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日本共産党

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赤旗

2016参議院議員選挙/各分野の政策

9、医療

――窓口負担の引き下げ、国保、後期高齢者医療制度、混合診療、診療報酬、医師・看護師不足、公的病院、感染症

2016年6月


安倍政権による医療大改悪を許さず、「医療崩壊」を打開し、だれもが安全・安心の治療を受けられる医療制度を確立します

安倍政権による医療制度の連続大改悪をくいとめます

 社会保障予算の「自然増削減」を基本方針とする安倍政権のもと、医療制度のかつてない大改悪が次々と打ち出されています。

 70~74歳の窓口負担の1割から2割への引き上げが、2014年度から対象年齢を1歳ずつ引き上げる形で実施され、すでに70~72歳の人が2割負担となっています。

 2015年に可決された「医療保険改悪法」による入院食費の負担増、「患者申出療養」の導入、紹介状なしで大病院を受診した患者からの追加負担徴収など、患者負担を増やし、保険外診療を拡大する改悪も実行に移されました。

 国民健康保険料(税)のさらなる引き上げにつながる「国保の都道府県化」、「医療費適正化計画」による給付費の抑制、「地域医療構想」による病床削減など、患者・住民に負担増と給付削減を押しつけ、地域の医療基盤を壊していく改悪が、「医療保険改悪法」や「医療・介護総合法」(2014年可決)にもとづいて具体化されようとしています。

 さらに、安倍政権は、▽後期高齢者医療保険料の「特例軽減」を撤廃し、低所得者の保険料を現行の2~10倍に引き上げる(2017年度の実施を計画)、▽75歳以上の窓口負担を1割から2割に引き上げる(具体化案を検討)、▽高齢者の高額療養費の自己負担額を引き上げ、現役世代と同水準の負担を求める(2016年中に結論)、▽一般病床の入院患者からも療養病床と同様の居住費〔水光熱費分〕を徴収する(2017年に法案提出)、▽入院患者から預貯金に応じて食費・居住費を徴収する(2017年に法案提出)、▽市販薬と効能が類似する医薬品を保険から外す(2017年に法案提出)――など、国民に大負担増を押しつける改悪案を、国会に提出・可決する計画を立てています。こんな連続大改悪が実行されたら、国民のくらしと健康はボロボロになってしまいます。

 日本共産党は、医療制度の連続大改悪に反対し、医療・社会保障の充実を求める多くの国民・医療関係者と共同し、その阻止のために全力をあげます。「消費税にたよらない別の道」(富裕層・大企業に応分の負担を求める税制改革、国民の所得を増やす経済改革による税収増)で安定した財源を確保し、公的医療保障の再生・拡充をはかります。

高すぎる窓口負担を軽減し、先進国では当たり前の“窓口無料”をめざします

 「現役世代=3割、高齢者=1~3割」という窓口負担に国民が悲鳴をあげ、深刻な受診抑制が起こっています。ところが、安倍政権はこの4年間、70~74歳の窓口負担の2割への引き上げ、一般病床・精神病床・65歳未満の療養病床の入院食費の負担増(1食:260円→460円)、「紹介状なし」で大病院を受診した患者からの追加負担徴収など、患者負担を引き上げる改悪を連打してきました。

 さらに、安倍政権は、2017年の通常国会に、▽高齢者の高額療養費(自己負担分)の現役世代と同水準への引き上げ、▽一般病床の入院患者からの居住費(水光熱費分)の徴収、▽入院患者の預貯金に応じた食費・居住費の負担徴収、▽「かかりつけ医」以外を受診した場合の追加負担徴収、▽市販薬と効能が類似する医薬品の保険外し――などを盛り込んだ法案・予算案の提出を計画しています。また、75歳以上の窓口負担を2割に引き上げる改変を「早期に具体化」するとしています。こんな改悪が実行されたら、低所得者はもちろん多くの人が医療から排除され、国民の生活と健康がボロボロになることは必至です。

 日本共産党は、あらゆる窓口負担増の改悪に反対し、軽減を求めます。ヨーロッパ諸国やカナダでは、公的医療制度の窓口負担はゼロか、あっても少額の定額制です。日本も1980年代までは「健保本人は無料」「老人医療費無料制度」でした。応能負担の原則にそって保険料や税の負担を求めつつ、患者負担は低額に抑えて、重症・軽症にかかわらず必要な医療を給付するのが、公的医療制度の本来のあり方です。

 日本共産党は、医療制度を再生する改革する第一歩として、▽子ども(就学前)の窓口負担は国の制度で無料とする、▽現役世代は国保も健保も2割に引き下げる、▽高齢者は今の制度で「現役並み所得者」とされている人も含めすべて1割とするという、窓口負担の軽減を提案します。将来的には、安定した財源を確保し、“窓口負担ゼロ”の医療制度に前進していきます。

後期高齢者医療保険料の大幅値上げに反対し、差別制度の撤廃をめざします

 後期高齢者医療制度は、国民を年齢で区切り、高齢者を別枠の医療保険に強制的に囲い込んで、負担増と差別医療を押しつける稀代の悪法です。2008年の制度導入以来、すでに4回にわたる保険料値上げが実施され、高齢者の生活を圧迫する重大要因となっています。

 安倍内閣は、2017年度から後期高齢者医療保険料の「特例軽減」を打ち切り、低所得の高齢者に大幅な負担増を押しつける方針を決めました。

 後期高齢者医療制度の導入時(2008年)、“列島騒然”の怒りの世論に包囲された自公政権は、▽保険料が「7割減額」となる低所得者の保険料をさらに引き下げて「8・5割減額」とする、▽「7割減額」の対象者のうち、年収が80万円以下の人はさらに引き下げて「9割減額」とする、▽健保や共済の被扶養から後期高齢者医療制度に移らされた人の保険料を「9割減額」とする――など、保険料の「特例軽減」の仕組みをつくりました。国民の世論に追いつめられ、負担増の“緩和”をせざるを得なくなったのです。ところが、安倍内閣は「骨太方針2015」で、この「特例軽減」の打ち切りを表明し、2017年度からそれを実行しようとしています。

  「特例軽減」が廃止されれば、「月7万円の年金しか収入がない」などで、現在「8・5割減額」を適用されている人の保険料は「7割減額」に切りかわり、保険料は現行の2倍に引き上がります。基礎年金満額(月6・5万円)を下回る収入しかなく、現在「9割減額」を適用されている人も「7割減額」となり、保険料の負担は3倍に跳ね上がります。

 もとは健保・共済の扶養家族で、後期高齢者医療制度に移行後、保険料の「9割減額」が適用されている人も、「特例軽減」がなくなると、後期高齢者医療制度に移って2年以内なら「5割減額」、3年目以降は「全額負担」の適用となり、保険料は現行の5倍から10倍以上に跳ね上がります。

 まさに、低所得・低年金の高齢者を狙い撃ちにした大負担増です。

 2008年、後期高齢者医療制度の導入を担当した厚労省の課長補佐(当時)が、地方での講演で、「医療費が際限なく上がっていく痛みを高齢者に直接感じてもらう」ためにこの制度をつくったと放言し、大問題となりました。高齢者に際限ない保険料の値上げを押しつけ、“負担増を我慢するか、医療を受けるのを我慢するか”をせまるという制度本来の害悪が高齢者に襲いかかろうとしています。

 日本共産党は、安倍政権が計画する、後期高齢者医療保険料の大幅引き上げに断固反対します。差別と負担増の制度を廃止し、元の老人保健制度に戻します。老人保健制度は、高齢者が国保や健保に加入したまま現役世代より低い窓口負担で医療を受けられるようにする、財政調整の仕組みです。老人保健制度に戻せば、保険料の際限ない値上げや別枠の診療報酬による差別医療はなくなります。高齢者が75歳になったとたんに家族の医療保険から切り離されることもなくなり、65~74歳の障害者も、国保や健保に入ったまま低負担で医療を受けられます。差別制度を廃止したうえで、減らされてきた高齢者医療に対する国庫負担を抜本的に増額し、保険料・窓口負担の軽減を推進します。

「国保の都道府県化」に反対し、国民健康保険の再建・改革をすすめます

 市町村が運営する国民健康保険では、住民の支払い能力をはるかに超える国保料(税)が各地で大問題となっています。高すぎる国保料(税)を完納できない滞納世帯は336万世帯にのぼり、滞納制裁として保険証を取り上げられた生活困窮者が医者にかかれず重症化・死亡したり、生計費を差し押さえられた滞納者が、餓死や自殺に追い込まれたりするなどの事件も多発しています。

 こうした事態を引き起こした元凶は、国の予算削減です。歴代自民党政権は、1984年の国保法改悪で国保の国庫負担を引き下げたのを皮切りに、国保の財政・運営に対する国の責任を後退させてきました。1984年度から2014年度の間に、市町村国保の総収入に占める国庫支出金の割合は50%から24%へと半減し、それと表裏一体に、一人当たりの国保料(税)は3・9万円から9・3万円に引き上がりました。

 国保財政を危機に追いやっている、もう一つの要因は、加入者の所得減・貧困化です。かつて国保加入者の多数派は自営業者と農林漁業者でしたが、今では国保世帯主の4割は年金生活者、3割が非正規労働者です。国保の加入世帯の平均所得は、1991年の260万円から2014年度は144万円へと激減しています。加入者が貧困化しているのに保険料が上がり続けるのでは、滞納が増えるのは当然です。日本社会を未曽有の貧困がおおっている今、国保制度の根本的な改革はもはや避けられません。

