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日本共産党

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赤旗

2016参議院議員選挙/各分野の政策

20、エネルギー

――再生可能エネルギー本格導入、省エネ徹底、電力の「自由化」

2016年6月


 エネルギーは食料とともに経済・社会の存立の基盤ですが、日本のエネルギー自給率はわずか6%(エネルギー白書2016)にすぎません。

 日本共産党は、再生可能エネルギーを本格的に大量に導入するとともに、むだや不要不急のエネルギー需要を削り、エネルギー効率の引き上げや省エネの徹底で、地球の環境・資源の上で持続可能な低エネルギー社会を目指します。それによってエネルギーの自給率の引き上げを図ります。

 2011年3月11日の東日本大震災と、それによる福島第一原発での爆発、放射能の広い地域への飛散によって、「原発ゼロ」を望む国民の世論が高まりました。ところが安倍政権は、2014年4月、国の中長期のエネルギー政策の指針となる第4次エネルギー基本計画を閣議決定しました。計画では、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、永久化することを宣言しました。さらに昨年7月、経済産業省が決定した「長期エネルギー需給見通し」では、2030年度の発電量の20~22%を原発で供給するとしています。この比率は、国民多数の原発ゼロの願いに反することはもちろんですが、原子炉等規制法による運転期間40年という原則を前提としても、既存の原発の更新・新増設を意味している点で重大です。ここにも、原発永久化の意図が、はっきり表れています。他方、再生可能エネルギーによる電力は2030年度に、22~24%としています。これは、福島事故の前に、政府が掲げていた数値と、ほぼ同じです。政府のエネルギー政策で、福島原発事故の経験が生かされているとはいえません。

1、すべての原発からただちに撤退する政治決断を――「即時原発ゼロ」を実現する

各分野政策の19、「原発問題」を参照ください。

 2、再生可能エネルギーの大量導入を図ります

  昨年12月の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)では、再生可能エネルギーをめぐって大きな変化がありました。前回までは化石燃料を焦点に、自国経済への制約や負担回避を目的とした駆け引きが繰り返されていたのですが、今回は再生可能エネルギーの大量導入で、エネルギーの変革を進める取り組みが主流となりました。今や温暖化対策は成長と雇用増加と地域振興へのステップと位置づけられているのです。

 日本の政府や財界は、気候変動の問題を依然として化石燃料か原発かという問題として考えており、再生可能エネルギーが新たな主役だという認識には達していません。再生可能エネルギーに本格的に取り組んできたEU諸国とくらべ、再生可能エネルギーの導入で大幅に後れを取りました。日本の電力供給にしめる再生可能年ルギーの比率は11%(2014年度。ダム水力を除けば3%。一般電気事業用ベース)で、ドイツの30%(2015年)を大きく下回っています。

 それにもかかわらず、電力会社は、「電力が不安定になる」などという口実で、再生可能エネルギー接続を制限・拒否し、政府もこうした電力会社の姿勢を容認・支援しています。「原発固執政治」が、再生可能エネルギー普及の最大の障害となっています

 今後の目標として、電力供給における自然エネルギーの割合を、スペインは2025年までに40%、ドイツは2025年までに40~45%、フランスは2030年までに40%、EU全体は2030年までに45%、アメリカでもカリフォルニア州は2030年までに50%を目指しています。

  日本の地域それぞれの条件にあった再生可能エネルギー(自然エネルギー)の開発・利用を計画的に拡大することに、エネルギー政策の重点をおきます。太陽 光・熱、小水力、風力、地熱、波力や、あるいは畜産や林業など地域の産業とむすんだバイオマス・エネルギーなどは、まさに地域に固有のエネルギー源です。 この再生可能エネルギーの活用を地元の中小企業の仕事や雇用に結びつくように追求し、地域経済に取り入れることができれば、そこから得られる電気やガスを 販売することで地域に新たな収入が生まれます。事業の成果や副産物を地元に還元したり、雇用や技術、資金の流れを地元に生み出すことで、地域経済の活性化 に役立ちます。ドイツでは、原発で働く人は3万人ですが、再生可能エネルギーの分野では、38万人が雇用されており、再生可能エネルギーには優れた雇用効果 があります。

 2030年までに電力の4割を再生可能エネルギーで賄う――「原発ゼロ」の決断と一体に、再生可能エネルギーの飛躍的普及をはかるべきです。日本共産党は、2030年までに電力需要の4割を再生可能エネルギーで賄うという目標をもち、それを実行に移す手だてを着実にとります。この目標は、世界の再生可能エネルギー先進国に追いつくための最低限の目標です。2030年までにエネルギー (一次)の30%を再生可能エネルギーでまかなう「再生可能エネルギー開発・利用計画」を策定し、着実に実行していきます。

