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日本共産党

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赤旗

4、労働・雇用

人間らしく生活できる労働条件を確立し、労働者の権利を守るルールを強化します

2024年10月

政治の責任で賃上げを促進し、暮らしと経済の危機を打開します

 日本の労働者一人あたりの実質賃金は、1996年と2023年を比較すると年間74万円も減っています。1991年から2022年にかけて、アメリカは1.48倍、イギリスは1.46倍、フランスは1.33倍、ドイツは1.30倍になっていますが、日本は1.03倍と、この30年でOECD主要国で唯一、「賃金が上がらない国」となっています。物価上昇に見合う賃上げがいよいよ待ったなしです。今こそ政治の責任で「賃金が上がる国」にすることが、物価高騰から生活を守る最大の力となります。

 日本共産党は、賃上げを促進するために、大企業の内部留保に課税する提案を行っています。資本金10億円以上の大企業は、2012年度以降、アベノミクスの中で新たに200兆円以上も内部留保を増やし、539兆円(2023年度)と過去最高額を更新しています。 5年の時限課税で新たに10兆円の税収をつくり、中小企業への直接支援を強化して最低賃金時給1,500円を実現します。また、課税に賃上げ控除をもうけることで、大企業で働く労働者の賃上げも促進します。

 ➡詳しくは「アベノミクスで増えた大企業の内部留保に適正な課税を――大企業優遇の減税をただし、内部留保を賃上げと「グリーン投資」など国内投資に」(2022年2月24日)(https://www.jcp.or.jp/web_policy/2022/02/post-905.html)をごらんください。

 労働者の所得が増えて生活が向上し、中小企業を含む企業経営全体が改善していけば、税収も社会保険料収入も増えていきます。「賃金が上がる国」への転換と、人間らしく働けるルールの確立をすすめ、健全な経済成長の好循環を図ります。

最低賃金1,500円をすみやかに実現し、全国一律最低賃金制を確立します。中小企業への賃上げ支援を抜本的に強化します

 労働法制の連続改悪によって、非正規労働者が年々増大し、労働者の約4割が非正規という異常な労働実態が広がっています。非正規労働者の72%が年収200万円未満です(2020年「労働力調査」)。卸売・小売業では22.7%、宿泊業・飲食サービス業で39.9%、医療・福祉で6.6%の労働者が最低賃金近くの低賃金(最低賃金×1.15倍)で働いており、このうち72.6%が女性です。最低賃金引き上げは、ジェンダー平等を促進する上でも大切な課題となっています。

 コロナ危機とインフレを経て、各国では最賃引き上げの流れが強まっています。イギリス(11.44ポンド、2,196円)、ドイツ(12.41ユーロ、2,010円)、フランス(11.65ユーロ、1,887円)などで、最低賃金の大幅な引き上げが行われ、アメリカでも全米50州のうち22州が2024年1月に引き上げました(首都ワシントンDCは16.28ドル、2,393円)。値上げラッシュのもとで、雇用形態にかかわらずだれもが人間らしく働ける労働条件を保障し、労働者全体の賃金の底上げとなる最低賃金の大幅引き上げがますます重要な課題となっています。

 日本の地域別最低賃金は、最高の東京が1,163円で、最下位の秋田が951円です。その地域間格差は時給212円、年収38万1,600円(1,800時間で計算)にもなります。2024年の改定にあたって中央最賃審議会が示した目安よりも上積みをした県は27県と、21年の7県、22年22道県、23年24県と、4年連続増加しています。徳島では、労働組合などのストライキも後押しし、目安を34円上回って84円引き上げました。背景には、最賃格差のために県境を越えた労働力移動が発生し、地方経済にも深刻な影響を与えているという実態があります。格差是正を目的とする最低賃金制のもとで格差が拡大するという、地域別最賃制度の矛盾と限界がいよいよ明らかです。最低賃金法に規定されていない「目安」制度は、廃止するべきです。

 全労連の最低生計費調査では、地方では住居費が安くとも交通費は高いなどで、生活費は全国どこでも月額24万円(時給1,500円)以上必要だと明らかになっています。物価高騰のもとでは、月額25万円(時給1,700円)以上が必要という試算もあります。

 最低賃金を時給1,500円に引き上げ、全国一律最低賃金制を確立します。だれでもどこでも1500円を実現すれば、月給で22万5,000円程度になります。最低限の要求として当然です。

最低賃金の引き上げにあたって、中小企業への直接支援を抜本的に強化します

 米国では、3年間(2007~2009年)で最低賃金を41%引き上げ、540万人分の賃上げをおこなったとき、5年間(2009~2011年)で8,800億円の中小企業支援(減税)を実施しました。フランスでは、3年間(2003~2005年)で最低賃金を11.4%引き上げた際に、中小企業の社会保険料事業主負担を2兆2,800億円軽減しています。

 日本の従来の中小企業支援策は、「業務改善助成金」が中心です。生産性の向上を条件とする制度です。生産性を向上させるために設備投資(機械設備、POSシステム等の導入)などを行うことによって事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた際に、その費用の一部を助成するという制度です。赤字で設備投資のできない多くの中小企業にはまったく効果がありません。しかも24年度予算で13億円ときわめて少額です。この姿勢を改め、大企業の内部留保に課税して5年間で10兆円の財源を生み出し、中小企業への実効性ある直接支援を行います。

 ➡詳しくは「アベノミクスで増えた大企業の内部留保に適正な課税を――大企業優遇の減税をただし、内部留保を賃上げと「グリーン投資」など国内投資に」(2022年2月24日)(https://www.jcp.or.jp/web_policy/2022/02/post-905.html)をごらんください。

 中小企業家同友会全国協議会(中同協)は21年8月、賃上げによって大きな負担となる社会保険料の事業主負担分について助成制度創設などの軽減措置を国に要望しました。多くの地方最低賃金審議会は、24年度地域別最低賃金改定にあたり、「業務改善助成金」の要件緩和や「賃上げを直接的に支援する新たな支援制度の創設等」を求めています。中小企業が最低賃金を支払えるように賃上げに本格的な支援をおこなう必要があります。同時に、大企業の下請けいじめなどをきびしく規制します。

異常な長時間労働を解消し、1日7時間・週35時間労働制を実現します

 日本のフルタイム労働者の労働時間はヨーロッパの主要な国々に比べて年間300時間も長く、労働者の健康と命を脅かしています。残業代に頼らなければ生活できない賃金を引き上げるなど労働条件全体の改善をすすめることともに、過労死までもたらす長時間労働を是正するルールの確立が急務です。

 ところが、経団連は2024年1月16日、「労使自治を軸とした労働法制に関する提言」を発表し、「労働基準法制による画一的規制の弊害を最低限にしていく。〔......〕労働時間規制のデロゲーション(規制の例外)の範囲を拡大すべきである」と主張し、労働時間法制の全面的な規制緩和を求めています。こうした議論を受け、政府は、「1日8時間労働」という原則さえ骨抜きにする労働基準法解体の動きを強めています。いま必要なのは労働時間規制の解体でなく強化であり、それにとどまらず、人間らしく生きられる時間を確保するための労働時間の短縮です。日本共産党は、今年9月20日、「1日7時間・週35時間制」の社会へ進むことを国の目標に据え、賃上げと時短を一体にすすめる「自由時間拡大推進法」を提案しました。

