2014年 総選挙各分野政策
25、障害者・障害児
批准された障害者権利条約にふさわしく、「基本合意」「骨格提言」にもとづいて、障害関連の法律や制度を抜本的に改革し、障害者総合福祉法の制定をめざします
2014年11月
障害者権利条約批准はゴールでなくスタート
今年1月、世界で141番目に日本でも障害者権利条約が批准されました。「私たちぬきに私たちのことを決めないで」を合言葉に、当事者参加で施策の話し合いをすすめることは当たりまえだという流れを、障害者運動が切り開いてきました。
障害者権利条約の批准はゴールでなく新たなスタートだという立場にたち、国内の障害関連の法律や制度を抜本的に改革します。とりわけ、障害者自立支援法を 実質的に延命した障害者総合支援法については、根本的な問題を解決するためにも、いったん廃止し、「基本合意」と「骨格提言」にもとづいた「障害者総合福 祉法」の制定をめざします。
障害者自立支援法は、障害者が生きるために不可欠なサービスを「益」とみなし、障害が重くなるほど負担が増える、原則1割の「応益負担」を強いる生存権侵害の悪法です。
2010年1月に国は自立支援法を廃止し新法を制定することを明記した「基本合意」を、障害者自立支援法違憲訴訟団と結び、和解しました。推進会議のもと で自立支援法廃止後の新法の中身を話し合う「総合福祉部会」による「骨格提言」がまとめられました。政権交代しても、国が障害者と結んだ「基本合意」の重 みは変わりません。国が審議を委託した部会で決めた「骨格提言」の尊重は当然です。
(1)障害者権利条約の批准にふさわしい国内法の見直しを
障害者基本法を見直す
2011年に改正された障害者基本法は、障害者権利条約の水準からは不十分でしたが、「障害のあるなしにかかわらず基本的人権が尊重される」「共生社会の 実現」などが法の目的に盛り込まれたことや、史上初めて法律に、言語に手話を盛り込んだことなど、一定の前進がありました。障害の範囲については、「継続 的な」状態ばかりでなく、「周期的または断続的」を追加することで難病などより広い障害を含むということを明確にするために共産党は修正案を出し、修正は されなかったものの、国会の質疑で明確に難病を含むことを明らかにさせることができました。今回反映されなかった権利条約の大事な柱の1つである「合理的 配慮を行わないことは差別である」などを盛り込むことを求めます。
実効性のある障害者差別禁止法制の実現を
何が差別かを定義し、差別を受けた際に当事者同士の話し合いによる解決を基本とする司法による救済の規範となる法制度が、差別禁止法です。障害者権利条約 第1条「障害のあるすべての人によるすべての人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、固有の尊厳の尊重を促進すること」という当たり前の目的を 実現するためのものです。
障害者政策委員会「差別禁止部会」は2012年9月に障害者差別禁止法のあり方についてまとめた「意見書」を発 表しました。2013年6月に成立した「障害者差別解消法」は意見書の水準には及ばないものの、障害者の切実な願いを踏まえて暮らしを一歩でも前進させる ため、日本共産党は賛成しました。2016年度施行に向けて実効性のある基本方針やガイドラインを策定します。次期見直しの際には「意見書」を反映させた 改正をはかります。
現在、障害者政策委員会で、政府による差別解消法第6条にもとづいた「基本方針」の話し合いがすすめられています。
差別についての定義や、「必要かつ合理的な配慮」は障害者権利条約の合理的配慮と同様であること、合理的配慮の不提供が差別であることなどの明記を求めます。
事業者による合理的配慮の提供は「努力義務」とされましたが、「義務」とすべきです。紛争の解決や救済のしくみは、既存のしくみの活用が中心となっていま すが、法の施行状況や差別事例の分析を通じて実質的な救済のためのしくみの創設・拡充をすべきです。女性障害者の複合的差別を解消します。
虐待からまもる体制整備を
障害者虐待防止法が施行されていますが、2013年度、虐待の被害を受けた障害者は2659人にのぼります(厚労省調査)。あらゆる虐待をなくすために、 市町村障害者虐待防止センターの設置などを促進し、専門知識を持つ職員の配置や保護施設が確保できるよう、国の対策をすすめます。
障害者政策委員会の体制強化を
