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日本共産党

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赤旗

2014年総選挙各分野政策

2、医療

安倍政権がねらう医療大改悪を許さず、「医療崩壊」を打開し、だれもが安全・安心の治療を受けられる医療制度を確立します

2014年11月


●「選挙が終われば負担増」――安倍政権がねらう医療制度の連続大改悪をくいとめます

 「医療・介護を中心に社会保障給付について、いわゆる『自然増』も含め聖域なく見直(す)」(骨太方針2014)と宣言した安倍内閣のもと、医療制度のかつてない大改悪が次々と打ち出されています。

 70~74歳の窓口負担の1割から2割への引き上げが、今年4月以降に70歳となった人から順次、実施されています。

 安倍・自公政権が今年6月に可決を強行した「医療・介護総合法」には、国の方針に基づいて都道府県が新たな病床再編計画をつくり、従わない病院にはペナルティを科して、増床中止や病床削減を“命令”できるようにする仕組みが盛り込まれました。

 そして、厚生労働省の社会保障審議会・医療保険部会では、▽後期高齢者医療保険料の「特例軽減」を打ち切り、1600万人の加入者の半数を超える865万人の低所得者に保険料の2~10倍の保険料値上げを押しつける、▽一般・精神・65歳未満の療養病床の入院食費負担を大幅に引き上げる、▽高齢者の自己負担をさらに引き上げる、▽協会けんぽの保険料率を引き上げる、▽国保料(税)の負担上限額を引き上げる、▽国保料(税)の負担増や滞納制裁の強化につながる市町村国保の都道府県単位化――など、2015年通常国会への法案提出に向け、“老いも若きも大負担増”の計画が検討されています。

 当初、厚労省は、これらの負担増案を盛り込んだ医療制度の「改革試案」を11月14日の医療保険部会に提案する予定でしたが、自民党から“選挙前に公表されたら与党にマイナスになる”と横槍が入り、審議会は急きょ中止されました。まさに、政府と与党が結託しての“争点隠し”にほかなりません。同月18日、この問題を追及した参院厚労委員会における日本共産党議員の追及に対し、厚労相は「閣議決定で道筋がついている。粛々とやっていく」と負担増計画を推進することを明言しました。“選挙が終われば大負担増”――これが、安倍内閣が医療で狙っていることです。

 また、安倍内閣は、「日本再興戦略・改訂2014」に、「患者申出療養(仮称)」創設をはじめ、評価療養・選定療養も含めた保険外併用療養の大幅な拡大や、医療法人に対する参入規制の緩和など、医療の市場化・営利化につながっていく制度改変を検討・実行していく方針を銘記しました。アメリカ型ルールを日本社会に押しつけるTPP(環太平洋連携協定)の推進とあわせ、国民皆保険と医療の非営利原則を脅かす、かつてない危険な動きが進行しています。

日本共産党は、安倍政権がすすめる医療制度の連続大改悪に反対し、医療・社会保障の充実を求める多くの国民・医療関係者と共同し、その阻止のために全力をあげます。

「消費税にたよらない別の道」――①富裕層・大企業への優遇税制をただし、応能負担の原則に立った税制改革をすすめる、②大企業の内部留保を活用し、国民の所得を増やす経済改革を実行して税収を増やす――で安定した財源を確保し、公的医療保障の再生・拡充を実現します。

 

●高すぎる窓口負担を軽減し、先進国では当たり前の“窓口無料”をめざします

 「現役世代=3割、高齢者=1~3割」という窓口負担に国民が悲鳴をあげ、深刻な受診抑制が起こっています。東京大学医科学研究所の調査によると、糖尿病など慢性疾患の患者のうち、「医療費の支払いに負担を感じる」という人は7割、「治療の中止を考えた」という人は4割にのぼります。東北大学の研究者の推計でも、がん患者のうち、経済的理由で治療中断や治療内容の変更をしている人は、少なくとも数万人いるとされています。

 ところが、安倍政権は、70~74歳の窓口負担の2割への引き上げを強行し、2015年の通常国会に、75歳以上の窓口負担をさらに引き上げる法案の提出をねらっています。

 65歳以上の療養病床の入院食費が、介護施設との“横並び”で「1食=460円」(1カ月:4万1,400円)なのに、一般病床・精神病床・64歳以下の療養病床の入院患者の入院食費が「1食=260円」(1カ月:2万3,400円)なのは「世代間格差」だとし、“高齢者並み”に引き上げる改悪も計画されています。高齢者には「世代間格差の解消」の名で保険料の引き上げなどを求める一方で、現役世代には「世代間格差の解消」の名で入院食費の負担増を求める、まさに、“高い方に合わせる”だけのご都合主義です。

「紹介状なし」の大病院の受診患者に、追加負担を求めることも検討されています。

 日本共産党は、あらゆる窓口負担増の改悪に反対し、軽減を求めます。▽子ども(就学前)は国の制度として無料とする、▽現役世代は国保も健保も2割に引き下げる、▽高齢者は今の制度で「現役並み所得者」とされている人も含めすべて1割とする――これが、日本共産党の提案です。

ヨーロッパ諸国やカナダでは、公的医療制度の窓口負担はゼロか、あっても少額の定額制です。日本も1980年代までは「健保本人は無料」、「老人医療費無料制度」でした。将来的には、安定した財源を確保し、“窓口負担ゼロ”の医療制度に前進していきます。

 

●後期高齢者医療保険料の大幅値上げに反対し、差別制度の撤廃をめざします

 後期高齢者医療制度は、国民を年齢で区切り、高齢者を別枠の医療保険に強制的に囲い込んで、負担増と差別医療を押しつける空前の悪法です。2008年の制度導入以来、すでに3回にわたる保険料値上げが実施され、高齢者の生活を圧迫する重大要因となっています。

 安倍内閣は、後期高齢者医療保険料の「特例軽減」を打ち切り、低所得の高齢者に大幅な負担増を押しつける計画を打ち出しました。後期高齢者医療制度の導入時、“列島騒然”の怒りの世論に包囲された自公政権は、▽保険料が「7割減額」となる低所得者の保険料をさらに引き下げて「8・5割減額」とする、▽「7割減額」の対象者のうち、年収が80万円以下の人はさらに引き下げて「9割減額」とする、▽健保や共済の被扶養から後期高齢者医療制度に移らされた人も保険料を「9割減額」とするなど、保険料の「特例軽減」の仕組みをつくりました。国民の怒りに追いつめられ、負担増を“緩和”せざるを得なくなったといえます。ところが、安倍内閣は今年6月の「骨太方針」で、この「特例軽減」の打ち切りを表明し、それを2015年の「医療保険改革」の重要な柱と位置づけたのです。

 「特例軽減」がなくなれば、現在、「8・5割減額」を適用されている人の保険料は「7割減額」となり、保険料は2倍に引き上がります。年収が80万円以下で「9割減額」を適用されている人の保険料も「7割減額」となり、その場合、負担は3倍に跳ね上がります。健保・共済の扶養家族だった人は、後期高齢者医療制度に移って2年以内なら「5割減額」、3年目以降は「全額負担」とされますが、そうなれば、保険料は現行の5倍から10倍です。まさに、低所得・低年金の高齢者を狙い撃ちにした大負担増です。

 2008年、後期高齢者医療制度の導入を担当した当時の厚労省課長補佐が、地方での講演で、「医療費が際限なく上がっていく痛みを高齢者に直接感じてもらう」と発言し、大問題となりました。高齢者に際限ない保険料の値上げを押しつけ、“負担増を我慢するか、医療を受けるのを我慢するか”をせまるという制度の本性が本格的に高齢者に襲いかかろうとしています。

 日本共産党は、安倍政権が計画する、後期高齢者医療保険料の大幅引き上げに断固反対します。差別と負担増の制度を廃止し、元の老人保健制度に戻します。老人保健制度は、高齢者が国保や健保に加入したまま現役世代より低い窓口負担で医療を受けられるようにする、財政調整の仕組みです。老人保健制度に戻せば、保険料の際限ない値上げや別枠の診療報酬による差別医療はなくなり、高齢者が75歳になったとたんに家族の医療保険から切り離されることもなくなり、65~74歳の障害者も国保や健保に入ったまま低負担で医療を受けられます。差別の制度を廃止したうえで、減らされてきた高齢者医療への国庫負担を抜本的に増額し、保険料・窓口負担の軽減を推進します。