 日本共産党は、国庫負担増による国保料(税)の引き下げ、保険証とりあげや機械的な滞納制裁の中止、貧困打開による制度の再建など、抜本的改革をすすめます。

〔医療保険改悪法による「国保の都道府県化」の中止・撤回を求める〕

 安倍政権は2015年、「国民皆保険創設以来の大改革」といって、「国保の都道府県化」を含む「医療保険改悪法」を可決しました。しかし、その内容は、「大改革」とは名ばかりの、住民負担増、徴収強化、給付費削減という従来の国保行政の強化策でしかありませんでした。

 「医療保険改悪法」は、2018年4月から、国保を、市町村と都道府県が共同で運営する制度に改変するとしています。新制度スタート後も、保険料の決定・徴収は市町村が担い、市町村ごとの保険料格差は残ります。同時に、新制度のもとで、国保の財政は都道府県が一括管理し、都道府県が各市町村に「納付金」を割り当て、市町村が住民から集めた保険料を都道府県に「納付」する形で、国保財政はまかなわれることになります。

 この「納付金」は100%完納が原則で、市町村には、保険料の徴収強化の圧力がかけられます。また、「納付金」の割り当てに際し、都道府県は市町村ごとに「医療給付費の水準」「標準的な収納率」「標準保険料率」などの指標を提示します。これにより、“給付費の水準の高い自治体”“収納率が低い自治体”“一般会計の独自繰入で保険料を下げている自治体”などが一目瞭然となり、市町村には、給付抑制、収納率向上、繰入解消への圧力が加えられます。都道府県を“国保財政の管理者”“市町村国保の監督役”とすることで、“住民いじめ”の国保行政をいっそう強化する――これが、国の狙いです。

 今回の制度改変に際し、国は、国保に対し3400億円の公費投入を行なうとしています。この公費は国が決めたメニューにそって配分されますが、そのメニューのなかには、各市町村の給付費削減の“努力”を評価して予算を配分する「保険者努力支援制度」や、一般会計繰入ではなく県に“借金”をさせることで市町村国保の赤字を穴埋めする「財政安定化基金」など、“改悪の誘導策”となりうる項目も含まれています。

 「医療保険改悪法」は、都道府県に、「国保運営方針」の策定を義務づけ、それを都道府県が別途策定する「医療費適正化計画」や「地域医療構想」と整合させることを義務づけています。「国保運営方針」による市町村への予算配分、「医療費適正化計画」による給付費抑制、「地域医療構想」による病床削減、これらの権限をすべて都道府県に集中して、強権的に給付費削減を推進させる――これが、「医療保険改悪法」の核心です。

 市町村の独自繰入の「解消」で国保料(税)がさらに引き上がり、保険証の取り上げや差し押さえなど無慈悲な滞納制裁がいっそう強化されるのでは、住民の苦難は増すばかりです。そこに、強引な給付抑制策や病床削減が結びつけば、地域の医療基盤が壊れかねません。こんな「都道府県化」は、住民にとって何のメリットもありません。

 日本共産党は、「医療保険改悪法」「国保の都道府県化」の中止・撤回を求めます。

〔高すぎる国保料(税)を引き下げ、低所得者の負担減免をすすめる〕

 国庫負担の削減と加入者の所得減が進行するなか、各地の国保料(税)は高騰を続け、所得250万円の4人家族の保険料が年間40万円を超えるなどの異常事態が起こっています。厚労省は、「国保の都道府県化」と一体に3400億円の公費投入を実行することで、「保険料の軽減や伸び幅の抑制が期待できる」といいますが、この3400億円と引き換えに市町村の一般会計繰入(約3500億円)が「解消」されれば、国保財政の現状は基本的に変わりません。高齢化や医療技術の進歩により、今後も、国保の医療給付費は増え続け、保険料は上がり続けます。内閣府の試算でも、現在「年9・1万円」の国保の一人当たり保険料は、2025年には「年11・2万円」になると見込まれています。保険料高騰を抑えていくには、国保の財政構造を根本的に変えることが必要です。

 現在、国・都道府県による国保の公費負担は「給付費×50%」ですが、1984年の国保法改定以前、定率負担と調整交付金をあわせた国庫負担は「総医療費×45%」で、給付費に直せば6割以上でした。この間、全国知事会は、国との「国保改革」の協議の場で、「1兆円の国庫負担増」を要求しています。これが実現すれば、国保料(税)は1人当たり3万円、4人家族で12万円の軽減となり、国保の保険料負担は協会けんぽと同水準になるというのが知事会の説明です。

 日本共産党は、国保の国庫負担を大幅に引き上げ、現在と将来の国保料(税)を抜本的引き下げていくことを提案します。

 現行の国保制度には、被災・盗難・事業不振など「一時的な所得激減」におちいった人への免除制度しかなく、「恒常的な低所得」に着目した保険料の免除は行なわないことが、制度の建前となっています。また、介護保険には、生活保護基準ギリギリの所得状況にある世帯が、保険料徴収によって基準以下となる場合に、保険料免除を適用する、「境界層措置」という救済制度がありますが、国保にそうした仕組みはありません。そのため、生活保護基準以下の世帯に多額の保険料が賦課されて、払えないことで制裁を受けたり、保護基準ギリギリの境界層世帯が、保険料の賦課・徴収によって基準以下に落ち込むなど、生存権が侵害される状況が広範に起こっています。

 日本共産党は、貧困層・境界層など「恒常的な低所得」に対応した国保料(税)の免除制度の創設を求めます。「7割・5割・2割」の法定減額や、失業で国保に加入した人への「所得割」の軽減など、現行の減額制度も改善・拡充し、低所得者が重すぎる国保料(税)に苦しめられる状況を打開します。

 加入者数に応じて定額が加算される国保料(税)の「均等割」については、“子どもが多い世帯ほど負担増となるのは、子育て支援への逆行だ”という批判が高まり、国と地方の協議で、「子どもの均等割の軽減措置」を検討することが合意となりました。加入者の頭数に応じて負担を増やす「均等割」、すべての加入世帯に定額を賦課する「平等割(世帯割)」など、頭割りで賦課される「応益割」の存在は、保険料の逆進性を高め、低所得世帯を重い負担で苦しめる重大要因となっています。

 「均等割」「平等割」の軽減をすすめ、“人頭税型”の「応益割」の廃止をめざします。住民の生活実態を反映しない「所得割」の「旧ただし書き方式」、固定資産税を根拠に低所得者にも負担を強いる「資産割」など、不合理な算定式の見直し・撤廃をすすめます。

 国保料(税)の負担上限の引き上げに反対します。日本共産党は、被用者保険の保険料については、上限を引き上げ、高額所得者の応分の負担を求めるよう提案していますが、国保の場合、多くの市町村では、所得600万円程度で上限に達しており、現行制度のまま上限を引き上げれば、高額所得とはいえない層までが負担増となってしまいます。負担上限を引き上げる前に、まず、国庫負担増による保険料水準の引き下げ、「均等割」の軽減・見直しなどを行なうべきです。

 「医療保険改悪法」による「国保の都道府県化」は、市町村の一般会計繰入をやめさせる圧力を強化するものですが、地方自治を規定した憲法のもと、市町村独自の公費繰入を法令で「禁止」はできないというのが政府の説明です。法案審議でも、政府・厚労省は、新制度スタート後も、市町村の独自繰入は制限されず、自治体の判断で行なえると答弁せざるを得ませんでした。

 市町村による一般会計繰入や都道府県による独自財源の投入など、国保料(税)の高騰を抑え、住民の負担軽減をはかる自治体の努力を推進・応援します。

〔生活困窮者からの国保証取り上げをやめる〕

 国保料(税)滞納を理由に正規の保険証を取り上げられ、医療費の10割負担を求められる「資格証明書」や、期限を区切った「短期保険証」に置きかえられた世帯は125万世帯を超えています。「短期保険証」を自治体の窓口に「留め置き」にされ、無保険状態になっている人、「派遣切り」などで健保を追い出され、国保にも「未加入」のまま無保険となっている人も多数にのぼります。「資格証明書」や無保険となった人が医者にかかれず、重症化・死亡する事例は、引き続き、全国各地で起こっています。

 国民の命と健康をまもる公的医療保険が、住民の生活苦に追い打ちをかけ、医療を奪うことなどあってはなりません。保険証の取り上げをめぐっては、あまりにも非情なやり方に世論の批判が集中し、各地で住民運動も広がるなか、横浜市で2015年4月から同年10月の半年間に、「資格証明書」の発行数が1万6,131件から575件に激減するなど、行政側が態度をあらためる状況も生まれています。

 日本共産党は、保険証取り上げの制裁措置を規定した国保法第9条を改正し、保険証の取り上げをきっぱりとやめさせます。

〔強権的な取り立てをやめ、住民の生活と権利まもる行政に〕

 「収納率向上」のかけ声のもと、生活苦や経営難で国保料(税)を滞納せざるを得なくなった人に対する、無慈悲で強権的な差し押さえが全国で大問題となっています。

 給与・年金の生計費相当部分や、児童手当などの公的手当は本来、法律で「差し押さえ禁止財産」となっていますが、銀行に振り込まれた瞬間からそれを「金融資産」と扱って差し押さえる、行政側の脱法行為も各地で横行しています。年金が振り込まれる銀行口座を凍結された高齢者が餓死したり、商売用の車をタイヤロックされた自営業者が一家心中するなどの痛ましい事件も続発しています。

 厚労省は、預金・給与の口座凍結、家宅捜索による物品の押収、介護サービスの停止や自動車のタイヤロックなど、強権的な取り立ての“模範例”を自治体にしめし、徴収強化を指導してきました。総務省の方針を受けて国保税や住民税の徴収業務の民間委託が広がり、「地方税回収機構」など広域機関が徴収を担うようになったことも、無慈悲で機械的な取り立てを横行させている一因です。

