2025年参議院選挙各分野政策
42、環境/ゴミ問題・リサイクル
持続可能な経済・社会を実現するため、環境問題の抜本的解決に取り組みます
廃プラスチック対策を強化し、”焼却中心主義”から脱却し、ごみを出さないシステムの確立をめざします
2025年6月
環境
21世紀の世界を持続可能な経済・社会とするためには、私たち一人ひとりの決意と行動で気候危機などの環境問題に取り組むとともに、環境悪化や公害防止よりも企業の利益が優先される社会の根本転換「システムチェンジ」に向けた取り組みが重要です。
将来にわたって良好な環境を維持していくために、環境汚染を規制し、生態系を守るとりくみを強化します。そのためにも環境汚染問題の解決には、①汚染者負担の原則、②予防原則、③国民・住民の参加、④徹底した情報公開──の基本的な視点が欠かせません。その立場で、環境問題の根本的解決に向け、次のようなとりくみを強めます。
気候危機を打開する取り組みは、人類と地球にとって待ったなしの課題です
➡各分野の政策「45、気候危機」をご覧ください。
有害化学物質対策をすすめ、健康と環境のリスクへの規制を強化します
化学物質が一度環境に影響を与えてしまえば取り返しがつきません。危険性評価が必要な全ての化学物質に対して、予防原則の視点から科学的な評価を基本として取り組むべきです。産業界からの事業の効率化、低コスト化要求を優先にした「総量規制の見直し」を行った規制緩和は、国際的な合意にも逆行したもので許されません。また10億分の1m単位の微細粒子であるナノ物質については、健康被害を拡大したアスベストの苦い教訓を踏まえて、健康への影響について対策をとります。予防的原則を明文化し、化学物質の製造や使用量の削減、安全性のデータがない化学物質は市場での流通・使用を認めないなどの理念をもりこんだ化学物質基本法を制定します。
日本での研究結果がまとめられる前でも、米国などの先進的研究に学び、原因物質を含む合成洗剤、柔軟剤、シャンプー等について注意喚起するとともに、製品への使用禁止・規制などの対策を講じる必要があります。
あわせて化学物質過敏症や「香害」当事者の原因物質やさまざまな症状、それに伴う生活上の困難、対策の必要性について、社会的な理解が広がるよう周知啓発をすすめます。
児童のアレルギー疾患については、保護者と学校、主治医などが理解を共有するために「学校生活管理指導表」が活用されています。文部科学省自身が、アトピー性皮膚炎などと化学物質過敏症の関係を認めており、この指導表に、化学物質も含めて活用すべきです。国は化学物質の影響を調査するため10万組の母子によるエコチル調査を実施していますが、その研究によるPFASなど化学物質による子どもたちの健康影響の調査、評価を行わせ、健康を守るために使わせます。
緊急のPFAS汚染対策に取り組みます
➡各分野の政策「44、PFAS」をご覧ください。
すべての水俣病被害者の早期全面救済をはかります
➡各分野の政策「43、水俣病」をご覧ください。
大気汚染患者を救済し、自動車メーカーに社会的責任を果たさせます
大気汚染公害の裁判は大阪・西淀川、川崎、兵庫・尼崎、名古屋南部で判決があり、2007年には東京で和解が成立したにもかかわらず、解決はすすんでいません。大気汚染の被害者は、長期にぜんそくに苦しみ、重い医療費に苦しんできました。
「全国公害患者の会連合会」や各地の大気汚染被害者94人が、全国一律の医療費助成制度を求めて、国、自動車メーカー7社を相手に、公害紛争を取り扱う公害等調整委員会に、公害調停を申し立てました。ぜんそくは治らないともいわれる病気で、発作のたびに入退院を繰り返し、薬代もかかります。
東京都は和解が成立した後、国や自動車メーカーなどと協調して2008年から患者の自己負担を全額助成する独自の制度を始めました。しかし東京都以外では、医療費の助成制度がない自治体がほとんどで、今も未救済の患者が大量に発生し、放置されている全国一律の助成制度は不可欠です。都の助成額も縮小されてきて、2018年度からは月6,000円までは自己負担にされました。
大気汚染に苦しむ患者のために、今ある公害保証制度を守ります。患者を放置してきた国に対して大気汚染公害医療費救済制度の創設を要求し、自動車メーカーには相応の財源負担を求めます。
アスベスト被害者を早期に救済し、建築物の解体作業における規制を強化します
アスベスト(石綿)公害については、被害者とその関係者の長年のたたかいが実り、2021年5月に最高裁は国と建材メーカーの責任を認め断罪しました。最高裁の判決を受け、国はようやく被害拡大の責任を認め被害者に謝罪しました。2023年6月に「建設石綿給付金法」が全会一致で成立、裁判を起こさずとも救済される基金の仕組みができました。
