8、介護
介護の基盤崩壊を打開するための緊急対策を実施し、高齢者も現役世代も安心できる制度への改革を進めます
2024年10月
介護への国の支出を増やし、介護の危機を打開する緊急対策を実施します
提供体制の崩壊という、介護制度の危機が進行しています。
ホームヘルパーなど介護人材が不足し、人手不足と経営悪化による介護事業所の撤退・廃業・倒産が続出しています。とくに、政府が今年度から訪問介護の基本報酬を削減したことが大きな打撃になりました。地方では、介護事業所が1カ所もない自治体が出てきています。保険料・利用料を払っても、「人材・事業所がないため、介護サービスが受けられない」という危機的事態です。
介護の基盤崩壊は、現役世代にとっても重大問題です。働く現役世代が介護のために仕事をやめる「介護離職」が年間10万人にのぼるなど、要介護者の家族の負担は重くなっています。「ケアマネが見つからず、介護サービスが受けられない」、「ヘルパーが不足して時間を減らさざるを得ない」、「入居できる施設がない」など家族の負担がいっそう重くなる事態が広がっています。
日本共産党は、保険料・利用料の負担増にはね返らせることなく、介護職員の処遇改善、介護報酬の増額、介護事業の継続支援などを行うため、現在、公費50%(国庫負担25%、都道府県負担・市町村負担25%)、保険料50%で運営されている介護保険の国庫負担を10%増やして35%とし、国の支出を1.3兆円増やすことを提案しています。
介護保険の公費負担を50%から60%に引き上げることは、いま、介護の再生を求める広範な有識者や団体・個人の一致した要求となっています。かつては、自民党・公明党も介護保険の公費負担の6割への引き上げを国政選挙の公約にかかげていました。それを実施することは急務です。
――介護保険の国庫負担割合を10%増やし、公的助成で介護職の賃上げを進め、「全産業平均」並み」に引き上げていきます。ホームヘルパー、ケアマネジャー、事業所職員などの処遇改善、長時間労働の是正をはかります。
――介護施設職員の長時間・過密労働や「ワンオペ夜勤」の解消にむけ、施設の配置基準の見直しや、報酬加算・公的補助などを行います。
――介護事業所の人件費を圧迫している人材紹介業者への手数料に「上限」を設けるなど、人件費が確実に職員の賃金にまわるようにします。
――今年度に政府が引き下げた、訪問介護の基本報酬を早急に元の水準に戻します。削減されてきた介護報酬を底上げし、介護事業所の経営の継続に向けた支援を行います。
――介護の事業が消失の危機にある自治体に対し、国費で財政支援を行う仕組みを緊急につくり、”民間任せ”では事業が成り立たない事業所・施設の経営を公費で支えます。
➡詳細は、「年金削減、介護の危機、医療改悪をくいとめ、高齢者の人権と尊厳を守るための緊急提言」(2024年9月26日)(https://www.jcp.or.jp/web_policy/2024/09/post-988.html)をご覧ください。
介護保険の給付の充実、利用者負担の軽減を進めます
この12年間に自公政権が繰り返してきた、介護保険の負担増・給付削減の制度改悪が、要介護者と家族を苦しめています。介護保険の生みの親といわれる元厚労省幹部が、「介護保険は『国家的詐欺』となりつつある」と警鐘を鳴らす、異常事態です。
自公政権は、軽度者の在宅サービスの保険給付外しや、利用料の2割・3割負担の対象拡大など、「史上最悪の介護保険改定」を引き続き「検討」していますが、介護の再生を願う、広範な介護・福祉・自治体関係者による改悪反対の共同が広がっています。負担増・給付削減に反対し、保険給付の拡充と利用料・保険料の減免をはかります。
利用者からサービスを取り上げる改悪や機械的な利用制限の仕組みを撤廃し、介護保険を「必要な介護が保障される制度」へと改革します。
――「要支援1・2」の訪問・通所介護を保険給付に戻し、政府が検討する、「要介護1・2」の在宅サービスの保険給付外しをやめさせます。
――生活援助の時間短縮、軽度者の通所介護や福祉用具の利用制限など、繰り返されてきた、給付抑制のための制度改悪を見直します。
――「給付適正化」の名を借りて国と自治体が進める利用抑制、国の基準にてらしても行き過ぎた、自治体の「ローカル・ルール」による給付制限を是正します。
――自公政権が強行してきた2割・3割負担の導入、補足給付の対象限定などの負担増を中止・撤回します。
――住民税非課税など低所得者の利用料を免除する国の制度をつくり、経済的な理由で介護を受けられない人をなくします。
――施設の食費・居住費の軽減をすすめ、自己負担から保険給付へと戻していきます。
――政府が検討するケアプランの有料化に反対します。
――介護保険料の、国として実効性のある免除制度をつくります。
――国保料(税)や後期高齢者医療保険料に比べても過酷な、介護保険料の滞納に対するペナルティを見直します。
「介護難民」を解消するため、特養ホームなど介護施設の抜本的な増設に転換します
――国として待機者解消の計画を策定し、特別養護老人ホームの抜本的増設を図ります。廃止された特養建設への国庫補助を復活させ、都市部における用地取得への支援、職員確保への支援など、「待機者ゼロ」の実現に向けて、あらゆる施策を動員します。