 さらに、厚労省は、「国保の都道府県化」と一体に2018年度から導入される、「保険者努力支援制度」の“前倒し”と称し、2016年度から、国保料(税)の収納率が高い自治体や収納率の改善幅がすすんでいる自治体に、特別調整交付金を優先配分していく方針です。これも、自治体を「滞納処分」の乱発に駆り立てるツールとなりえます。

 こうした滞納者への制裁推進の動きが強まる一方、2013年、地方税を滞納した自営業者に対する「滞納処分」として、児童手当が振り込まれる専用口座を差し押さえた鳥取県の措置を、「違法」と断じる判決が広島高裁から下されました(2014年確定)。この判決を示した日本共産党議員の質問に対し、厚労省は、国保料(税)滞納への対応でも、公的手当が入る口座を“狙い撃ち”にするような差し押さえはできないこと、生活困窮など個々の滞納者の実情をつかみ、機械的な「滞納処分」をしてはならない旨を答弁しました(2014年11月16日・参院厚労委員会)。これまで、ひたすら「滞納処分」の強化を訴えてきた厚労省が、こうした答弁をしたことは重要です。

 日本共産党は、人権無視の強権的な取り立てを奨励する、行政のあり方を転換します。国保料(税)滞納への機械的な差し押さえをやめさせ、滞納者の生活実態をつかんで困窮者には処分を「停止」するなど、本来の徴税原則にそった対応を徹底します。国保料(税)の延滞金に減免制度を適用し、改善をすすめます。自治体が、住民の生活実態をよく聞き、親身に対応する相談・収納活動ができるよう、国として支援を強めることも必要です。

〔窓口負担の減免を推進する〕

 国保法第44条には、生活に困窮する国保加入者の窓口負担(一部負担金)を、自治体の制度で減免できる旨が規定されています。

 生活悪化で窓口負担を払えない人が急増し、医療機関の未収金も増大するなか、政府も国保法第44条の活用をいわざるを得なくなり、2010年9月、自治体が減免を行った場合に半額を国が負担する措置を始めました。しかし、そこで厚労省がしめした減免基準は、対象者を、▽災害・失業等による収入激減、▽現在の収入が生活保護基準以下、▽預貯金が生活保護基準の3カ月分以下、▽入院治療を受けている人――などに限定し、減免期間も1カ月ごとの更新制で「標準期間」を3カ月とするなど、制度の適用をきわめて“狭き門”にするものでした。

 この国の措置により、多くの自治体が、それまで未活用だった減免制度に目を向けるようになったことは前進でしたが、国の基準があまりに狭く、「恒常的な低所得は対象外」などの“縛り”をつけているため、もともと減免制度を実施してきた自治体の住民からは、「国基準のせいで、かえって制度が後退しかねない」という危惧の声もあがっています。

 貧困と格差が未曾有の規模で広がるなか、窓口負担の減免措置の役割はきわめて重要になっています。国は、対象者を限定する基準を出す一方、自治体による「上乗せ」は「望ましい」ことであり、国基準より広い独自基準を持つ市町村が、それを狭める必要はないと、たびたび明言しています(2010年9月13日・参院厚労委員会における政務官答弁、同日付の厚労省事務連絡「一部負担金減免・保険料徴収に関するQ&A」)

 日本共産党は、国保法第44条にもとづく窓口負担の減免制度の改善・普及・拡充をすすめます。国は基準の見直しを求めるとともに、自治体独自の「上乗せ」を推進・応援し、生活困窮者に医療を保障する取り組みを前進させます。

〔国保問題は貧困問題――真の制度改革を〕

  「国保改革」の議論のなかで、全国知事会など地方団体からは、“被保険者の多くが低所得なのに、保険料負担が重過ぎる”ことこそ「国保の構造問題」であり、この矛盾は、国庫負担の大幅増額によってしか解決できないということが、たびたび指摘されました。自公政権の悪政で貧困と格差が広がるもと、「国保の構造問題」はいっそう深刻となり、滞納世帯の増加、「資格証明書」や無保険の急増、差し押さえの横行など、さまざまな社会的被害が拡大しています。都道府県を“国保の監督者”とすることで、住民負担増、滞納制裁、給付費抑制をいっそう強化するという、自公政権の「国保の都道府県化」では、この矛盾は解決するどころか、いっそう拡大しかねません。

 「国保の構造問題」を解決し、本当に持続可能な医療制度とするには、根本的な制度の改革が必要です。低所得者が多く加入し、保険料に事業主負担もない国保を維持するのに「相当額の国庫負担」が必要であることは、国民皆保険が実現した直後、当時の首相の諮問機関である社会保障制度審議会の勧告も明言していました(「1962年勧告」)。

 日本共産党は、国保への国庫負担を大幅に増額し、保険料水準の全面的引き下げ、貧困層に対する保険料免除制度の確立、「応益割」の見直し・撤廃などの改革をすすめます。“だれもが払える負担額”になってこそ、保険料の収納率は改善し、国保財政は安定します。窓口負担の2割への引き下げや減免制度の拡充など、医療費の負担についても軽減・免除を推進します。

 同時に、正規雇用の拡大、賃上げ、中小企業の振興、農林漁業の再生など、国民のくらし第一の経済政策を推進します。これらの経済改革は、非正規労働者の国保への流入や、国保加入者の所得減に歯止めをかけ、国保財政の基盤強化にも直結します。

〔国保組合の独自給付と国庫補助をまもる〕

 安倍内閣は、「医療保険改悪法」で、国保組合の国庫補助削減も実行しました。

 この間、一部メディアが、建設国保などが取り組む、入院費無料化などの“独自給付”を非難し、国保組合には“特権”があると言い立てる異常なキャンペーンを繰り返してきました。国保組合への国庫補助率は、市町村国保の国庫負担率より低く、建設国保などに「手厚い国庫補助」が出ているという攻撃は事実を偽るものです。建設国保の“独自給付”は、加入者が割高の保険料を負担しながら実施している事業であり、その部分に国庫補助は入っていません。加入業者や家族が、お金の心配なく医療を受けられるようにする取り組みは、公的医療保険の制度本来の主旨にかなったものです。

 国保組合に対する、事実をねじ曲げた一連の宣伝・報道が、社会保障費削減をねらった意図的キャンペーンだったことは明瞭です。今回の法改定では、国庫補助減額の対象は、「被保険者の所得水準の高い国保組合」とされ、建設国保への補助率削減は見送られましたが、財界・政府は、国保組合に対する予算のさらなる削減を狙っています。日本共産党は、偽りの宣伝と卑劣な分断攻撃に反対し、国保組合への国庫補助をまもり、拡充します。

患者「追い出し」・病床削減をやめさせ、必要な治療を保障します

 自公政権は、「早期退院」の誘導を狙った診療報酬の改定(2006年、2014年、2016年)、介護型療養病床廃止の法定化(2006年)、「公立病院改革ガイドライン」(2007年)による病院統廃合と病床削減の推進など、入院患者の“追い出し”を促進・強化する制度改変を累次にわたって続けてきました。これらの連続改悪は、患者や家族の困難を増やし、「介護難民」「医療難民」を増大させる重大要因となっています。

 さらに、安倍政権は、2014年に可決した「医療・介護総合法」で、患者“追い出し”を強化する新たな仕組みを導入しました。

 「総合法」の施行により、国内のすべての医療機関に、病床機能や建物の構造、医療機器や人員の配置を報告させる「病床機能報告制度」が始動しています。医療機関から提出された「報告」データは、国が管理する共通サーバーに集約され、診療報酬の請求のために医療機関が提出した、電子レセプトのデータと統合されます。国は、集めた情報をもとに、都道府県に「地域医療構想」を策定させ、病床機能の「分化」を促進させます。国内すべての医療機関の、施設や診療行為にかかわる全情報を“丸裸”にし、国が“下絵”を描いたうえで、都道府県に病床削減を実行させようというのです。

 2015年3月、厚労省は「地域医療構想」策定に向けた「ガイドライン」を発表しましたが、そこには、現行の一般病床を、診療報酬の取得点数によって、①高度急性期、②急性期、③回復期、④基準未満の4つに区分し、医師や看護師を手厚く配置する病床・施設は①②に限定して、一般病床の多くを③④に“格下げ”することが指示されています。そして、④の病床は療養病床や障害・難病医療などと統合され、大幅な病床削減が要求されます。2015年6月、内閣官房の検討会は、「ガイドライン」の計算方法にもとづく「2025年の医療機能別必要病床数の推計結果」を発表しましたが、そこで示された2025年の病床総数が、現状より20万床の削減となり、30万人を「在宅化」させる方針となっていることが各界に衝撃を与えました。これには、厚労省もあわてて、「地域医療構想」は“機械的な病床削減を求めるものではない”とする通達を出しましたが、給付費削減のために都道府県主導で病床の整理・淘汰をすすめ、入院患者の“追い出し”を強化するという政府の路線は明瞭です。

 「医療・介護総合法」により、都道府県は、各医療機関に「医療機能の転換」「増床の中止」「稼働していない病床の削減」などを要求できることになり、従わない医療機関には、▽医療機関名の公表、▽補助金・公的融資からの対象除外、▽各種指定の取り消しなどの制裁措置をとることが可能となりました。この措置の意味をただした日本共産議員の質問にたいし、厚労省の医政局長は「一応、懐に武器を忍ばせている」と答弁しています。

 この間の経験がしめすとおり、給付費抑制のための病床削減と、入院患者の“追い出し”強化は、患者・家族はもちろん、医療現場にも多大な負担と苦難を背負わせ、「医療難民」「介護難民」を大量に発生させるだけです。