 ➡詳しくは「賃上げと一体に、労働時間の短縮を――働く人の自由な時間を拡大するために力を合わせましょう」(2024年9月20日)(https://www.jcp.or.jp/web_policy/2024/09/post-987.html)をごらんください。

残業時間の上限を例外なく「週15時間、月45時間、年360時間」に規制します

 2018年に自公政権が強行した「働き方改悪」によって、現行労働基準法は、残業時間の罰則付き上限について、特別の事情がある場合には、「月100時間未満」「2~6カ月平均で月80時間」「年720時間(休日労働を含めると960時間)」とし、過労死水準の長時間労働を法的に容認しています。医師については21年5月、年1,860時間(過労死ラインの約2倍)の時間外労働を容認する医療法改悪が行われました。異常な長時間労働にお墨付きを与え、過労死を促進するものです。

 残業時間の上限は「週15時間」も加えて、例外なく「週15時間、月45時間、年360時間」に規制します。割増賃金について、残業の抑制という本来の役割を発揮できるように、1日2時間、週8時間を超える残業の割増率を50%にします。また、3日連続で残業させたら4日目からの割増率を50%にします。

 自然災害の多発などで、自治体職員など公務労働者が「過労死ライン」を大幅に超える超長時間労働を余儀なくされる事態が続いています。現行の労働基準法第33条は、災害など「臨時の必要がある場合」には「その必要の限度において」時間外労働を認めており、際限のない超過勤務の根拠となっています。職員の増員を図りつつ、労基法を改正して上限規制を設けます。

連続11時間の勤務間インターバルと、7日ごとに1日の法定休日を保障します

 1日の労働が終わり、次の労働がはじまるまでの休息時間を確保する勤務間インターバル規制は、1日の労働時間規制にもつながる重要な制度です。この制度は世界45カ国で導入されており、EU(ヨーロッパ連合)は連続11時間の勤務間インターバル規制を法制化しています。日本でも労働基準法に連続11時間の勤務間インターバルを明記します。例外は、必要最小限にとどめます。

 法定休日について、労働基準法は、4週間をとおして4日の休日をあたえる4週・4休制となっているために、最大48日連続勤務を可能にしています。このために休日を与えない違法な連続出勤が表面化しにくい状態を生んでいます。連続出勤を規制し、毎週休めるようにするために、7日ごとに1日の法定休日を保障します。

ただ働き残業(「サービス残業」)をなくすために、実労働時間を正確に把握.記録し、「サービス残業」が発覚したら残業代を2倍にします

 長時間労働是正の土台は、実労働時間の正確な把握と記録です。事業場ごとに労働時間管理台帳を作成し、管理職を含めた全労働者の実労働時間を正確に把握・記録することを使用者に義務づけます。職場から労働時間をチェックすることによって、長時間・ただ働き残業をなくし、「追いつめられている」労働者を救済することができるように、本人はもとより、本人の同意があれば、労働組合、職場の労働者や家族・友人も、労働時間管理台帳と賃金台帳を閲覧できるようにします。労働時間管理台帳を作成・記録・保存をしない事業主に対する罰則を設けます。

 労働基準法に違反するただ働き残業(「サービス残業」)が後を絶ちません。企業に罰則を科すとともに、「サービス残業」が発覚したら、労働者に支払う残業代を2倍にします。「サービス残業」が企業にとって「割に合わない」ものにすることで、長時間労働の抑止力とします。

 日本共産党は、1976年以来、300回をこえる国会質問で、「サービス残業」は企業犯罪だと追及し、2000年には「サービス残業根絶法案」を国会に提出しました。これが行政を動かし、厚生労働省は2001年、「サービス残業」根絶のために企業が責任をもって時間管理を強化することなどを内容とする「サービス残業」根絶通達を発出しました(現在はガイドラインになっています)。2014年には残業代を一部しか支払わない「固定残業代」の問題について、16年には出退勤前後の15~30分の労働時間を切り捨てて賃金を払わない実態を追及するなど、是正を進めてきました。これらを通じて、厚労省が調査を始めた01年以降の18年間で、総額3,199億円の未払い残業代を支払わせています。

企画業務型裁量労働制の廃止をはじめ裁量労働制を抜本的に見直します

 実際に働いた時間と関係なく事前に定めた時間を働いたものとみなす「みなし労働時間制」は、世界にほとんど例をみない異常な制度です。この制度を認めるILO条約は存在しません。

 裁量労働制は、「みなし労働時間制」を採用しているために、実労働時間の把握が困難であり、長時間労働の温床になっています。1日の平均労働時間は、一般職場が8時間25分であるのに対し、裁量労働制の職場では8時間44分となっており、裁量労働制のほうが約20分長いことが明らかになっています(厚労省調査、21年6月)。また、企画業務型裁量労働制は、現行法では認められていない営業職や一般職にも事実上広がっています。野村不動産では、違法に企画業務型裁量労働制が適用されていた営業職の労働者が過労自殺しています。

 ホワイトカラーを際限のない長時間労働に追いやる企画業務型裁量労働制を廃止します。専門業務型裁量労働制については、真に専門的な業務に限定し、その要件と運用を厳格化します。事業場外みなし労働時間制についても、要件と運用を厳格化します。

高度プロフェッショナル制度(「残業代ゼロ」制度)を廃止します

 高度プロフェッショナル制度は、対象となる労働者を労働時間規制の保護から全面的に適用除外にする制度です。研究開発など5業務の「高度専門職」(年収1,075万円以上)の労働者について、週休2日にあたる年間104日の休日を与えれば、1日24時間働かせ、残業代や休日・深夜手当を払わなくても違法になりません。

 高度プロフェッショナル制度を導入した企業に対する厚労省調査では、同制度を適用された労働者の「健康管理時間」(在社時間と社外で働いた労働時間の合計)が、集計対象の全17事業場で月200時間以上、うち6事業場で月300時間以上となっており、長時間労働をもたらしていることが明らかになっています(21年6月)。8時間労働制を根底からくつがえすこの制度を廃止します。

「名ばかり管理職」を規制します

 一般的に、管理職には残業代が支給されないといわれています。しかし、厚生労働省の「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」と題する通達文書は、「『管理監督者』であっても、労働基準法により保護される労働者に変わりはなく、労働時間の規定が適用されないからといって、何時間働いても構わないということではなく、健康を害するような長時間労働をさせてはなりません」と明記しています。「管理監督者」の定義については、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいい、労働基準法で定められた労働時間、休憩、休日の制限を受けません。『管理監督者』に当てはまるかどうかは、役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様等の実態によって判断します」と指摘しています。

 このように「管理監督者」の範囲は、きびしく制限されています。裁判例をみても、ファミリーレストランなどの「店長」や飲食店の「マネージャー」、学習塾の「営業課長」が「管理監督者」に相当しないと判断した例があります。労働実態を示して、厚労省のこの文書を厳格に適用するとりくみを強めます。