 

●「国保の都道府県単位化」に反対し、国民健康保険の再建・改革をすすめます

 市町村が運営する国民健康保険では、「所得250万円の4人家族で国保料45万円」など、住民の支払い能力をはるかに超える国保料(税)が、全国各地で大問題となっています。高すぎる国保料(税)を完納できない滞納世帯は加入世帯の約2割にのぼり、滞納制裁として保険証を取り上げられた生活困窮者が医者にかかれず重症化・死亡したり、生計費を差し押さえられた滞納者が、餓死や自殺に追い込まれるなどの事件も多発しています。

 こうした事態を引き起こした元凶は、国の予算削減です。歴代の自民党政権は、1984年の国保法改悪で国保の国庫負担を引き下げたのを皮切りに、国保の財政・運営に対する国の責任を後退させてきました。1984年度から2010年度の間に、市町村国保の総収入に占める国庫支出金の割合は50%から25%へ半減し、それと表裏一体に、一人当たりの国保料(税)は3・9万円から8・9万円へと2倍以上に引きあがりました。

国保財政を危機に追いやっている、もう一つの要因は、加入者の所得減・貧困化です。かつて国保加入者の多数派は自営業者と農林漁業者でしたが、今では国保世帯主の4割が年金生活者、3割が非正規労働者です。国保の加入世帯の平均所得は、1991年の260万円から2010年度は145万円へと激減しています。加入者が貧困化しているのに、保険料が上がり続けるのでは、滞納が増えるのは当然です。日本社会を未曽有の貧困がおおっている今、国保制度の抜本的な改革はもはや避けられません。

 ところが、この間、自公政権や民主党政権は、国保の根本問題の解決に背を向けたまま、市町村国保を「都道府県単位」に寄せ集めて市町村の一般会計繰入をなくし、都道府県の監視のもとで住民負担増や収納対策を推進するという、国保「広域化・都道府県単位化」を言いだし、そのための制度改変を繰り返しています。安倍政権は、2015年の通常国会に提出予定の「医療保険改革」法案に、「国保の都道府県単位化」を“完成”させる制度改変を盛り込む構えです。

 市町村の独自繰入をなくして国保料(税)をさらに引き上げ、保険証のとりあげや差し押さえなど無慈悲な滞納制裁がいっそう強化されるのでは、住民の苦難は増すばかりです。こんな「都道府県単位化」は、住民にとって何のメリットもありません。

日本共産党は、安倍政権がすすめる「国保の都道府県単位化」に反対し、国の責任による国保料(税)の抜本的引き下げ、生活困窮者に対する保険証とりあげや機械的な滞納制裁の中止、国庫負担増と貧困打開による制度の再建など、抜本的改革を提案します。

〔高すぎる国保料(税)を引き下げ、低所得者の負担減免をすすめる〕

 国庫負担の削減と加入者の所得減が進行するなか、各地の国保料(税)は高騰を続け、生活保護基準以下の世帯が年間30~40万円の負担を求められるなどの異常事態となっています。低所得者への減免と同時に、国保料(税)の水準自体を引き下げる改革が急務です。

 日本共産党は、国の責任による国保料(税)の1人1万円(4人家族なら4万円)の軽減を提案しています。具体的には、国保料(税)の「応益割」(均等割・平等割)の部分を、国費の投入によって引き下げます。所得にかかわらず“頭割り”で課される「応益割」の引き下げは、国保料(税)の逆進性を緩和し、中・低所得者の負担を軽くするものです。そのうえで、減らされつづけた国保の国庫負担割合を抜本的に引き上げ、“だれもが払える国保料(税)”に改革していきます。

低所得者にたいする国保料(税)の減額・免除制度を拡充します。現行制度にも、失業者で収入が激減した人への「所得割」の減額措置や、災害・盗難・事業不振など「特別な事情」で所得が減った人に自治体の判断で国保料(税)を減免する仕組みなどが法定されていますが、適用を受けられる人は限られています。急激な収入減におちいった人はもちろん、恒常的な低所得者を対象とした減免制度を国の責任で整備します。

国保料(税)の負担上限の引き上げに反対します。日本共産党は、被用者保険の保険料については、上限を引き上げ、高額所得者の応分の負担を求めるよう提案していますが、国保の場合、多くの市町村で、所得600万円程度で上限に達しており、現行のまま上限を引き上げれば、高額所得とは到底いえない層が負担増となってしまいます。

「応益割」偏重の是正、住民の生活実態を反映しない「所得割」の「旧ただし書き方式」の見直し、固定資産税を根拠に低所得者に負担を強いる「資産割」の撤廃など、逆進的な国保料(税)の元になっている、不合理な算定式を見直します。

〔生活困窮者からの国保証取り上げをやめる〕

 国保料(税)滞納を理由に正規の保険証を取り上げられ、医療費の10割負担を求められる「資格証明書」や、期限を区切った「短期保険証」に置きかえられた世帯は150万世帯を超えています。「短期保険証」を自治体の窓口に「留め置き」にされ、無保険状態になっている人、「派遣切り」などで健保を追い出され、国保にも「未加入」のまま無保険となっている人も多数にのぼります。こうして「資格証明書」や無保険となった人が医者にかかれず、重症化・死亡する事例が全国で多発しています。

 国民の命と健康をまもる公的医療保険が、住民の生活苦に追い打ちをかけ、医療を奪うことなどあってはなりません。保険証取り上げの制裁措置を規定した国保法第9条を改正し、保険証のとりあげをきっぱりとやめさせます。

〔強権的な取り立てをやめ、住民の生活と権利まもる行政に〕

 「収納率向上」のかけ声のもと、生活苦や経営難で国保料(税)を滞納せざるを得なくなった人に対する無慈悲で強権的な差し押さえが全国で大問題となっています。

 大阪市では、苦しい生活と経営のなかでも、役所と相談して分割納付をしている人に、突然、“滞納分を全額払わないと財産を差し押さえる”という督促状が送られ、受験生の子どもを持つ自営業者に“学資保険の差し押さえ”が通告される事例が起きました。

給与・年金の生計費相当額、児童手当などの公的手当は本来、法律で「差し押さえ禁止財産」となっていますが、銀行に振り込まれた瞬間からそれを「金融資産」と扱って差し押さえる、行政側の脱法行為も各地で横行しています。年金が振り込まれる銀行口座を凍結された高齢者が餓死したり、商売道具の車をタイヤロックされた自営業者が一家心中するなどの痛ましい事件も続発しています。

 こうした無慈悲な取り立ても、国の指導によるものです。厚労省は、自治体の担当者を集めた「研修会」で、預金・給与の口座凍結や家宅捜索による物品の押収、介護サービスの停止や自動車のタイヤロックなど、強権的取り立ての“模範例”をしめしています。

 総務省が出した税徴収の委託推進方針を受け、国保税・住民税などの徴収業務の民間委託が広がり、「地方税回収機構」などの広域機関が徴収を担うようになったことも、住民の実情から離れた、無慈悲で機械的な取り立てを横行させている一因です。

 2013年、地方税を滞納した自営業者への「滞納処分」として、児童手当が振り込まれる口座を“ねらい撃ち”で差し押さえた鳥取県の措置を「違法」と断じる判決が、広島高裁から下されました(2014年確定)。この判決を示した日本共産党議員の質問に対し、厚労省の保険局長は、国保料(税)滞納への対応においても、公的手当が入る口座をねらい撃ちにする場合は差し押さえが禁止されることを認めました。また、同局長は、生活困窮など個々の滞納者の実情をつかみ、機械的な「滞納処分」をしない旨を、全国課長会議やブロック会議で自治体に周知徹底することを約束。厚労相も、「ぬくもりを持った行政を徹底していく」と答弁しました(11月16日・参院厚労委員会)。2005年以来、ひたすら「滞納処分」の強化を訴えてきた厚労省が、こうした答弁をしたことは重要です。