 日本共産党は、強権的な病床削減、患者“追い出し”の強化をねらった制度改悪を中止・撤回させ、必要な医療体制の維持・拡充を図ります。

混合診療の拡大、医療の営利産業化、TPPによる皆保険解体を許しません

 安倍政権は、医療でも「岩盤規制に穴をあける」と叫び、「混合診療」の解禁や、医療分野への営利企業参入など、医療の市場化・産業化に向けた制度改悪を推進しています。

 2015年の「医療保険改悪法」で導入された「患者申出療養」が、今年4月からスタートしました。「患者からの申出」を起点に、さまざまな保険外の治療法と保険診療の併用を認めていくこの仕組みについて、安倍政権は「保険収載が前提」「迅速な安全審査」などの説明を繰り返しましたが、法案審議のなかで、それらの弁明はことごとく破綻し、“患者の同意”を口実に、安全性・有効性の不確かな治療法を、野放図に保険外併用療養の枠にいれていくという、制度の本質が浮き彫りになりました。「混合診療」解禁の“水路”というべき、危険な改悪にほかなりません。

 保険外診療をめぐっては、ほかにも、▽保険収載を前提としない「選定療養」(差額ベッド代など)の対象拡大、▽保険収載の可否を判断する間、「混合診療」を認める「評価療養」の対象拡大(再生医療など)、▽費用対効果やコスト回収の問題で保険収載が見送られた治療法を、保険外併用療養にとどめる新制度――などが検討の俎上にのぼっています(「日本再興戦略」)。まさに、「混合診療」の全面的な拡大です。

 また、安倍政権は、米国の医療ホールディングスカンパニー(持ち株会社)を念頭に、医療法人と社会福祉法人を統合した新型法人の創設を構想し、2015年、新しく「地域医療連携推進法人」を導入する、医療法の改定を行ないました。世論や医療界の意向も受け、「地域医療連携推進法人」は米国式の“全国チェーン”でなく、2次医療圏の範囲で医療法人と社会福祉法人が連携しあう非営利型の法人とされましたが、新法人の理事長は医師・歯科医師でなくても良いとされ、関連事業なら株式会社への出資も可能とされ、議決権に差をつけることで一部の大規模法人による法人全体の実効支配も可能とされるなど、今後の“火種”となりうる規制緩和も実行されました。医療の産業化・営利化を“前のめり”で推進する安倍政権のもと、医療の非営利原則を守る取り組みは正念場を迎えています。

 安倍政権の「規制改革」により、2014年の薬事法改定で一般用医薬品のインターネット販売が解禁されました。さらに、規制改革会議は、今年6月に提示した「規制改革に関する第4次答申」で、処方箋による調剤医薬品についてもインターネットによる販売を可能とする方向を打ち出しています。医薬品の対面販売の原則を突き崩し、患者の安全を危うくする重大な動きです。

 日本共産党は、保険外治療の拡大、「混合診療」解禁にむけた、あらゆる策動を許さず、国民皆保険をまもり、保険医療の拡充をすすめます。「患者申出療養」など保険外併用療養費の野放図な拡大に反対し、「必要な治療はすべて保険で給付する」「安全・有効な治療法は速やかに保険適用する」という原則にそって制度の改善をすすめます。差額ベッド料などの自費負担をなくし、安全で質の高い治療を保険で受けられるようにします。

 医療機関が処方するかぜ薬や胃腸薬など「市販品類似医薬品の保険外し」、軽い病気の治療を保険外にする「保険免責制」など、財界が要求し、安倍内閣が検討・推進する、公的医療保険を縮小する改悪に反対します。

 社会保障と相容れない経営原理の持ち込みや、株式会社による医療経営解禁を許さず、非営利原則をまもります。医薬品の対面販売の原則など、患者の安全を守る規制の撤廃に反対します。

 日本の医療を多国籍企業の新たな儲け口として“開放”し、「混合診療」解禁、医療への営利企業参入、米国製薬企業いいなりの薬価つり上げなど、国民の命と健康を犠牲にしかねない、TPPからの撤退を求めます。

「医療費適正化計画」による給付削減の改悪に反対します

 安倍政権は、2015年の「医療保険改悪法」に、「医療費適正化計画」にかかわる一連の制度改変を盛り込みました。

 「医療費適正化計画」はもともと、医療給付費の総額管理(「キャップ制」の導入)という財界の提言に押され、2006年に法定化された仕組みです。国民世論や医療界の批判を受け、実際に導入されたのは、都道府県に「平均在院日数の短縮」「健診受診率の向上」などの目標を出させつつ、医療給付費は「予測」を書くのにとどめるという、財界からすれば「不十分」な仕組みでした。それでも、この「適正化計画」のもと、病床削減や入院患者の“追い出し”が強化され、「第1期計画期間」とされた2008年~2012年の医療給付費の伸びは「予測」より1・1兆円、抑制されました。

 今回の改定で、「医療費適正化計画」には、医療給付費の「予測」ではなく「目標」が明記されることになり、都道府県には、病床機能の再編、後発医薬品の使用促進、給付の効率化など、「目標」達成に向けた努力が義務づけられました。「目標」を着実に達成するため、都道府県が「適正化計画」の進行状況を毎年検証することや、「目標」と実績とが乖離した場合に分析と対策を講じることも法律に位置づけられています。また、「適正化計画」が定める医療給付費の「目標」と、「地域医療構想」による病床削減、「国保運営方針」による国保の財政運営を「整合」させることも、法文に明記されました。

 都道府県に医療給付費の総額目標をかかげさせ、病床削減や国保の給付削減などで給付抑制を競わせあう――これでは、「キャップ制」と実質は変わりません。

 また、この間、安倍政権は、都道府県による医療給付費の「格差」が大きすぎるとし、医療給付や医療提供体制を「効率化」して、すべて地域の給付費を“全国の低いレベル”に合わせていくべきだと叫んでいます。

 そのために、財務省は、2006年の法改定で導入した“都道府県によって診療報酬に格差をつける”仕組みを本格発動させ、給付費抑制の努力が遅れている地域の診療報酬を引き下げていくことを提案しています。経済財政諮問会議の民間議員は、市町村国保への交付金の基準を「最も効率的な保険者群の医療費」に設定し、医療費水準の高い自治体は交付金を削減して“持ち出し”をせまるべきと主張しています。こんな施策が実行されたら、地域の医療基盤も医療保険もボロボロに崩され、とめどない「医療崩壊」が起こってしまいます。

 住民の命と福祉をまもる地方自治体を、医療切り捨ての先兵に使う改悪など許されません。日本共産党は、「医療費適正化計画」による強権的な給費削減の推進に反対し、都道府県・市町村を医療切り捨てに動員する仕組みの撤廃をめざします。

削減されてきた診療報酬を元に戻し、地域医療を再建します

 2002〜08年度の診療報酬改定で、自公政権が削減した診療報酬は7・68%――年間2・6兆円にのぼります。これが、保険医療に従事するすべての医療機関を経営危機におとしいれ、「医療崩壊」を引き起こす大きな要因となりました。診療報酬の増額による地域医療の立て直しは、医療従事者はもちろん、国民的な要求です。

 こうした世論を受け、2010年度・12年度・14年度の診療報酬改定は大幅なマイナス改定とはなりませんでしたが、2016年度、安倍政権は社会保障予算の「自然増削減」のため、10年ぶりの1%を超える診療報酬削減を強行しました。

 この間、安倍政権が実行してきた診療報酬改変は、医師や看護師を高度急性期に重点的に配置し、入院患者の“追い出し”を強烈に誘導しながら、高齢者・障害者・難病患者など慢性疾患の患者を“在宅・介護”に流し込んでいくというものでした。その結果、中小病院・診療所・療養病床などは大幅な減収に見舞われ、少なくない医療機関が、経営維持の困難に直面しています。給付費抑制を至上命題に、診療報酬を使って、医療資源の集約化、入院患者の“追い出し”、中小医療機関の淘汰をすすめるやり方では地域医療の困難は増すばかりです。

 しかも、安倍政権は、2006年の法改定で導入した“都道府県によって診療報酬に格差をつける”仕組みを本格的に発動させ、給付費抑制の努力が遅れた地域だけ診療報酬を下げるなど、報酬操作による地域医療の切り捨てをさらに強化することも検討しています。

 日本共産党は、診療報酬の総額削減、地域医療を後退させる診療報酬の改悪に反対します。診療報酬を抜本的に引き上げ、2000年代の改悪前の水準を回復して、地域医療全体の底上げをはかります。診療報酬の増額を患者負担増に直結させないためにも、窓口負担の軽減をすすめます。

医師不足を解決し、地域医療体制をたてなおします

 地方でも都市でも、医師不足が重大な社会問題となっています。根本原因は、「医者が増えると医療費が膨張する」といって医師の養成数を抑制し、日本を世界でも異常な「医師不足の国」にしてきた歴代政権の失政です。そこに、診療報酬削減による病院の経営悪化、国公立病院の統廃合・民営化などの「構造改革」が加わって、地域の拠点病院・診療科の消失が引き起こされました。

 この間、国も医学部定員の拡大に乗り出しましたが、医師数がOECD(経済協力開発機構)加盟国の平均よりも11万人も少ない日本の現状からすれば、さらに抜本的な医師増員や医師養成への国の支援が必要です。

 「医療崩壊」を打開するには、削減されつづけてきた診療報酬の抜本的増額、病床削減・病院統廃合の中止、地域医療全体を底上げする医療政策への転換が必要です。

 日本共産党は、「医師数抑制」「病院淘汰・病床削減」路線を転換し、国の責任で計画的な地域医療の確保と再建をはかります。

 ――国の予算投入で医師の養成数を抜本的に増やし、計画的にOECD加盟国平均並みの医師数にしていきます。そのために医学部定員をただちに1・5倍化します。医学部の「地域枠」や奨学金の拡充、教育・研修内容の充実をはかります。