しかし法律は成立したものの、建材メーカーは基金制度の参加を拒んだままです。2022年6月には基金制度の参加を拒む建材メーカーの責任を追及する訴訟が全国10地裁において一斉に提訴され、2024年1月現在、全国29訴訟、1,082人の被害者が建材メーカーの責任を争い続けています。また、2021年5月の最高裁判決では、屋根工など屋外作業者は救済の対象から除外しましたが、石綿は少量のばく露でも重大な健康被害を及ぼすことから、問題がある判決と言わざるを得ません。建材メーカーの未参加や、対象職種・期間の制限など残る課題の早期解消へ、国の責任で道筋をつけることが求められています。
建材メーカーと国は、少量の暴露でも中皮腫、肺がん、石綿肺など、生命に関わる重篤な疾患を招くアスベスト建材の危険性を早くから認識しながら規制を行わず、企業利益のために使用を拡大するにまかせ、暴露防止対策を怠りました。それが、多数の被害者と今後の解体作業における重大な危険性を生じさせています。2006年に石綿の使用は全面的に禁止となっていますが、住宅を含む多くの建物で使われている石綿を含んだ建材はそのままです。今後10年間でそうした建築物の解体がピークを迎えると言われています。飛散防止対策を怠る違法な工事をなくすため、石綿障害予防規則、大気汚染防止法、建築基準法、廃棄物処理法など、アスベスト関連法制の抜本的強化が必要です。解体作業現場においての規制は、事前調査義務化やアスベスト解体工事情報の自治体への届出義務化など強化されてきていますが、いまだにアスベスト飛散事故など取り返しのつかない事故報告は後を絶ちません。飛散事故を防止するため、解体時の大気濃度測定や第三者による事前調査だけでなく完了検査の実施の義務付けなど、より厳格な飛散防止対策の義務化を行います。また、違法な工事を防ぐためにも、断熱材等飛散性の高い建材だけでなく屋根材や外壁材などのあらゆる石綿含有建材の除去に対して、公的な費用負担が重要です。
大規模災害では、被災建造物の解体工事によるアスベストの飛散などが問題になります。阪神・淡路大震災では、解体工事にかかわり、アスベスト特有のがんを発症した元警察官や作業員が労災認定されています。能登半島地震でも被災建物のアスベスト露出が確認され、倒壊家屋などの除去等で、解体作業員等のアスベスト疾患罹患の可能性があります。解体作業における更なる安全確保の規制を強化します。
電磁波、低周波による健康問題への対策をすすめます
電磁波による健康への影響について、WHO(世界保健機関)は、2007年6月、新たな環境保健基準を公表しました。各国での医学的調査を基に、平均3~4ミリガウス(ガウスは磁界の強さの単位)以上の磁界に日常的にさらされる子どもは、もっと弱い磁界で暮らす子どもに比べ、小児白血病にかかる確率が2倍程度に高まる可能性を認めています。予防的考え方に基づいて磁界の強さについての安全指針作り、予防のための磁界測定などの対策をとるよう各国に勧告しました。日本でも、この勧告にもとづいて、電磁波に関する環境基準を早急に設定すべきです。そのさい、日弁連が提言したように、電力・電波を利用する側の企業を所管する総務省や経済産業省から独立した組織として「電磁波安全委員会」を設置し、中立・公平な立場から電磁波にたいする安全規制を行い、予防原則にたった暫定規制、住民協議や電磁波放出組織に関する情報公開を制度化し、取り扱うという方式は、原発事故の痛苦の教訓からも妥当です。携帯電話用の無線基地の建設など電磁波の発生源が急増しているなかで、国民の不安にこたえるためにも、電磁波の健康への影響にかんする研究・調査を積極的にすすめるよう求めます。
高速道路の騒音、振動、低周波音によって、不眠、頭痛、めまい、吐き気、耳鳴りなど住民の健康被害が出ています。高速道路床全体の振動を抑える制振装置を設置し、低周波音の健康への影響については、調査・研究を強め、環境アセスメントでの影響調査に反映させるなど、本格的な対応が必要です。
北海道、東北地方での陸上風力発電所建設とともに、洋上風力発電所建設にともなう騒音、低周波による睡眠障害など健康不安が高まっています。この要因には累積的影響と離岸距離の問題があります。建設には環境アセスが必要ですが、累積的影響評価が義務づけられておらず、乱立を防止できません。また、離岸距離では、欧州などでは20~30㎞沖での設置が基本ですが、日本では2㎞程度と、住宅等に近いところに設置されます。環境アセスに累積的影響評価を義務付け、海洋をゾーニングする場合は、離岸距離をEU並みにするよう改善させます。