 日本共産党は、人権無視の強権的な取り立てを奨励する、行政のあり方を転換します。国保料(税)滞納への機械的な差し押さえをやめさせ、滞納者の生活実態をつかんで困窮者には処分を「停止」するなど、本来の徴税原則にそった対応を徹底します。国保料(税)の延滞金に減免制度を適用し、改善をすすめます。自治体が、住民の生活実態をよく聞き、親身に対応する相談・収納活動ができるよう、国として支援を強めることも必要です。

 貧困打開を求める国民世論に押され、政府が、失業で国保加入となった人の国保料(税)を減額する措置などをとった結果、2011・2012年度の国保料(税)収納率はわずかながら改善し、厚労省も、“負担を抑えて、払える人を増やすことが、収納率改善につながる”と認めるようになりました。収納率を向上し、国保財政を立て直すためにも、国保料(税)の抜本的引き下げと“だれもが払える国保料(税)”への改革を進めます。

〔窓口負担の減免を推進する〕

 国保法第44条にもとづく窓口負担の減免措置を推進します。生活悪化で窓口負担を払えない人が急増し、医療機関の未収金も増大するもと、政府も、国保法第44条の活用をいわざるを得なくなり、2010年9月、自治体が減免を行った場合に半額を国が負担する措置を始めました。しかし、そこで厚労省がしめした減免基準は、対象者を▽災害・廃業・失業等による収入激減、▽現在の収入が生活保護基準以下、▽預貯金が生活保護基準の3カ月分以下、▽入院治療を受けている人――などに限定し、減免期間も1カ月ごとの更新制で標準期間を3カ月に設定するなど、きわめて不十分なものです。

 全国の多くの自治体で未活用だった減免制度の推進を国が言いだし、費用の半額負担を行うようになったことは前進ですが、国の基準があまりに狭く、“対象者は一時的な収入源に限定”“恒常的な低所得者は対象外”などの限定があるために、すでに減免制度を実施している自治体の住民からは、「国が基準を出したことで、かえって制度が後退しかねない」という危惧の声もあがっています。

 国は基準を見直し、幅広い生活に困窮者に対応できる制度に改善・充実をはかっていくべきです。

〔小手先の「都道府県単位化」ではなく、真の制度改革を〕

 2012年に民主と自公の賛成で可決された国保法改定により、2015年度から、「財政共同安定化事業」の対象医療費が「レセプト1円」以上となります。「財政共同安定化事業」は、市町村国保で出しあった拠出金を都道府県の国保連合会にプールし、高額医療費の給付費を交付しあう、“国保同士の助け合い”“再保険”の仕組みです。この対象が「レセプト1円以上」になれば、国保の医療給付は、事実上、都道府県単位となります。

 こうした“地ならし”と同時並行で、安倍政権は「国保の都道府県単位化」を含む「医療保険改革」法案を2015年の通常国会に提出しようとしています。しかし、その中身は、国保の保険者は都道府県とするものの、国保料(税)の賦課・徴収は、引き続き市町村が担うというものです。都道府県は各市町村に納めるべき「分賦金」の額を示しますが、その「分賦金」を集めるための国保料(税)は市町村が決め、市町村ごとの保険料の格差は温存されます。住民の負担軽減に向けた市町村の一般会計繰入には、やめるように圧力がかかる一方、滞納者の増加などで、市町村が「分賦金」の必要額を集めきれなかった場合、市町村は一般会計を繰り入れて弁償しなければなりません。

住民負担増や滞納制裁など、従来の国保行政の強化を都道府県が“監督”するようになるだけで、国保料(税)の決定や賦課徴収は引き続き市町村が担う政府案には、これまで「広域化・都道府県単位化」の推進側だった自治体当局や関係者からも「期待を裏切られた」「これでは市町村の苦しみは何ら変わらない」という声が出始めています。

 全国知事会は、“被保険者の低所得と重過ぎる保険料負担”という「国保の構造問題」の解決を抜きにしたまま、「都道府県単位化」をすすめる国の姿勢に反発し、制度改変をするなら、まず「1兆円」の国庫負担増をせよと要求しています。

 安倍政権は、消費税増税で得られた税収の一部を使い、①国保料(税)の低所得者減額(5割減額・2割減額)の拡大(所要額:500億円)、②低所得者減額に対する国庫補助の増額(所要額:1700億円)などを行うとしていますが、そこに投じられる予算は、消費税8%増税で得られる増収分の40分の1程度に過ぎず、しかも、②については、首相の10%増税「先送り」表明で、実施が危ぶまれる状況です。

また、安倍政権は、高齢者医療に対する各保険者の「支援金」の割り当て方式を変え、被用者保険(健保・共済)の負担を増やすことで国保の負担を減らすという“財政策”も計画していますが、全国知事会も批判しているように、これらは小手先の手立てに過ぎず、国保がかかえる矛盾の解決策とはなりえません。

 国保を持続可能な医療制度とするには、根本的な制度改革が必要です。低所得者が多く加入し、保険料に事業主負担もない国保を維持するのに「相当額の国庫負担」が必要であることは、国民皆保険が実現した直後、当時の首相の諮問機関である社会保障制度審議会の勧告も明言していました(「1962年勧告」)。

 日本共産党は、国保への国庫負担を増額し、国保料(税)の水準の抜本的な引き下げ、低所得者の負担減免の拡大、“だれもが払える国保料(税)”への改革、窓口負担の当面2割への引き下げをすすめます。

 同時に、大企業の内部留保を活用した大幅賃上げや正規雇用の拡大、中小企業・自営業の振興、農林漁業の再生など、国民のくらし第一の経済政策を推進します。これらの経済改革は、非正規労働者の国保への流入や国保加入者の所得減に歯止めをかけ、国保財政の立て直しにもつながっていきます。

〔国保組合の独自給付と国庫補助をまもる〕

 安倍内閣は、2015年通常国会の「医療保険改革」法案で、国保組合の国庫補助を大幅に削減することを計画しています。

この間、一部のマスメディアが、建設国保などの国保組合が取り組む、入院費無料化などの“独自給付”を非難し、国保組合には“特権”があると言い立てる異常なキャンペーンを繰り返してきました。国保組合への国庫補助率は、市町村国保への国庫負担率よりも低く、建設国保などに「手厚い国庫補助」が出ているという攻撃は事実を偽るものです。建設国保の“独自給付”は加入者が割高の保険料を負担しながら実施している事業であり、そこに国庫補助は入っていません。建設業者・家族が、お金の心配なく医療にかかれるようにする建設国保の取り組みは、公的医療保険の制度本来の主旨にかなったものです。

国保組合に対する、事実をねじ曲げた一連の宣伝・報道が、社会保障費削減をねらった意図的キャンペーンだったことは明瞭です。日本共産党は、偽りの宣伝で国民を分断しようとする卑劣な攻撃に反対し、国保組合への国庫補助をまもり、拡充します。

 

●患者「追い出し」・病床削減をやめさせ、必要な治療を保障します

 自公政権は、2006年の「医療改革法」で、医療型療養病床の大幅削減と介護型療養病床の全廃を決めました。2006年以降の5回の診療報酬改定では、国が「軽症」と判断する入院患者や、国が決めた基準より入院が長引く患者への診療報酬を下げる改変が繰り返され、「公立病院改革ガイドライン」(2007年)による公立病院の経営見直し・統廃合においても徹底した病床削減がすすめられるなど、入院患者の“追い出し”を促進する改悪が続けられてきました。

 そして、安倍政権は6月に可決を強行した「医療・介護総合法」で、“患者追い出し”の強化に向けた新たな仕組みを導入しました。

「総合法」により、医療機関から都道府県に、病床機能の現状と方針、建物の構造、医療機器の設置、人員の配置などを病棟ごとに報告させる「病床機能報告制度」が始まります。都道府県は、地域の医療需要を推計し、医療機関からの「病床機能報告」を踏まえながら、医療提供体制の必要量や各医療機関の機能・役割などを決める「地域医療構想」を策定します。重大なのは、新制度のもとでは、都道府県から各医療機関に、「医療機能の転換」「新規開設・増床の中止」「稼働していない病床の削減」などを要求することができ、従わない場合は、▽医療機関名の公表、▽補助金・公的融資からの対象除外、▽各種指定の取り消しなどの制裁措置を可能とすることです。

