住民が主人公となって多種多様な文化活動が、多くの市民や団体で行われ、街の活性化やコミュニティーの形成につながっています。一方で地域の過疎化や文化活動の担い手の高齢化に伴い、地域の文化活動に困難も生じています。
――現役世代や子どもたちの文化活動、NPOやサークル、鑑賞団体などの活動が発展するように、ホールや展示場所、けいこ場の利用料の低減など条件整備をすすめます。
――自治体の文化担当の職員を支えるために、研修機会の充実をはかります。
劇場・音楽ホールなど、文化施設への支援を強めます
文化施設は、自民党政治のもとで指定管理者制度が設けられ、予算が削減されてきました。市町村合併で文化施設が統合され、遠方になったため、鑑賞や発表の機会が減っている地域も少なくありません。施設・設備が老朽化したのに大規模改修の費用を捻出できず、休館・閉館に追いこまれる文化施設もあり、民間劇場などの閉鎖も相次いでいます。
――劇場・音楽堂に対しては、専門家を適切に配置するとともに、施設改修や舞台機能の高度化への支援措置を設けるなど、国の支援を強めます。
――劇場同士、劇場と芸術団体の連携公演などに対する支援を強めます。
――民間の劇場・音楽堂や映画館は、現状では商業施設として扱われ、何の支援もありません。年間100日以上事業を行っている会館を劇場とみなして固定資産税の軽減を図るなど、積極的な支援を行います。
――バリアフリー化した劇場・ホールの固定資産税減免措置の継続を求めます。
――施設の閉館、改修で首都圏をはじめホールが足りなくなっています。仮設のホール・劇場建設や、今ある公的ホールの使用規定の見直しなどで芸術団体の活動場所を確保し、国民の鑑賞の機会を保障します。
――美術館・博物館、図書館は、「表現の自由」を土台として国民に鑑賞機会を提供するとともに、大切な社会教育の場です。コレクションの購入や修復、適切な保管場所の確保などの支援を強めます。
――芸術・文化活動の拠点として活性化するために、国立美術館・博物館、国立劇場・新国立劇場・国立映画アーカイブについては、国の施設にふさわしく予算の充実をはかります。
――舞台技術者や司書、学芸員など非正規職員となっている専門家の身分を保障し、専門家として力量を発揮できるよう支援します。
――文化施設の運営への芸術家と市民の参画をすすめるとともに、文化ホールや図書館、美術館・博物館の民営化、民間委託をやめさせ、公的支援を充実します。
――映画、アニメ、マンガ、美術、デザイン、写真、音楽など、文化各ジャンルの貴重な遺産のアーカイブ(収集・保存・公開)を支援します。
文化を支える専門家の地位向上にとりくみます
年収300万円未満が5割以上という劣悪な状態にある実演家、舞台芸術や映画スタッフ、アニメーターなど、多くの芸術家やスタッフは、一般の勤労者に比べても低収入です。仕事のうえでの怪我であっても労災認定は7・6%にすぎません。これでは、技能を高める前に辞めざるを得なくなり、芸術・文化の発展を阻害することになりかねません。
――専門家の地位向上を理念として掲げるだけでなく、芸術家が本業で生活ができるように、その収入を一般勤労者並みに改善することを目標に施策を実施します。
――演劇・舞踊や映画の国立大学の設立や国立劇場・新国立劇場での専門家養成・研修事業の充実、海外研修支援の拡充など、専門家の養成における国の責務をはたさせます。
文化財の保存と継承をはかります
文化財は、有形・無形を問わず、先人の生きてきた証であり、現在・未来に生きる貴重な財産です。最近の政府の方針では、文化財を観光などに「活用」し、「文化財で稼ぐ」ことに重点が置かれていますが、「活用」の名のもとに、文化財の保存があいまいにされ、破壊・毀損されることがあってはなりません。「活用」する場合も、修理・修復して保存することが欠かせません。東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨などで被災した文化財の保存・修復も道半ばです。
――保存・修復のために財政的な支援を求めます。文化財の保存と活用のために、普段からの調査活動を支援します。
――大型公共事業とその関連工事による文化財破壊を許さず、埋蔵文化財をはじめ、文化遺産、歴史的景観および文化的景観の保護をはかります。
――「陵墓」に指定されている古墳の学術目的での調査と保存をすすめます。
――文化財の防災対策を強化します。 世界遺産や無形文化遺産の推薦にあたっては、透明性向上や公平性確保につとめます。
著作者の権利を守り発展させます
著作権は、表現の自由を守りながら、著作物の創造や実演に携わる人々を守る制度として文化の発展に役立ってきました。ところが、映画の著作物はすべて製作会社に権利が移転され、映画監督やスタッフに権利がありません。実演家もいったん固定された映像作品の二次利用への権利がありません。国際的には視聴覚的実演に関する北京条約(2012年)が締結され、日本も加入するなど、実演家の権利を認める流れや、映画監督の権利充実をはかろうという流れが強まっています。
――著作権法を改正し、映画監督やスタッフ、実演家の権利を確立します。
――私的録音録画補償金制度は、デジタル録音録画の普及にともない、一部の大企業が協力義務を放棄したことによって、事実上機能停止してしまいました。作家・実演家の利益をまもるために、私的複製に供される複製機器・機材を提供することによって利益を得ている事業者に応分の負担をもとめる、実効性のある補償制度の導入をめざします。
憲法を生かし、表現の自由を守ります
芸術は自由であってこそ発展します。憲法は「表現の自由」を保障していますが、第2次安倍内閣の発足以降、各地の美術館や図書館、公民館など公の施設で、創作物の発表を正当な理由なく拒否するなど、表現の自由への侵害が相次いでいます。
日本共産党は、「文化芸術基本法」や憲法の基本的人権の条項をまもり生かして、表現の自由を侵す動きに反対します。「児童ポルノ規制」を名目にしたマンガ・アニメなどへの法的規制の動きに反対します。
諸外国では、表現の自由を守るという配慮から、財政的な責任は国がもちつつ、専門家が中心となった独立した機関が助成を行っています。文化庁の助成は応募要綱などが行政の裁量で決められ、芸術団体の意見がそこに十分反映されていません。
――すべての助成を専門家による審査・採択にゆだねるよう改善します。
――11月3日の「文化の日」を明治天皇の誕生日を祝う「明治の日」に変えようという動きに反対します。
文化を衰退させる消費税10%への増税は中止します
「アベノミクス」の失敗で、労働者の実質賃金は下がっているうえに、消費税増税によって、ますます国民が芸術・文化に親しむ機会から遠ざかっています。消費税増税は、家計から芸術や文化を楽しむ支出を抑制することにつながり、芸術・文化団体の経営や活動にも大打撃を与えます。
――今年10月からの消費税10%への増税は中止します。