 ――産科・小児科・救急医療などを確保する公的支援を抜本的に強化します。地域の医療体制をまもる自治体・病院・診療所・大学などの連携を国が支援します。

 ――医療の安全・質の向上、医療従事者の労働条件改善、産科・小児科・救急医療の充実などにかかわる診療報酬を抜本的に増額します。

 ――医師の公的任用や公募で医師を確保する「プール制」「ドクターバンク」、代替要員の臨時派遣など、不足地域に医師を派遣・確保する取り組みを国の責任で推進します。

 ――勤務医の過重労働を軽減するため、薬剤師、ケースワーカー、助産師、医療事務員、スタッフの増員をはかります。院内保育所や産休・育休保障など家庭生活との両立をめざします。女性医師の働きやすい環境づくり、産休・育休・現場復帰の保障などを国として支援します。

 ――国公立病院の乱暴な統廃合や民営化、社会保険病院・厚生年金病院・労災病院などの売却をやめ、地域医療の拠点として支援します。

 ――より良い医師を育てるという臨床研修制度の主旨をまもり、研修内容の充実、受け入れ病院への支援強化、研修医の待遇改善をすすめます。

問題の多い「新専門医制度」の延期を求めます

 政府が2017年度からのスタートを予定する「新専門医制度」に、日本医師会や四病院団体協議会など医療団体からいっせいに懸念の声が上がりだしています。この制度が、医療供給体制に重大な影響を与えかねず、しかも国民的議論がつくされていないからです。

 厚労省が計画する「新専門医制度」は、すべての臨床研修医に、2年間の「初期研修(臨床基本研修)」を終えた後、さらに3年間の「後期研修(専門医研修)」を事実上、義務づけ、その「診療実績」などに応じて、「学会から独立した中立的な第三者機関」である「日本専門医機構」が「専門医」の認定をおこなっていくというものです。

 「標準的な医療を提供できる医師」を養成するという「新専門医制度」の主旨は国民も医療界も賛同できるものですが、いま厚労省が導入をすすめる制度をめぐっては、「専門医研修」を実施する「基幹施設」が大学病院などに限定され、地方・中小の病院に研修医が集まらず、地域医療に悪影響を与えかねないことが、医療団体や自治体の懸念となっています。

 医療関係者からは、▽医師の養成期間の長期化により、若手医師の進路選択やワークライフバランスに問題を生じさせかねない、▽“大学医局中心の研修制度”の復活につながりかねない、▽「専門医」が事実上の定員制となり、新たな医師数統制・医療費抑制の仕組みになりかねない――などの懸念の声もだされています。

 日本共産党は、問題の多い「新専門医制度」の2017年度実施は延期し、この制度が地域医療崩壊の新たな要因となることがないよう、医療関係者・患者・自治体の意見も十分に反映させながら、制度の内容や実施時期について再検討をするよう求めます。

看護師不足を解消し、安全でゆきとどいた医療を実現します

 看護師の不足、超過密労働、離職者の急増は、医療の安全をおびやかす重大問題です。

 政府は、2006年の看護師配置基準の改定で、「患者7人に看護職1人」(「7対1」)を配置した医療機関に報酬を加算して、手厚い看護体制を促す仕組みをつくりました。ところが、その後、「7対1」基準の報酬を取得する要件として「重症度・看護必要度」などの基準を導入し、2014年度・2016年度には、“急性期病床の削減” “在宅化”“介護への移行”を促進するため、「7対1病床」の要件を徹底的に絞り込む診療報酬の削減が強行されました。その結果、各地で、「7対1」から撤退し、看護体制を後退させる病院が続出しています。

 日本共産党は、「手厚い看護体制をめざす」という流れを後退させる改悪に反対します。

 本当に手厚い看護体制を実現するには、諸外国に比べて少ない看護師数を抜本的に増やすことが必要です。また、医療機関に「入院日数の短縮」をせまって看護師の過密労働を激化させるなど、給付費抑制のため看護現場に犠牲をしいる医療政策の転換が求められます。看護師の配置基準を満たせない中小・地方病院をさらなる経営悪化に追い込み、選別した病院だけを支援する路線もあらためるべきです。

 日本共産党は、地域医療をまもり、すべての患者に安全でゆきとどいた治療を保障するため、看護師不足の解決に全力をあげます。看護職の抜本的増員、労働条件の改善と地域医療の支援、退職した看護師の再就労支援などで、看護師200万人体制を確立します。

 ――「7対1」基準の報酬を取得できる病院を限定・選別するのをやめ、施設基準を満たす全病院が継続・取得できるようにします。「7対1」以外の配置基準を満たす、すべての病院に対しても、診療報酬を引き上げ、人員体制の確保を応援します。

 ――看護師の労働条件を改善するための公的支援、診療報酬改革をすすめ、「夜勤は複数、月8日以内」という人事院判定の早期実現、産休・育休の代替要員確保、院内保育所の設置、社会的役割にふさわしい賃金への引き上げなどをはかります。

 ――政府として「看護師確保緊急計画」を策定し、看護職員の大幅増員へ抜本的対策を講じます。「行革」の名による看護学校の切り捨てをやめ、自治体独自の看護師増員対策をすすめます。看護教育制度の抜本的充実をすすめます。

 ――退職した看護師の再就労を、国が予算を大幅に増やして支援します。

 ――「医療・介護総合法」で決められた看護師による「特定医行為」の実施は、看護師の負担を増やし、チーム医療の現場に混乱や矛盾を持ち込みかねません。見直し・再検討を求めます。

自公政権による改悪をただし、安心できる医療制度への改善をすすめます

〔協会けんぽの改悪に反対し、中小企業の労働者の医療をまもる〕

 安倍・自公政権が2015年に可決した「医療保険改悪法」には、協会けんぽの国庫補助の削減や保険料の引き上げにレールを敷く、重大な改定が盛り込まれました。

 中小企業の労働者が加入する協会けんぽ(旧政管健保)の国庫補助率は、もともと「16・4%~20%」と法律の本則に規定されていましたが、1992年から2009年までの間、附則の規定を根拠に「13%」に削減され、そこに、不況・賃下げによる加入者の所得減、高齢者医療への過重な支援金負担などが重なったために、慢性的な財政難と保険料の引き上げが続いてきました。2010年度、政府はようやく協会けんぽ本体への国庫補助率を「16・4%」に戻しましたが、その一方で、高齢者医療の支援金にかかわる国庫補助は削減するなど、中途半端な対応に終始してきました。

 安倍政権の「医療保険改悪法」は、協会けんぽの国庫補助の本則の規定を「13%~20%」に書き直し、「16・4%」を附則に“格下げ”しました。法改定後も、協会けんぽ本体への国庫補助は「16・4%」が維持されていますが、中小企業・医療関係者の団体が、この法改定を国庫補助削減への布石ととらえ、警戒・懸念する声を上げたのは当然です。

 また、「医療保険改悪法」には、▽協会けんぽの「準備金」残高が一定額を超えたことを理由に国庫補助を削減する、▽高齢者医療支援金への「総報酬制」導入で協会けんぽの負担を減ったことを理由に国庫補助を削減する――など、あれこれの口実をつけて、協会けんぽの国庫補助を減らす制度改変が盛り込まれました。

 さらに、「医療保険改悪法」で、協会けんぽの保険料率の上限は「1000分の120(12%)」から「1000分の130(13%)」に引き上られました。

 2006年の法改定で、それまで全国単一だった政管健保が、都道府県単位の協会けんぽに分割されて以後、長引く不況、中小企業の経営難と賃下げ、医療給付費の増大のなかで、各地の協会けんぽが保険料の値上げを余儀なくされています。とくに、不況や賃金低迷が深刻な地域では、保険料率は法定上限ギリギリとなっています。こうしたときに、国庫補助削減の制度改変を連打しながら保険料上限の“のびしろ”を増やすのは、保険料値上げの誘導策以外の何者でもありません。この改悪に、中小企業団体や労働組合がいっせいに憤りの声をあげたのは当然です。

 日本商工会議所、日本商工会連合会、全国中小企業団体中央会、日本労働組合総連合会、全国健康保険協会は、2015年に出した連名の要望書で、協会けんぽの財政構造は、医療費等の支出の伸び率が賃金の伸び率を上回り、依然として構造的な赤字は解決していないと訴えています。いま国が協会けんぽにやるべきことは、国庫補助の削減と保険料値上げを誘導する制度改悪ではなく、国庫補助を増やして中小企業の労働者・経営者の負担軽減をはかることです。

 日本共産党は、協会けんぽへの国庫補助を緊急に法定上限の「20%」にまで引き上げ、協会けんぽの財政再建、労働者・中小企業の負担軽減にむけた、国の支援を強化します。2006年・2015年の法改定で導入された、保険料引き上げや給付費抑制の仕組みを撤廃し、中小企業の労働者・家族に国の責任で医療を給付するという、旧政管健保の本来の目的・役割をまもる立場から、制度の改革をすすめます。

 協会けんぽの財政を根本的に立て直すためにも、中小企業支援と一体の最低賃金の引き上げ、大企業と中小企業の公正な取引ルールの確立、国の中小企業振興策の抜本的拡充など、経済改革を推進します。

〔健診をゆがめる制度改悪に反対し、改善・充実をはかる〕

 40〜74歳の国民に「特定健診」を受けさせ、メタボリック症候群の有無を判定する仕組みが導入されて10年がたちました。日本共産党は、この制度が導入された当初から、メタボリック症候群と診断された人を“健康づくりを怠った”かのように扱い、“受診率”や“メタボ改善率”が低いとされた医療保険に財政拠出増のペナルティを科すなど、国民に懲罰を与えて“健康づくり”をせまるやり方を批判してきました。