この問題をただした日本共産党議員の追及にたいし、厚労省の医政局長は「一応、懐に武器を忍ばせている」と答弁しました。

 しかも、各医療機関から「病床機能報告」は、実際には都道府県ではなく厚労省に提出され、国が管理する全国共通のサーバーに集約されます。国は、国内すべての医療機関の構造・設備・人員などの情報とともに、「電子レセプト」に記載された患者情報、傷病名、診療行為(点数・回数)、医薬品・医療材料などについても提出を求め、各医療機関の医療機能と医療内容の情報を一元化したうえで都道府県に提供するとしています。“都道府県主導の病床再編”といっても“下絵”を描くのは国であり、そのために、各医療機関の病床数や人員体制だけでなく、個々の診療行為や保険点数の取得状況まで“丸裸”にし、医療内容についても、都道府県から指図させようというのです。まさに、国による情報の一元管理をつうじた強権的な病床削減です。

 安倍政権は、「骨太方針」で、こうした「地域医療構想」による「医療提供体制の再編」を急ぐとともに、それと「整合的な医療費の水準」が設定されるよう、都道府県の「医療費適正化計画」を見直す方針を打ち出しました。2015年通常国会に提出する「医療保険改革」法案には、「医療費適正化計画」のあり方を見直し、各都道府県に医療給付費の「支出目標」を持たせるという制度改変が盛り込まれようとしています。都道府県に病床削減の権限を持たせると同時に、医療給付費の総額も管理させ、病床削減・給付費削減を一体に推進せよというのです。

 都道府県による病床削減の仕組みが、「国保の都道府県単位化」と一体にすすめられようとしていることも重大です。都道府県に国保財政の監督権限を与え、国保料(税)の引き上げや滞納制裁を強化するとともに、“負担増に耐えられないなら、医療を受けるのを我慢せよ”と、病床削減による給付費抑制をすすめさせる――これが、安倍政権のねらいです。

 歴代政権の「患者追い出し」政策は、患者・家族はもちろん、医療現場にも多大な負担と苦難を背負わせ、「医療難民」「介護難民」の大量発生の直接の原因となってきました。日本共産党は、強権的な病床削減、「患者追い出し」強化の改悪を中止・撤回させ、必要な医療体制の維持・拡充を図ります。

 

●保険外治療の拡大・混合医療の解禁を許さず、保険医療を拡充します

 安倍政権は、「新成長戦略」にかかわる一連の文書で、医療分野でも「岩盤規制」に穴をあけると叫び、医療の安全や治療の平等を保障するための規制をなし崩しにしていく動きを強めています。

 6月に決定した「日本再興戦略・改訂2014」や「規制改革会議答申」では、現行の保険外併用療養費のなかに、「患者申出療養制度(仮称)」という新区分を設ける方向が明記されました。2015年通常国会の「医療保険改革」法案でそれを導入するというのが安倍政権の方針です。

「患者申出療養制度(仮称)」は、「患者からの申出」を起点に、国内未承認薬や承認済み治療法の目的外使用などの広範な保険外治療を、保険治療と併用することを「迅速に」認めていくというものです。政府は「保険収載をめざす」ことを前提にするといいますが、保険外併用の拡大・固定化、患者の安全を脅かす治療法の横行につながりかねないという懸念が噴出しています。

「再興戦略」には他にも、▽保険収載を前提としない、差額ベッド代など「選定療養」を拡大する、▽保険収載の可否を判断する間、保険外併用を認める「評価療養」についても、再生医療や医療機器など対象をさらに拡大する、▽費用対効果やコスト回収の問題で保険収載を見送られた治療法を保険外併用にとどめる仕組みを検討する――など、「保険外併用療養費制度の大幅拡大」のメニューが列記されています。

安倍政権は、医療法人と社会福祉法人を統合した「非営利ホールディングカンパニー(持ち株会社)型法人」の創設を可能とする医療法人制度の改変を検討しています。その内容は、新型法人に傘下の病院・介護施設の経営を指導する強い権限を持たせ、関連産業の株式会社への出資も認めるなど、医療・福祉分野に大企業の会社組織の手法を持ち込み、医療機関の自立や非営利原則を突き崩していくというものです。

安倍政権が推進するTPP参加により、「混合診療」の解禁、米国流ルールの押しつけによる薬価の高騰、医療分野への営利企業参入などの動きがさらに本格化する危険性も高まっています。

日本共産党は、保険外治療の拡大、「混合診療」の解禁にむけた、あらゆる策動を許さず、国民皆保険をまもり、保険医療の拡充をすすめます。「患者申出療養」導入や保険外併用療養費の野放図な拡大に反対し、“必要な治療はすべて保険で給付する”“安全・有効な治療法は速やかに保険適用する”という原則にそって現行制度の改善をすすめます。差額ベッド料などの自費負担をなくし、安全で質の高い治療が保険で受けられるようにします。

 財界が要求し、安倍政権が「検討課題」にあげている、「軽い病気」の治療を保険外にする保険免責制、医療機関が処方するかぜ薬や胃腸薬の保険外しなど、公的医療保険を縮小する改悪に反対します。

 社会保障と相容れない経営原理の持ち込みや、株式会社による医療経営解禁を許さず、非営利原則をまもります。

日本の医療を日米大企業の新たな儲け口とするために、国民の命と健康を犠牲にしていく、医療の営利化・市場化の動きと対決し、TPP交渉からの撤退を求めます。

 

●「医療費適正化計画」のさらなる改悪に反対します

 “医療給付費の伸び率を経済成長率以下に抑制せよ”という財界の要求を受け、2006年の「医療改革法」で、都道府県が5年単位の「医療費適正化計画」を策定し、給付費抑制を推進していく仕組みが導入されました。都道府県として「平均在院日数の短縮」「療養病床の削減」「メタボリック症候群・予備軍の減少」などの目標を持ち、達成をめざすというのが現行の計画です。その目標を達成にむけ、国の判断で、個別の都道府県だけ診療報酬を低く設定できるようにする仕組みも盛り込まれました。

 安倍内閣は、2015年通常国会に提出予定の「医療保険改革」法案でこの仕組みをさらに強化し、各都道府県に医療給付費の「支出目標」を持たせることを計画しています。この仕組みと「地域医療構想」による病床削減、「国保の都道府県単位化」による保険者管理をリンクさせ、都道府県に給付費削減を競わせあうというのが、安倍内閣のねらいです。

住民の命と福祉をまもるべき地方自治体を、医療切り捨ての先兵に使う改悪など許されません。日本共産党は、「医療費適正化計画」のさらなる改悪に反対し、都道府県・市町村を給付費削減競争に動員する仕組みを撤廃します。

 

●削減されてきた診療報酬を元に戻し、地域医療を再建します

 2002〜08年度の診療報酬改定で、自公政権が削減した診療報酬は7・68%――年間2・6兆円にのぼります。これが、保険医療に従事するすべての医療機関を経営危機におとしいれ、「医療崩壊」を引き起こす大きな要因となりました。診療報酬の増額による地域医療の立て直しは、医療従事者はもちろん、国民的な要求です。

 こうした世論を受け、2010・12・14年度の診療報酬改定は大幅なマイナス改定とはなりませんでしたが、「患者追い出し」強化や医療機関の淘汰を促進するための報酬削減がさまざまな形で盛り込まれ、中小病院・診療所・療養病床などが減収・経営悪化にさらされています。14年度改定では、看護師配置が厚い「7対1病床」(患者7人に看護職1人の配置を前提に診療報酬を設定した病床)を減らすため、▽重症度・看護必要度など要件の見直し、▽難病患者などを長期入院させても報酬が減らないようにしてきた特例措置の廃止、▽退院患者の「在宅復帰率75%」以上の達成義務化など「基準の厳格化」がなされ、これに対応できない病院がさらなる経営悪化におちいるなどの事態が起こっています。