有給休暇取得を促進します

 日本はヨーロッパと比べて有給休暇の最低日数が少ない上に、22年の取得率は62%にとどまっており、70%という政府目標も実現できていません。

 ヨーロッパでは、有給休暇は最低でも4労働週(週5日労働の場合は20日、週6日労働の場合は24日)が保障されており、しかも100%取得が常識になっています。年次有給休暇を現行の最低10日から20日に増やし、一定日数の連続取得と完全消化を保障させます。傷病や家族の看護の心配によって年休取得を控えることのないように、有給の傷病・看護休暇を創設します。

テレワーク・在宅勤務にともなう長時間労働を規制し、安全衛生を確保させます

 コロナ対策によってテレワーク・在宅勤務が急速に広がりました。テレワークは事業場の外で労働者が働いているため、労働時間の管理が難しく、長時間労働や「サービス残業」が起きやすくなります。テレワークを口実に「成果主義」を持ち込むことも長時間労働につながります。テレワークの場合でも、使用者には労働時間の管理や時間外労働に関する三六協定の締結、割増賃金の支払いなどが義務づけられています。テレワークにおいて「みなし労働時間制」を導入しようとする動きを許さず、厚生労働省のガイドラインで推奨されている時間外労働・休日労働・深夜労働の原則禁止、安全衛生確保に実効性を持たせます。EUで法制化が進んでいる「つながらない権利」(勤務時間外や休日に業務上のメッセージや電話に応じない権利)について、日本でも確立をすすめます。

非正規ワーカーへの差別・格差をなくし、待遇改善をすすめます

 雇用労働者の4割を占める非正規雇用労働者は、正規労働者の6割弱という低賃金に加えて、不安定な雇用と差別的待遇を強いられています。働く女性の過半数が非正規雇用で働いており、雇用形態による差別をなくすことは、職場におけるジェンダー平等を促進するうえでも不可欠です。また、フリーランス、ギグワーカーなどが増加するもとで、「雇用関係によらない働き方」で働く人々の権利を保障し、保護を広げることも急務となっています。日本共産党は、パート、派遣、契約社員、非正規公務員、ギグワーカー、フリーランスなど非正規で働く人々の待遇改善のために、2023年10月に「非正規ワーカー待遇改善法」を提案しました。一連の法改正に向けてとりくみます。)

違法・脱法的な解雇・雇止めをやめさせ、「5年無期転換ルール」を実施させます

 派遣労働者、期間社員、非常勤職員などは、短期・細切れの雇用契約の更新をくり返し、つねに雇用不安をかかえて働いており、コロナ危機でも真っ先に解雇・雇止めの対象となりました。派遣先企業が直接雇用に切り替えても、数カ月の契約をくり返し、いつでも「雇い止め」自由の有期契約とされるケースが後をたちません。労働基準法では原則として3年をこえる有期雇用契約が締結できないことになっていることから、「最長2年11カ月契約」と称して、違法・脱法をくり返しているケースも横行しています。現行法では、契約途中の解雇は厳しく規制されており、また、契約更新の「ある」「なし」や更新する際の基準について明示しなければならず、反復更新を重ねていれば、「解雇権濫用法理」が類推適用されます。現行法を厳しく守らせ、労働者を泣き寝入りさせることを許しません。

 2013年4月から、改定労働契約法が全面施行され、同じ使用者のもとでの雇用契約が5年をこえる場合、無期雇用契約に転換する制度が施行されています。施行から5年目の2018年4月から無期転換が始まりました。ところが、労働条件は従前の有期契約のときと同じでよいとされ、しかも5年を前にした「雇い止め」を防止する措置がありません。そのために、雇用契約が5年になる以前に、「雇い止め」にする動きが、大学や研究機関などで多発しています。この脱法行為に対して労働者・労働組合がたたかいに立ち上がり、日本共産党の国会論戦と結合することによって少なくない職場で無期転換を勝ちとっています。日本共産党は、正社員化を促進するという労働契約法改定の趣旨にもとづき、こうした「雇い止め」をやめさせるために、全力をあげます。労働契約に無期転換権を明記させます。

同一価値労働同一賃金と均等待遇の原則を法律に明記し、非正規雇用の正規化をすすめます

 2020年、パート・有期雇用労働者に対する不合理な労働条件を禁止する条項(旧労働契約法第20条)をめぐる最高裁判決が相次いで出されました。日本郵政で、非正規労働者に扶養手当・年末年始勤務手当・年始の祝日給、有給の夏期冬期・病気休暇を付与しないのは不合理で違法だとされました。一方、東京メトロコマースでの契約社員への退職金不支給、大阪医科大でのアルバイト職員に対する賞与不支給については、職務内容などの点で正社員と「一定の相違」があり、不合理とは言えないとする不当判決が出ました。現行法の条項を厳しく守らせ、判例も生かして職場での格差是正を推進するとともに、退職金や賞与も含めて差別を禁止するための法改正を行います。

 ヨーロッパでは、有期雇用は臨時的・一時的業務と合理的理由のある場合に限定され、正社員との均等待遇を保障しています。ILOは2015年総会で、非正規労働から正規雇用への転換を促進する勧告(204号)を採択しています。

 日本共産党は、正社員が当たり前の社会をめざして、パート・有期雇用労働者均等待遇法の制定を提案しています。有期雇用については、臨時的・一時的業務、合理的な理由がある場合に限定するとともに、同一価値労働同一賃金・均等待遇の原則を法律に明記し、賃金をはじめ、休暇、教育訓練、福利厚生、解雇、退職その他の労働条件について、非正規労働者であることを理由とする差別を禁止します。

 正社員を募集するときは、パート・有期労働者に応募の機会を優先的に与えるようにします。短期雇用契約をくり返している場合は、期間の定めのない雇用契約とみなすという判例を法制化します。合理的理由のない「短期・反復雇用」「契約社員」は不公正な契約として規制し、正社員に移行させます。正社員が育児・介護などの理由のために一定期間パートタイム労働者として働いた後、再び正社員にもどれるようにします。

シフト制労働者を保護します

 シフト制で働く労働者は、職場で正社員と同等の重要な役割を果たしているにもかかわらず、数々の理不尽に苦しんでいます。①シフトが減らされて休んでいるのに、休業手当が出ない、②直前までシフトが確定せず、先の予定が入れられない、③確定していたシフトが急に取り消しになっても、補償がない、④シフトが減らされ生活が苦しくなって退職しても、「自己都合退職」にさせられる、などです。

 使用者が勤務日数や労働時間を都合よく決めることができ、「ゼロ」にもできるような事態を改善するために、EU「透明で予測可能な労働条件に関する指令」(2019年)も参考にして、新たな法的規制をおこないます。シフト変更の際には合理的な事前告知期間を設定するとともに、突然のシフト変更と、それを拒否したことによる不利益取り扱いを禁止します。「勤務日数ゼロ」や「労働時間ゼロ」といった横暴をなくすために、最低限の労働日数と賃金支払いを保障します。

