2025年参院選各分野政策
44、PFAS
緊急のPFAS汚染対策に取り組みます
2025年6月
永遠の化学物質と言われる有機フッ素化合物(以下、PFAS)による高濃度の汚染が、米軍基地や自衛隊基地、製造使用工場、産業廃棄物処理場の周辺の地下水、河川・湧水や土壌、飲用水から確認され、健康への影響が大きな問題となっています。日本共産党は、PFAS汚染から住民の健康を守るため、汚染実態を究明し、緊急対策を実施します。
PFAS等に関する国際的水準の基準値を早急に定め、規制を強化します
PFASは体内などへの残留性が高く、国際的にも発がん性などの健康影響が指摘され、欧米等では厳しい規制が行われています。EUでは1万種類以上あると言われるPFASを包括的に規制する動きがでています。一方、日本国内の規制は、PFASのうち、ストックホルム条約(POPS条約)で製造・使用が禁止されているPFOSとPFOA、PFHxSの3種類のみで対応の遅れが際立っています。また飲用水における基準値は日本の暫定目標値50ng/Lに対しアメリカは4ng/Lと厳しい基準が設定されています。
現在、食品安全委員会の評価書では、耐容一日摂取量(TDI)をPFOSとPFOAは20ng/kg体重/日と判断しました。これは60㎏の人は一日当たり1,200ng/日の摂取は許容範囲となり、これでは健康が守れないと批判が高まっています。国内で確認されている高濃度な汚染でも基準値以下で「安全」と認定されかねません。
アメリカは国内の基地の土壌の除染をスーパーファンド法に基づいて進めていますが、日本の土壌汚染には基準がありません。国際的な基準値の早期採用が必要です。
――PFASに対し国際的水準の基準値を早急に定め、予防原則に則りPFASのEU並みの規制を進めます。
住民を対象とした健康調査を進めます
全国でその深刻な実態が明らかになる中、住民の健康不安が広がっています。住民の要求に応えて、独自に血液検査を実施する自治体やまた一部医療機関や住民などが自主的に血液検査を行っています。しかし、政府は健康影響については明らかでなく、血液検査は不要とする態度に固執し、調査や対応に後ろ向きの姿勢を続けており、批判が高まっています。
――血液検査を希望した市民に対し自治体等が実施する健康調査費用を国が負担し、健康影響の研究を進めます。
実態調査をすすめ、汚染に対する緊急対策を推進します
PFASを製造、販売、使用している事業者が、少なくとも43都道府県、200超の自治体に所在しています。環境汚染の原因者が環境汚染の修復費用や防止策を講じる費用を負担する「汚染者負担の原則」に則り、調査結果に応じた負担を原因者に求めるべきです。
――PFAS等が適正に管理されているか、国の責任で調査を行います。
――半導体企業でのPFASの使用・排出・保管・処理などについての報告と、全国の半導体企業周辺のPFAS汚染の実態調査を行わせます。
――飲用水や農産物、地下水、土壌等の各地の汚染状況と、汚染源特定を行い、原因者に除染などの対策を担わせます。
――現在行われている農水省による農水産物のPFAS含有調査は対象品目が限られ、流通品の中から無作為選択しています。この対象品目を拡充し、収穫地ごとに調査を実施します。
米軍基地内での徹底した調査を実施し、汚染者責任に基づく対策を早急に実施します
沖縄県の嘉手納基地や普天間基地、東京都の横田基地など全国各地の米軍基地、自衛隊基地周辺の地下水、河川・湧水、井戸等で深刻な高濃度汚染が確認されています。自治体による調査結果から、米軍基地が汚染源であることが強く疑われます。国の基地への立ち入り調査は、米軍が行った範囲をなぞったにすぎず、地下水等周辺の環境汚染の究明には程遠いものです。また、横田基地では漏出の発生から2年半経過して初めて国から関係自治体に事実が伝えられるなど情報の把握と公開は極めてずさんで、米国が採用する濃度の基準の12.5倍、50ナノ/L以下という緩い基準での排水も認めています。米軍の活動優先ではなく、周辺住民のいのちと健康を守ることを優先する姿勢に改めさせることが必要です。
――周辺地下水の汚染源、汚染の実態の究明に必要な徹底した調査を求めます。
――米軍に対して、本国と同様に基地内のPFAS汚染の調査と公表、対策を行なわせます。地下水、土壌汚染が広がる周辺地域の汚染についても、汚染者責任に基づいて本国と同様に、飲用水をはじめ農水産物からPFASが検出された場合の補償と対策を行わせます。
台湾の半導体企業TSMCの工場(熊本県)の下流域でPFASの濃度が増加したり、半導体企業キオクシア四日市工場(三重県)の排水口から高濃度のPFASが検出されています。半導体の製造にはPFASが欠かせず、全国41都道府県で256自治体に366の半導体工場が所在しています。巨額な公的資金を投入した国策事業ともいえる半導体事業では、PFAS製造使用工場での労働安全規則が遵守されず、大量の電力と水を消費し、大量のPFASや温室効果ガスを使用、排出します。巨額の利益を上げながら、生活環境や生態系破壊を放置することは許されません。国策を主導する国と事業者に汚染防止と除染に責任を果たさせます。
ダイキン工業淀川製作所や静岡市清水区の三井・ケマーズフロロプロダクツ清水工場など、PFAS製造販売事業所周辺や元従業員への汚染が明らかになっています。ダイキンの元労働者の血液からは高濃度のPFASが検出されており、肺疾患との関連が指摘されています。労働法制や販売・譲渡元事業者に化学物質の有害性や取り扱い方法を示すよう義務付けた、国の「安全データシート(SDS)制度」がありながら、保管、管理が不十分なため、周辺への漏えい、作業中の飛散によるばく露が発生しています。SDS制度には罰則がなく、作業で扱うすべての化学物質の内容を示された事業所は全国で半数にとどまっています。
――労働安全衛生法に基づく特定化学物質障害予防規則(特化則)や有機溶剤中毒予防規則(有機則)を厳格に守らせるとともに、化学物質を扱う職場の詳細な実態調査の実施と、SDS制度の厳格化を求めます。
――国内におけるPFASの環境汚染と労働者の暴露についての把握ができておらず、政府によるPFASの適正管理と労働者の安全を確保する対策をつくらせます。
大阪のダイキン工業の工場周辺をはじめ全国でPFASの土壌や水質の汚染対策が問題となっており、本来、工場操業等によって発生した土壌汚染は、事業者の責任で水質の浄化や汚染土壌の浄化等を行う必要があります。しかし実態は汚染被害を認めず、対策を放置しています。
――水質、土壌汚染関係法規を強化し、事業者に汚染調査、汚染除去など処理責任を取らせるようにします。
岡山県吉備中央町では、放置された使用済み活性炭から、PFASが水道水の水源となっているダム湖に流れ込み、これを飲用した住民の血液から高濃度のPFASが検出され、健康不安が広がっています。またPFASを含めた汚泥を埋め立てた産廃処分場周辺で高濃度のPFASが検出されている事例があります。
――産廃処分場などの汚染状況の調査を行い、国の責任で徹底的に原因究明し、排出元である企業に責任をとらせます。