乱開発を規制するため、法的な位置づけを明らかにし、環境アセスメントを強化する――再生可能エネルギーの導入・普及は、温暖化抑制のためにも喫緊の課題であり、一層の推進が求められています。しかし、持続可能な発展をめざすための一環で あるはずの再生可能エネルギーの取り組みも、環境規制の弱い日本では、事業化に当たってきちんとしたルールや規制を整備しないまま、利益追求を優先した乱 開発が起き、環境保全や住民の健康・安全にかかわる問題を引き起こしています。事業者と地域住民の間で軋轢や紛争が生じることは、再生可能エネルギーの導入を、国民的な支持を得て進めていくのに、望ましい状況ではありません。
 その解決のためには、事業の立案および計画の段階から情報を公開し、事業者、自治体、地域住民、自然保護関係者、専門家など広く利害関係者を交え、その 地域の環境維持と地域経済への貢献にふさわしいものとなるようにし、大型太陽光発電施設の建築物や土地の区画形質の変更として扱うなど、きちんとした法的な位置づけを明らかにします。環境基準を定めて、環境アセスメントの手続きの中に組み込んでいくことが必要です。十分に調査・検討した環境基準の早急に設定し、環境アセスメントの強化を図ります。

電力会社の再生可能エネルギーの買い取り可能量について、情報公開をおこない、検証する―― 九州電力が2014年9月に太陽光発電(家庭の屋根に設置する出力10kW未満の設備を除く)や水力・地熱・バイオマスなど再生可能エネルギーによる発電の新 規買い取りを拒否し、北海道電力、東北電力、四国電力、沖縄電力でも相次いで同様の事態が起きました。電力会社は、電力供給の不安定化を理由にしています が、受け入れが最大どれだけ可能なのか、情報を公開すべきです。WWFジャパンは、独自にシミュレーションした結果、九州電力は受け入れても不都合は生じ ないことを明らかにしました。WWFジャパンによれば、政府の審議会(総合エネルギー調査会)の小委員会が行った可能量の試算では、再生可能エネルギーの稼働率を高めに設定し、さらに、安倍政権がベース電源だとする原発について、高い稼働率を設定して原発の発電量を算出した結果、再生可能エネルギーの買い入れ契約の設備量が少なくなっています。

 電力量では東京電力の1.1倍ほどのスペインでは、15分単位で更新される気象予報による発電予測、12秒単位で更新される風力発電状況のデータ、水力発電やガス火力なども含めた統一的な調整によって、大量の再生可能エネルギーの電力を取り込んでいます。より精密なシミュレーションをおこなうとともに、沖縄以外の9電力の電力運用について、電力の大量消費地である大都市部を含めた広域レベルで、揚水ダムの利用も含め、統一的な調整・運用をするシステムを構築すべきです。今年の国会でのFIT法(再生可能エネルギー固定価格買取法)の改定にあたり、日本共産党は、ドイツの例をみならって、送電会社に送電網の増強義務を課す修正案を提出しました。引き続き、実現を目指します。

リードタイムの長さを考慮して再生可能エネルギーや高効率の電源の導入を急ぐ―― 住宅に設置する太陽光発電であれば、思い立ってから2~3か月で発電が可能になります。小水力発電なら2年ぐらいで、稼働します。リードタイムの短さを 踏まえて、住宅や、まとまった広さの屋根をもつ公共施設などに太陽光発電設備の導入を、大急ぎで進めます。大型の発電施設は、計画から環境影響調査、建設 に時間が5~10年とかかります。その時間を考慮して、早期に検討に着手する必要があります。

再生可能エネルギーの豊富な地域に送電網を整備する―― 自然エネルギーによる発電が期待できるのにもかかわらず、人口が少なかったために送電網がない地域もあります。国がイニシアチブを発揮してこうした地域 に、送電線の建設を進めます。そのさい、現状の9電力(沖縄電力を除く)の地域割を越えて、より広域的な送配電網とそのシステムの整備を進めます。