障害者政策委員会は、権利条約の履行状況の監視機能を持つ機関です。国内法の整備をすすめていく上で、その役割にふさわしい事務局機能や予算の裏付けなど をともなう体制強化を求めます。継続的に国内外の基礎データや資料の収集・分析をおこない、国民にわかりやすい形で公表すべきです。その前身である「障が い者制度改革推進会議」の成果を踏襲し、情報公開をすすめ、委員の選出方法を見直して、障害当事者委員への合理的配慮がなされるようにすべきです。
財源は消費税増税ではなく大企業や富裕層の負担で
日本の障害関係予算は「毎年増えている」と厚労省はいいますが、GDP比でドイツの3分の1、スウェーデンの4分の1(国立社会保障・人口問題研究所平成 24年度「社会保障費用統計」)など、諸外国に比べて低いものです。国内法の見直しをすすめていく上でも、抜本的な増額が必要です。
消費 税は所得の低い人ほど負担が大きく、障害者にもっともふさわしくない税金です。日本共産党は、社会保障財源を消費税に頼らない別の道で確保することを提案 しています。①富裕層や大企業への優遇をあらため、「応能負担」の原則を貫く税制改革をすすめる、②大企業の内部留保の一部を活用し、国民の所得を増やす 経済改革で税収を増やすこと、にとりくんで、「先進水準の社会保障」へと転換をはかっていきます。
(2)障害者総合支援法を見直す
障害者総合支援法は、市場原理・競争原理をベースにした自立支援法「延命」法です。廃止をめざし、「基本合意」「骨格提言」にもとづいた障害者総合福祉法を制定しますが、現行法下でも、予算措置や省令の通知で以下のような見直しをすすめていきます。
応益負担はすみやかに廃止し、利用料は無料に
「障害者は同年齢の市民と同等の権利を有する」――1981年「国際障害者年」以降、障害者権利条約にもこの理念は引き継がれています。障害を理由とした不利益は、社会全体で支えるべきで、すべての人が安心して暮らすために、国際社会では福祉は無料が当たり前です。
政府は2010年に強引に「改正」した自立支援法「つなぎ」法によって、「応能負担」に変えたとし、わが党の追及に対して、応益負担の問題は解決済という 態度に終始しました。しかし、「つなぎ」法を引き継いだ障害者総合支援法でも、1割の定率負担は残され、低所得世帯は無料になったといっても、負担上限額 は変わりません。「応益負担」制度は廃止し、すみやかに無料化を求めます。また、食費等の自己負担制度の廃止も求めます。
配偶者の収入認定はやめて、本人所得のみの収入認定とします。障害者の親・きょうだいなどの扶養義務はなくします。
すべての障害者の相談支援を確実に
2014年度までにすべての障害者・障害児のサービス等利用計画(ケアプラン)づくりが義務付けられたものの、障害者が平均40・9%、障害児が43・ 5%(今年6月時点)と低い到達にとどまり、都道府県ごとに大きなばらつきがあります。厚労省は計画の期限を2015年度まで延長しました。
サービス等利用計画を担う相談支援事業の報酬が低すぎて、事業所の参入がすすまないことが、遅れの要因の1つです。相談支援が、その人らしい人生設計をするための大事な支援という位置づけにふさわしく、事業のあり方などを見直し、抜本的な報酬の引き上げをはかります。
障害者がプランを自前でつくることも可能であることから、希望する障害者には公的責任でサポートをおこない、最後の1人まで計画づくりを保障します。
支給決定は障害者の希望の反映を
今年4月から障害程度区分認定から障害支援区分認定に変わりましたが、サービス支給量抑制のための装置であることに変わりありません。障害者参加で区分認 定の制度内容を協議し、知的障害、精神障害、難病、発達障害などの障害特性が反映された、支援の必要量や希望が保障されるしくみにすべきです。
グループホームは安心して暮らせる場に
今年4月からグループホームにケアホームが一元化されました。2013年度までは夜間支援対象者の数や障害程度区分に応じて算定されていた加算が、提示さ れた報酬案は夜勤と宿直という支援者側の勤務体制によって大きく単価に差がつけられ、大問題になりました。事業所団体の申し入れにより、2015年3月ま では、緩和する経過措置がとられています。これまでも多くの事業所がギリギリのパートに頼った運営がされているのに、さらに赤字化がすすんでホームの存続 を揺るがす事態です。