 地域医療は、大規模病院と中小病院、病院と診療所、医療機関と介護施設等が連携することにより支えられています。給付費抑制を至上命題に、診療報酬を操作することで患者「追い出し」などの改悪を促進し、中小医療機関の淘汰や病床削減をすすめるやり方では、地域医療の立て直しは図れません。

日本共産党は、診療報酬を抜本的に増額して連続削減以前の水準を回復させ、地域医療全体の底上げを図ります。診療報酬の増額を患者負担に直結させないためにも、窓口負担の軽減が求められます。

 

●医師不足を解決し、地域医療体制をたてなおします

 地方でも都市でも、医師不足が重大な社会問題となっています。根本原因は、「医者が増えると医療費が膨張する」といって医師の養成数を抑制し、日本を世界でも異常な「医師不足の国」にしてきた歴代政権の失政です。そこに、診療報酬削減による病院の経営悪化、国公立病院の統廃合・民営化などの「構造改革」が加わって、地域の拠点病院・診療科の消失が引き起こされています。

 この間、国も医学部定員の拡大に乗り出しましたが、医師数がOECD(経済協力開発機構)加盟国の平均よりも11万人も少ない日本の現状からすれば、さらに抜本的な医師増員や医師養成への国の支援が必要です。

 医学部定員増で医師数が増えてくるのは10年後、20年後であり、現在の医療崩壊を打開するには、削減されつづけてきた診療報酬の抜本的増額、病床削減・病院統廃合の中止、地域医療全体を底上げする医療政策への転換が必要です。

 日本共産党は、「医師数抑制」「病院淘汰・病床削減」路線を転換し、国の責任で計画的な地域医療の確保と再建をはかります。

 ――国の予算投入で医師の養成数を抜本的に増やし、計画的にOECD加盟国平均並みの医師数にしていきます。そのために医学部定員をただちに1・5倍化します。医学部の「地域枠」や奨学金の拡充、教育・研修内容の充実をはかります。

 ――産科・小児科・救急医療などを確保する公的支援を抜本的に強化します。地域の医療体制をまもる自治体・病院・診療所・大学などの連携を国が支援します。

 ――医療の安全・質の向上、医療従事者の労働条件改善、産科・小児科・救急医療の充実などにかかわる診療報酬を抜本的に増額します。

 ――医師の公的任用、公募などで医師を確保する「プール制」「ドクターバンク」、代替要員の臨時派遣など、不足地域に医師を派遣・確保する取り組みを国の責任で推進します。

 ――勤務医の過重労働を軽減するため、薬剤師、ケースワーカー、助産師、医療事務員、スタッフの増員をはかります。院内保育所や産休・育休保障など家庭生活との両立をめざします。女性医師の働きやすい環境づくり、産休・育休・現場復帰の保障などを国として支援します。

 ――国公立病院の乱暴な統廃合・民営化や、社会保険病院・厚生年金病院・労災病院などの売却をやめ、地域医療の拠点として支援します。

 ――より良い医師を育てるという臨床研修制度の主旨をまもり、研修内容の充実、受け入れ病院への支援強化、研修医の待遇改善をすすめます。

 

●看護師不足を解消し、安全でゆきとどいた医療を

 看護師の不足、超過密労働、離職者の急増は、医療の安全をおびやかす重大問題です。

 政府は、2006年の看護師配置基準の改定で、「患者7人に看護職1人」(「7対1」)を配置した医療機関に報酬を加算して、手厚い看護体制を促す仕組みをつくりました。ところが、その後、「7対1」基準の報酬を取得する要件として、「重症度・看護必要度」などの基準が導入されました。さらに、2014年度改定では、「7対1病床」の削減が公然と叫ばれ、▽重症度・看護必要度などの要件のさらなる強化、▽難病患者などを長期入院させても報酬が減らないようにしてきた特例措置の廃止、▽退院患者「在宅復帰率75%」以上の達成義務化など「基準の厳格化」がなされ、「7対1」から撤退し、看護体制を後退させる病院が全国で続出しています。

日本共産党は、病床削減・給付費抑制のために、「手厚い看護体制をめざす」という流れを後退させる改悪に反対します。

 本当に手厚い看護体制を実現するには、諸外国に比べて少ない看護師数を抜本的に増やすことが必要です。また、医療機関に「入院日数の短縮」をせまって看護師の過密労働を激化させるなど、給付費抑制のため看護現場に犠牲をしいる医療政策の転換が求められます。看護師の配置基準を満たせない中小・地方病院をさらなる経営悪化に追い込み、選別した病院だけを支援する路線もあらためるべきです。

 日本共産党は、地域医療をまもり、すべての患者に安全でゆきとどいた治療を保障するため、看護師不足の解決に全力をあげます。看護職の抜本的増員、労働条件の改善と地域医療の支援、退職した看護師の再就労支援などで、看護師200万人体制を確立します。

 ――「7対1」基準の報酬を取得できる病院を限定・選別するのをやめ、施設基準を満たす全病院が継続・取得できるようにします。「7対1」以外の配置基準を満たす、すべての病院に対しても、診療報酬を引き上げ、人員体制の確保を応援します。

 ――看護師の労働条件を改善するための公的支援、診療報酬改革をすすめ、「夜勤は複数、月8日以内」という人事院判定の早期実現、産休・育休の代替要員確保、院内保育所の設置、社会的役割にふさわしい賃金への引き上げなどをはかります。

 ――政府として「看護師確保緊急計画」を策定し、看護職員の大幅増員へ抜本的対策を講じます。「行革」の名による看護学校の切り捨てをやめ、自治体独自の看護師増員対策をすすめます。看護教育制度の抜本的充実をすすめます。

 ――退職した看護師の再就労を、国が予算を大幅に増やして支援します。

 ――「医療・介護総合法」で決められた看護師による「特定医行為」の実施は、看護師の負担を増やし、チーム医療の現場に混乱や矛盾を持ち込みかねません。見直し・再検討を求めます。

 

●自公政権による改悪をただし、安心できる医療制度への改善をすすめます

〔協会けんぽの改悪に反対し、中小企業の労働者の医療をまもる〕

 安倍政権は、現行では12%までとなっている協会けんぽの保険料率を、13%に引き上げることを計画しています。

中小企業の労働者が加入する協会けんぽ(旧政管健保)は、本来「16・4%~20%」であるはずの国庫補助率が長年にわたって13%に抑えられ(1992年~2009年)、そこに、不況・賃下げによる加入者の所得減、高齢者医療への過重な支援金負担などが重なって、慢性的な財政難と保険料の引き上げが続いてきました。さらに、2006年の「医療改革」で、全国単一の保険者組織が都道府県単位に分割されたために保険料の地域間格差が発生し、労働者の生活や零細事業主の経営が圧迫される状況が広がっています。

2010年度、協会けんぽ本体への国庫補助率は16・4%に戻されましたが、政府は、高齢者医療の支援金にかかわる国庫補助は削減するなど中途半端な対応に終始し、協会けんぽの財政状況はいまだ改善していません。

そして、安倍政権は、高齢者支援金や介護納付金を各保険者で出しあう仕組みを「総報酬制」にし、組合健保や共済に負担増を求めることで協会けんぽの負担軽減を図るとしていますが、これも、国庫補助を下げたまま健保や共済に負担を転嫁するというものです。そんな対応では、協会けんぽの財政は改善できず、結局、低賃金労働者も含めて、一律に高い保険料率をかけられるようにする、制度改悪が検討されているのです。

 日本共産党は、協会けんぽのさらなる保険料引き上げに反対します。国庫補助を緊急に20%まで引き上げ、協会けんぽの財政再建、労働者・中小企業の負担軽減にむけた、国の支援を強化します。2006年改定で導入された保険料引き上げ・給付費抑制の仕組みを撤廃し、中小企業の労働者やその家族に国の責任で医療を給付するという、政管健保の本来の目的・役割をまもる立場から、制度の改革をすすめます。