――自公政権が強行した「要介護1・2」を特養入所から締め出す改悪をやめます。
――小規模多機能型施設、グループホーム、宅老所などの多様な施設についても、基盤整備を進め、食費や居住費への公的補助など、低所得者が利用できるよう改善を進めます。
自治体の福祉(措置)の機能と体制を強化します
高齢者虐待、貧困、社会的孤立など、介護保険のサービスでは対応できない「処遇困難」の高齢者の救済は、老人福祉法にもとづく自治体の仕事ですが、介護保険導入後、国の福祉切り捨て政策もあり、多くの自治体で、福祉事務所や保健所が担っていた高齢者への福祉(措置)は縮小されてきました。生活・病気・家族関係など複雑な問題をかかえた高齢者が急増するなか、いまこそ自治体の福祉・保健の再生が必要です。
――自治体の福祉職を増員し、介護保険や民間では対応できない困難を抱えた人を自治体が直接救済して、支援や介護を提供する体制を再構築します。
――地域の高齢者の実情をつかむ拠点として、地域包括支援センターを老人福祉法に位置づけ直し、国の責任で人員・体制の構築を図ります。
――”立ち枯れ状態”になっている各地の養護老人ホームに国庫補助を行い、機能を回復・拡充させます。
高齢者の「住まいの人権」を保障します
「住まいは人権」の立場で、住居費用の負担が大変な高齢者や、病気・要介護のためにそれまで住んでいた住居に住み続けられなくなった高齢者が、低廉な費用で質の確保された住宅に居住できるようにする支援を強化します。
―――日常生活は自立しているが体調に不安がある高齢者を低廉な費用で住まわせる「軽費老人ホーム(ケアハウス)」の増設など、公的住宅の増設を進めます。
―――「地域優良賃貸住宅」の活用・拡充をはじめ、高齢者の住宅費に対する補助・支援の仕組みを抜本的に拡充します。
認知症対策を促進します
日本の認知症高齢者は2025年で700万人を超え、65歳以上の5人に1人となる見通しです。政府は、共生と予防を両軸とした「認知症施策推進大綱」にもとづく施策の推進や、認知症基本法にもとづく計画策定を進めていますが、その一方で、認知症の当事者・家族に負担増を強いる介護制度の改悪を続けています。
――認知症対策に真っ向から反する、”要支援者切り”や”軽度者切り”など、介護とりあげの制度改悪に反対します。
――身体機能に偏重した認定システムの見直し、生活援助の利用にかかわる制限の撤廃、区分支給限度基準額の引きあげなど、認知症の人にも対応できる介護保険制度への改革を進めます。
――認知症の早期の発見・診断、初期の相談と家族への支援から、終末期のケア・看取りまで、切れ目なく治療と支援を行う、医療・保健・福祉の連携体制の構築を進めます。
――安価に利用できるグループホームの確保や介護施設の計画的増設など、認知症の人が地域で生活するための基盤整備を進めます。
――認知症の人や家族への差別と偏見を許さず、「認知症になっても安心して暮らせる地域づくり」をすすめる立場で、施策の拡充をはかります。
医療・介護の連携を進めます
――「介護難民」の引き金ともなっている、病院や老人保健施設からの”追い出し”政策を中止します。「介護医療院」を、新たな”病床削減の受け皿”とはさせず、医療的ケアを必要とする要介護者を支える機能・役割を守るよう求めます。
――介護保険と医療保険の”併給禁止”のルールが現実にあわず、必要なケアが受けられない問題などの改善を進めます。
――介護施設でも、医療行為については医療保険の適用を認めるなど、どこでも必要な医療と介護が受けられるように改善します。
――介護現場から懸念の声が出ている、たん吸引、経管栄養などの医療行為を介護職の業務として解禁した制度改変について、再検討・見直しを求めます。
――在宅医療を担う診療所や訪問看護に対する報酬を改善し、在宅生活を支える拠点として公的支援を強めます。24時間体制の「定期巡回・随時対応訪問介護看護サービス」の普及にむけ、報酬の改善や人員体制への支援を行います。
現行制度の不合理をただし、介護保険・介護報酬の改善を進めます
――高齢者の身近な相談相手・専門家としてケアマネジャーの処遇を改善し、増員・育成を進めます。そのための介護報酬での評価や研修の保障などを行います。
――地域の物価水準等を正しく反映した介護報酬にあらため、中山間地でも大都市部でも必要な介護が提供できるようにします。
――介護事業所の参入規制について、問題が起きた後に事業者を処分する「事後規制」の仕組みをあらため、適切な介護を提供できるかを事前に審査する「事前規制」に転換します。
――地域の高齢者を支える自主的組織に、公的介護や自治体福祉が担うべき業務を”肩代わり”させる改悪に反対します。それらの多様な実施主体を、地域のコミュニティを支える社会的資源と位置づけ、本来の役割発揮を応援し、連携の促進、財政的な支援、後継者づくりへの協力などを推進します。
――利用者と介護事業者に手間と困難を押しつけ、介護現場の矛盾を広げる、マイナンバーカードの使用の押しつけに反対します。
➡各分野の政策「64、デジタル化問題、個人情報保護、マイナンバー」、「65、マイナンバーカード」もごらんください。