手厚い支援が必要な人が地域で安心して暮らせるよう、基本報酬を大幅に引き上げることを強く求めます。今回の夜間支援体制加算は白紙に戻し、グループホーム職員の勤務のあり方について見直しをはかるべきです。
「新体系」の見直しを
「新体系」を見直し、骨格提言で示されたような「全国共通のしくみで提供される支援」で、就労支援、日中活動支援、居住支援、補装具・日常生活用具支給な どをおこない、「地域の実情に応じて提供される支援」では居住の場である福祉ホームや支給決定プロセスを経ずに柔軟に利用できるという支援体系を求めま す。
就労分野も、障害者の就職を受け入れる企業は依然として少なく、不況下で真っ先に障害者が解雇されているのが現実です。障害者が働く意義は多様で豊かです。「骨格提言」が示した、就労保障とともに日常生活の支援も拡充する新たな事業体系の検討を、強く求めます。
低水準にある小規模作業所と地域活動支援センターにたいする補助金を、当面少なくとも就労継続支援事業の水準に引き上げます。地域活動支援センターを最低定員5人からの設置・運営を可能にし、「骨格提言」が示す新たな事業体系の検討に位置付けます。
同行援護の利用時間の地域間格差をなくし、視覚障害者に対応できるヘルパーの養成を拡充し、十分な支給量を保障するよう求めます。
地域支援事業の自治体間格差の解消を
地域生活支援事業の予算を抜本的に拡充し、利用料やメニューの地域間格差をなくします。移動支援事業、意思疎通支援事業などの利用料を無料化し、国の制度として位置付けます。
身体障害者手帳をもたない聴覚障害者など、必要とするすべての人に手話通訳や要約筆記の派遣をうけられるようにします。
高い専門性に見合った手話通訳者やコーディネーターの身分保障を求めます。
日額払いを月額払いへ
日額払いから月額払いを基本とする報酬にし、正規職員の配置を中心とした雇用形態ができるよう、報酬の底上げをおこないます。
福祉労働者の賃金の引き上げは、報酬にくみいれず、全額国庫負担により引き上げをはかります。給食・事務・施設長など削減された職員配置基準を復活させます。
発達障害者の特性をふまえた支援に
2005 年に発達障害者支援法が施行され、障害者総合支援法にも発達障害が位置付けられていますが、発達障害に対する社会的な理解や支援体制の整備はいまだ不十分 です。成人になってはじめて発達障害と診断されるケースも増えています。全世代の問題として、生きづらさを抱えた人たちの自己実現や社会参加を可能にする よう、二次障害を予防する医療や、雇用、教育などすべてにわたって支援を拡充します。障害福祉サービスが必要な発達障害者の支援区分認定が特性をふまえた ものになるよう改めます。医療・支援機関に足を運べない青年に、専門家が自宅を訪問する相談支援活動を広げます。発達障害支援センターを増やし、民間団体 やハローワークなどと連携できるよう、支援体制を拡充します。
障害制度の谷間をなくす
障害者総合支援法で障害の範囲に「難病等」が加わり、障害者手帳がなくても支援区分認定を受けたうえで、当面「難病患者等居宅生活支援事業」の対象であった130疾患+関節リウマチの患者は福祉サービスを利用できるようになりました。
来 年1月から施行される難病法において定義が定められ、医療費助成される疾病が広がるとともに、福祉サービスを利用できる疾病の見直しがすすめられています が、「難病」とされる疾病や小児慢性特定疾病をふくめ、最新の研究成果の下で医師が判断できるすべての難治性疾患を対象とすべきです。
障害者・患者団体の意見をふまえて、支給決定のしくみを抜本的に見直すとともに、当面、難病の特性を十分に反映したしくみにするよう求めます。
依然として支援が必要にもかかわらず福祉利用の対象からもれてしまうあらゆる障害者をなくすよう、障害認定や手帳制度のあり方を含めて見直します。
※難病政策については、各分野政策「26 難病」をご覧ください。
(3)地域でのゆたかな生活の保障を
住まいの選択の保障
障害者権利条約第19条では、障害のあるすべての人に対し、障害のない人と同様の、どこで誰とどのように生活するか義務づけられず、地域社会で生活する権利を保障しています。ゆたかな選択肢からその人らしい住まいの選択ができる施策が求められています。
日本の障害福祉施策が長い間前提としてきた家族介護を脱却し、社会的ケアへ転換がはかれるよう、住まいの基盤整備をすすめます。「障害福祉基盤の緊急整備5カ年計画」を策定し、特別立法を制定します。