 協会けんぽの財政を根本的に立て直すためにも、中小企業支援と一体の最低賃金の引き上げ、単価たたきの是正など大企業と中小企業の公正な取引ルールの確立、国の中小企業振興策の抜本的拡充など、経済改革が重要です。

〔健診をゆがめる制度改悪に反対し、改善・充実をはかる〕

 2006年「医療改革法」にもとづき、40〜74歳の国民に「特定健診・保険指導」を受けさせ、加入者にメタボリック症候群の改善をせまる仕組みが導入されました。この制度のもとでは、加入者の“受診率”や“メタボ改善率”が低いとされた医療保険には、財政支出増のペナルティが課され、加入者の保険料値上げにつながります。政府が国民に“健康づくりを怠った”というレッテルを貼り、懲罰を課すのは本末転倒です。

「メタボ対策」への特化による検診項目の偏りや自己負担の発生など、さまざまな問題が指摘され、健診の営利化によって、医療保険財政が、健康機器業界やフィットネス産業の食いものになることへの懸念も広がっています。

日本共産党は、「自己責任」の名で健診をゆがめ、国民の健康保持に対する国・自治体の責任を後退させる改悪に反対します。病気の予防・早期発見という本来の主旨にたって、健診の改善・充実をはかります。

 

●社会保障の給付削減をねらい、国民のプライバシーを危機におとしいれる共通番号(マイナンバー)の実施に反対します

安倍・自公政権が提出し、民主・維新などの賛成で法律が可決された社会保障共通番号(マイナンバー)制度は、国民一人ひとりに背番号をつけ、各自の納税、保険料納付、医療機関での受診・治療、介護・保育サービスの利用などの情報をデータベース化して、国が一元管理するというものです。政府は2015年10月から、識別番号(マイナンバー)と氏名・住所・生年月日・性別を一体に記載したカードを全国民に送り、16年には、顔写真やICチップの入った「個人番号カード」を導入することを計画しています。

 もともと、国民の税・社会保障情報を一元管理する「共通番号」導入を求めてきたのは、財界でした。日本経団連は2000年代から、各人が納めた税・保険料の額と、社会保障として給付された額を比較できるようにし、“この人は負担にくらべて給付が厚すぎる”などと決めつけて、医療、介護、福祉などの給付を削減していくことを提言してきました。社会保障を、自分で納めた税・保険料に相当する“対価”を受けとるだけの仕組みに変質させる大改悪にほかなりません。社会保障を「自己責任」の制度に後退させ、「負担に見あった給付」の名で徹底した給付抑制を実行し、国の財政負担、大企業の税・保険料負担を削減していくことが、政府・財界の最大のねらいです。

 医療の分野では、保険料の納付額と受けた医療の給付額が比較・対照され、重症患者が“負担した以上に手厚い治療を受けている”と攻撃され、給付抑制をせまられることが予想されます。

この間、年金の保険料収納の現場では、徴収業務の民間委託による取り立ての強化や、差し押さえなどがすでに問題になっています。「共通番号」の導入にともない、国の税金・社会保険料の徴収業務が“統合”がされ、機械的な徴収や無慈悲な滞納制裁がさらに横行することも懸念されます。

 日本共産党は、社会保障を民間の保険商品と同様の仕組みに変質させ、国民に負担増・給付削減を押しつけるための「共通番号」導入に反対します。社会保障を“自己責任”にかえる策動を許さず、国民の権利としての社会保障をまもります。

 政府が国民一人ひとりに生涯変わらない番号をつけ、多分野の個人情報をコンピューターに入力して行政一般に利用すること自体、重大な問題を持つものです。

 本来、個人に関する情報は、本人以外にむやみに知られることのないようにすべきものであり、プライバシーをまもる権利は憲法によって保障された人権の一つです。

 今般、法律が可決されたマイナンバーは、既存の「住基ネット」などとは比較にならない大量の個人情報を蓄積し、税・医療・年金・福祉・介護・労働保険・災害補償などあらゆる分野で活用されるものです。役場への申請はもちろん、病院の窓口や介護サービスの申し込みに使われるなど、公務・民間にかかわらず多様な主体が、そこにアクセスをしていきます。これが導入されれば、個人情報が“芋づる式”に引き出され、プライバシーを侵害される危険性が高まることは明らかです。

 また、データ管理を国から委託される企業に、国費をつうじて巨大な利権をもたらすことも問題視されています。

 日本弁護士連合会は、「『社会保障番号』制度に関する提言」(2007年10月)で、「米国の社会保障番号(SSN)がプライバシーに重大な脅威を与えていることは広く知られている」「あらゆる個人情報がSSNをマスターキーとして検索・名寄せ・データマッチング(プロファイリング)され、個人のプライバシーが『丸裸』にされる深刻な被害が広範に発生している」「SSNの身分証明性を悪用されて、『なりすまし』をされたりする被害も広がっている」と指摘し、日本への「社会保障番号」導入に反対を表明しています。

 実際、アメリカでは、「社会保障番号」の流出・不正使用による被害が全米で年間20万件を超えると報告されています。同様の制度がある韓国でも、06年、700万人の番号が流出して情報が売買され、大問題となりました。イギリスでは、労働党政権下の06年に導入を決めた「国民IDカード法」が、人権侵害や膨大な費用の浪費の恐れがあるとして、政権交代後の11年に廃止されました。

 日本共産党は、個人の人権を脅かす策動を許さず、国民のプライバシー権をまもるため、マイナンバー法の実施中止・撤廃を求めて全力をつくします。

 

●医科でも歯科でも、国民に安全・安心の医療を保障するために

〔医療保険財政の立て直し〕

 給付費抑制を最優先に、国民に負担増を求め、公的保険を切り縮めて市場原理にゆだねる「医療改革」では、患者の重症化がすすみ、国の医療費は逆に増大するだけです。日本共産党は、減らされ続けた国庫負担を計画的に復元・拡充し、本当に持続可能な医療保険財政の確立をすすめます。その財源は、応能負担の原則に立った税・財政の改革、国民の所得増で税収をふやす経済改革によって確保します。

 この間、大企業の賃下げやリストラ、非正規雇用への置きかえで健保の収入が減り、不安定雇用の労働者が大量に国保に追いやられたことも、健保・国保財政を悪化させる原因です。1980年度と2012年度を比較すると、国民医療費に占める事業主負担の割合は4%――1兆6000億円分も減りました。医療保険財政を立て直すためにも大企業に雇用・賃金・保険料負担に対する社会的責任を果たさせ、中小企業の経営をまもる施策を推進します。

 同時に、不必要な医療費の膨張をただすため、高薬価や高額医療機器など医療保険財政の無駄にメスを入れます。

予防・公衆衛生や福祉施策の充実に本腰を入れ、国民の健康づくりを推進します。病気の早期発見・治療を進めるためにも、窓口負担軽減が重要です。

 国民の長寿化や医療技術の進歩によって、医療費が増えることは本来、おそれるべきことではありません。日本共産党は、「医療費削減」の名で患者・国民、医療機関・医療従事者に犠牲をしいる路線を転換し、危機にひんした公的医療保障を再建・拡充します。

〔高額療養費の改善〕

 低所得者や治療が長期間にわたる患者の過重な医療費負担を軽減するため、応能負担の立場にたった、高額療養費制度の改善を緊急にすすめます。

 高額療養費制度の所得区分をふやし、負担限度額の上限を、現役世代も高齢者も、通院も入院も大幅に引き下げます。重い病気の患者ほど患者負担が自動的に高くなる、「1%」の定率部分をなくします。70歳未満の通院にも、受領委任払いを導入します。70歳未満の入院費の受領委任払いを徹底し、使いやすい制度に改善します。

 限度額の設定を“月ごと”から“治療ごと”にあらため、「治療が月をまたぐと高額療養費が適用されない」という矛盾を解決します。世帯の所得区分ごとに年間をつうじた負担上限額を設け、「同一世帯でも、保険がちがうと医療費を合算できない」問題などについても解決をはかります。

 現行では三疾患(血友病、HIV、人工透析の腎臓病)に限られている「高額長期疾病にかかわる高額療養費の支給特例」を拡大し、療養が長期にわたる場合に対応した「長期療養費給付制度(仮称)」を創設します。