大規模開発による環境破壊をやめさせ、生物多様性を守ります
国営諫早干拓事業(長崎県)をめぐって、堤防閉め切りにより潮の流れがせき止められ、赤潮が増えてヘドロが堆積し、干潟の生態系が大きく毀損されています。タイラギ漁ができなくなり、ノリ養殖の色落ち被害が広がっています。漁民の収入も激減しており、漁業共済などの今の制度では救済されません。国は1,000億円投じて対策をとりましたが、水質は改善されず、有明海を再生するには開門しかありません。こうした大規模公共事業による環境破壊を繰り返してはなりません。
大規模地下トンネル建設による環境破壊を許しません
東京外環道の建設工事やリニア中央新幹線建設で行われる大深度地下工事に対しては、当初から様々な懸念が示されていました。東京外環道の建設工事では、大深度地下工事によって住宅街の一部が大規模に崩落する事故も発生しています。JR東海が建設主体であるものの自公政権が巨額の公的マネーを投入しているリニア新幹線建設は、環境省も「環境影響は枚挙にいとまがない」という意見書を出しています。また、沿線7都県(東京、神奈川、山梨、静岡、長野、岐阜、愛知)の住民や自治体なども、地下トンネルで貫く工事によって処分先が決まっていない大量発生する残土による災害の懸念や、大深度地下工事による住宅地域での酸欠空気の発生、建設による水枯れの問題や、大規模工事の期間中多くの車両が行き交うことによる環境破壊など、多岐にわたる問題を具体的に指摘しています。ところが、JR東海も政府も、まともに答える姿勢がありません。リニア建設や残土処理によって南アルプスなど地形が大きく変わり、災害を拡大させる危険を警告する研究者も少なくありません。リニア建設ルートには糸魚川―静岡構造線など日本でも有数の活断層が多く存在しており、時速500kmという超高速走行中に、断層が大きくずれる巨大地震に直撃されたらどうなるのか、安全上も問題があります。政府は見直し・中止を検討すべきです。
同様に、大規模地下トンネルによる環境破壊は、北陸新幹線などの整備新幹線でも大きな問題となっており、こうした事業の中止を求めます。
リニア中央新幹線建設事業を中止する決断を、関連する大規模開発工事の中止含む抜本的な見直しを
➡各分野の政策「49、リニア新幹線」をご覧ください。
大規模開発優先から安心・安全の防災・減災、老朽化対策に公共事業の大転換を
➡各分野の政策「47、国民のための公共事業政策」をご覧ください。
米軍による自然破壊を許しません
日米両政府は、沖縄県名護市辺野古への米軍新基地の建設を強行しようとしていますが、名護市辺野古・大浦湾一帯が世界でも極めて生物多様性の高い貴重な地域です。その保全は、生物多様性条約の締約国である日本の責務です。新基地建設に反対し、辺野古沖の貴重な干潟やサンゴなどの保全のために力をつくします。
またアメリカ軍がオスプレイの着陸帯を建設する沖縄県の北部訓練場は、国立公園の指定(米軍基地をのぞく)に続き、2021年7月26日、世界自然遺産に登録された「やんばるの森」のなかでも自然度が最も高い地域です。着陸帯や軍事訓練で自然が破壊されることに断固反対し、移設条件なしの全面返還を要求します。
自然環境に配慮した再エネ導入を進めます
急激な気温上昇による気候危機を回避するためには、再生可能エネルギーへの転換が求められていますが、再エネが拡大する中で、各地で起きている環境破壊の問題も見過ごすことができません。特に地方は自然エネルギーの適地として太陽光発電施設や風力発電施設が急激に増えています。同時に、無謀な森林伐採を伴う開発による土砂災害や、居住環境や生態系を無視して開発されることによる住民の健康被害や生活環境の悪化などの懸念が広がっています。背景には、地域外の企業による利益優先の開発があります。住民合意どころか、開発予定地域の住民を脅迫まがいの行為で同意を迫る、調整池など必要な治水対策を怠るなどの法令違反などの問題も起きています。一方で、適切な環境アセスや、住民との丁寧な意見交換、地域経済への還元などにより、合意のもと進められる再エネ開発も行われています。再エネへの転換には住民が主体となる取り組みが必要です。施設の建設にあたっては保全エリアの設定を前提とした適切なゾーニングや無謀な開発を規制する仕組みを作ります。国は地方自治体でのゾーニング促進を図っていますが、地方の財政と人手不足のため、あまりすすんでいない実態があります。大規模開発事業から自然環境を守るための地方自治体への支援を強化させます。
生物多様性保護の取り組みを抜本的に強めます