労働者派遣法を抜本改正し、派遣労働者を保護します

 直接雇用は、世界で当たり前の原則であり、戦後の日本の労働法制が根幹としてきた原則です。ところが、自民党政権は、1985年の労働者派遣法制定以降、99年に対象業務を原則自由化し、2003年には派遣労働を製造業にまで広げ、正社員を大量に派遣労働者に置き換えてきました。2008年秋のリーマン・ショック時には、大量の派遣労働者が職を奪われ、同時に住まいまで失うという深刻な事態が全国に広がりました。他国に例を見ない派遣労働者「使い捨て」の横行が社会問題になり、世論と運動の力で派遣法の部分的改正もおこなわれました。

 ところが、2015年の労働者派遣法改定は、これまで派遣労働の大原則だった「常用雇用の代替禁止」「臨時的・一時的業務に限定」を根底から投げ捨てる大改悪でした。派遣労働を臨時的・一時的業務に限定する担保措置だった原則1年・最大3年の期間制限を廃止し、人さえ入れ替えれば同じ業務であってもいつまでも派遣労働者を使えるようにするものです。派遣労働の受け入れを延長する場合は、派遣先企業が職場の過半数労働組合等から意見聴取するだけで可能となり、実効的な歯止めとなっていません。派遣先への直接雇用についても企業に「依頼」するだけです。まさに「生涯ハケン」「正社員ゼロ」に道を開く大改悪です。さらに、派遣先が違法派遣をおこなった場合に労働者に雇用契約を申し込んだものとみなす「みなし」規定が事実上発動されないような仕組みを導入しました。

 この大改悪に対して、ナショナルセンターの所属の違いをこえて労働組合、弁護士、学者、市民が共同して世論と運動を広げ、日本共産党の国会論戦の中で「直接雇用が基本」という初の政府答弁を引き出し、附帯決議にもその原則を明記させたのは重要な成果です。

 日本共産党は、違法な「派遣切り」、「非正規切り」とたたかう労働者・労働組合と力をあわせて、大企業の違法派遣の実態を告発し、国会でくり返し質問し、労働者派遣法の抜本改正を求めてきました。他党に先駆けて、2008年4月に「派遣労働者保護法案」を提案しました。同法案は、派遣労働を臨時的・一時的業務に厳格に制限しています。製造業派遣や日雇い派遣を全面的に禁止し、「使い捨て」労働をなくします。派遣受け入れ期間の上限を1年とし、違法があった場合は派遣先に期間の定めなく直接雇用されたものとみなし、正社員化をすすめます。派遣先の正社員との均等待遇、グループ内派遣の制限をおこない、常用代替を規制します。

フリーランス・ギグワーカーの生活と権利を守り、「多様な就業形態の普及」の名目で無権利の働き方を拡大することに反対します

 フリーランスで働く労働者が増え、政府の調査では462万人(本業214万人、副業248万人)にのぼると推計されています。ギグワーカー・クラウドワーカー(インターネット上のウェブサイトやスマートフォンのアプリなどの「プラットフォーム」を介して単発・短期の仕事を請け負う)として働く人も増えています。多くのフリーランスは一方的な報酬カットや契約打ち切りに遭うなど弱い立場にある上、賃金や労働時間、解雇規制、労災など労働法の保護の外に置かれ、無権利状態に苦しんでいます。日本共産党が20年2月、国会でウーバーイーツ配達員の実態を示し、「権利ゼロの働き方が広がっていいのか」と追及した際、当時の安倍首相は「決していいとは思っていない」と答弁しました。

 ドイツでは20年12月、連邦労働裁判所がギグワーカーの一部を雇用者と認定しました。韓国では同12月、ギグワーカーなどに雇用保険の適用を拡大する法案を可決しました。英国では21年2月、最高裁がライドシェアの運転手を雇用法上の労働者と判断しました。スペインでは同5月、料理宅配の配達員を雇用者と位置づける政令を制定しました。米国バイデン政権は、ギグワーカーの労働組合結成を支援し、待遇改善をはかる方針を打ち出しています。また、G20労働相会合は6月、ギグワーカーの保護に向けて規制強化を推進することで合意しました。欧州議会では24年4月、「プラットフォーム労働の労働条件改善に関する指令」が採択され、法的保護の外に置かれていたプラットフォーム労働者を保護しています。このように、フリーランス・ギグワーカー保護は世界の流れになっています。

 日本でも法整備が必要です。2023年4月に成立した「フリーランス取引適正化法」は、公正な経済活動を確保するための最低限の規定であり、労働法で保護を広げることが不可欠です。ILOの「雇用関係に関する勧告」(198号)も活用し、フリーランス、ギグワーカー、請負や委託で働く労働者を保護します。フリーランスを対象にした労災保険の特別加入については、21年4月から芸能従事者・アニメーション制作従事者に、9月から自転車配達員とITエンジニアにも拡大されましたが、保険料は働き手の自己負担となります。プラットフォーム企業が保険料負担も含めてギグワーカーの労災に責任を持つ仕組みをつくるなど、労災補償を拡充します。フリーランス・ギグワーカー・クラウドワーカーの団結権、団体交渉権、ストライキ権を保障します。正確な労働時間の管理、報酬の最低保障や、出産・育休支援、休業手当の支給などを制度化します。

 本来、労働者として企業の指揮・命令を受けて仕事をしているのに「個人請負」契約にして、社会保険加入など労働者としての権利を奪う違法・脱法行為(「名ばかり個人事業主」)をきびしく取り締まります。

副業・兼業の拡大を利用した雇用責任の後退を許さない

 副業・兼業を労働者が行う場合、本業の企業は副業・兼業先企業での労働時間を把握し通算することが定められています(労働基準法38条)。ところが、20年に政府が改定した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、使用者は労働者の自己申告に基づいて労働時間を把握すればよいとした上、企業の負担軽減を理由に「簡便な労働時間管理の方法」を示しています。長時間労働抑制の土台となる労働時間の正確な把握・管理を骨抜きにするものです。また、現在、副業を解禁した企業の多くは、フリーランスや請負・委託など雇用によらない形態の副業のみ許可しています。非雇用型の副業であれば、企業は労働時間の規制や残業代の支払い義務を免れます。

 副業・兼業をおこなう人の最も多い理由は「収入を増やしたいから」であり、本業だけでは生活できない低賃金が背景にあります。副業解禁とその拡大は、企業による雇用調整と人件費削減の新たな手段になっています。労働者の「自己責任」で収入を補わせ、長時間労働には責任を負わないという、企業にとって都合のいい副業・兼業の普及では、過労死・健康破壊のリスクが広がるばかりです。労基法38条の労働時間通算制度の緩和・撤廃を許さず、正確な労働時間管理のための規制を強化するとともに、賃上げと安定した雇用の拡大など本業のみでも暮らせるための労働条件の拡充を図ります。

公務・公共関連の非正規職員の労働条件を改善し、公契約法・条例を制定します

 コロナ危機を経て、国民・住民の命と生活を守る公務・公共労働者の役割が改めて重要になっています。「官製ワーキング・プア」をなくすために、国や自治体の臨時・非常勤職員の賃金を引き上げ、均等待遇をすすめます。