再生可能エネルギー電力の固定価格買取制度の改善のため、国民的議論を深め、消費者の負担を抑制する―― 再生可能エネルギー発電の普及には、長期的な採算の見通しが重要であるため、電力の固定価格買い取り制度があります。電力多消費業種として賦課金を減免される対象範囲や、買い取り対象の規模、買取価格の水準の見直しなど、国民への情報提供と論議をつくすべきです。買取法の「改正」のなかで、送電事業者による買い取り義務の項を削除したことは、再生可能エネルギーによる発電施設の設置者の立場を弱めることになり、元に戻すべきです。買い取りの財源は、賦課金として電気料金に上乗せされて、全額、電力使用者の負担とされています。すでに電気料金には電源開発促進税という 電源を生み出すための税金が含まれており、年間3200億円も、電力使用者は負担しています。いまはこの財源が主に、原発のために使われています。日本共 産党は国会でも提案したように、この財源を買い取り費用に充てることで、ユーザーの負担を抑えるように使います。

 また、再生可能エネルギーの普及をさらに促進するために、家庭用の太陽光発電の設置に対する国の補助で公的助成を高めます。国、自治体の施設や、一定規模以上の建物については、再生可能エネルギーの利用、熱効率の改善を義務づけます。

バイオ燃料の開発は、食料生産と競合せず、環境保全を重視したものに―― 日本共産党は、バイオ燃料の開発・導入を自然エネルギーの重要な柱であると考えています。その具体化にあたっては、食料需要と競合しない植物資源などに限定する、国内産・地域産の資源を優先的に活用する(「地産地消」)、生産・加工・流通・消費のすべての段階で環境を悪化させない持続可能な方法を採用する など、新たな環境破壊をひきおこさないためのガイドラインを設けます。車両の燃料や、熱源としてバイオ燃料の普及を促進します。

3、省エネを徹底し、エネルギー消費量を大幅に削減する

 自然エネルギーの爆発的導入とともに、低エネルギー社会を実現するのに、重要な柱となるのがエネルギー効率の引き上げ、省エネの徹底です。

 年間の発電量は、2007年度をピークに12%も減少し、いまでは約1兆kW時ですが、全国約9000の大規模工場と業務部門施設で約4分の1を、その他の全国約74万の工場とオフィスビルなど の業務部門施設で4割の電力を使っています。ピーク時の電力も、電力消費量の4分の3が業務と産業が占めています(東京電力)。この部分で、エネルギー利用の効率化を図ることによって、電力需要や化石燃料の需要を減らすことができます。

ガス火力の割高な燃料価格を是正する―― 日本の火力発電のコストは依然として高すぎます。アメリカでのシェールガスの開発・輸出の動きは、LNGの国際価格を引き下げる効果を持っています。国内の大口ガス需要者や他のLNG輸入国との協調を強化して、LNGの値下がりを買い入れ価格に反映させるよう、政府の取り組みを強めます。

火力発電における発電効率を引き上げる――LNG 火力発電の旧型設備ではエネルギー利用率は約40%です。残りの6割のエネルギーが廃熱として、捨てられています。しかしコンバインド発電にした最新鋭の 設備なら60%にエネルギー利用率は高まっています。同じ電力を発電するのに、最新型なら旧型よりLNGの消費量が3分の1も節約できるのです。さらに 65%をめざす開発も進んでおり、いっそう効率のよい火力発電の促進で、燃料消費と二酸化炭素排出の削減をめざします。

 さらに発電所の廃 熱を工場やオフィス、家庭へ送り、廃熱の3分の2(投入エネルギーの40%に相当)を有効利用すれば、エネルギー利用率は80%になります。現にスウェー デンでは発電と熱利用でエネルギー利用率が80%を超え、デンマークで65%、ドイツでも50%に達しています。ただし、廃熱を利用するには、これまでのような巨大な火力発電所ではなく、熱の利用者が近辺にいても大丈夫なような分散型の配置になります。

 同じ燃焼カロリーをえるのに、LNG が排出するCO2の量は、石油より30%減、石炭より45%減となります。同じ電力をえるのに最新型のLNG火力なら、旧式の石炭火力に比べて、排出する CO2を6割も削減できるのです。火力発電における燃料を、石炭・石油からLNGへ切り替えていきます。また旧型のLNG発電設備の最新型への置き換えを進めます。

工場やビルの設備・機器を、最新の省エネ設備・機器に更新するよう促進する―― 工場のボイラーや業務ビルの集中型空調施設などに取り組めば、15~20%のエネルギー削減の実績が上がっています。大手企業や大型の工場・ビル、大型公 共施設について、省エネと温暖化ガスの排出削減の目標を明らかにさせ、中小企業への支援や、排出量取引なども活用して、最新の省エネ設備・機器への更新を 促します。