在宅支援のためにも、家族の休息を保障するためにも、ショートステイの増設や、「医療的ケア」を必要とする人たちへの支援策を拡充します。
バリアフリー対応の公営住宅を確保・建設し、待機者が増え続けている入所施設やグループホームを公的責任で計画的に増やします。公有地の活用が積極的にできるよう国や自治体に求めます。
ホームヘルプサービスや移動支援の拡充など、在宅支援を保障し、入所施設でも外部サービスを使えるように改善します。
障害者・障害児世帯の孤立死や孤独死を防ぐためにも、ソーシャルワーカーなどの力の発揮ができる相談支援体制を整え、公的責任を中心としたネットワークをすすめます。
年金の保障
障害基礎年金を1・2級とも大幅に引き上げ、各種手当を引き上げます。最低保障年金制度の実現で、年金の底上げをはかります。(最低保障年金制度については、各分野政策の「年金」の項目をご覧ください)。
無年金障害者への特別障害給付金制度が2005年4月から開始されていますが、障害基礎年金と同額に引き上げるとともに、国籍要件のために加入できなかった在日外国人など、支給対象をさらに広げるよう改善をすすめます。特別障害給付金制度はあくまでも福祉的措置であり、年金制度の枠内での根本的な解決が必 要です。国の不作為や年金制度の不備を認めて、障害基礎年金の支給を行うべきです。
初診日認定は、精神障害や内部障害のように発病時期が特定困難な場合や、現在の状態が基準に十分該当するにもかかわらず、初診日が証明できないために障害年金が受けられない場合には、実態に即して支給すべきです。
労働の保障
法定雇用率の厳守を徹底し、さらに法定雇用率を引き上げます。
障害者雇用促進法が「改正」され、精神障害者の雇用義務化が位置づけられたものの、その実施は施行から5年先です。早急な義務化を求めます。事業主が、求 人・採用や賃金の決定、待遇など障害者であることを理由に不当な差別的扱いをしてはいけないという規定に、断続的、周期的に障害が出て職業生活上相当制限 がある難病患者などが含まれることが明確になりました。引き続き障害者手帳のない難病・慢性疾患患者も法定雇用率や雇用の義務化の対象になるよう求め、働 き続けるためのさまざまな支援をすすめます。
ジョブコーチ制度などを充実させ、病状や障害が進行しても働き続けられるよう、通院や病気休暇を保障します。産業医療職に対して障害の特性の理解や具体的援助をすすめるための研修等を義務付けます。
職業訓練や資格取得の支援制度を拡充します。
障害者、難病患者の移動支援において、通勤のためのヘルパー利用をすみやかに認めるべきです。
労働条件の切り下げやパワーハラスメントなどを防止するためのしくみを構築し、障害者のはたらく権利をまもります。
保護雇用制度を創設し、所得保障をおこないます。
視覚障害者の読み書きをサポートする職場介助者を配置し、業務が遂行できるようにします。
あんま・はり・灸の資格者のはたらく場を保障します。
自治体の採用試験に点字試験を位置づけます。
難病法の成立に伴い、当面、早急に発達障害・難治性疾患雇用開発助成金の対象疾病(130疾病+筋ジストロフィー)を見直します。
教育の保障
教職員の増員や施設設備のバリアフリー化など、十分な教育予算をとり、子どもに最適・最善の教育がなされるよう教育環境をととのえます。
通常学級における特別支援教育の充実を図るため、学級定数を引き下げるとともに、障害のある子どもたちへの「合理的配慮」を保障する教職員の配置や施設設備の充実を図ります。また、特別支援学校の行き届いた教育保障のために、定数基準を引き下げます。
特別支援学校の異常な過大・過密を解決し、「学校設置基準」を策定します。
被災時や復興の保障
東日本大震災では、障害者の死亡率が住民全体の2倍以上であるという調査が出されています。国として被災障害者の実情をすみやかに調査し、震災にそなえての対応を話し合う検証委員会などの設置を求めます。
被災地や避難先で暮らす障害者の制度やサービスの利用、移動支援、仮設住宅や復興住宅などのバリアフリー化をはじめとした住環境の整備などの支援を、引き続きおこなえるようにします
防災、復興の部局に障害当事者が参加できるようにします。
(4)障害者の医療の拡充を
すべての国民は貧富の差にかかわりなく医療を受ける権利があり、国が医療を保障する責務を負うというのが、生存権をさだめた憲法25条の精神です。また障 害者権利条約第25条は、障害者に「到達可能な最高水準の健康を享受する権利」を定め、「無償の又は負担しやすい費用の保健および保健計画を提供するこ と」「これらの保健サービスを障害者自身が属する農村を含む地域社会の可能な限り近くにおいて提供すること」を定めています。