 地方自治体の非正規職員は70万人をこえ、その多数を会計年度任用職員(会計年度ごとの1年契約を原則とする非正規公務員)が占めます。会計年度任用職員の7~8割は女性です。スクールカウンセラーやハローワーク相談員、保育士、図書館司書など、専門性・継続性が求められ、住民生活に寄り添う大切な仕事でありながら、年度末での雇い止めなど短期・不安定雇用を強いられています。

 また、国家公務員(一般職)のうち非常勤職員は4割近くにのぼります。女性の賃金が男性の6割台にとどまる府省は、非常勤職員の割合が高く、国家公務職場における男女賃金格差の要因にもなっています。

 2024年6月、国の非常勤職員を3年で機械的に雇い止めする「3年公募」が撤廃されました。それを受け、自治体の会計年度任用職員に関する総務省のマニュアルが、国の「3年公募」を例示した箇所を削除し、自治体の判断で雇用継続できることが明確になりました。労働組合の運動による前進であり、雇用安定化への一歩です。

労働契約法を公務の非常勤職員にも適用し、無期雇用への転換を促進します。また、自治体が誘致する企業について、正社員化の度合いや均等待遇の実施状況などを重要な判断基準とさせます。

 国や自治体と受注する事業者との間で結ばれる契約(公契約)に、生活できる賃金など人間らしく働くことのできる労働条件を定める法律や条例(公契約法・条例)を制定します。賃金条項を有する契約条例の制定は、全国32の地方自治体(19市、13特別区 2024年9月24日現在)に広がっています。

解雇の自由化を許さず、解雇規制法をつくります

「解雇の金銭解決」制度に断固反対します

 政府が導入しようとしている「解雇の金銭解決」は、違法解雇であっても使用者が一定の金銭を払えば雇用契約を終了できるという仕組みであり、本来なら無効となる不当解雇や雇い止めを容認・合法化するものです。政府は、導入の目的を、金銭支払いを求める権利を労働者に与えるためとしていますが、現状でも金銭解決は行われており、新たな制度を設ける必要はありません。むしろ、すでに労働者が持っている権利の「付与」を口実に、解雇を押し付けるための制度であり、これが導入されれば、不当解雇がさらに増加し、「解雇自由」の社会になりかねません。

 「解雇の金銭解決」制度の狙いは、岸田政権がすすめてきた「三位一体の労働市場改革」と不可分です。ここでは、①リスキリング(学び直し)による能力向上支援、②個々の企業の実態に応じたジョブ型人事(職務給)の導入、③雇用維持から成長分野への労働移動の円滑化へのシフト、が掲げられています。このうち①と③に関しては、「リスキリング」を理由とする自己都合退職の場合、失業給付を会社都合退職と同じ扱いにする優遇措置を取るとしています。労働者は、企業が求める能力の向上を要求され、それができなければ、「成長分野」への労働移動(転職)を可能にする能力を自助努力で身につけることを迫られることになります。「自己責任」を労働者に押し付け、本来企業が負うべきコストを削減しながら、必要なときにだけ労働力を確保し、都合よく退職に追い込むことを容易にするものです。こうした動きと一体にすすめられている「解雇の金銭解決」制度の導入に強く反対します。

退職強要をやめさせ、解雇規制法をつくります

 希望退職・転籍について、本人同意・取消権、労働組合の関与などのルールを確立します。労働基準監督署が、退職強要などを日常的に監視し、取り締まるようにします。会社分割・企業譲渡における雇用と労働条件のルールをつくります。55歳一律転籍など、年齢による雇用契約の不利益変更や採用制限を禁止します。事業所の閉鎖、移転、縮小の際に自治体と協議する仕組み(リストラ・アセスメント制度)をつくります。投資ファンド(資金運用組織)による企業買収、会社資産の売却が野放しになっていることにより、労働者が安易に解雇されるなど、深刻な事態が広がっています。ファンドが被買収企業の労働条件を実質的に決定している場合には、労働者・労働組合との協議・交渉を義務づけるなど、法的規制をおこないます。

 自公連立政権が2003年に、労働基準法を改悪して「解雇自由条項」を盛り込もうとしたとき、日本共産党は労働者・労働組合と協力してこれをやめさせ、逆に、解雇を規制する条項をはじめて盛り込ませました(この条項はその後、労働契約法に移行)。また2002年12月には、「解雇規制・雇用人権法」の制定など、労働者の人権をまもり、労働者が安心して働くことができるルールの確立を提案しました。具体的内容は、最高裁の判例などで確立している「整理解雇4要件」(①人員削減の必要性、②解雇回避努力義務、③人選の合理性、④解雇手続きの妥当性)のヨーロッパのように法律への明記、裁判などで解雇を争っているあいだの雇用継続、解雇無効になった場合は職場に復帰するという就労権の保障です。

大規模な電機リストラ、人権侵害をやめさせます

 東芝・日立・ルネサスなどによる「電機リストラ」は、この10年あまりで90万人という大規模な人減らしに発展し、非人道的な手法で労働者が追いつめられています。黒字であっても人減らしを強行し、しかも労働者一人ひとりを個別に攻撃するという新しいリストラが強行されています。

 このリストラに対し、職場からのたたかいと日本共産党の国会論戦によって、少なくない成果を勝ちとってきました。半導体メーカーのルネサスでは、片道2時間30分もかかる遠隔地に強制配転させられた2人の女性が元の職場に復帰しました。日立超LSIやソニーでは「追い出し部屋」を撤廃させました。NECでは解雇された労働者の職場復帰を勝ちとっています。三菱電機では、14年間「派遣切り」とたたかい勝利解決しました。日本IBMでは終業時刻間際に労働者を会議室に呼び出し、解雇通告を読み上げ、そのまま会社から閉め出す「ロックアウト解雇」がおこなわれました。これに対し、労働者が勇気をもってたたかいに立ち上がり、原告11人全員が和解し、うち3人が職場復帰を果たすという画期的な成果を勝ちとりました。同社の賃金減額に対しても裁判で勝利しています。日本共産党は、ひきつづき労働者のたたかいを支援していきます。

高年齢者の労働条件と権利を守ります

 高年齢者雇用安定法は、65歳未満の定年を禁じ、65歳までの雇用を企業に義務づけています。雇用延長措置をとる企業(300人以上)は、ほぼ100%になっています。しかし、「心身の故障」「勤務不良」などの場合、継続雇用をしなくてもよいという抜け道が残されており、希望者全員が継続雇用されない状況が生まれています。また、多くの場合、雇用延長しても賃金が定年時よりも格段に低く抑えられているのが実態です。

 2020年の法改定では、65歳から70歳までの希望者に対する就業確保が企業の努力義務とされましたが、その選択肢に委託・フリーランスなど雇用によらない働き方や有償ボランティアなどが加わりました。若年層と比べて労災発生率が高い高年齢労働者を、労働法の保護の外に追いやり、無権利労働の拡大を促進するものです。