トップランナー方式による省エネ製品の普及、住宅など建物の断熱効果を高める――トップランナー方式の省エネ基準を高めることにより、省エネ商品の開発と普及と促進します。住宅など建物の断熱効果を高めることによって、冷暖房のエネルギーの大きな削減を図ります。なお、自動車メーカーによる燃費データの改ざんなどは論外であり、不当に受けたエコ減税は、メーカーの責任と負担で行政に戻すべきです。

コジェネレーションやヒートポンプの導入で、廃熱利用を進める―― 廃熱を熱供給に利用すること(コジェネレーション=電気・熱併給システム)で、エネルギーの利用率を40%程度から70%台まで引き上げることができます。小規模・分散型利用を促進する制度を整備し、コジェネレーションやヒートポンプの導入を積極的に支援します。そのさい、低周波など周辺環境への影響に 注意を払うのは当然です。

4、国民の立場から、電力システムを抜本的に見直す

 今年4月1日から、電力の小売り「自由化」がスタートしました。それまで大手電力会社10社だけが販売してきた家庭や商店の分野(電力の約3割)には、4月1日から、大手電力会社以外の事業者も参加できることになりました。電力の小売りの「全面自由化」です。

 1990年代から大手電力会社や財界は、電力分野での規制を弱め競争原理の導入を図る形で、大口需要者向けの商社系発電企業や小売り企業の参入、料金引き下げを段階的に進めてきました。しかし、今回のような電力システムの全面的な「改革」となったのは、5年前の東日本大震災・福島原発事故がきっかけです。国民の側から、大手電力会社の独占的な支配力を弱め、原発の停止、再生エネルギーの普及をという要求が高まりました。他方で、規制を取り除き「自由化」することによって、エネルギーの種類別や地域別の経営を抜け出して、“総合的なエネルギー企業”を生み出すという政府や巨大企業の思惑が交錯しています。

 消費者側では、生活必需品である電気の料金が安くすむならと考えたり、原発の電気を買いたくないと思う人も多く、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を出す石炭や石油などの化石燃料ではなく、再生可能エネルギーの電力を使いたいと思う人もいます。

 しかし、今回の「電力自由化」で、消費者は自分が望む電気を、自由に買うことができるというわけではありません。さまざまな業種の企業が、小売り事業者として登録されましたが、発電所をもっている事業者やメガソーラーをやっている一部の携帯会社は別として、自分で発電所を持っていない小売業者の多くは、東電など大手電力会社から電力を買って、家庭や業者に転売することになります。

 もともと再生可能エネルギーによる電力はまだまだ少なく、大手電力会社は原発の再稼働を急ぐことで、原発の電気を売りたいと考えおり、また、今ある石炭火力発電所の総発電能力の5割に当たる石炭火力発電所の建設計画があり、CO2の排出量の多い電力の供給が増えることが懸念されます。

 そのため、消費者側から強い要望があるのは、業者が供給する電力が何から生み出されたものなのか表示=「電源構成の表示」の義務付けです。政府は、表示することが望ましいとはしたものの表示の義務付けはせず、発電方法の内訳(電源構成)を明らかにしている事業者はまだ23%です(経産省調べ。5月1日時点)。表示を義務付けるべきです。

 電力は、水道やガスと同様に、私たちの生活や経済活動を支える不可欠の公共インフラです。その電力インフラの基盤となる送配電網は依然として大手電力会社が独占しています。もし送配電網の利用に高い料金が設定されたり、接続を制限されれば、再エネなどの発電事業者や小売業者が送配電網を自由に利用できず、一部の大手企業に再び集中し、競争が消え、大手企業の電源や料金を消費者が受け入れざるを得ない事態も懸念されます。先に自由化が進んだ欧米の経験では、多数の小売業者が出現したものの、やがて数社にまとまっていって競争が効かなくなったといわれています。手放しの自由化ではなく、消費者側が参加できる公的なコントロールが大事です。

 日本の政府は、2020年度までに家庭や業者向けの料金についての規制を撤廃し、完全に「自由化」する方針ですが、これまでの規制のもとでさえ「ブラック・ボックス」と呼ばれて批判があった電気料金の根拠が、いっそう不透明になりかねません。

 今求められているのは、消費者・需要家の選択肢の拡大と、系統運用など情報の全面的開示を両立させることのできる電力システ ムの制度設計です。そして、国民に開かれた公正な市場と競争条件の整備を進め、さらに新しい独立した強力な民主的規制機関の創設することによる国民的な監視の強化です。それによって、電力大企業への民主的な規制と再生エネルギーの本格的な推進、それによる地域へのメリットの還元するシステムへの転換をめざします。

 

 

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