自然と生物多様性の健全性を図る指標としている「生きている地球指数」がこの50年足らずの間に、平均69%減少したことが指摘されています。特に生活に身近な川辺などの淡水域では、平均83%減少し最も深刻な打撃を受けています。
2019年に公表された生物多様性に関する国連の報告書では、人間活動によって今後数十年間で100万種の動植物が絶滅のおそれにあると報告しました。同報告書では生物多様性の喪失は人間にとっても世代を超えた地球規模での脅威となると述べています。
2022年12月、生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)が開かれ、国土の海域、陸域の30%を2030年までに保護地域とする国際約束「30by30」が定められました。本来、国立・国定公園地域などの保護地域の大幅な拡大が必要です。政府はこれを民間による生物多様性を保護する活動が行われている地域「自然共生サイト」を保護地域に含め、推進しようとしています。自然共生サイトはこの間、目標の100か所を上回り122カ所が認定されましたが、面積としては国土面積の0.2%にとどまっています。国立・国定公園の保存地域の大幅な拡大とともに、陸域については国土の7割を占める森林の保全が重要となります。海域についてはその面積とともに、藻場、干潟等の沿岸部分が生物多様性上重要となっていて、その保全を進めます。
これまで開発の対象とされた湿地は、水の浄化など、自然の恵みをもたらし、二酸化炭素(CO2)の吸収にも重要な役割を果たしていると再認識され、保全が重視されてきています。ラムサール条約に登録ずみの湿地の保全にとどまらず、広い視野で、環境について考えることが求められています。大規模開発や廃棄物の埋め立てから、自然海浜や干潟などを守るために、干潟などの保全法をつくるとともに、環境NGOが求めている「野生生物保護基本法」の制定を目指します。
瀬戸内海が豊かな海へと回復していない背景には、埋め立てにより、藻場・干潟が減少したことや、温暖化による海水温の上昇などが瀬戸内海の生態系に重大な影響を与えていることが指摘されています。今後の瀬戸内法などの法改正にあたっては「埋め立ての禁止」「海砂利採取の全面禁止」「廃棄物の持ち込み禁止」をはかります。不要な埋立地の解消などによる、藻場・干潟など自然海浜の回復に取り組みます。
鳥獣対策、外来生物対策を抜本的に強めます
2023年、クマ類による人身被害が過去最多を記録し、2025年、市街地等での銃猟に係る鳥獣保護管理法の改正が行われました。熊については人身被害が増加する一方で、四国で絶滅の恐れがあり、地域ごとの実情に見合った対策が必要です。また、市街地へ出没した際の捕獲のみの対策では根本的な解決とはならず、人と接することの無い様、侵入防止柵や緩衝帯の整備、クマを誘引する柿の木などの除去が重要な対策となります。クマ対策にあたる自治体・猟友会等への支援も重要です。さらに熊による被害の増加の背景には、熊と人間を隔ててきた、中山間地等の農業や林業の衰退があります。抜本的対策でもある中山間地等の農業や林業の再生を図るとともに、熊と人間の住み分けのための対策を進めます。
この間、外来生物の被害が全国的に広がり、各自治体が苦慮しています。2022年の法改正で、ヒアリなどまだ日本に定着していないものの水際対策は環境省が、定着したものの防除は自治体が対応し、国が支援することになりました。桜や桃、梅の木に寄生するクビアカツヤカミキリは、2012年の確認以来、十四府県に被害が拡大し、侵入地域では梅や桃の生産が壊滅するなど甚大な被害を与えています。外来生物対策を自治体任せにせず国の広域的な対策の抜本強化がはかられるようにします。
ペットの殺処分ゼロをめざし、人と動物が共生する社会を
➡各分野の政策「46、動物愛護」をご覧ください。
環境アセスメント制度を国際水準並みに抜本的に充実させます
人類生存の基盤である生態系を守るため、環境破壊をひきおこすような大規模開発をやめさせることが必要です。しかし、日本では、自然破壊を伴う基地、空港などの大規模事業の是非を検討する戦略的アセスなど、その保護のための開発規制がなされておらず、干潟などの重要な自然の喪失が続いています。生物多様性上重要な海域である辺野古での基地建設などはその最たる例です。