 対象が限定され、当事者が申請しないと適用されない、高額医療・介護合算制度を抜本に見直します。

〔無料低額診療への支援をすすめる〕

 各地に広がってきている無料低額診療への支援を強めます。現在、無料低額診療では、院外処方の薬剤費が制度の適用とならず、患者が自己負担を強いられる問題が起こっています。薬剤費への制度適用をすすめ、この問題を解決します。

〔子どもの医療費無料化〕

 小学校就学前の子どもの医療費を、所得制限なしで無料化する、国の制度を確立します。その共通の制度の上に、全国に広がった自治体独自の助成制度をさらに前進させます。

 子どもの医療費の助成制度(現物給付)をおこなっている自治体の国保に対する、国庫負担の減額調整のペナルティをやめさせます。

〔診療報酬の改革〕

 診療報酬は、国民に平等に医療を保障し、“もうけ本位の医療”を許さないための大事な仕組みです。ところが、歴代政権は、医療にかかる国の予算を減らすために診療報酬の仕組みをゆがめ、「医療費削減」の道具にしてきました。現行の診療報酬は、医療従事者の労働を不当に低く評価し、そのことが、中小病院の経営難や医療従事者の労働条件悪化の大きな原因となっています。急性期患者の強引な早期退院を誘導する報酬改定、高齢者・長期入院の“追い出し”を促進する報酬削減、長期リハビリに対する保険給付の制限など、公的医療費の削減をねらったさまざまな報酬操作が、医療現場の矛盾を拡大し、医療従事者と患者の両方を苦しめています。

 日本共産党は、医科でも歯科でも診療報酬を抜本的に増額するとともに、「国民皆保険」をまもり、拡充する立場で診療報酬の改革に取り組みます。診療報酬の総額削減、保険外診療の拡大に反対し、安全・有効な治療はすみやかに保険適用とする仕組みをつくります。“安上がり医療”をねらった「包括払い(定額制)」の導入・拡大に反対し、「出来高払い」による給付をまもります。薬・医療機器にかたよった報酬評価のあり方を見直し、医療従事者の労働を適正に評価する診療報酬に改革します。

 すべての医療機関における基本診療料である初・再診料、入院基本料を適正に評価し、引き上げます。

 急性期病床の削減と“在宅化”“介護への移行”を促進するため、2014年度の診療報酬では「7対1」病床の絞り込みが行われました。その結果、「7対1」取得に該当しなくなった病院は大幅な減収になり、赤字経営で地域医療を支える病院がさらなる苦境に追い込まれるなどの事態が起こっています。「7対1」病床を出た患者の“受け皿”として「地域包括ケア病棟」が新設されましたが、ここにも“60日以内の退院”“70%以上の在宅復帰”などの要件が課されるため取得できる病院は限られ、患者も病院も退院後の行き先探しに右往左往し、地域間の医療連携も阻害されるなどの事態が起こっています。

 2012年度改定でも、▽長期入院・回復リハ・慢性期病床への報酬削減、▽DPC対象病院の再編と「効率化」の誘導、▽在宅支援診療所の「機能強化型」と「従来型」への線引きなどの改定が行われましたが、いずれも、“在宅化”と“介護への移行”を誘導する一方、診療所や中小病院にかかわる報酬を低く抑えていく改変です。

このように、患者の「追い出し」や医療機関の淘汰を誘導する報酬改定では「医療崩壊」は深刻化するばかりです。地域医療全体を底上げする立場で、診療報酬体系の抜本的な見直しを進めます。

 高齢者や長期入院患者の給付費削減をねらった差別的な診療報酬の廃止を求めます。

 地域医療・救急をささえる病院を大幅な減収に追いこみ、病院に「保険外併用療養」の採用をせまる、「総合入院体制加算」を撤回させます。

 標準算定日数を超えたリハビリを「保険外併用療養」とする改悪を許さず、リハビリ日数制限の全面撤回と制度の再構築を求めます。

 2008年10月から実施されている、脳卒中や認知症の入院患者を多く抱える「特殊疾患病棟」、「障害者施設」に対する診療報酬減額など、脳卒中・認知症患者などの“病院追い出し”をねらった改悪を撤回させます。

 2006年改定による人工透析の「夜間・休日加算」の引き下げにより、外来の夜間透析を廃止・縮小する医療機関が各地で生まれ、患者が仕事をやめざるをえなくなるなどの事態が続いています。患者負担の軽減をすすめながら、適切な報酬への引き上げをはかります。

 2010年4月から順次実施されている保険請求の電子化について、2015年4月に猶予期間が終わる医療機関、「免除」対象の医療機関などが不利益を被ることがないように、きめ細かな対応を求めます。

 入院中の患者が他の医療機関で受診した場合、▽入院医療機関に支払われる入院料を減額する、▽他医療機関が算定できる報酬の範囲を制限する、▽他医療機関による投薬を当日分に限る――など、2010年度の報酬改定で導入された報酬削減・投薬規制に、医療現場からは「入院患者に必要な医療を提供できない」「医療機関の連携を阻害する」などの批判の声が上がっています。日本共産党の国会論戦などを受け、投薬規制の一部は見直されましたが、入院医療機関への報酬削減、他医療機関の算定範囲の制限、包括払い病床の患者に対する投薬規制は、今も続いています。地域医療の実態とかけ離れ、患者・医療機関の双方に困難をもたらす、不合理な報酬のあり方をあらためます。

〔出産一時金の引き上げと改善〕

 出産に要する費用は年々高騰しています。それに見合うように、出産一時金の金額を、大幅に引き上げます。

〔歯科医療の充実〕

 政府は、歯科の診療報酬を不当に低く抑え、自費診療・混合診療を拡大してきました。

 基礎的な診療行為の保険点数が長年にわたって据え置かれ、新たな歯科技術の保険収載も大幅に遅れるもと、多くの歯科医は経営難にあえぎ、少なくない開業歯科医が「ワーキングプア」となっています。患者は保険だけでは十分な治療が受けられず、高い自費負担に苦しめられています。

 歯科医療従事者のねばり強い運動や日本共産党の国会論戦を受け、2012年改定では歯科報酬の1・7%引き上げが行われ、基礎的な診療行為や訪問歯科診療にかかわる報酬の是正なども進んでいますが、劣悪な水準の抜本的改善にはいたっていません。歯科診療報酬の抜本的な増額・改革が必要です。

 日本共産党は、国民の口腔の健康をまもり、「保険でよい歯科治療」を実現するため、歯科診療報酬の抜本的な増額と改革、歯科医療の充実にむけた支援を進めます。

 初診料・再診料の水準を抜本的に引き上げ、医科・歯科間格差を是正します。医科・歯科ともに窓口負担の抜本的軽減を進めます。

 歯周病の治療・管理や義歯に関わる包括的・成功報酬型の診療報酬を撤廃し、治療行為を適正に評価する報酬に改定します。画一的な文書提供業務の押しつけをやめさせます。

 2010年度の診療報酬改定では、訪問歯科診療料の算定要件が改悪され、点数が引き下げられました。「同一建物内で複数の患者を診察した場合の減算」「20分未満の診療に対する減算」など、不合理な報酬削減を撤回し、元に戻します。

 国民の歯科医療への需要の高まりや、治療技術の進歩に対応し、保険治療の大幅な拡大と保険外治療の解消をはかります。歯科新技術の安全・有効性を確認してすみやかに保険収載とする仕組みを確立し、金属床の部分入れ歯など、実績もあり、広く用いられている治療法は保険給付の対象としていきます。現在、保険で給付されている補綴物の保険給付外しに反対し、混合診療となっている欠損・補綴の保険移行をすすめます。

 歯科技工士や歯科衛生士の役割を、適正に評価する診療報酬にあらためます。入れ歯にかかわる診療報酬の改悪により、歯科技工所の経営難・廃業が加速し、新たに歯科技工士となる若い人を確保できないなどの事態が深刻化しています。一方で、安全や品質に規制のない安価な海外技工物が大量に輸入され、自費診療で使用されています。歯科技工士が安心して仕事を継続でき、歯科医と連携して「よい入れ歯」を保険で給付できるよう、歯科技工物にたいする診療報酬の改善をすすめます。海外技工物の輸入・使用・安全性の実態を調査し、材料・製作者・技工所などの基準を設けて規制をおこないます。