 特定健診の導入後、「メタボ対策」への特化による検診項目の偏り、旧制度になかった自己負担の徴収など、さまざまな問題が発生しています。さらに、政府はこの間、各人の健診結果と受診履歴をマイナンバーによって“紐づけ”し、“健康づくり”の強要や保険者へのペナルティをいっそう強化することを検討・計画しています。

 「医療の産業化」をすすめる安倍内閣のもと、健診事業に健康機器業界やフィットネス産業が参入し、保険財政が食いものになることへの懸念も広がっています。

 日本共産党は、「自己責任」の名で健診をゆがめ、国民の健康保持に対する国・自治体の責任を後退させる改悪に反対します。病気の予防・早期発見という本来の主旨にたって、健診の改善・充実をはかります。

社会保障の給付削減をねらい、国民のプライバシーを危機におとしいれる共通番号(マイナンバー)の中止・撤回をめざします

  各分野政策の13、「マイナンバー」参照

医科でも歯科でも、国民に安全・安心の医療を保障するために

〔医療保険財政の立て直し〕

 給付費抑制を最優先に、国民に負担増を求め、公的保険を切り縮めて市場原理にゆだねる「医療改革」では、患者の重症化がすすみ、国の医療費は逆に増大するだけです。日本共産党は、減らされ続けた国庫負担を計画的に復元・拡充し、本当に持続可能な医療保険財政の確立をすすめます。その財源は、応能負担の原則に立った税・財政の改革、国民の所得増で税収をふやす経済改革によって確保します。

 この間、大企業の賃下げやリストラ、非正規雇用への置きかえで健保の収入が減り、不安定雇用の労働者が大量に国保に追いやられたことも、健保・国保財政を悪化させる原因です。1980年度と2013年度を比較すると、国民医療費に占める事業主負担の割合は4%――1兆6000億円分も減りました。医療保険財政を立て直すためにも大企業に雇用・賃金・保険料負担に対する社会的責任を果たさせ、中小企業の経営をまもる施策を推進します。

 同時に、不必要な医療費の膨張をただすため、高薬価や高額医療機器など医療保険財政の無駄にメスを入れます。

 予防・公衆衛生や福祉施策の充実に本腰を入れ、国民の健康づくりを推進します。病気の早期発見・治療を進めるためにも、窓口負担軽減が重要です。

 国民の長寿化や医療技術の進歩によって、医療費が増えることは本来、おそれるべきことではありません。日本共産党は、「医療費削減」の名で患者・国民、医療機関・医療従事者に犠牲をしいる路線を転換し、危機にひんした公的医療保障を再建・拡充します。

〔異常な高薬価構造の是正〕

 日本の医療費総額に占める薬剤費の比率は3割を超え、イギリス・フランスの約2倍、ドイツの1・3倍など、国際的にも突出した高水準となっています。その主な要因は、新薬価格の高騰と先発品薬価の高止まり、それを容認・促進する薬価制度(仕切価格制、加重平均値R幅方式、新薬創出等加算など)にあるというのが医療団体の指摘です。新薬価格の算定原案を作成する、厚労省の「薬価算定組織」の議論がすべて非公開とされるなど、薬価の算定過程が国民に隠されていることも黙過できません。不透明な薬価ルールによる異常な高薬価は、いまや医療保険財政を圧迫する重大要因となり、その是正は避けられない課題となっています。

 ところが、安倍政権は「成長戦略」の一環として、「創薬に係るイノベーションの推進」「医薬品産業の国際競争力の強化」をかかげ、それを後押しするため、「真に有効な新薬の適正な評価」の名で、さらなる優遇をおこなうとしています(「骨太の方針」2015)。これでは、薬価構造のゆがみと医療保険財政の窮迫は拡大するばかりです。

 日本共産党は、不合理・不透明な薬価制度やその根底にある政官業の癒着構造にメスを入れ、薬価構造を根本的に見直します。新薬価格を2割引き下げるだけでも、約1兆円の財源確保が可能です。高薬価の是正によって得られた財源を、医療の充実や患者の負担の軽減に振り向けます。

〔高額療養費の改善〕

 安倍政権が推進する高額療養費制度の改悪に反対します。

 低所得者や治療が長期間にわたる患者の過重な医療費負担を軽減するため、応能負担の立場にたった、高額療養費制度の改善を緊急にすすめます。

 高額療養費制度の所得区分をふやし、負担限度額の上限を、現役世代も高齢者も、通院も入院も大幅に引き下げます。重い病気の患者ほど患者負担が自動的に高くなる、「1%」の定率部分をなくします。70歳未満の通院にも、受領委任払いを導入します。70歳未満の入院費の受領委任払いを徹底し、使いやすい制度に改善します。

 限度額の設定を“月ごと”から“治療ごと”にあらため、「治療が月をまたぐと高額療養費が適用されない」という矛盾を解決します。世帯の所得区分ごとに年間をつうじた負担上限額を設け、「同一世帯でも、保険がちがうと医療費を合算できない」問題などについても解決をはかります。

 現行では三疾患(血友病、HIV、人工透析の腎臓病)に限られている「高額長期疾病にかかわる高額療養費の支給特例」を拡大し、療養が長期にわたる場合に対応した「長期療養費給付制度(仮称)」を創設します。

 対象が限定され、当事者が申請しないと適用されない、高額医療・介護合算制度を抜本に見直します。

〔無料低額診療への支援をすすめる〕

 各地に広がってきている無料低額診療への支援を強めます。現在、無料低額診療では、院外処方による薬局での調剤が制度の適用とならず、患者が自己負担を強いられる問題が起こっています。薬剤費への制度適用をすすめ、この問題を解決します。

〔子どもの医療費無料化〕

 日本共産党は、子ども医療費の無料化運動が起こった1960年代から住民運動に協力し、国会でも地方議会でも助成制度実現を求める論戦を展開してきました。

 保護者や住民のねばり強い運動と世論が広がるなか、今日、全国47都道府県・1742市区町村のすべてで子どもの医療費(通院・入院)に対する助成制度が実施されています。しかし、子ども医療費に対する国の助成制度はなく、各地の医療費助成には、対象年齢、所得制限、一部負担の有無など大きな格差があります。しかも、政府・厚労省は、都道府県や市町村が窓口負担を独自に減免すれば、通常より受診が増えて、不必要な給付費増大(波及増)が起こると言いたて、子ども医療費の窓口無料化(現物給付)を行なっている自治体に対し、国保の国庫負担を減額するペナルティを科しています(地単カット)。住民のくらしと健康をまもり、福祉の向上をめざす自治体の努力を国が妨害するなど、本来、絶対にあってはならないことです。

 この間、「子どもの貧困」が社会問題化し、保護者が貧困で受診ができないことによる、子どもの健康破壊が各地で大問題となっています。「国保改革」の論議でも、全国知事会など地方団体からは「地単カット」の廃止を求める声が噴出し、ついに、総務省や公明党など、政府・与党の内部からも「見直し」を求める意見が出されるようになりました。急速な世論の高まりを受け、政府は、「2016年の春までにこの問題の決着をつける」(塩崎厚労相)とたびたび言明しましたが、結局、安倍内閣が5月に策定した「一億総活躍プラン」は、この問題の結論を選挙後の予算編成時に先送りしました。

 深刻化する子どもの貧困と健康破壊をくいとめ、子育て優先の政治に足を踏みだすうえで、国による子ども医療費助成制度の実現は、もはや避けられない課題となっています。小学校就学前の子ども医療費については、すでに全国の自治体で無料化制度が実施されているため、国が制度をつくっても新たな「波及増」が起こらないことは、政府自身も認めています。国の制度創設に必要な予算は2400億円であり、歳出のごく一部を見直せば実現は可能です。

 日本共産党は、小学校就学前の子どもの医療費を所得制限なしで無料化する、国の制度を確立します。その共通の制度の上に、全国に広がった自治体独自の助成制度を、さらに前進させます。

 子ども医療費の無料化(現物給付)をおこなっている自治体の国保に対する、国庫負担の減額調整のペナルティをやめさせ、住民の医療費負担軽減に向けた自治体の努力を推進・応援します。

〔診療報酬の改革〕

 診療報酬は、国民に平等に医療を保障し、“もうけ本位の医療”を許さないための大事な仕組みです。ところが、歴代政権は、医療にかかる国の予算を減らすために診療報酬の仕組みをゆがめ、「医療費削減」の道具にしてきました。現行の診療報酬は、医療従事者の労働を不当に低く評価しており、そのことが、中小病院の経営難や、医療従事者の労働条件悪化の大きな原因となっています。急性期患者の強引な退院を誘導する報酬改定、高齢者・長期入院の“追い出し”を促進する報酬削減、長期リハビリに対する保険給付の制限など、公的医療費の削減をねらったさまざまな報酬操作が、医療現場の矛盾を拡大し、医療従事者と患者の両方を苦しめています。

 日本共産党は、医科でも歯科でも診療報酬の抜本的な増額を求めるとともに、「国民皆保険」をまもり、拡充する立場で診療報酬の改革に取り組みます。診療報酬の総額削減、保険外診療の拡大に反対し、安全・有効な治療はすみやかに保険適用とする仕組みをつくります。“安上がり医療”をねらった「包括払い(定額制)」の導入・拡大に反対し、「出来高払い」による給付をまもります。薬・医療機器にかたよった報酬評価のあり方を見直し、医療従事者の労働を適正に評価する診療報酬に改革します。