現行の環境アセスメントは、事業計画立案時に実施されるものであり、また、事業規模によってはアセスメントの手続きが違う、もしくは対象外となるという仕組みになっています。最も厳格に行われる法律にもとづく第1種事業のアセスメントでも、事業実施の可否も含む複数案の検討は義務付けられていません。生態系や住民の居住環境を保全し立地規制をかける区域と事業実施が可能な区域を明らかにしていく環境保全型のゾーニングの実施が必要です。欧米で導入されている「政策の検討段階からの環境アセスメント(戦略的アセスメント)」の完全導入を求めます。温暖化対策に逆行する石炭火力発電所の計画はきっぱり中止すべきですが、環境アセスの制度としてもきちんと整備すべきです。電力業界の圧力に屈して、発電所を戦略アセスメントの対象からはずすようなことがあってはなりません。
電力業界の要望で、アセス導入を拒み、発電所と原発を例外としてきた歴史
日本の環境影響評価制度は、1970年代半ばより検討がはじまりましたが、発電所の建設が遅れることを危惧する電力業界や通産省が抵抗したことによって、長年にわたり法の制定が実現しませんでした。公害・環境問題が深刻化し、国民の怒りと運動が高まるなかでようやく、97年にアセス法が成立しましたが、発電所だけは「電気事業法の定めるところによる」として適用除外とされました。さらに、計画段階配慮書が新設された2011年の法改正で、発電所にもアセス法が適用されることとなりましたが、経産省と電力業界は最後まで適用除外とするよう執拗に求め、その結果、アセスの最後の段階、報告書における環境保全措置等の結果の公表が、発電所だけ適用除外となっています。
また、放射性物質については、政府は、「原子力は公害を発生しない」として、1967年に制定された公害対策基本法でも、93年に制定された環境基本法でも、「放射性物質による大気汚染の防止は、原子力基本法等で定める」との適用除外条項が盛り込まれました。東京電力福島第一原発事故後に制定された原子力規制委員会設置法の附則で、環境基本法の放射性物質適用除外条項が削除され、2013年にはアセス法においても放射性物質が適用対象となりましたが、供用中の原子力発電所の汚染防止は原子力規制委員会の審査に任されています。このように日本の環境影響評価制度において、発電所、とりわけ原子力発電所は「アンタッチャブル」とされてきました。
2025年の環境影響評価(アセス)法の改正にあたっては、当初、再生可能エネルギーの拡大が急がれる中、風力発電事業について、効果的・効率的に環境アセスメントを行うことのみが検討されていたにもかかわらず、2025年3月になって唐突に、工作物の建替事業においてアセスの重要な手続きを省略できる建替配慮書が提案され、今回も電気事業連合会の強い要請で、風力発電事業だけでなく原子力発電所や火力発電所まで適用対象とされました。
戦略的アセスの導入をはかります
個々の事業よりも上位の計画や政策の意思決定段階で環境配慮を行う戦略的環境影響評価制度は、日本を除くはほとんどの主要先進国で導入がはかられています。しかし、日本では電力業界の抵抗でいまだに戦略的環境影響評価制度が導入されていません。
巨額の公費を投入し国策事業となっている半導体製造やデータセンターの事業は、現在、アセス法の適用対象外ですが、これらの施設は大量の電力・水力を消費し、大量の有機フッ素化合物や温室効果ガスを使用・放出します。こうした個々の事業の上位にある計画や政策の策定を対象とした戦略的環境影響評価制度の導入をはかります。
原子力発電所のアセスを厳格化します
政府は、原子力発電所の安全性は原子力規制委員会において厳密に審査が行われているとしていますが、新規制基準によって100%安全が担保され、重大な環境影響が回避されるわけではありません。日本の環境影響評価制度は原子力規制委員会任せの「安全神話」に陥っていると言わなければなりません。アセス法では、放射性物質が評価項目となっています。他の発電所アセスと同様に、原子力発電所もアセス法に基づいた評価を行っていきます。
東京電力福島第一原発事故では、放射性物質の拡散により広大な地域が汚染されました。14年が経過したいまでも2万4千人余りが避難生活を余儀なくされています。原発はひとたび事故を起こせば最悪の環境破壊を招きます。「事故は決して起きない」という「安全神話」と決別し、原子力発電所アセスの評価項目に、米国の原子力発電所アセスと同様、「事故」を設定します。
アセス法改悪によるアセスの簡略化をやめさせます
2025年のアセス法改悪で、建替事業においてアセスの重要な手続きを省略できる建替配慮書が新設されました。さらに、アセス法で規定している報告書の送付及び公表、環境大臣の意見、経産大臣の意見については、電気事業法第46条の23により発電所については適用除外となっています。これでは、環境保全措置の内容、効果及び不確実性の程度などが全く明らかにされません。こうした電気事業法での特例措置は撤廃させます。