 ソニーや日立などの大企業では、70歳までの雇用延長を希望しているのに雇用されないという実態が広がっています。高齢者雇用延長制度については、法律の趣旨にもとづき希望者全員を採用させるとともに、アメリカやヨーロッパのように、年齢を理由とする雇用・賃金などの労働条件差別を禁止します。退職金の後払いである企業年金の一方的な切り下げを許さず、受給権を守ります。

 シルバー人材センターを利用した低賃金で劣悪な雇用の拡大に反対し、最低賃金や労働条件、労働災害補償など労働法を適用します。

「成果強要」「解雇自由」に道を開く「ジョブ型雇用」の拡大を許しません

 「ジョブ型雇用」が大企業などで導入され、その拡大が狙われています。欧米で普及しているジョブ型雇用は、職務(ジョブ)の内容を分析し、それに必要な能力や経験、資格などを明確にした上で、その職務に従事する労働者の採用や賃金を決める仕組みです。労働者は採用・配置の時点でその職務を担う能力があるとされているため、採用・配置後に職務能力の発揮状況を改めて評価することはなく、成果主義にもとづく賃金システムではありません。ところが、日本の大企業が拡大を図るジョブ型雇用では、あらかじめ職務の内容やそれに必要な能力などを明確にすることなく、労働者の職務能力について、採用後の目標達成度や業務によって評価をおこない、成果主義を持ち込んでいます。これは本来のジョブ型雇用とは異なり、成果主義による賃下げや長時間労働につながります。

 また、ジョブ型雇用導入のもう一つの狙いは、職務を限定した労働契約を結ぶことで、その職務がなくなった際、他の職務で雇用を継続するなど企業が負うべき雇用責任を果たさず、容易に解雇できるようにすることです。こうした「成果強要」「解雇自由」に道を開くやり方を許しません。

エッセンシャル・ワーカーの待遇を改善します

 誰もがケアなしには生きていけないにも関わらず、ケア労働は低賃金と人手不足、長時間労働に置かれてきました。そこにコロナ危機が直撃し、現場の困難は増大しています。歴代の自民党政権による医療・社会保障分野の改悪・切り捨てから抜本的拡充へと政策を転換し、政府の責任でケア労働者の労働条件と人手不足を改善し、「ケアに手厚い社会」をつくります。

 運動と世論に押されて政府は2021年にケア労働者の賃上げを掲げたものの、その中身は低額かつ対象も限定されました。看護師は「月4,000円」にとどまり、コロナ対応病院に限定されたため、就業している看護職員の半数以上が対象外です。介護・保育では「月9,000円」で、職員の配置条件によっては一人あたりの賃上げ額がそれに届かず、さらに対象外の事業所・申請しなかった自治体も多数にのぼります。すべてのケア労働者を対象にした大幅賃上げが必要です。

 感染症対策と医療危機の最前線で奮闘してきた医療労働者は、病院の経営悪化による賃下げや過酷な激務が続き、「使命感だけではもたない」状況が続いています。コロナ対応以外の病院でも経営が深刻になっています。すべての医療機関を対象に減収補填と財政支援を行うとともに、診療報酬の見直しを進めて医療労働者の待遇の抜本的改善を行います。

 福祉現場は感染拡大のもとでも、利用者の原則受け入れが求められています。そこで働く保育・介護・障害などの福祉労働者は、公定価格や報酬で政府が賃金水準を低く抑えているため、月収が全産業平均と比べて約5万円も低くなっています。公定価格等の引き下げによる賃下げを許さず、国の責任でただちに全産業平均水準への引き上げをすすめます。

 ➡詳しくは各分野の政策「06、医療」「08、介護」「25、保育」の項を参照してください。

 生活関連サービス業や卸売業・小売業など、社会を支えるうえで不可欠な分野では、コロナ感染拡大のもとで、仕事の内容上テレワークができず、感染の危険と隣り合わせの中、多くの労働者が最低賃金水準で働くことを余儀なくされてきました。使用者が職場の感染対策などの責任を果たし、労働者の要求に応じて危険手当等を支払うとともに、賃上げや正規化など待遇改善をすすめ、エッセンシャル・ワーカーの命と生活を守ることが求められています。政府がエッセンシャル・ワーカーの労働条件改善を社会的課題として位置づけ、最賃の大幅引き上げをはじめ、賃上げと安定した雇用の拡大に取り組むよう力を尽くします。

ハラスメントを法律で禁止し、働くすべての人を保護の対象にします

 職場のハラスメントに苦しむ労働者が増えています。精神障害に関する労災認定件数は5年連続で過去最多を更新しており、その原因はパワハラがトップです。カスタマーハラスメント(カスハラ=顧客や取引先、施設利用者などによる著しい迷惑行為)に苦しむ労働者の労災申請も認定されています。セクシャルハラスメントは、毎年約7,000件もの相談が労働局に寄せられており、「就活セクハラ」は3割の学生が被害に遭っています(厚労省調査)。多くの被害者がどこにも相談できず、泣き寝入りを余儀なくされています。裁判で告発し、損害賠償請求が認められるなど勝訴した場合でも、職場復帰をはじめ被害者の権利回復を保障する仕組みがありません。

 こうした状況の最大の要因は、現行法にはハラスメントそのものを禁止する規定がないことです。事業主には相談窓口設置などハラスメント防止の措置義務がありますが、行政の是正指導は防止措置の履行に対するものであり、ハラスメント自体に対するものではありません。違反した企業名の公表は16年間で1件のみにとどまっています。

 ILO(国際労働機関)は2019年、ハラスメントを包括的に禁止する条約と勧告を圧倒的多数の賛成で採択しました(21年6月発効)。条約は、第三者からのハラスメントを含め、労働の世界における暴力とハラスメントを禁止する法律の制定を各国政府に求めています。保護する対象者は、雇用されている労働者だけでなく、請負や委託、フリーランスなどの契約の形態にかかわらず働いている人、インターンや訓練中・実習中の人、雇用が終了した人、ボランティア、求職者、求人への応募者、使用者としての義務・責任を果たしている個人としています。さらに、規制する場所を、労働がおこなわれる「職場」に限定せず、「往復の通勤時」や「休憩や食事をとっている場所」「労働に関連する移動あるいは旅行、訓練、イベントあるいは社会活動がおこなわれているあいだ」「使用者が提供する宿泊施設」「ICT(情報通信技術)の利用を含め、労働に関連するコミュニケーション」なども対象にしています。政府に求める対策では、対処・防止のための包括的な戦略策定、法の実施・監視のための仕組みの確立と強化、効果的な監督・調査手段の確保、被害者の救済・支援と加害に対する制裁を定めることも規定しました。

 日本政府がこの条約を批准し、ハラスメント禁止を法律に明記することを求めます。また、被害の認定と加害者からの謝罪、被害者の権利の回復などを行う独立した救済機関を設置します。

ジェンダー平等を促進し、同一価値労働同一賃金を実現します

 ➡各分野の政策「10、女性とジェンダー」も参照してください。

 日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中118位(2024年)と世界で最下位の部類に甘んじており、特に経済分野では、推定勤労所得の男女比が98位、管理職の男女差が130位で、全体の順位を押し下げています。