 すべての医療機関における基本診療料である初・再診料、入院基本料を適正に評価し、引き上げます。

 急性期病床の削減と“在宅化”“介護への移行”を促進するため、2014年度・2016年度の診療報酬では「7対1」病床の絞り込みが行われました。「7対1」取得に該当しなくなった病院は大幅な減収になり、赤字経営で地域医療を支える病院がさらなる苦境に追い込まれる事態が起こっています。「7対1」病床を出た患者の“受け皿”として「地域包括ケア病棟」が新設されましたが(2014年度)、ここにも“60日以内の退院”“70%以上の在宅復帰”などの要件が課されるため、取得できる病院は限定され、患者も病院も退院後の行き先探しに右往左往し、地域間の医療連携が阻害される事態も起こっています。

 2012年度改定で、▽長期入院・回復リハ・慢性期病床への報酬削減、▽DPC対象病院の再編と「効率化」の誘導、▽在宅支援診療所の「機能強化型」と「従来型」への線引きなどの改定が行われましたが、いずれも、“在宅化”と“介護への移行”を誘導する一方、診療所や中小病院にかかわる報酬を低く抑えていく改変です。このように、患者の「追い出し」や医療機関の淘汰を誘導する報酬改定では「医療崩壊」は深刻化するばかりです。地域医療全体を底上げする立場で、診療報酬体系の抜本的な見直しを進めます。

 高齢者や長期入院患者の給付費削減をねらった差別的な診療報酬の廃止を求めます。

 地域医療・救急をささえる病院を大幅な減収に追いこみ、病院に「保険外併用療養」の採用をせまる、「総合入院体制加算」を撤回させます。

 標準算定日数を超えたリハビリを「保険外併用療養」とする改悪を許さず、リハビリ日数制限の全面撤回と制度の再構築を求めます。

 厚労省は、2014年度の「7対1」病床に係る診療報酬改定で、難病患者や肢体不自由者を「平均入院日数」の計算から除外し、入院日数が90日を超えても入院基本料が減らないようにしてきた「特定除外制度」を廃止してしまいました。まさに、難病患者や障害者を“追い出し”の対象としていく改悪です。厚労省は他にも、脳卒中や認知症の患者を受け入れる「特殊疾患病棟」「障害者施設」の報酬を引き下げるなど、重症患者を狙い撃ちにした“追い出し”強化を進めています。これらの非情な改悪を是正し、難病患者、障害者、長期の治療が必要な重症患者が、安心して療養に専念できる報酬・体制をととのえます。

 人工透析の「夜間・休日加算」の引き下げにより、外来の夜間透析が受けにくくなり、患者の困難が続いています。患者負担の軽減をすすめながら、適切な報酬への引き上げをはかります。

 入院中の患者が他の医療機関で受診した場合、▽入院医療機関に支払われる入院料を減額する、▽他医療機関が算定できる報酬の範囲を制限する、▽他医療機関による投薬を当日分に限る――など、2010年度の報酬改定で導入された報酬削減・投薬規制に、医療現場からは「入院患者に必要な医療を提供できない」「医療機関の連携を阻害する」などの批判の声が上がっています。日本共産党の国会論戦などを受け、投薬規制の一部は見直されましたが、入院医療機関への報酬削減、他医療機関の算定範囲の制限、包括払い病床の患者に対する投薬規制は、今も続いています。地域医療の実態とかけ離れ、患者・医療機関の双方に困難をもたらす、不合理な報酬のあり方をあらためます。

〔出産一時金の引き上げと改善〕

 出産に要する費用は年々高騰しています。それに見合うように、出産一時金の金額を、大幅に引き上げます。

〔歯科医療の充実〕

 政府は、歯科の診療報酬を不当に低く抑え、自費診療・混合診療を拡大してきました。

 基礎的な診療行為の保険点数が長年にわたって据え置かれ、新たな歯科技術の保険収載も大幅に遅れるもと、多くの歯科医は経営難にあえぎ、少なくない開業歯科医が「ワーキングプア」となっています。患者は保険だけでは十分な治療が受けられず、高い自費負担に苦しめられています。

 歯科医療従事者のねばり強い運動や日本共産党の国会論戦を受け、2012年度の診療報酬改定では歯科報酬の1・7%引き上げが行われ、基礎的な診療行為や訪問歯科診療にかかわる報酬の是正などが進んでいますが、劣悪な水準の抜本的な改善にはいたっていません。歯科診療報酬の抜本的な増額・改革が必要です。

 日本共産党は、国民の口腔の健康をまもり、「保険でよい歯科治療」を実現するため、歯科診療報酬の抜本的な増額と改革、歯科医療の充実にむけた支援を進めます。

 初診料・再診料の水準を抜本的に引き上げ、医科・歯科間格差を是正します。医科・歯科ともに窓口負担の抜本的軽減を進めます。

 歯周病の治療・管理や義歯に関わる包括的・成功報酬型の診療報酬を撤廃し、治療行為を適正に評価する報酬に改定します。画一的な文書提供業務の押しつけをやめさせます。

 国民の歯科医療への需要の高まりや、治療技術の進歩に対応し、保険治療の大幅な拡大と保険外治療の解消をはかります。金属床の部分入れ歯など、実績もあり、広く用いられている治療法を、長らく自費負担にとどめるなどの施策を改め、安全・有効で実績のある治療法はすみやかに保険給付の対象としていきます。現在、保険で給付されている補綴物の保険給付外しに反対し、「混合診療」となっている欠損・補綴の保険移行をすすめます。

 歯科技工士や歯科衛生士の役割を、適正に評価する診療報酬にあらためます。入れ歯にかかわる診療報酬の改悪により、歯科技工所の経営難・廃業が加速し、新たに歯科技工士となる若い人を確保できないなどの事態が深刻化しています。一方で、安全や品質に規制のない安価な海外技工物が大量に輸入され、自費診療で使用されています。歯科技工士が安心して仕事を継続でき、歯科医と連携して「よい入れ歯」を保険で給付できるよう、歯科技工物にたいする診療報酬の改善をすすめます。海外技工物の輸入・使用・安全性の実態を調査し、材料・製作者・技工所などの基準を設けて規制をおこないます。

 歯科健診の充実など、国民の口腔の健康をまもる取り組みを国の責任で推進します。

〔感染症の発生・拡大・重症化を防止する施策を国の責任で推進します〕

  欧米諸国では「命脈がつきた」と言われる、はしかの患者が毎年10万人以上も発生し、風疹の患者数も世界ワースト4位(2012年・WHO調査)、毎年のようにインフルエンザが流行して、HIV・エイズ患者も増加傾向にあるなど、日本は先進国のなかで屈指の「感染症大国」です。

 西アフリカを中心とするエボラ出血熱の国際的な感染拡大、中南米を中心とするジカ熱の流行、韓国でのMERS(中東呼吸器症候群)の感染の広がり、デング熱の国内感染などを受け、感染症に対する国民の不安が高まっています。

 ところが、国の感染症対策の中心として研究、ワクチン開発、流行状況の調査・監視などを行う国立感染症研究所では、経常研究の予算が不足して電気代が払い切れず、資料保存に欠かせない超低温槽の休止まで検討されたような状況が続いています。

 感染症が発生・流行した場合、実際の治療・予防の拠点となるのは地域の専門医療機関や保健所ですが、「医療費削減」「採算重視」を求める政府の路線のもと、感染症指定医療機関は100施設・3400床も削減され、保健所も、地域保健法改定前(1994年)の847カ所から490カ所(2014年)へとほぼ半減させられました。

 空港・海港などでの水際検疫の体制も、この間、検疫官の定数増がはかられましたが、海外渡航者の激増には追いついていないのが現状です。

 日本共産党は、感染症の研究・ワクチン開発体制の抜本的拡充、地域の医療・保健体制の再建、水際検疫体制の抜本的強化をすすめます。予防接種の推進、正確な知識の普及など、感染症の発生をくいとめ、重症化を防止する施策を国の責任で推進します。国際的な感染症対策に対する人的・財政的支援を強めます。

 エボラ出血熱、デング熱、MERS、ジカ熱など、再興感染症・新興感染症の発生・拡大などにそなえ、国立感染症研究所の予算・体制を抜本的に拡充します。

 エボラ出血熱や、MERS、ジカ熱など、世界的規模で拡大する感染症を予防するため、水際検疫体制の強化、ワクチンや治療法の研究・開発の促進、発生時に備えた専門医療機関と保健所の体制確保、一般医療機関への情報提供と国民への知識普及などを、緊急にすすめます。国際社会と共同し、感染国に対する支援の強化をはかります。感染国から帰国した邦人に対する調査・予防の措置は、人権を守る立場から行うようにします。

 強毒性の新型インフルエンザ流行に備え、ワクチン製造システムの確立、抗インフルエンザ薬とプレパンデミック・ワクチンの備蓄量の大幅増などを推進します。

 はしか・風疹対策をすすめます。国の責任でワクチンを備蓄し、追加接種が必要な人には公費助成をおこなうなど、感染・流行を防ぐ、あらゆる手立てをとります。

 HIV、梅毒、クラミジアなど性感染症の予防・治療をすすめます。教育・保健の連携による性にかかわる正しい知識の普及とHIV・エイズの予防法の周知、「無料・匿名」のHIV検査の体制強化、一般医療機関への情報提供による早期発見の推進、患者の人権をまもる取り組みの強化など、HIV・エイズ対策を推進します。

 保護者・住民の長年の運動によって実現した「ヒブワクチン」「小児用肺炎球菌ワクチン」の公費接種事業について、保護者の負担軽減・無料化など制度のさらなる充実をめざします。