横須賀石炭火力発電所では、老朽化などで長期的に計画休止中の発電所を「リプレース」するとして、十年来の休止状態から環境影響が拡大するにもかかわらす、その環境影響の調査、予測、評価を行うことなく、十数年前の高稼働率・高環境負荷の状態と比較して、新しい石炭火力発電所が環境影響を低減するとみなされ、アセス手続きが簡略化されました。このように、これまでも、リプレースによるアセス簡略化が行われているうえに、建替配慮書による簡略化が追加され、アセス手続きが空洞化されています。こうしたアセスの簡略化はやめさせ、アセス制度の改革を目指すとともに、現アセス制度の厳格な適応を行わせます。
累積的影響をアセスへ反映させます
現アセス制度では、風力発電など、近接地での複数事業の乱立による累積的影響について対策が行われていません。北海道北部での風力発電の建設や、青森の下北半島、秋田県の男鹿半島など、日本では陸上でも洋上でも風力発電の計画が多く、既設の風車が多々ある地域もあります。このような地域では累積影響評価をしっかりと行う必要があります。周辺に複数の案件があれば、事業者に累積的影響評価を義務付けるようにします。
「オーフス条約」の早期批准で、環境保全・再生への市民参加を保障する
「オーフス条約」は、1992年に合意された「環境と開発に関するリオ宣言」の第10原則に基づき、環境分野への市民参加の保障のため、情報へのアクセスや意思決定への市民の参加、裁判を受ける権利の保障などを盛り込まれています。2001年に発効し、EU諸国や旧東欧諸国など47の国と地域が批准を終えています。日本も早急に批准すべきです。
日本にも影響が及んでいる東アジアの環境保全のために、協力を強めるます
東南アジアにおける海洋プラスチック汚染をはじめ、経済的なつながりをもつ地域としてのプラスチックごみ対策が問題になっています。また日本海や東シナ海を越えてくる黄砂や窒素酸化物が、日本国内の自動車排ガス対策の遅れと相まって、日本の国民ののどや鼻に影響をあたえ、酸性雨や光化学スモッグの原因になっています。モンゴルや華北地域の砂漠化がすすんでいることで悪化する黄砂被害や、急速な経済発展をすすめる中国での大気汚染の深刻化が、国境を越えて日本にも影響を与えているといわれています。
東アジア全体の環境を保全するために、日本のJCM(二国間クレジット)を活用した石炭火力の延命やCCSなどの事業による環境破壊や、アンモニア生産によるCO2の大量放出などを許さないことが重要になっています。JCMによる東アジアでの開発は日本企業によって行われるもので、日本は進出国の環境を守り、住民合意の下で進めることを強く求めます。
世界2位の資源輸入国である日本は、海外でも多大な環境負荷を与えています。自国で農産物や漁獲物、材木などの自給率を高めることは、自国の産業育成につながるだけでなく、海外での生態系保護につながります。
ごみ問題・リサイクル
プラスチック対策と拡大生産者責任の徹底
海洋プラごみをはじめプラごみ対策は、地球環境の将来がかかった大問題です。プラスチックは、手軽で耐久性があり安価に製造できることから、大量に生産し、製品や包装材、緩衝材としても広く使われてきました。しかし、多くは「使い捨て」されており、利用後、きちんと処理されず、環境中に流出してしまうことも少なくありません。
環境中に流出するプラごみは増大し続け、(以下更新予定-現状のままでは2060年の世界のプラごみ発生量は19年の3倍に近い約10億トンに達し、海や川、湖など堆積するする量も3.5倍に拡大するとされています。)
海へ流出したプラスチックは、海洋生物がポリ袋やプラスチックストローを飲み込み、衰弱し死に至るケースだけでなく、プラスチックに含まれる有害な添加剤に加え、海を漂っている間にPCB(ポリ塩化ビフェニール)など海中に残留する有害化学物質を吸着し、生態系に深刻な影響を与えていることも明らかになってきました。
自然環境に流出したプラスチックは、紫外線や海流などにより細かく砕け、5mm以下のマイクロプラスチック(MP)や、それよりも細かいナノプラスチックとなります。プランクトンや魚、貝などにも取り込まれ、それらを餌とする哺乳生物や海鳥などが毒されていることもわかってきました。日本近海では世界最大級の深海への沈殿も確認されています。
さらに、その汚染が人体にまで及ぶことが指摘されています。MPがさらに細かくなりナノプラスチックになれば、小腸などから血管に取り込まれ、人の血液からも検出されています。人間の頸(けい)動脈の隆起からも確認され、脳卒中のリスクを高めるとされています。ナノプラスチックは微細なため、空気中にも存在していることが確認されており、脳に直接到達するという研究もあります。将来世代のためにも、プラスチックが地上に残らないよう、次世代に引き継ぐことが求められています。