日本共産党 はこの立場から、疾患・障害の区別なく、窓口負担ゼロで医療を受けられる日本をめざします。当面、現行の窓口負担を「子ども〈就学前〉=無料、現役世 代=2割、高齢者=1割」へと引き下げます。そのなかでも、障害者や難病患者の医療費は、優先してすみやかに無料にすることが当然です。
自立支援医療を無料化に
自立支援医療の低所得世帯のすみやかな無料化を実施し、低所得世帯以外についても無料化を求めます。自立支援医療の対象拡充をすすめます。
更生医療制度はリハビリテーション医療の観点から身体障害者手帳所持を条件からはずし、障害の除去・軽減のみでなく状態を維持したり、これ以上の悪化を防ぐための治療や予防も含めた治療にも適用できるよう対象を拡大します。
「重度かつ継続」の対象範囲を拡大し、断続的であっても高額の医療費がかかる場合にも適用を求めます。また、「重度かつ継続」者の入院時食事療養費の負担をなくします。
育成医療制度は「児童の健全育成」の観点から本来の児童福祉法に戻し、障害のある子どもとともに、「放置すれば将来障害が残ると予想される子ども」を今後とも対象に含むようにします。「経過措置」とされている中間所得層の負担軽減措置を恒常化した制度にします。
重度心身障害者医療費助成制度を国の制度に
すべての自治体で実施している重度心身障害者(児)医療費助成制度を、国の制度として確立します。また、身体障害者手帳のない難病をふくむすべての障害者を対象にします。
病院でのヘルパー派遣の実現を
通院や入院時の介護保障について、障害児者のコミュニケーションや日常生活を支えているホームヘルパー等が病院内での介護ができるよう、医療と福祉の垣根をはずし、実態的な支援がおこなえるよう求めます。
(5)精神障害の医療・福祉の向上を
子どもから高齢者まで全世代の問題としてメンタルヘルスにとりくみ、精神疾患・障害の理解と対応をすすめ、精神医療や福祉の向上をはかります。当事者・家族への支援を強めます。
精神科病棟の居住系施設への転換はやめて、地域にグループホームなどを増設し、在宅での訪問支援を拡充します。「社会的入院」をなくすために、相談支援を拡充し、就労支援をはじめとした所得保障などをすすめます。
自立支援医療の低所得世帯のすみやかな無料化を実施し、低所得世帯以外についても無料化を求めます。
薬物依存症者の治療体制や社会復帰の支援を強めます。
精神科病院への医療保護入院の「保護者制度」の撤廃は当然であるものの、「家族等の同意」は保護者制度の弊害を引き継ぎ、家族の過重負担を解消することは できません。また、安易な強制入院も危惧されます。患者の思いを代弁する「代弁者制度」を導入し、精神保健指定医2名による判定や第三者機関として精神医 療審査会の機能拡充などを合わせ、患者の権利擁護のための制度を拡充すべきです。
(6)介護保険の優先原則の廃止を
総合支援法第7条「介護保険優先原則」によって、65歳になった障害者が各自治体で介護保険を強制的に優先され、障害福祉利用の制限、打ち切り問題が生じ ています。さきの国会で厚労省は、介護保険法と障害者総合支援法との関係は法体系としてどちらが優位にたつということはなく、介護保険サービス優先の給付 調整の規定があるだけだと答弁しました。また、障害者の告発を受けて、介護保険と障害者福祉の関係がどのようになっているか実態調査がやられていることを 正式に認めました。すみやかな調査結果の公開を求めます。
厚労省は2007年からくりかえし「通知」を出し、自治体に機械的な介護保険優先をすすめるのでなく、個別の状況に応じて対応をするよう示しています。通知どおりの対応になるよう、指導を求めます。
国庫負担基準の減額規定の廃止を
こうした自治体の問題が後を絶たないおおもとには、国庫負担基準に介護保険対象者の減額の規定があります。重度訪問介護利用の介護保険対象者は、支援区分 6の額と比較すると7割もの減額になります。65歳以上の人の障害福祉サービスが増えれば、自治体の持ち出しがどんどん増えていく構造になっています。こ うした自治体の誘導につながる減額規定は撤廃すべきです。