 子宮頸がん予防が重要課題となっていますが、この間、公費接種の対象となったワクチンについては、副作用の頻度が高く、重い症例もあることが問題となっています。接種勧奨は再開せず、疫学調査もふくめた副反応被害の徹底した検証をすすめます。

 おたふくかぜ、ロタウィルスワクチンの定期接種化をすすめます。

 今後も予想される、さまざまな感染症の発生・流行にそなえ、閉鎖・削減してきた感染症指定医療機関の復活、拠点病院への専門医・看護師の配置、公立病院の強引な統廃合の中止と体制強化、医療機器の整備、保健所の体制強化、ワクチンの研究・製造システムの確立をすすめます。

〔医療の安全、患者の権利の確立〕

 日本共産党は、医療事故の検証と再発防止に取り組む第三者機関の設置を早くから提案してきました。「医療・介護総合法」で医療事故調査の「第三者機関」が設置されたことは一歩前進ですが、▽公費負担の確保、▽遺族の費用負担の問題、▽医療機関が事故を認めなかった場合に遺族から調査請求できるようにすること――など、さまざまな課題が残されています。真に実効ある制度となるよう問題提起や改善をすすめていきます。

 分娩時の事故で子どもが脳性まひとなった場合に補償をおこなう「産科医療補償制度」が始まって7年がたちますが、補償の対象が限定されるなか、巨額の保険料が余る状態が続いており、基金の運営の透明性・公平性にも疑問がだされるなど、多くの問題点が指摘されています。現行制度の抜本的見直しをすすめつつ、諸外国のような幅広い医療事故に対応できる無過失補償制度の創設をめざします。

 患者の権利を明記し、医療行政全般に患者の声を反映する仕組みをつくる「医療基本法」の制定をすすめます。

 医療内容のすべてを反映せず、患者のための情報開示というニーズを満たさない一方、医療現場に負担をしいるだけとなっている、現行の「診療明細書の発行」を見直し、患者に医療の内容をわかりやすく知らせる、情報開示の仕組みを整備します。

〔がん対策〕

 日本国民の死因の第1位である、がんの予防・治療には、国が総合的な対策をすすめることが必要です。ところが、歴代政権は、窓口負担の引き上げや国保料(税)滞納者からの保険証とりあげなど、がんの早期治療に逆行する施策をとりつづけてきました。自民党政権が、がん検診にたいする国庫補助を廃止したために、各地で、がん検診の有料化や対象者選別、検診内容の劣悪化などの事態が起こっています。「医療崩壊」が進行するもと、がんの治療・予防の地域格差も深刻な問題となっています。

 がん対策基本法の主旨にのっとり、どこにいても必要な治療・検査を受けられる、医療体制の整備が必要です。国の責任で、専門医の配置や専門医療機関の設置をすすめ、所得や地域にかかわらず高度な治療・検査が受けられる体制を確立します。未承認抗がん剤の治験の迅速化とすみやかな保険適用、研究予算の抜本増、専門医の育成、がん検診への国の支援の復活など、総合的がん対策を推進します。

 現在、国会で見直しがすすめられている、がん対策基本法の改正について、当事者の声を反映させ、基本理念に「希少がん、難知性がん、小児がん対策の一層の推進と、社会的支援策の必要」を加えるよう求めます。

 がんの早期発見・早期治療がすすみ、長期の治療を続けつつ、がんとともに生きる患者が増えるなか、高額な自己負担が治療継続の大きな壁となり、金銭的な理由による治療の断念、貧富の格差による治療の格差が生じる状況となっています。ヨーロッパ諸国では、長期療養が必要な患者に、疾病の別なく、手厚い給付と負担の軽減をはかる仕組みが整備されています。日本でも、「高額療養費の支給特例」の改善・拡充、公費助成の導入など、長期治療が必要な患者に自己負担の心配なく給付を保障する公的制度の確立を急ぎます。

〔薬害・肝炎対策〕

 薬害(肝炎、MMRなど)の解決と被害者救済に全力をあげます。

 薬害C型肝炎訴訟の原告・弁護団の運動がみのり、2008年、薬害発生と被害拡大に対する国の責任を明記し、血液製剤によってC型肝炎に感染した被害者を救済する法律が成立しました(2012年改正)。しかし、現行の救済法では、カルテのない被害者の救済が困難で、対象となる血液製剤は限定され、先天性疾患の治療や“血液製剤以外の経路で感染した被害者”は救済対象から外されています。日本共産党は、すべての被害者の一律救済をはかり、製薬企業にも謝罪・補償・再発防止をおこなわせるなど、全面解決にむけた努力をつづけます。

 B型肝炎についても、原告・弁護団の運動がみのり、2011年6月、集団予防接種における注射針の使い回しなど、国の責任を明記した「基本合意」が成立し、B型肝炎特別措置法が成立しました。しかし、国の体制の不備から個別の患者の救済は遅れ、全国に約45万人にいるとされる被害者のうち、提訴した被害者は約3万人、うち和解にまで至ったのは約2万人という到達です。2016年の法改正で、給付金の請求期限の5年延長、発症又は死亡後20年以上を経た患者への給付金支給など一定の改善もはかられましたが、救済のスピードアップや被害者の“線引き”をやめることが引き続き急務となっています。国の体制整備の遅れを解消し、全被害者の救済をすすめるとともに、差別・偏見解消の取り組みなど、全面解決にむけた努力を行います。

 薬害肝炎原告・弁護団と国が結んだ「基本合意」、薬害肝炎検証委員会の『最終提言』にもとづき、薬害防止を目的に医薬品行政を監視する第三者機関の早期設置を求めます。

 350万人とも言われるウィルス性肝炎患者の治療推進と生活支援にむけ、肝炎対策基本法のさらなる充実、ウィルス性肝硬変・肝がん患者に対する医療費助成制度の早急な創設を求めます。C型肝炎に対する肝がん予防を目的としたインターフェロン投与や、B型肝炎に対する核酸アナログ製剤の使用などの有効性をすみやかに確認し、必要な検査・治療は迅速に医療費補助の対象としていきます。すでに着手しているB型肝炎ウィルスを排除する治療薬等の研究開発を加速させます。

 ウィルス性肝炎を「高額長期疾病にかかわる高額療養費の支給特例」の対象に追加し、患者負担を軽減します。「肝炎ウィルス無料検査」の拡充、「肝疾患診療連携拠点病院」の整備、「肝炎情報センター」の機能拡充など、陽性患者の早期発見と治療に向けたフォローアップの施策を推進し、情報提供、研究体制の充実をはかります。

〔たばこによる健康被害をなくす取り組みを進める〕

 世界保健機関(WHO)の総会が「たばこ規制枠組み条約(FCTCF)」を加盟国の全会一致で採択し、国会で同条約が衆参両院で承認されるなど、世界でも日本でも、たばこの害についての認識が広がっています。

 受動喫煙を防止するため、公共施設・飲食店等における禁煙を推進します。「タバコ規制法」の制定をすすめます。たばこの需要減少や年少者の喫煙防止をはかるため、たばこの価格や課税の引き上げ、税収をたばこの害から健康をまもる施策に充てる取り組みを求めます。

〔医療機関への消費税ゼロ税率適用、事業税非課税・租特法26条の存続〕

 保険診療などの医療費は消費税非課税とされていますが、病院や診療所が購入する医薬品・医療機器などには消費税が課税されています。これによって医療費の負担も増え、医療機関の経営も圧迫されています。保険診療には「ゼロ税率」を適用し、医薬品などにかかった消費税が還付されるようにします。

 社会保険診療報酬に係る事業税の非課税措置を継続します。租税特別措置法第26条等に規定された、医療機関の概算控除の特例を存続させます。

〔救急医療の拡充〕

 救急医療の確保は、人の生死を左右する重大課題です。ところが、救急医療の現場では、出動件数の急増に隊員数の増加が追いつかず、患者の命が脅かされる状況が続いています。「医療崩壊」のなかで、救急患者の搬送先が見つからないという問題も深刻です。

 日本共産党は早くから国会でドクターヘリ導入を提案するなど、救急体制の充実を一貫して要求してきました。救急隊員の抜本増、地域医療の再生とあわせた救急・搬送体制の整備・拡充をすすめます。救急車の有料化、通報段階で患者の「緊急性」を選別して切り捨てる「トリアージ」の導入など、救急医療の改悪に反対します。

 国の責任で小児救急体制を整備し、新生児特定集中治療室(NICU)を計画的に増やします。

〔助産師・助産院への公的支援〕

 「お産難民」が社会問題となるなか、助産師・助産院の役割はますます重要となっています。ところが、自公政権は2006年、嘱託医・嘱託医療機関を確保できない助産院の開業は認めないとする法改悪を強行し、多くの助産院を廃業に追い込みかねない事態を引き起こしました。その後、政府・厚労省は対応を一定あらためましたが、事態が完全に解決されたとはいえません。

 日本共産党は、みんなが安心してお産のできる環境を確立し、助産院ならではの、喜びと満足のある質の高いお産を普及・発展させるため、助産師の養成数を増やし、助産院に対する公的支援をすすめます。助産院を地域の周産期医療ネットワークに位置づけ、「院内助産所」の設置をすすめるなど、助産師と産科医の連携を国の責任で推進します。

〔在宅医療・介護における駐車問題の解決〕

 在宅医療、訪問看護、訪問介護の分野では、一定時間の駐車が避けられませんが、その仕事に従事している人たちは、駐車禁止で取締りを受けることに不安を感じながら仕事をしなければならないのが実態です。 駐車許可を得るには、煩雑な手続きや実態と合わない基準が障害となっている現状を改め、柔軟で実態におうじた道交法上の配慮を求めます。

 

 

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