環境中に流出されるプラスチックごみの中では、ペットボトルが最も多く、コカ・コーラなどの大企業がこれを生産しており、大規模製造を行っている国際的大企業への批判が高まっています。
欧州ではこうした企業に廃棄、リサイクル段階まで責任を負わせる拡大生産者責任に基づきデポジット(預かり金)制度を各国で導入するようEU(欧州連合)指令で決めていいます。フィンランドではペットボトルの自動回収機の設置が義務付けられています。ドイツでは繰り返し使うリターナブル容器より、使い捨て容器の預かり金が高く、排出抑制に寄与しています。こうした海外の事例も参考にし、拡大生産者責任を明確にして、大量生産、大量消費の現状を改めさせます。
廃プラスチックでは日本が世界有数の輸出国であり、インフラが整わない受け入れ先のアジア諸国で汚染を引き起こすリスクがあります。
こうした中、国際的なプラスチック汚染防止に向けた国際条約づくりが進められています。この中で、プラスチックの生産規制が議論されていますが、日本は「一律の生産規制に反対」「各国の事情を踏まえ考慮」と、産業界の要望で、拡大生産者責任やプラゴミの総量規制に手を付けない日本の態度をそのままにしておこうと、排出抑制に消極的な役割を果たしています。国際的なプラスチック汚染防止での日本の責任は重大で、先進国として国際的なプラスチックごみ削減に貢献できるよう態度を改めさせます。
廃棄物対策と地方自治体の負担削減
容器包装のプラスチックの分別回収は、基本的に自治体の責任と負担で行われており、財政難から分別回収をやめる自治体も生まれています。海外では拡大生産者責任の下、製造企業によるペットボトルなどのデポジット制なども行われています。
ペットボトルはリサイクルしても、ガラス瓶を繰り返し使うのと比べ、エネルギー消費量や二酸化炭素排出量が約2倍となります。MPの問題からも、素材転換を進め、プラスチックの循環量そのものを減らすことが重要です。日本でもプラスチックごみの発生抑制とともに、それ促す製造企業の責任による回収と再生利用をおこなわせます。
ペットボトルについては、日本での回収率は約8割で「リサイクルの優等生」とされていますが、毎年生産・販売量が60万トンに上るため、毎年約25億本が環境中に流出していると推計されています。プラスチックごみについて政府は、「焼却処理の8割弱はエネルギー回収しており、リサイクルだ」と主張していますが、国際的には焼却による熱回収はリサイクルとは認められていません。そもそもプラスチックの焼却は化石燃料を燃やすことと同じで、二酸化炭素の排出により温暖化へ深刻な影響を与えます。政府も「最終手段」としており、焼却によるエネルギー回収をリサイクルだとする政策を根本的に改めさせます。
2021年5月に「プラスチック資源循環法」が可決・成立しました。同法では、容器包装か製品かに関わらず、プラスチックのリサイクルを進めるとしています。企業に対し、ストローやスプーンなどの使い捨てプラ製品の削減、リサイクルしやすい製品づくりや代替素材への転換を推進するとしています。また家庭から排出されるプラスチックごみの回収については、企業による自主回収と、自治体が行なう容器包装プラの回収と一緒に回収しリサイクルを行なっていくとしています。しかし、今回の新法でも企業の責任と負担は限定的で、自治体と住民に負担を押しつける仕組みは変わっていません。改めて「拡大生産者責任」の立場で抜本的に見直すことが必要です。
世界では、使い捨てプラスチック製品の製造・販売・流通の禁止に踏み込む流れが広がっています。一方で日本は、1人当たりの使い捨てプラスチックの廃棄量が米国に次いで2番目に多い国です。レジ袋など使い捨てプラスチック製品を含むプラごみを削減するためには、企業の自主的努力に任せるのではなく、発生元である企業の責任において不必要なプラ製品を生産しないなどの適切な規制が必要です。そのためには、各国・各地での先行する経験をふまえ、容器包装プラの削減につながるデポジット制度の導入など、大量生産、大量消費と、大量廃棄という経済・社会のあり方の転換により、プラスチックの生産量・使用量の根本的な削減をめざします。