「基本合意」では介護保険優先原則の廃止は検討項目になっており、総合支援法の 附則第三条でも法施行後三年を目途として、高齢の障害者に対する支援の在り方について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるとなっています。 優先原則をすみやかに廃止し、介護保険の対象年齢でも従来から受けていた支援を継続して受けられる制度になるよう求めます。介護保険制度を「改革」し、低 所得者の利用料無料化を早急に求めます。
介護保険と障害者福祉の「統合」は障害者の実態を無視したものであるとともに、介護保険料の徴収年齢を引き下げて、国民に負担増を求めることにねらいがあり、反対です。
(7)交通、参政権、情報のアクセス保障を
バリアフリー、運賃割引制度の拡充を
駅のホームドア、可動式ホーム柵の普及や、ノンステップバスの導入をすすめ、交通や建物などのバリアフリー化をすすめます。障害者用・オストメイト対応のトイレを普及し、ユニバーサルシートをあわせて設置します。
JR・航空運賃や高速道路の通行料金の割引制度の改善・拡充にとりくみます。精神障害者の運賃割引制度の改善を求めます。
制度から排除されているてんかん・難病などの患者・障害者を運賃割引の対象にすることを求めます。
参政権・司法の場の保障を
障害者の参政権を保障するため、手話や字幕をすべての政見放送に義務づけるとともに、点字による選挙広報などの改善、在宅投票制度の拡充、投票所のバリアフリー化などをすすめます。
被後見人の選挙権の回復を認めた判決により、国会は公職選挙法を改正して回復を認めました。被後見人が支障なく選挙権が行使できるよう、国や自治体の環境整備を求めます。
障害者の裁判参加を保障するために、障害者基本法で定められている司法における障害者の意思疎通のための配慮や職員研修の実施にもとづき、障害者を交えた研修などの実施を求めます。
裁判での点字文書の拡充や手話通訳費の公的負担を求めます。
情報アクセス、コミュニケーションの保障を
障害者のコミュニケーション手段の自己選択・自己決定を尊重し、社会参加を保障する「情報・コミュニケーション法」を制定します。
各地で手話言語条例が制定されてきており、手話言語法を求める意見書が1300をこえる自治体で採択されています。手話言語法の制定を求めます。
読書や文字の読み書きに困難がある高齢者や障害者の「読書権」を保障し、公的機関などに読み書き(代読・代筆)情報支援員の配置ができるよう求めます。
アクセシブルな情報通信技術(ICT)の調達を政府に義務づけるとともに、「新技術」の開発段階からの障害者の参加保障を求めます。
障害者対応のATMの普及や、窓口対応の改善をすすめます。
紙幣について、サイズの差別化をはかり、さわってわかりやすくするなどの改善を求めます。
テレビとラジオが聴取できる携帯品「テレビラジオ」を日常生活用具へ指定するよう求めます。
人工呼吸器を装着した難病患者や重度障害者のコミュニケーションツールとして機器の開発を促進し、これらを補装具や日常生活用具の対象とするよう求めます。意思伝達装置の入力スイッチ設定支援制度を創設し、専門機器が支援できる体制を整備します。
テレビの解説放送を拡充します。
(8)障害児の療育・生活の保障を
障害が確定していない子どもたちを含めて、必要なときに身近な地域で、療育を受けられるよう、施設整備が必要です。契約制度をやめ、応益負担をなくし、公的責任で適切な福祉サービスが利用できるように改めます。
国は実態を調査し、量的な整備計画をたて、支援の中核的な役割が求められる児童発達支援センターの機能強化を保障すべきです。
保育所等訪問支援事業の保護者負担をなくし、自治体ごとの巡回指導も引き続き保障します。
2015年度から開始予定の「子ども子育て支援新制度」のもとでの、障害児の保育所入所や保育条件の保障を求めます。
放課後等デイサービスは、専門性のある正規の指導員の配置が可能になるようにするとともに、事業規模による報酬単価の格差をあらためます。また、実施内容 に規制がないために、学習塾のような学習の補習や、習い事のような内容も増えています。公的責任の所在を明らかにし、放課後生活をゆたかにするためのとり くみをすすめます。
被虐待児の入所の増加などから、入所施設の子どもたちの障害の幅が広がっています。施設空間や生活集団の編成の困難を解決する職員配置などを求めます。
保護者の子育てやレスパイトを保障するための、障害児のショートステイやホームヘルプに対応できる事業所を増やすため、モデル事業の実施を求めます。