 1985年の男女雇用機会均等法の制定以降、女性雇用労働者は増加傾向を続けてきましたが、その多くは非正規雇用であり、女性労働者の5割超を占めます。近年雇用が拡大してきた観光業、飲食業など最賃水準で働く労働者が多い産業は、女性の非正規労働者が主力として支えてきましたが、コロナによる解雇・雇止めで真っ先にその標的とされました。また、家事・育児など家庭でのケア負担が女性に重く、「一斉休校」などでそれが増大したために休業を余儀なくされ、減収・離職に至った人も少なくありません。緊急的な支援の継続・拡充とともに、雇用におけるジェンダー差別をなくしていく抜本的対策が必要です。

男女の賃金格差を是正し、同一価値労働同一賃金・均等待遇を実現します

 男女の賃金格差は年収で240万円、生涯賃金で1億円にものぼります。背景には「転勤できない」「業務がちがう」ことなどを表向きの理由とした昇給・昇格差別があり、男性の正社員にくらべて、女性の正社員の賃金は7割、女性の非正規の賃金は4割です。派遣労働者でも、女性の時給は男性の9割です。雇用形態による差別がそのまま男女間格差に直結し、退職金や年金支給の低さなどにも大きな影響を与えています。

 2022年7月に女性活躍推進法の改正省令・告示が施行され、常用労働者301人以上の企業に男女賃金格差の把握・公表が義務づけられました。公表制度は日本共産党が国会で繰り返し求めてきたものです。公表の徹底とともに、企業に是正の計画をつくらせ、政府がその実態を監督・奨励する仕組みを確立します。

 わが国も批准しているILO条約「同一価値労働・同一報酬」(100号)にもとづき格差を是正します。同一価値労働同一賃金と均等待遇の原則を、労働基準法、男女雇用機会均等法、パート労働法、労働者派遣法などに明記します。男女の賃金格差是正の上でも、非正規から正規への転換をすすめます。

すべての間接差別を禁止します

 男女雇用機会均等法は、「間接差別の禁止」について、「募集・採用にあたって身長・体重・体力を要件にすること」「転居を伴う転勤を採用・昇進の要件にすること」「昇進にあたり転勤の経験があることを要件とすること」の3例の限定的な列挙にとどめています。条件をつけずにすべての「間接差別」の禁止を明記すべきです。雇用形態による差別や低賃金の業務に女性の比率が高いことなどについて、実効性ある是正措置をとります。

男女ともに長時間労働を是正し、仕事と家庭生活が両立できる社会をつくります

 30~50代の男性の1割が過労死ライン水準の長時間労働となっており、1997年に労働基準法の女性保護規定が撤廃されて以降、長時間労働は女性の中にも増え、ワタミや電通の社員、NHK記者など20~30代の女性の過労死も後を絶ちません。共働き世帯は7割にのぼりますが、6歳未満の子どもがいる夫婦の家事関連時間は、夫は1時間54分、妻は7時間28分となっており(総務省「社会生活基本調査」)、正社員としての就労継続が困難となる実態があります。長時間労働は女性から安定して働く機会を奪い、男性の健康や家庭生活を脅かしています。育児・介護休暇取得の促進とともに、長時間労働の是正をすすめ、女性も男性も、誰もが本当の意味でのワーク・ライフ・バランスを実現でき、仕事も家庭生活も両立できる社会をつくります。

服装規定など職場のジェンダー差別をなくします

 2019年、女性へのパンプス・ハイヒール着用強制に反対する「#Kutoo」の運動が始まり、社会的にも大きく注目されました。就活生の服装などに関する「女らしさ」「男らしさ」の押し付けに反対し、多様性を求める取り組みも生まれています。日本共産党は国会で「#Kutoo」の問題を取り上げ、20年3月、安倍首相(当時)が初めて「職場での服装に関し、苦痛を強いるような、合理性を欠くルールを女性に強いることは許されない」と答弁しました。当時の厚生労働大臣も、従来の「社会通念に照らして業務上必要があるかどうかで判断する」という立場を改め、「『男性は靴は自由だ、女性はこうだ』というのは、男女雇用均等の立場からも正しくない」と明言しました。この質問後、日本航空と全日空が客室乗務員に対するハイヒール着用義務を撤廃するなど、職場の変化にもつながっています。

 イギリスでは政府がドレスコードと性差別に関する指針を策定しており、その対象には就活生・求職者も含まれています。ILOのハラスメント条約は、「ジェンダーに基づく暴力とハラスメント」が女性の労働参加と定着、昇進を阻害する恐れがあると指摘し、その防止策を加盟国に求めています。日本でもILO条約を批准し、職場でのジェンダーに基づく差別的な規定をなくすための法整備をすすめます。

「若者使い捨て」企業をなくします

 日本共産党は、若者をはじめ働く人を過酷な労働に追い込み、モノのように「使い捨て」「使いつぶす」企業の問題を国政の大問題として訴え、2013年の参議院選挙での前進で獲得した議案提案権を活用して、「ブラック企業規制法案」を国会に提出しました。法案提出後、厚生労働省は、5,000をこえる事業所に調査に入り、82%の事業所が法令違反を犯していたことを明らかにし、是正指導・勧告をおこないました。さらに、法令違反を繰り返す企業の名前を公表するようになり、毎年400社前後の企業名が公表されています。

 また、「固定残業代」のような求人票の誇大・虚偽記載について実態を調査し、未払い賃金が10億円にのぼるとの調査結果を発表して是正指導をおこなうとともに、関係団体に対して誇大・虚偽の求人広告を掲載しないよう要請しました。2015年9月には、ハローワークが違法行為を繰り返す企業の新卒求人を拒否することや、募集・採用や労働時間など職場情報の開示を企業に義務化することを定めた青少年雇用促進法が全会一致で可決、成立しています。

 日本共産党は、規制法案の成立にひきつづき力を尽くします。

 ➡法案の詳細はブラック企業規制法案の提案にあたって―「ブラック企業規制法案」要綱(2013年10月15日)(https://www.jcp.or.jp/web_policy/2013/10/post-546.html)をごらんください。

失業者の生活と職業訓練を保障し、安定した仕事への道を開きます

雇用保険制度を改善・拡充し、失業者の生活を支えます

 労働者は失業すればとたんに収入が途絶え、貯蓄だけが頼りになります。非正規労働者は、貯蓄もできないような劣悪な労働条件で働かされ、解雇されると同時に寮から追い出されてホームレスになっています。ILOは、日本では失業手当を受給できない失業者の割合が79%(2012年11月)にものぼり、「先進国」中最悪の水準にあると指摘しています。失業者が安心して仕事を探せるように、雇用保険制度の抜本的拡充が不可欠です。失業給付期間を現在の90日~330日から180日~540日程度に延長します。給付水準の引き上げ、受給資格の取得に要する加入期間の短縮、退職理由による失業給付の差別をなくし、支給開始までの7日間の待機期間と2カ月の給付制限期間をなくすなど抜本的に拡充します。