 歯科健診の充実など、国民の口腔の健康をまもる取り組みを国の責任で推進します。

〔医療の安全、患者の権利の確立〕

 日本共産党は、医療事故の検証と再発防止に取り組む第三者機関の設置を早くから提案してきました。今年6月、「医療・介護総合法」で医療事故調査の「第三者機関」が設置されたことは一歩前進ですが、▽公費負担の確保、▽遺族の費用負担の問題、▽医療機関が事故を認めなかった場合に遺族から調査請求できるようにすること――など、さまざまな課題が残されています。真に実効ある制度となるよう問題提起や改善をすすめていきます。

 分娩時の事故で子どもが脳性まひとなった場合に補償をおこなう「産科医療補償制度」が2009年1月から始まりました。補償の対象が限定されるなか、巨額の保険料が余る状態が続いており、基金の運営の透明性・公平性にも疑問がだされるなど、問題の多い制度となっています。現行制度の抜本的見直しをすすめつつ、諸外国のような幅広い医療事故に対応できる無過失補償制度の創設をめざします。

 患者の権利を明記し、医療行政全般に患者の声を反映する仕組みをつくる「医療基本法」の制定をすすめます。

 医療内容のすべてを反映せず、患者のための情報開示というニーズを満たさない一方、医療現場に負担をしいるだけとなっている、現行の「診療明細書の発行」を見直し、患者に医療の内容をわかりやすく知らせる、情報開示の仕組みを整備します。

〔がん対策〕

 日本国民の死因の第1位である、がんの予防・治療には、国が総合的な対策をすすめることが必要です。ところが、歴代政権は、窓口負担増、保険証とりあげなど、がんの早期治療に逆行する施策をとりつづけてきました。自民党政権が、がん検診にたいする国庫補助を廃止したために、各地で、がん検診の有料化や対象者選別、検診内容の劣悪化などの事態が起こっています。「医療崩壊」が進行するもと、がんの治療・予防の地域格差も深刻な問題となっています。

 がん対策基本法の主旨にのっとり、どこにいても必要な治療・検査を受けられる、医療体制の整備が必要です。国の責任で、専門医の配置や専門医療機関の設置をすすめ、所得や地域にかかわらず高度な治療・検査が受けられる体制を確立します。未承認抗がん剤の治験の迅速化とすみやかな保険適用、研究予算の抜本増、専門医の育成、がん検診への国の支援の復活など、総合的がん対策を推進します。

〔薬害・肝炎対策〕

 薬害(肝炎、イレッサ、MMRなど)の解決と被害者救済に全力をあげます。

 薬害C型肝炎訴訟の原告・弁護団の運動がみのり、2008年1月、薬害発生と被害拡大に対する国の責任を明記し、血液製剤によってC型肝炎に感染した被害者を救済する法律が成立しました。しかし、救済法では、カルテのない被害者の救済がきわめて困難で、対象となる血液製剤は限定され、先天性疾患の治療や集団予防接種などで感染した被害者は救済対象から外されています。日本共産党は、すべての被害者の救済をはかり、製薬企業にも謝罪・補償・再発防止をおこなわせるなど、全面解決にむけた努力をつづけます。

 B型肝炎についても、原告・弁護団の運動がみのり、昨年6月に国の責任を明記した基本合意が成立し、B型肝炎特別措置法が成立しました。しかし、国の体制の不備から個別の患者にたいする和解金の支払いが非常に遅れています。国の体制整備の遅れを解消し、すべての被害者の救済をすすめるとともに、治療費助成の創設や差別・偏見解消の取り組みなど、全面解決にむけた努力を行います。

 薬害肝炎原告・弁護団と国が結んだ「基本合意」、薬害肝炎検証委員会の『最終提言』にもとづき、薬害防止を目的として医薬品行政を監視する第三者機関の早期設置を求めます。

 350万人とも言われるウィルス性肝炎患者の治療推進と生活支援にむけ、肝炎対策基本法のさらなる充実や、「肝炎治療7カ年計画」の拡充を求めます。C型肝炎に対する肝がん予防を目的としたインターフェロン投与や、B型肝炎に対する核酸アナログ製剤の使用などの有効性をすみやかに確認し、必要な検査・治療は迅速に医療費補助の対象としていきます。ウィルス性肝炎を「高額長期疾病にかかわる高額療養費の支給特例」の対象に加え、患者負担を軽減します。「肝炎ウィルス無料検査」の拡充、「肝疾患診療連携拠点病院」の整備、「肝炎情報センター」の機能拡充など、肝炎の早期発見・治療、情報提供、研究体制の充実をはかります。

〔たばこによる健康被害をなくす取り組みを進める〕

 世界保健機関(WHO)の総会が「たばこ規制枠組み条約(FCTC)」を加盟国の全会一致で採択し、国会で同条約が衆参両院で承認されるなど、世界でも日本でも、たばこの害についての認識が広がっています。

 受動喫煙を防止するため、公共施設・飲食店等における禁煙を推進します。「タバコ規制法」の制定をすすめます。たばこの需要減少や年少者の喫煙防止をはかるため、たばこの価格や課税の引き上げ、税収をたばこの害から健康をまもる施策に充てる取り組みを求めます。

〔医療機関への消費税ゼロ税率適用、事業税非課税・租特法26条の存続〕

 保険診療などの医療費は消費税非課税とされていますが、病院や診療所が購入する医薬品・医療機器などには消費税が課税されています。これによって医療費の負担も増え、医療機関の経営も圧迫されています。保険診療には「ゼロ税率」を適用し、医薬品などにかかった消費税が還付されるようにします。

 社会保険診療報酬に係る事業税の非課税措置を継続します。租税特別措置法第26条等に規定された、医療機関の概算控除の特例を存続させます。

〔救急医療の拡充〕

 救急医療の確保は、人の生死を左右する重大課題です。ところが、救急医療の現場では、出動件数の急増に隊員数の増加が追いつかず、患者の命が脅かされる状況が続いています。「医療崩壊」のなかで、救急患者の搬送先が見つからないという問題も深刻です。

 日本共産党は20年以上前から国会でドクターヘリ導入を提案するなど、救急体制の充実を一貫して要求してきました。救急隊員の抜本増、地域医療の再生とあわせた救急・搬送体制の整備・拡充をすすめます。救急車の有料化、通報段階で患者の「緊急性」を選別して切り捨てる「トリアージ(治療の優先順位の選別)」の導入など、救急医療の改悪に反対します。

 国の責任で小児救急体制を整備し、新生児特定集中治療室(NICU)を計画的に増やします。

〔助産師・助産院への公的支援〕

 「お産難民」が社会問題となっている今、助産師・助産院の役割はますます重要となっています。ところが、2006年の「医療改革」では、嘱託医・嘱託医療機関を確保できない助産院の開業は認めないとする法改悪が強行され、多くの助産院を廃業に追い込みかねない事態が引き起こされました。その後、政府は対応を一定あらためましたが、事態が完全に解決されたとはいえません。

日本共産党は、みんなが安心してお産のできる環境を確立し、助産院ならではの、喜びと満足のある質の高いお産を普及・発展させるため、助産師の養成数を増やし、助産院に対する公的支援をすすめます。助産院を地域の周産期医療ネットワークに位置づけ、「院内助産所」の設置をすすめるなど、助産師と産科医の連携を国の責任で推進します。

〔在宅医療・介護における駐車問題の解決〕

 在宅医療、訪問看護、訪問介護の分野では、一定時間の駐車が避けられませんが、その仕事に従事している人たちは、駐車禁止で取締りを受けることに不安を感じながら仕事をしなければならないのが実態です。 駐車許可を得るには、煩雑な手続きや実態と合わない基準が障害となっている現状を改め、柔軟で実態におうじた道交法上の配慮を求めます。

 

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