政府は、プラスチックごみの回収率を上げるとして、2021年の法改正で、食品トレーなどの容器包装と一般のプラスチックごみを一括回収してする制度を作りました。トレーの単独回収については、一定規模以上の製造企業等がリサイクルのための委託料を支払っています。しかし、一般のプラスチックごみの処理やリサイクルについては企業等の負担がなく、一括回収の場合の負担は自治体となります。このため、国が特別交付税措置を行っており、国民負担となっています。国民負担の点からも、生産そのものを晴らしていく商品設計段階からの「入り口」規制としても、拡大生産者責任によるメーカー責任と企業負担による制度に改めていきます。
廃棄物の違法投棄を許さないルールづくりをすすめます
有害物質が混入した安定型処分場や土壌汚染処理施設による環境汚染、産業廃棄物の不法投棄に歯止めをかけます。違法行為の「やり得」を許さないために、都道府県が徹底した立ち入り検査を実施し、違反者への厳格な監督と行政処分をおこないます。不法投棄のルートと関与者の解明、違反者など排出者の責任による撤去など実効ある措置を実施させます。財源確保のための制度見直しを行い、早期処理を進めます。
住民が知らないまま、廃棄物処分場が建設される事例があり、設置にあたっては、住民説明や合意を尊重するものに改めさせます。また、廃棄物処分場が建設されると、他県からも大量に廃棄物が持ち込まれる事例が生まれています。こうした状況を生まれないよう、都道府県が条例等で独自に規制を行ってきましたが、環境省は経団連の圧力うけ、こうした条例を見直すよう指導しています。こうした姿勢は改めさせ、都道府県が生活環境を守るための独自の廃棄物や水道水源保護への規制をおこなえるようにします。また実際は産業廃棄物であるのに中間処理することによって「有価物」と称して、各地で脱法行為による放置が行われる事例があります。国と都道府県がこまめな立ち入り・監視を行い、環境省の行政処分通知に基づいて産業廃棄物としてすみやかに判断して適切に処理が行われるようにします。
食品ロス削減をすすめます
食品廃棄は一般廃棄物として処分されるため、環境への負担になるだけでなく、処分費用に少なくない税金が投入されています。こうした社会・環境への負担を減らすため、小売りなど流通段階だけではなく、食品メーカー段階でのロスの削減も重要です。廃棄食品の不正転売を防止するため、国は規則の見直しを行いましたが、一連の再生利用の工程が適切に行われるよう、透明化を図り、大量排出者である食品関連事業者の責任を法律上、明記させます。
韓国では生ごみリサイクルを進め、ごみの大幅減少に結びつけています。こうした事例も参考にし、国民的議論を行いながら、ごみの大幅削減を目指します。
企業の責任を明確にして資源循環を進めます
2024年に再資源化事業等高度化法が成立し、政府は資源循環、再生材利用を進めるとしていますが、メーカーや、排出事業者の自主的取り組みが原則で、その責任が不明確で実効性が不透明なものとなっています。循環達成目標などを盛り込んだ協定を締結することで、企業の責任を明確にして資源循環を進めます
きめ細やかで自治体が役割を発揮できるごみの分別収集と減量を進めます
リサイクルの推進等で、ゴミの収集量は減少することが予想され、本来であればごみ処理施設も小さくなるはずです。しかし、環境省はごみ処理施設の集約化についてという「通知」も出して、大型化と広域化を推進しています。1998年度で1800カ所あったごみ処理施設は現在1000カ所ほどになっています。1日の100tを超える施設が現在6割を占めますが、これをさらに300t、600tと大型化を検討するように指導しています。このため、ごみ処理施設の大型化・集約化による自治体の財政的負担は大きくなり、また、市町村単位のきめ細かい分別収集よりも、国際的にはリサイクルと認められない、焼却によるごみ発電などの「熱回収」が支援の軸となっています。さらにごみ焼却から出たCO2を分離、回収、貯留するCCUSについても実用化を目指しています。これにより、さらに自治体の財政負担は過大となり、分別収集、減量化にも逆行することになりかねません。一部の小規模自治体では、きめ細やかなごみの分別収集、リサイクルが行われ、先進的な事例となっています。ゴミ処理施設の集約化、大型化を押しつける政策は改め、自治体のごみ処理計画の実情に合ったものとし、各自治体が分別収集・減量リサイクルの役割をしっかり果たせるようにします。
国はし尿のみを処理し生活雑排水を処理しない「単独処理浄化槽」から、「合併処理浄化槽」への転換を進めています。これは水・生活環境改善の大きな流れとしては必要なことですが、過疎地域や独居世帯が増加する中で、処理方法については各自治体による取り組みの社会的、歴史的経緯があります。上から交付金をたてに行政指導を強め、区域制の導入を義務付けるのではなく、自治体の自主性を尊重し、実態に即して進める必要があります。