職業訓練や雇用創出制度を拡充します

 国際労働機関(ILO)は「人的資源開発勧告」(第195号)で、「教育および訓練は、すべての者の権利である」と位置づけ、教育・訓練に参加する労働者に有給の教育休暇を保障することを定めています(「有給教育休暇条約」第140号)。労働者に自己責任を押し付ける政府の「リスキリング」でなく、労働者本位で職業教育・訓練を拡充します。

 安定した仕事につく機会を広げるために、専門学校なども活用して職業訓練制度を抜本的に拡充します。フランスでは、職業訓練への資金提供を企業に義務づけています。ドイツには、企業が職業訓練生を一定の報酬を支払って受け入れ、終了後は正社員として採用するという制度があります。低賃金で貯えもなく、企業内での教育訓練の機会もない「ワーキング・プア」やフリーターの職業訓練を重視し、有給の職業訓練制度や訓練貸付制度を創設し、訓練期間中の生活援助を抜本的に強化します。国の事業としては廃止された地域職業訓練センターの復活も含め、希望するすべての失業者に職業訓練の機会を提供します。

 「ワーキング・プア」や失業者に、公共・公営住宅の建設や借り上げ、家賃補助制度、生活資金貸与制度などの生活支援を強め、子どもの教育費や住宅ローンなどの緊急助成・つなぎ融資制度を創設します。

 政府の不十分な雇用創出制度を抜本的に拡充するとともに、国と自治体の責任で、効果のある公的就労事業を確立します。国と自治体の協力による臨時のつなぎ就労の場を確保させます。また、医療、保育、介護・福祉、環境、防災、教育など、国民の暮らしに不可欠な分野が慢性的な人手不足状態にあります。この分野で雇用を増やし、職業訓練と結びつけて、人間らしい賃金・労働条件を確保・改善するのは、国と自治体の重要な責任です。

 新卒者の就職難を打開します。日本共産党は、2010年4月、➡「新卒者の就職難打開へ――社会への第一歩を応援する政治に いまこそ、国、自治体、教育者、そして企業と経済界が真摯な取り組みを」(https://www.jcp.or.jp/web_policy/2010/04/post-34.html)という新卒者の就職難に関する政策を発表しています。

労働者協同組合について

 働く者が連帯してみずから受け皿をつくり、仕事を創出する「労働者協同組合」について、根拠法である労働者協同組合法が20年に全会一致で成立し、2022年10月に施行されました。労働者協同組合法は第1条で、労働者協同組合の目的を、「持続可能で活力ある地域社会の実現に資すること」としており、地域に根差した雇用創出や産業の振興などを通じて、地域社会の持続的な発展に寄与することが期待されます。組合員が事業に出資し、運営に発言権を持つため、その労働者性が否定されて長時間労働・低賃金となる懸念がありましたが、新法は組合に対し、「事業に従事する組合員との間で、労働契約を締結しなければならない」と義務づけ、法案審議の過程でも労働法の適用や労働組合を結成する権利が確認されるなど、労働者性を担保するものとなっています。新しい事業形態・新しい働き方であるだけに、「名ばかり理事」などの実態を生まず、労働者保護が確実に履行されるよう、省令・指針の整備をすすめます。

コロナ危機から労働者を守ります

 新型コロナウイルス感染時の中小企業助成金を返済できずに倒産する中小企業が急増しています。中小企業を守り、労働者を守る措置を拡充します。

休業補償を拡充します

 事業主は、事業主都合によって労働者を休業させる場合、平均賃金の60%以上を補償しなければなりません(労働基準法26条)。企業がこの休業補償責任を果たすよう厳格に指導します。また、休業手当の算出方法は原則として、「直近3ヵ月間の平均賃金(3ヵ月間の賃金総額を休日も含めた3ヵ月の総日数で割った金額)×6割以上×休業日数(所定の休日をのぞく)」となっています。そのため、実際の休業手当は賃金の4割程度しか受け取れず、「とても生活できない」という声が上がっています。この不合理をただし、賃金の100%の休業補償が促進されるよう、法改正も含めて休業手当に関する規定を改善します。

失業補償を拡充します

 野村総合研究所は2020年、パート・アルバイトのうち、「シフト勤務が5割以上減少」かつ「休業手当を受け取れていない人」を「実質的失業者」と定義して調査しました。その結果、21年2月時点で女性の実質的失業者は103万人。20年12月時点の90万人から13万人増えました。2021年5月時点でも、全国の「実質的失業者」は女性で92.2万人、男性で39.6万人にのぼり、これら労働者の多くが「自己都合退職」を強要されました。「自己都合退職」の場合、7日間の待機期間に加えて、2カ月間の給付制限期間が設定されます。これでは、無収入になった失業者の生活を守ることができません。このような退職理由による差別をなくします。そのために、待機期間と給付制限期間を廃止します。失業給付期間を、現在の90日~330日から180日~540日程度へと延長します。

 雇用保険未加入の求職者を支援するために無料の職業訓練をおこなう求職者支援制度は、月の給付金が10万円と低額な上に、支給要件が厳しいものとなっています。例えば、職業訓練を休まず8割以上の出席が求められています。これでは生活を成り立たせながら職業訓練を受けることができません。支給要件を緩和するとともに、給付金を月20万円に引き上げます。

国と地方の労働行政を強化します

 人間らしく働けるルールを確立するために、国の労働行政の強化が不可欠です。労働基準監督署の体制強化や相談窓口の拡充などをはかります。労働基準監督行政の民間委託を許しません。労働監督官数は、ILO基準(「先進国」の場合、1万人の労働者ごとに1人の監督官を配置する)にそって、政府の責任で2倍以上に増やします。

 職業訓練の充実や再就職支援、労働者の権利と雇用主の義務を知らせる広報・啓蒙活動を強化します。そのために、ハローワークの窓口担当者が臨時・非正規という現状を是正し、ハローワークの体制を抜本的に拡充します。

 中央と地方の労働委員会の民主化と機能の強化、被害者救済のための個別労働紛争解決制度の拡充をすすめます。

 「ワークルール教育推進法」を制定し、学校・職場・地域などで労働者の権利をしっかり教えるようにします。

企業の人権侵害を許さない国際的ルールの確立を

 国際社会は今日、企業行動が人権におよぼす悪影響をますます懸念するようになり、「企業は社会の一員である」との認識に立って、ビジネス分野における人権尊重のとりくみを強めています。国連は、人権に対する企業の責任と国の義務を明記した国際文書を相次いで採択してきました。2018年からは、法的拘束力をもつ国際条約案が討議され、企業に人権尊重を求めるとりくみは、新しい展開を見せています。この分野においてもジェンダー平等が重視され、条約案は「国と企業は、すべての措置にジェンダーの視点を貫くことが求められる」と明記されています。

 また、ILOは、グローバル・サプライチェーンにおける児童労働・強制労働の撤廃、人権デュー・ディリジェンス(人権侵害を防止するための調査と措置)法の制定など人権保護のためのとりくみを強化しています。欧州ではすでに法制化が進んでいます。

 こうした国際的動向を踏まえ、わが国においても企業の人権尊重責任を追及していきます。

政策